人理保証機関、フィニスカルデア
吹雪の吹き荒れる南極、高度6,000mの雪山にソレはある。
ファーストオーダーを狙った爆破事件、裏切り、所長の死、始まった人理焼却という未曾有の事件。
唯一生き残った最後のマスター、藤丸立香はその重責を背負い戦い、その果てに人理修復という偉業を成し遂げた。
決して平坦な道では無かったし、少なくない犠牲もあった。だが、その果てに救われた命もあった。
マシュ・キリエライト
強力な戦力であるサーヴァント、その依代として生み出された試験管ベイビーである少女は決して安くない対価を押し付けられていた。
それがたった18年という寿命。
現代であれば高校の卒業と同時に命を落とす期間、健康な人の寿命としては短過ぎるそれは重い重い代償と言えるだろう。しかも戦えば戦うほどに身体は劣化し、残り時間を縮めていく。
弱る身体を薬で抑え懸命に戦う少女は、最後に先輩と慕う少年、藤丸立香を庇い命を落とした。
そのはずだった。
それは奇跡なのか、正当な報酬なのか。
旅路を共に歩んだ一匹の獣、その献身により彼女はただの人間として蘇った。
失った物もある。
だが、確かに得た物もある。
救われた世界と少女の未来。
カルデアは人理焼却という人類史上類を見ない事件を解決したのだ。
しかし、そんな世界を救った組織であるカルデアを今『正体不明』の危機が襲っていた。
「マシュ、やっぱり見つからない?」
「はい、センパイ。居なくなったサーヴァントの方達はどこにも見当たりません」
紫色の髪の少女が立香の問いかけに答える。
現在カルデアでは所属するサーヴァント達が突然消えてしまうという事件が起こっていた。
魔術協会の干渉を受ける中起こった大事件……と感じるかもしれない。だがそれ自体は心配無用だ、サーヴァントが行き先を告げずに消えるなどカルデアにとってはいつもの事だからだ。
そう、悲しい事にカルデアではサーヴァントの失踪など日常茶飯事。
真面目なサーヴァントも勿論いる、いるが……大体殆どのサーヴァントが基本的にお祭り好きなのだ。
一部自由すぎるメンバーが何処からか聖杯を拾ってきて特異点が生まれたとして、その特異点にバカンス気分でレイシフトするお祭り好きたちは当たり前に無断でレイシフトする。事前連絡など当然しない。
完全に失踪だ。
故にサーヴァントの姿が見えない事自体は問題では無い。
では何故今回のサーヴァントの失踪事件が問題なのか。
「やっぱりカルデアには居ないかー……」
「ダ・ヴィンチさんも新しく発生した特異点を探してくれてるみたいですけど……」
彼女等が消えた特異点が見つからないのだ。
派手に作られた特異点を見つけ、聖杯で遊んだサーヴァントの頭を叩き、引きずって連れて帰る。
それが普段のルーチンだ。
しかし今回はまず特異点が見つからない。マイルームを漁ったがリサイタルの招待状も届いてない。
特異点が見つからない事からカルデアの施設内に隠れている可能性を考えて探したが梨の礫だ。
「取り敢えず管制室に戻りましょうか。あれから時間も経ってますし、何か分かったかもしれません」
「そうだね、ダ・ヴィンチちゃんならそろそろ何かわかってるかも」
そう言って二人は廊下を歩き始める、言葉の通り管制室に向かうのだろう。
「本当に何があったのかな……皆……どこにいっちゃったんだろう……」
「センパイ……」
起こった事態も今までになく大掛かりと言える。
誰かが最初に消えて、それを追いかけて行った、なんて話ではない。
大量のサーヴァントが突然、煙のように消えたのだ。
立香の目の前で頬杖をついていたカイニスも、穏やかな笑顔で食事を運んできたブーディカも、隣に座っていたスカサハも、湯気のたつ食事を残して忽然と姿を消した。
それこそ、まるで最初から居なかったように。
二人が管制室の前に立つと自動的に扉が開く。
中には女性が5人、向かい合って話している。彼女達は扉の開く音で二人の入室に気付き、こちらに振り返った。
「やぁマスター、捜索の結果はどうだい?」
「それが……やっぱり見つからなかったよ……」
茶髪を肩ほどまで伸ばした女性が先程から話に出ている『万能の人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
万能の名に偽りはなく、彼女に任せておけば大抵のことはどうにかしてくれる。その代わりに余計なことも起こす。
「そうかい……うーん……」
性格自体は非常に善人でマシュの実験を知るや否や当時の所長に食ってかかったほどだ。しかしわざわざ自分の作品を模した女体で召喚されたあたりかなりの変態性を秘めている気がする。
「やっぱり何処かに特異点があるのかな……でもなぁ……」
気分的には男性がゲームで理想の女性キャラクターを作成するのと同じ心境だろうか? ……いや自分自身が実際に性転換するのだ。現実とゲーム、文字通り次元が違う。
人格と変態性は両立するとはいえ出来れば少し離れて見守りたい英霊だ。
胸は普通に巨乳。
「あまり落ち込まないで下さい立香。彼等もすぐに見つかりますよ」
胸元が開いた青いレオタードの女性がニコリと柔らかく微笑む。
彼女はランサーのサーヴァント、アルトリア。アーサー王が聖剣ではなく聖槍を使っていたら、という IF の存在だ。聖剣の担い手であるアーサー王に比べ正常に歳を重ねた魅力的な大人の肉体を持っている。
肩を落とす少年を見る目は共に世界を救った仲間に向けるにしても熱を含んでおり、何か別の意図を感じる。『マスター』ではなくわざわざ『立香』と下の名を呼んでいるのも女の情を匂わせていた。
「アルトリア様の言う通りです。り、立香様が気にすることではありません」
続いて被せるように慰めの言葉を掛けたのは黒いドレスの女性。キャスターの紫式部だ。一体何に対抗しているのか、もじもじと顔を赤らめながら少年の下の名をごにょごにょと呟く。
恥ずかしいなら言わなければいい。
しっかりと再臨を重ねている彼女だが召喚時の服装、黒いドレスを着ていた。
なぜ態々その服でいるのかと言えばその理由は余りにもいじらしい、召喚時に少年から『似合っている』と褒められたからだとか。
未亡人とは思えない乙女ぶりだ。親の勧めで結婚し、未亡人となってからは身体目当ての男に付き纏われ、これが初恋なのかも知れない。
しかし似合っていると言われたその黒いドレスは身体にピッタリと張り付き男好きのするボディラインを衆目に晒している。
釣鐘型の巨大なバスト、くびれたウェスト、たっぷり肉の乗ったヒップ、その全てが自分が美味しい雌なのだと主張していた。
「ありがとうアルトリア、薫子さん、もう大丈……!」
「ああよかった……❤️立香が元気を取り戻したのなら母も嬉しいです!」
言葉と共に立香の腕を掴み、引き寄せて豊満な胸で顔を包み込む。
恐ろしいほどの大きさの爆乳を誇る和風の鎧に身を包んだ彼女の名前は源頼光。バーサーカーのサーヴァントだ。
「もが、頼光さ……」
「喋らなくても良いのです立香……今はこの母に甘えてください」
もちろん、彼は彼女の息子でも、子孫でもない。母性に狂う彼女にとって恋人=自分の息子なのだ。
ちなみに、藤丸立香はまだ彼女の恋人でも何でもない。
和風の鎧と言ったがその言葉から想像できる姿と一致しているのは腕と膝下だけだ。鎧に覆われていない首から肩、膝上までは紫色のタイツで覆われている。
それは突き出た胸から臍の穴、尻の谷間まで無遠慮に締め付けその暴力的なプロポーションを余す事なく伝えていた。
紫式部のドレスはまだ服としての仕事を果たしていたと確信させてくれる、テカテカと艶やかに光を反射するゴム質の素材で作られたタイツ。紫色のコンドームを着ていると言ってしまって相違ないだろう。
一体何を考えればこの様な服を着て人前に出れるのか。先の紫式部も含めて日本の平安という時代はよほど治安が良かったらしい。
「これで立香は大丈夫そうですね……。それにしても皆様はどこに消えたんでしょうか」
「うーん、聖杯の反応もいまだに見つからないし……どうしたものかな」
横目で立香を見ながらダ・ヴィンチと話している一人は先の3人に比べるとマトモな格好の英霊。アーチャーのサーヴァント、巴御前だ。
人外の証である角と腰まで伸ばした長い銀髪。頼光のものとは違うしっかりとした武者鎧。日本の英霊だが意外にも素肌は隠されており、先の二人と比べて見ると年代による性風俗の歴史を感じさせる。
生前の夫、義仲に操を立てる貞淑な未亡人……というのは殆ど建前だ。
藤丸立香のマイルームを訪ねて夜中まで遊んでいる姿は若いツバメを飼う女そのもの。鎧を脱いだ薄着で男の部屋を訪ねるのは如何な物か。
しかもその薄着で体感ゲームをやり汗を流しているのだから誘っていると思われても仕方ないし、事実誘っているのかもしれない。
普段の気安い様子からも憎からず思っているのは分かりきっている。紫式部同様、現世での2度目の恋を楽しんでいるのかもしれない。
四人と頼光が胸の中でもがく立香を愛情のこもった目で見つめている。一人の男を取り合っている彼女達だが仲は悪くない、むしろ良い方だ。
彼女たち五人にマシュ、消えた何人もの女性英霊、それが彼の主戦力だ。地面から生えた奇怪な成人男性の腕が落とす種火と言われる魔力リソースを注ぎ込み、できうる限りの強化を施した彼女達はまさに一騎当千の存在。
しかし、ここにいない英霊達は煙の様にカルデアから消えてしまった。
普段から頼りにしている彼女達の不在が立香の心に与えた影響は大きく、頼光の爆乳に慰められて少し気を持ち直せたようだが未だに不安が残る。
彼女達はどこに消えたのか、彼女達に何が起こったのか、彼女達にまた会えるのか。
全ての特異点を修復し、世界を救ったカルデアであったが今は魔術協会の監査を受けている身。立場のあった所長もロマニもいない中、現状はお世辞にも良いとは言えない。
一緒に戦った英霊は全員座に帰されるだろう。マシュだって、どうなるかなんてわかりきっている。なにせ一度消滅してから生き返ったのだ、もしそれがバレれば人間扱いは望めない。
素晴らしい研究材料として扱われるだろう。
立香自身も無傷で故郷に戻れるなら奇跡、良くても記憶を消して放逐、最悪時計塔で標本にされる未来が待っている。
標本は勿論だが記憶を消されるのだって避けたい、そんな風に彼は考えていた。
何故なら、彼女達への自分の気持ちまで消えてしまうのだから。
ギリギリの戦いを何度も潜り抜けてきた。
絆というものは一方通行ではない、お互いがお互いを想っているから絆と言えるのだ。それは立香と彼のサーヴァント達にも言える。
ダ・ヴィンチ曰く、今まで集めた聖杯を使い一人受肉させる事は可能との事だった。ただ複数人を受肉させた場合確実に時計塔にバレて追い回されることになる。秘密裏に立香を連れて脱出することを考えると残りのメンバーは時間稼ぎに使った方がいい。
誰を受肉させるかの期限は時計塔がカルデアの主導権を握るまで。優柔不断な彼が誰か一人を選ぶまで、残された時間は多くない。
「あの、ダ・ヴィンチさん……この上の方の点はなんでしょう」
「ん? どれだい…………っ……これは…………」
話し合いの続く管制室。
ダ・ヴィンチが言われて機械の画面を覗き込む。
すると何か変化があったのか、彼女は顔色を変えてコンソールを叩き始めた。
全員が話し合いを中断して機械を操作する彼……彼女を見守る。
「んー……おかしいな、何で見つけられなかったんだろう……こんな目立つ場所に」
「見つかったの!?」
「うん……でも……んー……」
ダヴィンチが首を傾げるのも無理はない。先程まで見つからなかった事が嘘のように、ソレはハッキリと目視できるサイズでディスプレイに表示されていた。
「ああ、場所はココ、南極の上空だ。時間軸は不明だがいま映像を出そう」
カタカタとダ・ヴィンチがキーボードを叩く、現地の様子を全員が見えるようホログラムが出力される。
6人が喰い入るように見つめる視線の先、そこには緊迫した現状とは正反対の光景が浮かんでいた。
透明なガラスのぶつかる澄んだ音と共に、毛むくじゃらの太い腕がビールの入ったジョッキをぶつけ合う。顔を真っ赤にした二人の男が睨み合いながらジョッキをあおり、少しの間を空けて片方の男が椅子ごと後ろに倒れた。
周りの男達がそれを見て大笑いし、残った男に銅貨を投げつける。
その様子を濃い紫色の髪のバニーが楽しそうに見詰めていた。
酔っ払いの群れから離れ、酒場のスイングドアから外に出るとそこには中世を思わせる石造りの街が広がっていた。目の前の道を左に曲がりどんどん進んでいくと今度は円形の広場にたどり着く。
祭りの光景だろうか、笛を吹く者、太鼓を打ち鳴らす者が映された。彼らは皆一心不乱にわき目も振らず演奏している。
赤い髪の女性が子供を連れて横切った。
広場につながる大通りをさかのぼり続けると街と外を隔てる巨大な門に辿り着く。門の中に入ると左右に衛兵が立っており、通る人々を一人一人確認していた。
門を通る人々は板状の物体、青いカードを衛兵に見せ荷物を確認すると武器を預けて門をくぐっていく。
金髪の女性が手慣れた様子で青いカードを見せていた。
門を抜けて街に入る長い列を遡り暫く経つと木々が不規則に生い茂る森にたどり着く。
そこでは3人の男と銀髪の女性がそれぞれ盾と弓、杖、槍を構えて巨大な鬼と対峙していた。
鬼は雄叫びをあげながら手に持った丸太を振り下ろす。3人は素早く散開し、盾を持った男のみがその場に残って丸太の一撃を防いだ。攻撃を防がれ一瞬動きの止まった鬼を目を狙った矢が襲う。それは狙い通り鬼の右目に突き刺さり激痛を与えた。
痛みに悶え、丸太から手を離し顔を抑える鬼に銀髪の女性が素早く接近し走り抜ける様に槍を払い足を傷つけて鬼の姿勢を崩す。両断された訳ではないが立ち上がることができないのだろう、しかし身の危険は感じているようでせめてもの抵抗と落とした丸太を掴み直して振り回す。
凄まじい勢いの暴風を伴う振り回し、だがそれも攻撃範囲に敵がいなければ何の意味もない。片目で周りを見る鬼にも分かっているはずなのだが、そこまでの判断能力が無いのか、はたまた分かった上で接近を防ぐためにふりまわしているのか。
必死の抵抗も虚しく、暴風の範囲外からトドメの一撃が放たれようとしていた。
木々に隠れていた4人目、杖を持った男が姿を表す。
先端にコブのようなものが付いた杖を構え、朗々と呪文を唱える男の前に小さい火球が現れた。ソレは呪文を唱えた時間に比例し体積をまし、巨大になっていく。
およそ1mほどのサイズまで巨大化した火球は『ファイヤーボール』の掛け声と共に打ち出され、丸太ごと動けない鬼を焼きつくし……
そのまま森の木々に燃え移った。
慌てて消火活動に移る4人を置いて、グングンとカメラが上昇し街の付近一帯を上から見下ろす。
画面上部を北として中央に広場があり、そこから南東に向かって大通りが延びた都市だ。北東に城、北西に教会、南西には目立つ建物はないがモクモクと煙が立ち上っている。都市を囲むように建てられた石壁は大通りの先にある扉を除いて外周を完璧に囲んでおり外敵の襲来に備えているようだった。
そして街の遠景を写したまま、ファンファーレがなり、上から何処かで見た覚えのあるフォントで文字が降りてくる。
『サーヴァント・クエスト Ⅶ 楽園の女戦士たち』
シンと静まり返るカルデア中央制御室。
室内の冷たい視線は男だか女だか分からないトラブルメーカー、推定動画作成者に集中していた。
「いやー…………悪くないPVだったね、特に笛と太鼓の音色が綺麗だ。オープンワールド系のアクションゲームかな……?」
「ダ・ヴィンチ……いくら貴方でもおふざけが過ぎますよ……」
「この緊急事態にこんなものを作っていたんですか……?」
アルトリアと紫式部が疲れた声で呟く。
制御室の中を4人分のため息が満たした。
完全にダ・ヴィンチが作ったおふざけ映像だと思われている。
「いや! いやいやいや! ちゃんと特異点の映像だよ!? 濡れ衣だ!」
「本当ですか……?」
「信じられません……」
「本当だってば! 信じておくれよぉ〜」
身振り手振りで無実を主張するが頼光も巴御前も疑いの眼差しだ。
ここまで来ると逆に可哀想に見えてくる。それは立香も同じだったようだ。
「まぁまぁ3人とも。ダ・ヴィンチちゃんもこう言ってるし、きっと関係ないよ」
「マ、マスター……! いや、立香君! ありがとうっ! 信じてくれたお礼に胸を増量しよう! どうせこれくらいのサイズではキミは満足できないだろう?!」
庇われて嬉しかったのか立香の性癖を邪推して好みに合わせようとするダヴィンチ。美の追求とは何だったのか。
喜色満面のダ・ヴィンチが『これくらいかい?!』と言って手で大きな曲線を描くのを見て4人はまたしても深い深いため息を漏らした。
「でもセンパイ! これでみなさんを探しに行けますね! すぐに出発しましょう!」
「そうだね……ありがとうマシュ。 ダ・ヴィンチちゃん! レイシフトの準備を」
「ああ、了解したよ。直ぐに済むからちょっと待っててね」
些か唐突に感じるが、紫色の髪の少女が切り替えるように立香に呼びかけた。それを受けて立香もダヴィンチにレイシフトの準備を頼む。
「では私はカルデアの内部を捜索してるサーヴァント達を呼んできますね」
「ああいえ、それは大丈夫ですよ。皆さん後から来ますので」
「そうですか? まとまって送った方が効率的だと思うのですが……」
ダ・ヴィンチが準備を始める中、戦力を集めるべく動いた巴御前が止められる。
「……いや、マシュの言う通り巴さんがいれば大丈夫だよ」
「そ、そう……ですか? 立香にそう言ってもらえると嬉しいですね……」
直球の信頼をぶつけられ巴御前が頬を染める。
貞淑な未亡人とはなんだったのか。
「もちろん、アルトリアさんも、薫子さんも、頼光さんも、マシュも、みんな頼りにしてる。みんながいればどんな危険な場所だって、どんなに大変な事件だって乗り越えられるって信じてる」
実にハーレム主人公らしい発言をしながら自身のサーヴァント達一人一人の名前を挙げて笑いかける。確かな信頼があるのだと、そう伝えるように。
「…………うん、レイシフトの準備終わったよ。他のみんなには私が伝えるから、四人は先に行っちゃって」
流石は万能の天才、話している間に準備が終わったらしい。
その言葉を受けて藤丸立香が順番に五人を見る。異論はないか確認するように、しっかりそれぞれと目を合わせて。
彼女達は皆、いつでも行けるというように無言で頷く。
貴方とならどんな事だって解決できる。
「……行こうか、みんな」
「……ん……あれ? 私は? 頼りにしてるメンバーに私入ってなくない?」
もしかしたら、これが最後の旅になるかもしれない。
そんな予感があるのか、立香もサーヴァント達もどこか神妙な顔で、何かを振り切るように管制室を後にした。
例えこれが最後の戦いになろうとも。
例えこれが最後の逢瀬になろうとも。
決して、決して後悔だけはしないように。
心残りがないように。
人類最後のマスターは特異点へと旅立っていった。
酷く既視感のある、何度目かの旅路に。
「私は──ー!?」
一人抜かされたダヴィンチを放置して、旅立っていった。
1回目のエロまでは一日一投稿で行きます。
がんばります。