side槍田日巡璃
「……よし。じゃああとは天津場さん呼んでくるから……湯船にしっかり浸かってて。」
「……ありがとう。」
結局……体を1人で洗ったことが無いとの事で、私が今昔鏡さんを全身隅々まで綺麗にした後、湯船に浸けた。
最初は恥ずかしがっていたんだけど……なんか途中からそういう素振り見せなくなったんだよね。慣れたのかな?早いか。
「ねえ。」
「どうしたの?」
「……どうして……ここまでしてくれるの?」
「どうしてって……普通じゃない?」
「…………私は……貴方を庇っただけ。しかも……個性を不正使用したのよ?」
「庇っただけって……」
「他者を尊重するのは当たり前でしょ?」
「……貴方が言うの?」
「?」
あ……ダメだこれ。今までの言動全部尊重してるつもりになってるわ。
「それに…………私は強いから。弱い他人を守るのも当たり前よ。」
「…………そっか。」
……なんというか……自尊心じゃないねこれ。自分が強い。凄いって言われるのが当たり前になってる顔だよ。
多分小さい頃から持て囃されたんだろうね。神童って噂で聞いたし。大人の対応が……間違ってたんだろうな。
風呂場から出ようとした私は、今昔鏡さんに向き直って湯船の縁に手をかける。
「あのね。今昔鏡さん。……いや。ミトちゃんって呼ぶね。」
「……え?」
「ミトちゃん。あなたは強くないよ。」
「!」
「あなたは全然強くない。私に1回でも勝てたことある?」
「……それは……」
「聞いて。……あなたは1人で生きられないの。さっきもそうでしょ?1人で身体すら洗えない。料理は?洗濯は?掃除は?お金稼いだことある?…………まぁ私だってしたことないけどさ。」
「…………。」
「ね?あなたも……私も。1人じゃ何も出来ないの。それに……大人の人だってそう。誰かと助け合って生きてる。ミトちゃん。それって弱いかな?」
「…………わからない。」
「だよね。私だってわかんない。だって経験したことないもんね。」
「!」
「ふふっ。私と貴方はもしかしたら根っこが似てるんだろうね。努力するの嫌じゃないでしょ?」
「……うん。」
「経験した事ないことあんまり興味無いでしょ?」
「…………!……うん!」
「でも興味が湧いたら没頭しちゃうでしょ?」
「うん!!」
「好きになったら一直線!……自覚するのが遅いけどね?」
「…………槍田日巡璃……」
「まぁ……私たちって全然強くないんだ。だから、自分が……自分が……じゃなくて、他人にありがとう言えるようになろうよ。」
「…………そう……ね。」
「ん。よろしい。助けてって言えるともっといいね?」
「…………ふふっ。」
「……何さ。」
「……虐められてても何処吹く風だったあなたが……言えたことじゃ……」
「もう!うるさいなぁ!」
ちょっと言い返されちゃったので早々に退散しよ!……あとはひとりでごゆっくr……
「…………槍田日巡璃。……ミトちゃんって……」
「?……だって友達でしょ?下の名前呼ぶのは当たり前じゃない?……ミトちゃんも呼んでくれると嬉しいな?」
「……槍田……日巡璃…………友達……友達!ええ。よろしくてよ!私がヒマちゃんと呼ぶ権利をあげるわ!」
「大袈裟だなぁ?よろしくね?ミトちゃん。」
「…………ありがとう。ヒマちゃん。」
「…………へへっ。どういたしまして!」
「お嬢様。お着替えは……」
「愛ちゃん!……貰っとこうかな。」
袖がちょっと濡れちゃったしね。
「お嬢様。私はお嬢様と知り合えて幸せです。」
「ん〜?なんの事かな〜?」
「ふふっ……いえ。こちらの話です。」
さては聞いてたなぁ?もう。愛ちゃんったら。
「へぇ〜……なるほどねぇ……」
ミトちゃんの着替えが届いたので天津場さんをお風呂場に向かわせたあと、カナからミトちゃんの事を聞いた。
「まぁ…………私達が懸念してることは無かったし……悪い人じゃなかったわね。」
「ん。……それよりも……被害者。」
「ね。……日巡璃はどうするの?」
「…………お嬢様。」
「そうだね。……2人とも。私もうミトちゃんと友達になっちゃった!」
「……。」「……。」
…………あれ?
「……あぁ。ミトちゃんって今昔鏡さんのこと?」
「あ、うん。そう。」
「……わかんなかった。」
「ごめんね?」
「どうせ日巡璃の事だから友達になりたいとでも思ってるんだろうなと…………杞憂だったみたいね。」
「流石……ひまひま。」
「あれぇ?……そこまで心配してない感じ?」
カナがお茶を1口。
「……ふぅ。……だって日巡璃よ?いっぱい悩んでいっぱい考えた結果友達になりたいって思ったんでしょ?」
「…………そこまで悩んでないと思うけど……」
「だったら私たちのおかげね?」
「なんでさ?」
「私たちが貴方との関係を無理やり押し進めたお陰で……あなたにこういうのの耐性がついたってことよ。」
「……そうかなぁ?」
「……そうそう。」
「えぇ?」
「そうですね。間違いありません。」
「…………そうかも。」
「「「チョロ……」」」
なにか3人が言った気がしたけど聞かなかった事にします。
「……でも明日には帰るのよね。」
「聖愛学院は……雄英と近いっちゃ近いけど、全然遠いんだよね。」
「同じ東日本ですが……県を跨ぎますからね。」
そうなんだよねぇ……そこが問題。
「……連絡先交換したらいいじゃない。」
「…………ミトちゃんスマホ持ってないんだよ。」
「「「はぁ!?」」」
「服脱がせる時確認したけどスマホ無かったもん!!」
「…………じゃあどうするのよ?」
「どうしよっか。」
みんなで頭を抱えた。連絡手段が無いとねぇ……友達になっても寂しいから……うーーーーん。
「……すまほ?何それ。」
「やっぱね!」
ミトちゃんが帰る時、それとなくスマホについて聞いてみた。
「……お嬢様。スマホに興味が無いのは……」
「何よ。……ヒマちゃん。どうしたの?」
「……ミトちゃんの連絡先が欲しいなって……」
「?……電話番号教えればいいの?」
あぁもうこの世間知らずめ!!
「お嬢様!かくかくしかじかで……」
「……え!?その小さい板で電話ができるですって!?それに写真も撮れるの!?」
本当に興味が無かったんだね!?今の子で凄いよそれ!?私と同じとか言ったけどそれ以上かもしれない。
「今すぐ契約しましょう。明日まで待ってちょうだい。……いつ出るの?」
「10時には出たいなって。」
「……任せて。明日の10時までにスマホの扱いを完璧にしてみせるから。……博多駅で待ち合わせね?」
「……うん。無理だけはしないでね?」
「安心してちょうだい。無理じゃないわ。……誠!今すぐスマホを買いに行くわよ!!」
「あいあいさー!」
ミトちゃんがいそいそと車に乗り、そのままの勢いで発進。すごいスピードで走っていった。
「…………大丈夫かしら。」
「わかんない。」
まぁ……ミトちゃんなら大丈夫……かな?