side槍田日巡璃
「ふっ……ふっ……ふっ……」
日課。ランニング。
最近は使ってなければグラウンドを使っていいと言われたので使ってる。スナイプ先生ありがとう。
おねーさんから言われたことを反芻する。
力の使い方。力を細分化。今走ってる時だって。
1歩。また1歩噛み締める。
例えば……膝を曲げて、太ももを上げて、足を前に出して、地面を足の裏で蹴る。一つ一つ……意識する。まだ細分化が足りてないような気がするけど、今はこれ以上は少し難しい。
そして試行錯誤。どれがいちばん早く強く走れるのか。どこにどれだけ力を入れれば最適化されるか。
色々試す。これじゃない。あれじゃない。足だけを意識してるけど、上半身も使ってるんじゃないか?腕、背中、重心をしっかりブラさないように……
本来予定していたランニングの距離が終わってしまった。少し残念。
「…………ふぅ。難しいなぁ……」
これはおねーさんの理論だから私に合わない可能性だってある。…………でも私に合う合わないはやってみないと分からない。
圧倒的力。強さ。
心も。身体も。私の今1番目指したい場所。
あの時見たおねーさんを忘れられないから。脳裏にこびりついて離れない。一時も忘れたことは無い。私の……私だけのオリジン。
うん。多分これが私なんだ。
あの時逃げることだって出来たはず。周りの被害なんて気にせず戦えたはず。私に気付かず置いて行くことだってあったかもしれない。
気付いてくれた。気遣ってくれた。そして助けてくれた。
あんなかっこいいヒーローになりたい。かっこいい人でありたい。助けることも、救うことも、気遣うことだって当たり前で普通で自然で。
私の目指すかっこいいヒーロー…………うん。決めた。これが私のなりたいヒーロー。何れ変わるかもしれないけど、今はこれ。
私。おねーさんみたいになりたい。
「ひまっ……ひま……速い……よ…………」
「お嬢様……さすがです……」
考え事して気が付かなかったけどそういえば今日はみんなで走ってたんだった!!!
「あっ!ごめん!置いて行っちゃった!!…………カナは?」
「あそこで……倒れてる……」
「カナーーー!!!??」
よく見ると遠くで前のめりでぶっ倒れてるカナが!
「あんっ……た……っ……置いていく……なんて……」
「ごめんね?ごめんね!!」
ちなみになんでカナがいるかって言うと、今日はお迎えが少し遅れるみたいなのでせっかくならって着いてきてもらった。
はい。もらったんです。
お詫びの膝枕中。水も飲ませてあげてます……
「うぅ……ごめんねぇ?」
「……も……もう……全然っ……体力……足りてない……わね……」
「ん……ランニングだけでも……したほうがいい。」
「体力は基礎ですからね。大事ですよ。」
「…………ッフーーーッ……家で……出来ることって限られてるのよね……」
「一緒にランニング出来ればいいんだけどね?」
「…………そうね。」
カナは寮多分無理だしなぁ……
「…………。」
「……大人になるまで……我慢。」
「……そうだね!絶対一緒に暮らそうね?」
「当たり前っ……じゃない。」
「私達も……ね?」
「うん!天捻ちゃんも愛ちゃんも一緒だよ!」
「んふふ……楽しくなりそうね?」
汗だらけのカナをそのままなのも気が引けたけど、お迎えが来ちゃったのでそのままバイバイ。私達も速攻でお風呂に入って晩御飯。
「おいひー!」
普段はランチラッシュのご飯が届くんだけど、今日は愛ちゃんが腕によりをかけて作ってくれた。
海鮮丼!美味しい!!
「スーパーでお魚がいい値段だったので……」
愛ちゃんはよく近場のスーパーに買い物に行ってる。私のために。
何度も無理しなくていいって言ってるのに、私のためになりたいって言われちゃったらもう断れないよ……
ちなみに天捻ちゃんも横で食べてます。天捻ちゃんは食べる時無言なんだよね。集中したいって。
「……そういえば愛ちゃんのお金は何処から出てくるの?私はお小遣いだけど……」
「私はサーヴァントメイドとして登録されてるので……当主様から週に1回お給金が入るのです。学生なので微々たるものですが。」
「えぇ!?!?お仕事してるってこと!?」
「まぁ……そうなりますね?」
そのお金は何処から出てるんだ……???
「そのお金ってどこから出てるのっていうのは……」
「聞かない方がよろしいかと。」
「だよね。」
多分色んなお金があると……思うよ。うん。
「お嬢様。」
「どうしたの?」
「もし……もしですが、カノーテス様と暮らせるとなったらどうされます?」
「え!?暮らしたいよ!皆と一緒がいい!」
「…………カノーテス様だけ……だとどうですか?」
「……それは……」
カナと一緒に暮らせる。……でもカナだけ。
皆とは暮らせないってこと……?…………それは……
「ちょっと……ヤダな。」
「……わかりました。」
「……どうしたの?」
「いえ。こちらの話です。」
「??」
『オォーーーッホッホッホ!ごきげんよう!』
「元気だねぇ?」
ミトちゃんが通話を体験したいと言うから、通話のやり方を教えてやってみてる。
後ろに天捻ちゃんと愛ちゃんも居る。
『なるほどなるほど……これが通話……もう覚えましたわ!』
「よかったね。そっちはどう?」
『……ふん。』
『お嬢様。お友達が出来てないからと不機嫌にならないでくださいませ。』
『誠!うるさいわよ!!』
「あはは……」
まぁそんなことだろうと思ったけど……
ミトちゃんは今一人暮らし。そのお世話は天津場さんがしてる。大変だねぇ??
『何れ出来ますわ!何れ!』
「何れっていつだろうね?」
「……ん……こっちも……こっちも……ポンコツ。」
「私を見て言わないでください。」
『その声!中曲瀬さんですか!?』
「うわ……聞こえてた……」
「まぁまぁ……事実だし。」
『ヒマちゃん!?!?』
『事実ですし。』
「事実ですしね。」
「事実。」
『ちょっと!!!』
なんだかんだミトちゃんって愛されキャラなのかな?……いじられキャラの方が正しいかも。
「その調子で話しかければどうにかならないの?」
『……なれば苦労してないわ。』
『お嬢様は……なまじ優秀すぎて崇拝されてるんです。なので周りの同級生は疎か上級生にも遠目で見られるだけ……と。』
嫌な目は向けられてないんだ……良かった。
「…………優秀なのも考えものだね?」
『…………好きでなった訳じゃありませんわ。』
「じゃあやめたら?」
『あなたに勝てないのでそれは1番ナシです。』
「だよねぇ。」
ミトちゃんらしいというかなんというか……
『お嬢様が心を開けば皆様仲良くしてくださるのでは?』
『……最近は生徒会に声掛けられてるのです。……もう普通の生活は送れないのですよ……』
「生徒会……!?1年生で!?」
「…………ひまひまも……聖愛学院だと……」
「多分同じ道を辿ってますね。」
そうかなぁ??ミトちゃんほどカリスマは無いけど……
『……ふん。生徒会には入ることになりそうですが……こちらはこちらで日々成長させていただいてます。』
ミトちゃんも頑張ってるんだ……うん。なんか私ももっと頑張れる気がしてきた!
「頑張ってね!応援してるよ!」
『貴方もね。私に易々負けるなんて許しませんわよ。』
「うん!」