放課後スキン・アルケミー 作:lismme
「……なあこれ、本当に着るのか?」
パックから出した、縞模様のパンティを摘みながら、ぼそりと呟く。さっきまでの体験から、多少はこの体にも興味は出てきている。でも、やっぱりこの下着にはまだ抵抗があった。
「ああ、別にノーパンノーブラで出歩きたいなら着なくてもいいぞ」
「そ、そんな事言ってねぇよ!?」
後ろで着替える玄太郎に、慌てて返事をする。玄太郎の姿は、翠先生のものに戻っていた。何でも、まともに出歩ける服は翠先生のものしか持ってきてないらしい。
不本意ではあるが、着るしかない。
パンティに足を通していく。股間にぴったりと張り付くのは、なんだか不思議な気分だった。
問題は、ブラジャーだ。サイズ自体は小さいけども、形式は後ろで止めるホックタイプだった。日菜ちゃんは体が柔らかいのか、腕を変な方向に曲げても攣ったりはしない。それでも、背中の後ろで金具を停めるのは俺にとっては一大事だった。
「み、見てないで手伝えよ!」
「あら、女の子は誰でもやってることよ。さっき教えたでしょう?一人でやってみなさい」
「あれだけで分かるかっての!」
玄太郎は悪戦苦闘する俺のことを眺め、先生の声でくすくすと笑っていた。こうなった意地でもと、背中を探りに探って金具を引っかけてやった。
***
「ふぅ……」
「じゃあ、また後でな」
「お、おう」
手を振る翠先生の顔を見ながら、どんでん返しを作動させる。
夕日の差す廊下に、他の人間の気配はない。少しサイズの大きい制服に身を包んだまま、緊張と共に俺は廊下を歩き始めた。
一歩踏み出すごとにスカートが揺れ、股間に空気が入る。予想通りというか、初めて感じるスカートはやっぱり心落ち着くものじゃなかった。
誤魔化すように少し歩みを早めて角を曲がり、渡り廊下へと出た時だった。前方から、見覚えのない男子生徒のグループが、だらだらと喋りながら歩いてくるのが見えた。
たぶん、上級生だ。俺は、面倒ごとを避けるように少し俯き、そそくさと壁際を通り過ぎようとした。
すれ違う、その瞬間。 彼らの間の空気が変わるのを感じた。表面上はさっきまでの他愛もない雑談の続きだ。しかし、彼らの意識は別の場所を向いていた。
……視線を感じる。
今まで感じたことのない、粘りつくような、品定めするような視線だった。一人じゃない。複数の男たちの目が、俺の……いや、この山吹日菜の身体を、頭のてっぺんから、胸のささやかな膨らみを通り、スカートの下の脚、その爪先に至るまで、ゆっくりと舐めるように動いているのが、肌で分かった。
「なんだよ……」
見られる側に立つのは、初めての経験だった。それも、ブラジャーやスカートとは全く異質な経験だ。不快感、怒り、あるいは恐怖。そんな暗い感情が、心の中に刺さるのを感じた。
「……なあ、今の一年、可愛くなかったか?」
「すげー細かったな」
「あの制服のダボついた感じ、いいよな」
「えっ、お前らああいうのが好きなの?」
背後で、ひそひそと囁く声が聞こえる。当人たちとしては聞こえないつもりなのかもしれないが、聞き耳を立ててるこっちとしては筒抜けだ。
「もう少し注意しろよ」
口の中で小さく悪態をつき、グラウンドを横切ろうとした時、ふと洗面台の鏡が目に入った。
「……」
その姿を見て、思わず立ち止まる。
鏡の中からじっとこちらを見つめていたのは、可愛く小首をかしげる、小動物みたいな女の子だった。赤崎のサイズにぴったりだった制服の袖は余ってしまっていて、まくって肘あたりに布の塊を作らないと萌え袖になってしまう。
さっき玄太郎が着てた時にがスカートを少し短くしていたのか、見下ろす角度によっては大きいシャツの裾に隠れて一瞬スカートを履いているのか疑ってしまいそうだ。
端的に言えば、あいつらの気持ちが少しわかるような気がした。
同時に、心の中には正体不明の衝動が湧き上がる。気づいたら俺は倉庫の方へと急いでいた。
いつもよりも重く感じるドアをスライドさせ、抱えていた俺の鞄を中へ放り込む。ぼふんと舞う埃を手で払いながら、ゆっくり鉄扉を閉めると、一人だけの、静かな密室が完成した。
「はぁ……はぁ……」
重厚なドアにもたれたまま、息を整える。なぜだか無性に、呼吸が早くなっていた。
余っている袖をまくる。首元に付けられたリボンタイを外し、ボタンに指をかけていく。シャツをバッと開いてはっぴのような状態にすると、白地に水色のストライプがあしらわれた、清楚なブラジャーが現れた。
スカートのジッパーを下ろす。貧相な腰の周りにあった布は、何の抵抗もなくストンと床に落ちた。何もない股間に張り付く、ブラジャーとお揃いのパンティ。上の端には、ちょこんと白の小さいリボンがあしらわれている。
間違いない。日菜ちゃんの体のもつ可愛さを120%引き出すような、どこか子供っぽくも男ウケのする下着だった。悔しいが、こればかりは玄太郎のセンスを認めるしかなかった。
さっきの男子たちが想像したであろう、制服の下にある日菜ちゃんの姿が、俺の目の前でさらけ出されていた。いや、それだけじゃない。その気になれば、今の俺はもっと先のことができるのだ。あいつらのように、こそこそと視線を送る必要なんてない。自覚した途端、なんとも言えない優越感のようなものが湧き上がってくるのを感じた。
ブラジャーの膨らみに指を引っ掛け、軽く浮かせてみる。薄暗い影の中に、淡いピンク色をした蕾が、小さく膨らんでいるのが見えた。人差し指を捩じ込んで撫でてみると、ぼんやりとした、でも癖になるような、薄い快感が生まれた。
『……快感を感じるためだけに存在する、特別な器官よ』
ふと、さっき聞いた翠先生の声が再生される。下着から取り出された手は、自然と下の方へと伸びていた。パンティに手の甲を突っ込み、薄皮の中に半分ほど埋まっている小さな豆を求め、手探りでの探索が始まる。
「…………んひゃっ!?」
それに達したのは、指先の感覚が伝わるよりも早く分かった。腰から、さらに鋭く速い電流が走ったからだ。予想以上の刺激に驚き、ぴょんと背筋が跳ねた。
「……これが」
小さく呟くように確認しながら、自分の喉から出てきた音の可愛さにどきりとしてしまう。手触りを確かめるように、指の腹で優しく撫でていく。断続的に快楽が発生し続け、指に触れるそれが、少しずつ硬く大きくなりはじめていた。
やがて薄皮の中から、綺麗な桜色の、可愛らしい突起が現れてくる。自分でも分かるくらいに湿り気を帯びた熱い吐息が漏れだすのを感じていた。
パンツを下げ、目に見えるようになったそれを、人差し指と親指でつまむ。根本を押さえるようにして力を入れる。ビリビリと流れてくる刺激に耐えながら、それを横へひねってみた。
「……ぁっ、あ、んああっ!?」
完全に未知の、棘のような何かが、背筋を貫いた気がした。さっきよりも大きく全身が跳ね、背後の冷たいドアに、こつんと頭がぶつかる。
頭を軽く振り返ると、錆のつきかけた鉄塊が存在感を放っていた。もっと強く、もっとめちゃくちゃに、この身体をどうにかしてほしい。 俺は、動物のような衝動に突き動かされるまま、ゆっくりと体を回転させた。へその辺りに、ひんやりとした金属の冷たさがある。そして、無防備になった身体の中心を、ザラついた扉の表面に、ゆっくりと押し付けた。
「…………っ、ひぃっ!」
硬くて痛い、錆の浮いた鉄の感触が、肌を直接削るように刺激する。だが、その苦痛を突き抜けて、これまでとは比べ物にならないほどの熱が、身体の芯から爆発的に湧き上がってきた。
俺はもう、何も考えられなかった。ただ本能のままに、扉に腰を擦り付けた。ガサガサと布地と肌が鉄に擦れる、下品な音が響く。冷たい鉄板が、熱く火照った体から熱を奪いながら削り、最高の快感となって俺の脳を焼き尽くしていた。
「……はぁっ……あっ……ああぁっ!これ……止まらねぇっ!」
明滅する視界の中、俺は何がなんだか分からないまま、壁に体を擦り付けていた。
——ピロリン。
スマホの通知音が、俺を現実へと引き戻した。我に返った時、俺は体育倉庫の床にへたり込んで放心していた。腿で止められたパンティには、ねっとりとした液体がこびりついていた。
ふらつく足で立ち上がり、鞄の中からスマホを取り出す。
『今から行くから、皮を脱いで待っててくれ』
玄太郎からのメッセージだった。皮を脱いで……ってどういうことだ?まだ霧がかかったような頭ではまともに考えることもできず、無心で指示に従っていく。
どうなっているのか分からないが、背中から日菜ちゃんの皮を脱ぐのは、ブラジャーを外すよりも簡単だった。
さっきまで感じていた快感の余韻が、急激に遠のいていく。体の小ささと軽さが消える。代わりに、男の身体の重み、忘れていた股間の違和感が、どっとのしかかってきた。
女子の体が完全に離れてただの皮になると、俺はようやく、自分の魂が見慣れた体に戻ったのを悟った。それに応じて、心もようやく落ち着きを取り戻し始める。
『遅かったじゃねぇか』
皮から足を抜き取り、男子の制服を着込みながら、メッセージに返信した。
『すまん、思ったよりも準備に時間がかかった』
『どうせ日菜ちゃんのカラダで遊んでたんだから暇はしなかっただろ?』
「う……」
ボタンを留めつつ、小さいうめき声が出た。俺の浅ましい考えはあいつにもお見通しだったようだ。