side槍田日巡璃
「え?次のステージ??」
「そうね。そろそろ行ってもいいかなって。」
今日は仮免試験に向けての訓練日。今日も今日とておねーさんと訓練。
今は休憩時間。初日がそれはもう私たちが酷かったので、こまめに休憩を挟んでくれるようになった。……不甲斐ない。
みんなで座っておねーさんの話を聞いてる。
「先生。俺たちもか?」
香曽我部くんと日河原くんも居る。2人も次のステージ?
「いや?これは日巡璃ちゃんだけよ。」
「なんでだよ!……ですか。」
「あなたたちには日巡璃ちゃんに比べて圧倒的に足りてないものがあるからね。しかもそれは後天的に手に入らないものだから。」
私が持ってる……後天的には手に入らないもの?
「はぁ?んだよそれ……」
すると日河原くんが香曽我部くんの肩を叩く。
「香曽我部くん。多分きっと身体のことだ。」
「あっ……個性!」
「……そういうことかよ。」
「うーん……当たらずとも遠からずって感じね。」
「「「?」」」
違うの??
「正解は筋肉。パワー。フィジカルよ。」
「筋肉?」
「……なるほどなぁ……たしかに今から槍田程の力出せって無理な話だな。今後出せるかって言われてもわかんねぇ。」
「うむ。……委員長程の圧倒的力……は個性ありきだと見た事があるが、元々の身体能力という面では……委員長が初めてだな。」
「…………つまり私の身体が凄いってこと?」
「そうそう。そういうこと。」
「「え!?」」
「そこ2人!反応しない!!」
すみません。うちの彼女が……
「2人には後で具体的な訓練案を出すとして、まずは日巡璃ちゃんね。」
「はい!!」
「日巡璃ちゃんって正直既に私より身体が強いわ。」
「……え!?ほんと!?」
「まじかよ……俺でも先生に力負けすんのにそれ以上か……」
「……余程天性の才能なのだな。」
褒められて純粋に嬉しい!……けど一回も勝ててないよ?
「そうよ。力勝負したら私勝てないかも。でーも、日巡璃ちゃんが私に勝てない理由がいくつかあるわ。」
「え!教えてくれるの!?」
「次のステップの進むためにね。……あなた達にも少し意味がある内容だから聞くこと。まずは経験値。」
「「「あぁ〜……」」」
おねーさんに経験値で勝てって無理だよぉ……
「諦めないの。インターンが始まれば経験値なんてグングン溜まるんだから。そのための訓練でしょ?仮免取らなきゃ始まらないわよ。……あなたたちもね?」
「……はい。」
「はい!」「ウス。」
「なので目下の目標は仮免に受かること。ここを目指してから色々取り組んでみなさい。……私に勝ちたいんでしょ?」
おねーさんに頭を撫でられる。
「……うん。勝ちたい。」
「だったらもっともっと頑張らないと。……私はどんどん先に行くわよ?」
「…………うん!わかった!」
ここでクヨクヨしてられないよね!
おねーさんに勝てないのも嫌だけど、おねーさんに置いてかれるのはもっと嫌だ!
「立ち直りが早いのは日巡璃ちゃんのいい事よ。」
「えへへ。」
「……経験値以外になにかあんのか?……ですか。」
「香曽我部くんはもう少し敬語を学んだ方がいいかもね?」
「……すんません。」
「ごめんなさいでしょ〜!」
「まぁそれは一旦置いておくわ。次はココ。」
おねーさんが自分の頭を人差し指でトントンと……
「「「頭?」」」
「そう。頭の使い方。経験値と付随する事なんだけど、見る場所、やった方がいい事、やらない方がいい事、利益と不利益、瞬時に判断してそれを完遂できる身体作りが大事よ。」
おねーさんが拳法の型のようなポーズを取りながら説明してくれる。
「例えば相手のパンチが来ました。このパンチをどうするか。躱す。カウンターする。逃げる。どれでもいいけどこの全部に損得をつける。相手の個性、状況、仲間の有無、時間、持てる全てを天秤にかけて出来ることを100%成し遂げる。全てにおいてこの判断が早くて正確なのがトップヒーローよ。」
「……ヒーローの道は険しいね……」
「だな……俺たちはまだまだヒヨっ子だな……」
「職場体験は……本当にお客様だったからな……うむ。現実を直視した方がいいな!」
「難しいことを言ってるわよね。実際難しいことよ。でもこれができないと……」
あ!わかった!!
「人が死ぬ!」
「……そうね。大当たりよ日巡璃ちゃん。何度も言ってるしね?力ない人を殺さないために、私たちは出来る限り力をつけなくちゃいけない。難しいけどできないといけないことよ。」
「……ヒーロー科受かったから腹括ってたつもりだが……もっかい腹括るか!」
「うむ!その意気だ香曽我部君!共に強くなろう!」
「私も頑張る!!」
「ゆっくり着実につけていきましょうね。」
「「「はい!」」」
判断力と経験値。これを得るにはまずは仮免許だよね!受かるためにもっともっともっと頑張るぞ……!
「これからは日巡璃ちゃん限定なんだけど……日巡璃ちゃん。私ってどう?」
「……どうとは??」
「どれだけ強い?」
「……私の知ってる中でいちばん強い!」
正直おねーさん以上の人見たことない!
「うーん……嬉しいけど、あなたと比較してどれだけ強い?」
「私と比べて……?…………全部が平等に負けてるって感じ……?」
「…………やっぱりね?」
何かを察した様子のおねーさん。
「え?」
「日巡璃ちゃん。あなたは2つ……追加で足りないものがあるわ。それは言語化と力の使い方。」
「…………言語化と……力の使い方?」
「そう。何がどう足りてないとか、ここがどうとか、これがこうで〜みたいな事細かな言葉にするのが苦手。だから相手の得意や弱点を言語化して噛み砕くことがすっごく苦手。」
「うっ……」
た……たしかにちょっと苦手かも……
「ちょ……ちょっと待ってくれ!先生。俺初めて槍田とタイマンした時弱点バレたぞ?」
「僕もだ先生。体育祭の時……すぐに僕も弱点がバレた。」
「それは日巡璃ちゃんはもうひとつ天性の才能があるんだけど……それはまた話が変わってくるから今度ね?」
「「「?」」」
もう1個……天性の才能?
「だから、私の評価が正当じゃないの。さっき言ったじゃない。あなたは力だけなら私以上だって。」
「……あっ……」
「正当な評価が出来てるなら全部平等に負けてるなんてセリフ出ないはずよ?」
「…………そっか……。」
「私個性なしで日巡璃ちゃんと同じ芸当しろなんて無理よ?」
「…………」
「俺だって無理だ。」
「僕もだ。」
「あなたの超絶パワーはあなたの明確な長所よ。自分のこと好きになれとは言えないけど……認めてあげることくらいしてあげなさい?」
「……はい。」
……自分ことを認める……難しい……どうすればいいんだろう。
私は自己肯定感が低い……というか無い。虐められてたからかもしれないけど、自分の評価が出来ない。長所と短所が分からない。皆……よく自己PRできるよね。私出来ないや。
「……これも経験値がものを言うから、しっかり仮免受かってインターンで揉まれて来なさい?」
「……はい。」
「それと……次なんだけど……力の使い方……ね?」
「力の使い方?」
「……委員長は既にすごいパワーを出せているが……そういうことでは無いんですか?」
「もっと出せるってこと。」
「「「もっと!?!?」」」
え!?私今のままもっと強くなれるの!?!?
「うーん……これは実践した方がいいわね。ちょっと見ててね?」
おねーさんが私達から少し距離を取る。
「……私の速度も動きもある程度目が追えるわね?」
「まぁ……そりゃ……」
「結構な回数タイマンしたからな……」
「嫌という程には……」
「うん。でもね?あれ力の使い方テキトーなの。」
「「「……え?」」」
「すっごく言い方悪くいうと手を抜いてたの。」
「「「はぁ!?」」」
え?あれで!?香曽我部くんとか日河原くんはともかく私も手も足も出てないんだけど!?
「私の本気は……こんな感じよっ!」
おねーさんがすごい速度で走ってきてジャンプ。
「「「っ!?!?」」」
すごい距離……飛んで私たちを優に飛び越え……後ろに着地した。
「……どう?」
「はぁ!?いや……え?……ジャンプしたのこの辺だぞ!?」
「……えーっと……?私3人分以上だよ……?」
「6m……以上……7mはあるぞ!?」
「もちろん個性無しでね?」
「「「…………」」」
「これが力の使い方。使う場所にどれだけ力を集中、弛緩、そして色んな力をかけ算出来るか。今からもう少しだけ詳しく話しましょうか。」