「遅いなぁ3人とも」
「そうですね、センパイ」
「ふん、まぁ初回は時間がかかるもんだ。オレも初回の登録はいい思い出がねぇ」
そういって白髪の美女は眉を顰める。しかし心配はないらしい。町の入り口の扉が開き、アルトリア達3人が出てきた。
「アルトリアさん! 頼光さん! 薫子さん! 3人とも大丈夫……だった?」
立香が心配して声をかける。しかし3人の表情は暗く沈んだままで、反応がない
「な、なんなのその格好!!??」
三人はいつも通り、いつも通りアルトリアはエッグいハイレグの青いレオタードだし、頼光はぴっちり紫コンドームだし、薫子はピッタリ張り付くボディコンドレスだ。
しかしみな何か液体の様なものに塗れており、どこか異臭が漂っていた。
「どうかしたのか?」
「え、あぁ、いや……3人とも格好が……それに反応が無くて……どうしたんだろう」
「あぁ? ……あぁ、初回だからな……」
その様子を見た白髪の美女は3人を睨みつけ、一瞬考える素振りを見せ、そして言った。
「ほら! 雌畜共! デカケツデカチチ最高品質雌畜便器1号、2号、3号! さっさと歩け! 男様をお待たせしていいのか!?」
「っ……は、はい!」
「承知しました!」
「わかりました!」
ビクリと震えた3人は慌てて立香の元に集まる。
「ん、それでいい」
「え? えぇ? なに? それ? どういう事?」
「立香様、お待たせしました」
「立香様! 私が案内致します」
「お二人とも! 早く行きますよ立香様を立たせておくわけには行きません」
「……どういう事なの?」
「なに、すぐに元に戻るさ、表面上はな……」
立香は困惑した。つい先程までの、レイシフト前どころか町の門を潜る前の3人と全く態度が違うのだ。
違和感がある。
何かがおかしい。
三人を、アルトリア、頼光、薫子を見つめる。
三人はいつも通りだ。
しかし何かがおかしい。
しかしその何かに辿り着けない。
具体的に何がと言われればわからないが、立香は確かに感じていた。
必死に手を伸ばし、そしてこの違いを何とか掴もうとした時だった。
「あぁ1号2号3号、雌畜カード忘れてますよ! ほら、無くさないようにその無駄に大くて下品なデカパイに挟んでおきましょうね。ねぇセンパイ!」
スパリと記憶のもやが晴れる。
そうだこれで何も問題ない。雌畜カードを持ってなかったのだ。
3人は元からこうだったし、これから元に戻る。
「あぁ……うん、そうだね、雌畜カード、下品なデカパイに挟んで無くさないようにしておいて」
「「「はい!」」」
3人は勢いよく返事をすると素早く両腕を頭後ろに腰を深く落とし股を思いきり開いた。
「「「ありがとうございます! 立香様!」」」
そんな3人の反応を見て白髪の美女が呆れたような顔をし
「……あとはまぁ服だなこれに着替えさせとけ」
そう言って何かを投げつけてきた。
「…………なにこれ?」
「雌畜用の服だ。新品用のな……ケツに雌畜カードを入れるポケットもある。暫くは大丈夫だろうが明日には着替えておけ。ヘソ下の番号見える様にしとかないと捕まりかねないぞ」
そう言って白髪の美女が自分の臍下を指差す。そこには『3045-1』と赤い番号が光っていた。
「さあもう行きな! 少なくとも男にとってはここは天国だ」
そう言って白髪の美女が手をひらひらとふる。どうやらお別れのようだ。
「あ、そうだ! 名前! 名前を教えて下さい!」
「ん、オレか? オレの名前は……まぁいいだろ、どうでも。オレのことなんて、忘れちまった方がいい」
「え?」
「行きましょう! センパイ! 冒険者になったら冒険者の酒場に泊まるんですよ」
「う、うん。その、色々ありがとうね!」
「あぁ、気にすんな。じゃあな」
獣の耳のような髪を揺らし、白髪の美女が外へつながる門へと去っていく。
声をかけなければいけない。
そんな気がした、彼女に、◼︎◼︎◼︎◼︎に……
「センパイ」
立香たち5人は彼女に背を向け町の中へと進んでいった。
「だからよう! 俺は言ってやったんだ! 俺のこの拳が!」
「ウルセェんだよバカが! いちいち怒鳴るんじゃねぇ!」
ぎぃっと音が鳴りスイングドアが開く。
そこに広がる光景はまさに『冒険者の酒場』だった。
床には酒瓶が転がり、半裸の男達が肩を組み、腕を組み酒を呷る。
「おい見ろよ!」
「ひゅー、誘ってんだろありゃ。誰から声かける?」
誰かが叫べば罵声が飛ぶ。罵声が飛べば拳が飛ぶ。拳が飛べば……そこから先は拳の応酬だ。
まさにカオス、怒号と歓声が入り混じる喧噪の嵐だ。
「これが……冒険者の酒場……!」
圧倒的な喧騒の空気に呑まれかけた立香を助けるように背後に控えていた紫髪の少女が腕を引く。
「どうしますか?」
「あぁ、うん、とりあえず休めそうな場所を探そうか、僕達は疲れてるし、何より……」
立香がちらりと3人の、アルトリア、頼光、薫子の方を見る。
「…………っ!」
周りの男達の不躾な視線に体を強張らせる三人。いつもであればその爆乳を誇示する様に胸を張るだろうに、やはり彼女達は目に見えて憔悴している。立香自身は何ともないが彼女達は雌畜カードの発行で何か精神的ダメージを負っているらしい。その原因を探るためにも一時の休息が必要だと思ったのだ。
「よし……あの!」
「ん? なんだお主。ここは冒険者の酒場、戦う者の宿だぞ」
「その、泊まりたいのですが部屋は空いていますか?」
立香はひとつ意気込むと受付にいた腰まで紫髪を伸ばしたバニースーツの女性に声をかける。立香よりも背の高い、三人には劣るもののなかなかのバストをした女性だ。
「冒険者カードを」
「はい!」
「ふむ…………勃起時5cm……濃度極薄か……ちんぽ払いは不許可……ふん、『男性もどき』か」
バニースーツの女性がブツブツと呟く、ため息をつく。
「空いておるが、金はあるんだろうな」
「え、あ、お金!?」
「センパイどうかしましたか?」
「あ、マシュ! そのお金が……」
「ああそれなら、えっと確かここに……ありました! 白髪の女の人がくれたお金です。銀貨っぽいのが入っています」
紫髪の少女が何処からともなく革袋を取り出し立香に見せる。どうやら先程の白髪の女性が彼女に渡した物のようだった。中には銀色で円形の硬貨が入っている。どうやらこれがこの世界のお金のようだった。
「これで大丈夫かな」
「どれどれ……ふむふむ……2000gか」
バニースーツの女性は革袋を受け取ると中身を改め始める。そして納得したのかカウンターの奥へ引っ込むと暫くして四つの鍵を持って戻ってきた。
「ほれ、受け取れ」
「あ、は、はい……でも」
鍵は四つだが立香達は五人いる。なぜだ? 立香が疑問を覚えるよりも先にバニースーツの女性が言葉を紡ぐ。
「お前らは5人のようだが、銀貨は4人分しかない。1人は雑魚寝部屋だ」
「え」
雑魚寝部屋。
つまりは不特定多数の男女がひとつの部屋で雑魚寝する部屋という事だろうか?
だとしたら流石にそれは看過できない。確かに彼女達3人は立香と共に激戦を潜り抜けてきた猛者達だ。とは言っても彼女達は今は弱っているし、見ての通り爆乳巨尻の美女だ、危険すぎる。
「ど、どのくらい足りないんですか?」
「500gだ」
バニースーツの女性が槍の様に鋭い視線を後ろの三人に飛ばす。
「なに、大した額では無い。そこの三匹が客を取れば直ぐに稼げる。追加の1人部屋くらい直ぐだろう」
「きゃ、客って! そんなのダメだ! アルトリア達にそんなことさせられない!」
「では無理だな。短期間で終わる様な依頼も今はない」
提案された『客を取る』と言う行為に嫌悪感を露わにした立香が即座に断る。
「だ、だったら一つの部屋で2人寝れば……」
「宿の主人である私の前で不正の相談か? お主見た目と違って度胸があるな」
「……だ、ダメですか?」
「ダメだ」
キッパリと言い切りバニースーツの女性は立香を見据える。
立香も負けじと視線を逸らさず見つめ返す。
「1人部屋には一人か1匹しか泊まれない。これはルールだ、絶対に曲げる事は出来ない」
「っ! いや、それでも」
「センパイ」
いや、そうだ、宿の1人部屋に2人泊まる、そんなことできるはずがない。
僕がどうかしていた。
「…………」
ちらりと3人を見る。
この会話を、3人も聴いていた。
「私が雑魚寝部屋に行きましょう。従軍時などは男女の区別などありませんでした。問題ありません」
アルトリアが手を挙げるしかしそれを頼光が遮る。
「いいえアルトリア様。貴方様は選ばれた王であった人。このような下世話な男達の相手などしたことがないでしょう。ここは私が」
「そんな、だったらわたしが……」
「いえ薫子様、貴方は一番あり得ない。前衛のいない単騎の魔術師など危険極まりない」
「わ、私は……」
「……」
3人が互いの身を案じ争いだす。3人の仲がいい事を立香は知っている。故に今の状況は当然であり、自然な光景と言えるだろう。しかし時間は待ってはくれない。
「センパイ」
決断は、常に自分がしてきた。
危険な戦いを任せる代わりに辛い決断を下してきた。いつだってそうだ。
「センパイ」
僕が、僕が決めるんだ。
「センパイ」
僕が……でも……3人が……
「ねぇセンパイ」
こんな感じで立香くんの選択をたまに読者の方に委ねますがお気軽にどうぞ。
誰を獣の巣に落とします?♪
-
アルトリアランサー
-
源頼光
-
紫式部