side無神神奈月
目の前……私のベッドで福が気持ちよさそうに寝てる。
一昨日まで風邪ひいてたから……今日はまだ病み上がりだよね。
今日昨日と普通に授業があったし……疲れが出てるんだろうなって。ブラッドロータス先生達もスパルタだったから……
勉強の手を止めて、福の頬を撫でる。ふわふわで気持ちがいい。
私のために手入れをしてくれてるんだと……嬉しい。
時刻は22時。私もそろそろ寝ないといけない時間。
勉強も程々に、キリのいいところまでもう少し頑張ろう。
「…………。」
…………福は……私のことが好き……なのかな。
最近の一番の不安。
っていうか、最近これしか悩みがない。他の悩みが些細なこと……悩むレベルですらないほどに、福の気持ちが気になる。分からない。
好き。私のモノ。離したくない。口を開けば歯の浮くようなセリフを毎日毎日言ってくれる福。
「…………ねえ福。……それって福の本音かな。」
からかってる訳じゃないよね?
福は毎日言ってくれるから……少しだけ……ほんのちょっぴり冗談に思えちゃう。
恋を自覚したら……福の本心がわからなくなっちゃった。
「…………はぁ。」
無意識だった。ため息が零れた。
嫌だった?苦しかった?辛かった?…………どれでもないこの感情を、言語化するのは少し難しい。
言葉の裏を疑うようになった。言動の一つ一つを考えるようになった。
私と福の関係ってなんだろうね。
友達?恋人じゃないよね。
毎日同じベッドで寝てる。……風邪の時以外。
毎日一緒にご飯を食べて、毎日一緒にお風呂に入って。
おはようからおやすみまで一緒。
福の頭を撫でる。
「…………あ。」
福が寝返りを打って手が届かなくなっちゃった。
「……。」
福が……恋した人がもし私以外の誰かなら……こうやって私の手から離れていくのかな。
福が居ないこの部屋は……少し寂しい。
それくらい当たり前になっちゃった。
それくらい普通になっちゃった。
「…………ねえ福。」
あなたは……私の何なの?
福の横……少し空いてるスペースに身体を潜り込ませる。
狭いけど……福の体温を感じられて……私は嫌じゃない。
今日は福があっち向いてるから……福の背中に引っ付く。
「……福。」
日に日に……福への気持ちが大きくなってるのを感じる。
恋って……幸せなものだと思ってた。
恋って楽しいものだと思ってた。
恋ってもっともっと……お互いに嬉しいものだと思ってた。
だって槍田さんから借りた本には……そう書いてあったから。
それが普通だって……思ってたから。
福に話して……この関係が壊れるのが本当に怖い。
私……もう福がいないと安心して寝れないよ。福がいないと心から楽しくないよ。
私の全部をめちゃくちゃにした酷い人。
酷い人……酷い人なのに……
「…………私……どうしたらいいかわかんないよ。……福。」
福が寝てるから。寝てるから言える弱音。
福にだけしかぶつけられない本音。……私の悩み。
「…………。」
福の腰に手を回す。
「福…………早く……私の気持ちに気付いてね……?」
福の背中に顔を埋めてそのまま眠りにつく。
少しでも理想に縋りたくて。少しでも夢に縋りたくて。
弱い私を……誰にも見せたくないから。
「……。」
夢の中の私達は付き合ってるみたいで……
幸せで……楽しくて。
毎日が彩って見えていた。毎日一緒に登校して、毎日一緒にご飯を食べて。毎日一緒に下校して。毎日一緒にお風呂に入って。毎日一緒に寝る。
いつもの私達と全く変わらないはずなのに、いつもの私達とどこか違う。心が満たされる感覚。
私の理想としていたものが全部ここにある。
福の手を握って。福と見つめあって。
友達じゃ出来ないこと。恋人だからできる距離。
…………私もいつか福と……
福は鳥の足だったり、ふわふわの羽毛だらけの身体、そして大きな羽。人の身体をしている部分の方が少ない。異形個性。
今でも異形個性問題は根深く、差別だってあると聞く。
だから私と福の関係は難しいものだってのもわかる。
だとしても私は福がいいって胸を張れる。
………………夢の中だと。
だってこれは私の理想だから。
福は…………福がどう思ってるか分からないから。
これは夢。
これは……夢。
これ……夢。
こ……め。
……。
「……。」
目が覚める。
アラームの5分前。いつも通りだ。
いつも通りじゃないのは……福がもう起きてる事。
「……おはよ。カンナちゃん!」
「……福。おはよう。今日は早いのね?」
「なんか目が覚めちゃってね?」
福はもう制服に着替えている。私も着替えないと……とベッドから出ようとした瞬間。
「……カンナちゃん。」
「何?」
福の顔がずいっと近くなる。
「!?」
心臓が跳ねる。
「……これから覚悟しててね?」
「な……何が……」
「これは宣戦布告ね?……ちゅ……」
「っ!?!?」
「んへへ……準備してくるね?カンナちゃんも着替えちゃうんだよ?」
福が部屋を出ていく。
今……福に……
キス……
何が起きたか理解できなかった。
え……なんで……
福……?どうしちゃったの……?