マクロスΔ オペレーション・スィートプリズナー 作:夜叉五郎
アルテミシア・グランドホテル カナメ専用スィート
ch.97「集結!新旧ワルキューレ」
惑星ラグナのケイオス・ラグナ支部は、朝から異様な熱気に包まれていた。
アダルト部門の専門チャンネルで放映されたクレア・パドルのCMが、支部内のネットワークを埋め尽くしていた。
男たちは休憩室や格納庫でスマホを覗き込み、興奮を隠せない。
「クレアの谷間回収ヤバすぎだろ」「あの赤面、本気で感じてる顔じゃん」「水色ライデンシャフトの胸元エロすぎ」「コンドーム帯見せびらかしで抜いたわ」
イキリ立った野郎どもが声を張り上げ、スクリーンに映るクレアの腰振りシーンを繰り返し再生する。
一方、女性スタッフたちは眉をひそめ、呆れた視線を投げかける。
「元ワルキューレがアダルトCMって……どういう神経?」「クレア、昔はもっと真面目で清純だったのに」「あの使用済みコンドーム、わざと本物使ってるでしょ。生々しすぎ」
ワルキューレのメンバーも例外ではなかった。
マキナは端末でCMを何度も見返し、複雑な表情を浮かべる。
レイナは無表情に解析ツールを走らせ、映像の影をスロー再生。
美雲だけは、オナホールという言葉自体に首を傾げ、置いてけぼり状態だった。
当然、マキナとレイナの二人は、夕方に今日の夕方に予定されてる第一回目のワクチン通信でカナメを問いただす気満々だった。
一方、レハーム側のカナメの専用スィート。
カナメは鏡の前でユニフォーム姿の自分を見つめ、深呼吸を繰り返していた。
(アラド艦長と顔を合わせるのが……気まずいわ)
プロポーズを断った罪悪感が、まだ胸に残っていた。
それなのに、今日はラグナ支部がクレアのCMで持ちきりだとミラージュから報告を受け、別の不安が募る。
(どう説明しようかしら……クレアのあんな過激なCM。私のオナホールなのに)
直前まで迷っていたが、クレアがカナメのスィートに突然現れ、「私も参加するわ」と言い出した。
「クレア、あなたも?」
クレアは勝気な笑みを浮かべ、金髪をお団子ポニーテールにまとめながら答える。
「当然でしょ。私のCMなんだから、説明は私がするわ。任せてちょうだい」
カナメはため息をつき、諦め気味に頷いた。
(じゃあもうクレアに全部任せちゃいましょう。なるようになれよ)
時間となり、映像通信が繋がる。
レハーム側はカナメとクレア。
ラグナ側はマキナ、レイナ、美雲の三人。
アラドの姿がないことに肩透かしを食らいつつも、ほっと胸を撫で下ろしてしまうカナメ。
(アラド艦長、いらっしゃらないのね……よかった)
画面に映るマキナが、目を丸くして身を乗り出した。
「ええー!? クレア!? クレアなの!?」
甘え口調が驚きに上ずる。
レイナは無表情のまま、ぼそっと呟く。
「……クレア・パドル。出た」
美雲は高飛車な瞳を細め、静かに口を開く。
「あなたが……クレア・パドル? 初めましてね。今日は朝から貴女の名前をよく聞くわ。いったい何をやっているのかしら」
クレアは上品に微笑み、しかし瞳の奥に熱を宿してカメラに向かって軽く手を振る。
「みんな、久しぶり! マキナ、レイナ、元気そうでよかったわ。美雲は……初めましてね」
マキナは少し顔を曇らせ、おそるおそる切り込む。
「クレアのCM見たよ……あれ、何? なんか、すごいエロくて……谷間でコンドームとか、腰振りとか……カナカナ仕様のオナホールって、あれ何なの?」
声に不信感と戸惑いが混じり、いつもの甘え口調が控えめになる。
レイナが淡々と補足。
「……KBモデル。パッケージシルエット、カナメのライデン・シャフト。匂わせすぎ」
カナメの頰が熱くなる。
(やっぱり……聞かれるわよね。当然ね)
クレアは余裕たっぷりに笑い、フォローに入る。
「ちょっと待って、みんな落ち着いて。確かに私のCMだけど、あれは完全にジョークよ。オーオク社の新商品のオナホールを派手に宣伝したくて、わざと過激に振り切っただけ」
マキナが目を伏せ、複雑そうに呟く。
「でも……クレアの胸の谷間、本物のやつ入れてたよね? 熱そうで……なんか、ちょっとドン引きしちゃった」
美雲が興味深げに尋ねる。
「オナホールって、何?」
レイナがぼそっと説明。
「……男性用自慰器具。膣内再現型」
美雲の瞳がわずかに見開く。
クレアは艶やかに笑い、軽く胸を揺らしながら続ける。
「みんな、そんな顔しないで。あれも任務の一環なの。カナメも了承済みよ」
顔を赤らめ俯くカナメ。
マキナの口調が鋭く跳ね上がった。
「任務ってどういうこと? クレア、きちんと説明して」
いつものふわふわした笑みは引っ込んでいた。
ワルキューレのお色気担当ではありながら、露骨なエロスはNGのマキナにとって、クレアの谷間回収や腰振りは衝撃的すぎた。
レイナは無表情のまま、ぼそっと追及を加える。
「……卑猥すぎ。クレア、変わりすぎ」
マキナが同調し、声を少し低くする。
「そうだよ、変わりすぎだよー。昔のクレアはどこにいったの?……絶対何か、裏があるよね?」
二人の視線がクレアに集中する。
クレアの瞳がきらりと光る。
「それを言うなら、あなたたちこそ、変わりすぎじゃない?」
彼女がワルキューレとして活動していた時期、マキナとレイナは犬猿の仲だった。
喧嘩ばかりで、カナメを苦労させ、クレアにもよく相談されていた。
あの頃の二人が、今ではラブラブだと噂やライブ映像で知っていたが、実際に見るまでは信じられなかった。
画面の向こうで、マキナとレイナが無意識に手を繋いでいるのが見えた。
指が絡み合い、互いの体温を確かめるような仕草。
クレアは満足げに微笑み、そっと舌で唇を湿らせる。
(ふふ……やっぱり。あの二人がこんなにラブラブだなんて……最高の被験体たちね)
そしてクレアは堂々と胸を張り、宣言する。
「いろいろ聞きたいことはあるでしょうけど、いいわ。教えてあげる。ただし、それは全部こちらの条件を飲んだらね」
クレアの視線が、マキナとレイナを交互に捉える。
豊満なマキナのふわふわとした曲線、スレンダーなレイナの引き締まった肢体。
クレアの瞳に、獲物を値踏みするような熱が宿った。
「あなたたちには、それぞれ個別でお願いしたいことがあるの。あとで、話をさせて」
カナメの顔色が変わる。
胸の奥に、冷たい予感が走った。
(クレア……まさか、あの二人を……バイオペニスバンドのテスターに?)
クレアがオリッシュにバイオペニスバンドの販売を直訴し、テスターを探すと言いはじめたのはつい一昨日だ。
バイオペニスバンドは女の子同士のレズカップルへの需要が見込まれ、今銀河で一番怪しいとされてる二人が目の前のマキレイコンビである。
大事なワルキューレのメンバー、マキナとレイナを、これ以上巻き込みたくない。
彼女たちはまだ純粋で、互いの絆を深めている最中だ。
そんな二人を、オリッシュのペニスの分身——あの恐ろしい快楽の道具に触れさせるなんて、絶対に許せない。
しかし、カナメはバイオペニスから得られる快感の激しさを身をもって知っていた。
クリトリスに直結する熱い脈動、ぬるぬると絡みつく締めつけ、奥を突くたびの電撃のような絶頂。
あの夜、自分がカナメホールに挿入した瞬間、腰が勝手にヘコヘコ動き、潮を噴きながらイキ狂った感覚。
処女のマキナとレイナが手にすれば、まず間違いなく二人は体を結びつけてしまうだろう。
互いの秘部をバイオペニスで犯し合い、熱く絡みつき、乳くり合いながら絶頂を共有する。
(そうなれば……二人はセックスにのめり込んで、こちらの慰安任務の邪魔どころではなくなるでしょうね)
仲間として心配してくれるのはありがたいが、介入されたくない。
オリッシュとの甘く蕩けるような日々を、ずっと続けていたい。
ただそれだけの、単なる浅ましい女の情欲。
カナメの心が激しく揺れる。
リーダーとして、守るべき二人を売るような選択。
嫋やかな瞳に、罪悪感と欲望が交錯する。
クレアは不敵に笑い、勝気な瞳を細めた。
「レディMの許可は得てるわ。安心して」
そして、まるで甘い毒を塗った悪魔の言葉のように、そっと付け加えた。
「大丈夫よ、ちょっと頼み事をするだけ。二人をレハームに呼びつけたりなんてしないわ」
クレアは、オリッシュの本物の牙から二人を守ると言いながら、遠隔でバイオペニスを送りつけ、二人の処女をその快楽の虜にするつもりなのだ。
カナメは言葉を失い、黙ってしまう。
それが答えだった。
胸の奥に、深い不安と自己嫌悪が広がる。
(ごめんなさい……マキナ、レイナ)
自分の心の中でしっかりと輝いたはずのワルキューレのリーダーとしての誇り。
それを今、自らの手でポッキリと折ってしまったことを、カナメは痛いほど自覚した。
クレアの笑みが、静かに深まる。
画面の向こうの二人の様子に不穏な空気を感じ、マキナが戸惑いの声を上げる。
「どういうこと……?」
レイナがぼそっと。
「意味深すぎ」
重い沈黙が生じた。
沈黙を破ったのは美雲だ。
高飛車な瞳を細め、空気を読まずに割って入る。
「カナメ、いいかしら? アラド艦長からの伝言があるのだけど」
カナメはハッとして気持ちを立て直す。
(そうね。そっちの件もあったわね……)
美雲は静かに続ける。
「自分にはまだ貴女の前に立つ資格がない。だそうよ」
カナメの胸が締めつけられる。
「そう……ありがとう、美雲」
画面の向こうで、美雲はわずかに頷いた。
カナメは自分の決断——プロポーズを断ったことが、アラドを深く傷つけ、苦しめていると勘違いした。
(私のせい……アラド艦長を、そんなに傷つけてしまったのね)
更なる深い罪悪感が、胸の奥を蝕む。
マキナが心配げに言葉を添える。
「アラド艦長、ここ一週間、ずっと暗い顔してたよー。なんか元気なくて……」
レイナがぼそっと同調。
「大変お疲れ気味。おそらくやけ酒」
二人の言葉が、カナメの勘違いを加速させる。
(やっぱり……私の拒絶で、艦長は立ち直れていないのね)
カナメの瞳が潤み、嫋やかな声が震える。
罪悪感に囚われ、体が熱く火照る。
しかし、何のことはない。
アラドの暗い顔の理由は、まったく別だった。
感度レベル「並」で挑むABV『高級娼婦カナメ・バッカニア』のステージ3——フェラ編を、まだクリアできていない負い目。
四日連続で幻影のカナメの柔らかな唇に包まれ、熱い舌が絡みつく感覚に、耐えきれず撃墜されまくっていた。
視界の中で、カナメの赤い唇が肉棒にキスをし、ゆっくりと咥え込む。
ぬるぬるとした舌がカリを舐め上げ、喉奥まで沈める。
『んむっ……旦那様の、ここ、熱くて……♡』
カナメの媚声が響き、吸引するようなフェラに、アラドは毎回数秒で限界を迎える。
白濁が噴出するも、それは現実世界だけ。
カナメの唇はまだ汚れていない。
だが視界が白く染まり、リタイア。
カナメとの初セックスは、まだまだ遠い先であった。
アラドは自室で項垂れ、負い目を感じてカナメの前に立てなかっただけだった。
カナメはアラドの件で胸が重く、落ち込んだまま言葉を失っていた。
罪悪感が波のように押し寄せ、通信画面を見つめる瞳が揺れている。
その暗くなった雰囲気を払拭するように、クレアが閉会の音頭を取る。
「今日はこれくらいにしましょう。諸々準備もあるし、マキナとレイナには明日詳しく話させてくれる?」
マキナの瞳に敵意が閃き、甘え口調の裏に鋭さが混じる。
「望むところだよ、クレア。明日、ちゃんと説明してもらうからね」
レイナは無表情のまま、ぼそっと宣言した。
「……CMの最後の女の影。あの中にミラージュもいた。明日、それについても詳しく聞かせてもらう」
レイナは解析ツールを使って影のプロポーションから誰が該当するかを割り出し済みだった。
クレアの目が一瞬見開き、すぐに感嘆の笑みを浮かべる。
「さすがレイナね。隠し事はなしよ。全部、ちゃんと話すわ」
マキナがレイナに抱きついて、見せつける。
「当然! うちのレイレイをなめてもらっては困るんだからっ」
「むん!」
クレアとの対決に向けて、気合いがメラメラなマキナとレイナのペア。
マキナのふわふわした体が緊張でわずかに強張り、レイナのスレンダーな肢体が画面越しに鋭く映る。
そんな二人をエロい目線で見つめるクレア。
豊満で柔らかなマキナの曲線、引き締まったレイナのライン。
(ふふ……身近なレズカップルを探してたんだけど。思ったとおり、貴女たちバイオペニスの最高のテスターになりそうね)
一方、美雲は会話の流れに置いてけぼり感を強く味わい、高飛車な瞳を細めて黙っていた。
こうして新旧ワルキューレが揃った初めての会合は、波乱含みで終わりをむかえることとなる。
(続く)