side槍田日巡璃
「…………毎日毎日飽きないかい?」
「毎日毎日ってまだ2回目じゃん。それに……パワーローダー先生に頼まれてるから。」
「お人好しだねぇ……ヒーローってやつかい?ま、私は筋肉が見れて満足だがね。」
「……お風呂とご飯くらい声かけなくてもやってくれるともっと嬉しいんだけど。」
「君のコスチュームがかかってるんだ。休んでられるか。」
「……変な人。」
今日帰ってきたら……お風呂キャンセルしようとしてたのでまた愛ちゃんと天捻ちゃんに手伝ってもらってお風呂とご飯に強制連行。
本人はご飯を食べ終わったらしく、既に片手間に何かしてる……
「…………何してるの?」
なんか縫ってるように見えるけど……
「気になるかい?君のコスチュームのデザインがもう固まったからあとは形にするだけ。その形を今作ってるんだ。これはパレオの部分だね。」
「パレオ……あるんだ?」
「「え?」」
「え?」
「当たり前だ。君が気に入ってるデザインを蔑ろにはしない。……両性具有の悩みもクズながら理解してるつもりだ。……その上で機能的で動きを阻害せず、それでいて軽量で最低限の防御力もある。これが機能美だ。世界で最も美しいと考えているよ。」
……もしかして結構いい子だったりする?……なわけないか。
「へぇ……矜持ってやつ?」
「そうとも言うね。」
話しながらだけど全然手が止まってない。プロだねぇ……
「ちょちょちょ……お嬢様!?ひとつお聞きしても!?」
「いいよ〜?」
よし!ご飯終わり!美味しかった!!
「えっと……コスチュームのデザインはこちらが要望を出すものでは??」
「…………え?そうなの?」
「ひまひま…………知らないの……?」
え?私またなにか変なことやった!?
「普通は……ヒーロー側がデザインを提示して、それをサポート会社側が作る……というふうになっているのですが……」
「へぇ〜そうなんだ。」
「そうなんだではなくて!?」
「まぁ……知らなかったし、何よりまず私佳舞ちゃんの腕知らないしね?そういうのコミコミでどうなるかって感じでいいんじゃない?」
「お嬢様……」
「ふふふっ……私を試しているのか?……いいだろう。最高の出来で出してやる。明日を楽しみにしてろ。」
「うん!待ってるね?」
「……はぁ…………お嬢様らしいですね。」
「ひまひま……新コス……見せてね?」
「いいよ〜!」
俄然明日が楽しみになってきた。新しいコスチューム……どうなるかなぁ!
「……どうだ?」
お昼。工房に呼ばれた私は、出来上がった新コスを試着してみることに。
「おぉ……ちょっと重くなった?」
「まぁその辺は許してくれ。素材の都合だ。」
ビキニタイプは変わらず……トップスがクロスホスターネックになっててより固定された……と言うか下から支えてもらってるというか。その上からもう1枚フリフリの布を被せてかわいさもある。
ボトムスはホットパンツの上からパレオが巻いてあるが……前より重たい……動きに支障は無さそうだからいいか?腰周りもパレオの影響で……と言うか色々増えたね?完全にこの子の趣味っぽいのがちらほら……
「……フリフリ多いね?」
「趣味だ。」
やっぱり。
「……前より重いけど……全然動けるよ!」
「槍田日巡璃の筋肉量ならこれくらいへでもないだろう。」
ぴょんぴょん跳ねてみせる。
ジャリ……ジャリ……
「……ん??」
「気がついたか。トップスにチェーンを編み込んだ。チェーンメイルってやつだな。強度を上げて且つ軽量でそれでいて嵩張らない。最高の機能美だ。」
「へー!編んだの?っていうか編めるの?」
「朝飯前だ。」
なんでもできるんだねぇ?
「もちろんパレオにも仕込んである。まぁそちらは……お守りのようなものだ。」
「……いいじゃん!可愛いし……ありがとう!また頼むかも!」
「当然だ。私以外に頼んだら承知しないからな。」
「なにそれ。……まぁ気が向いたらね?……じゃあ授業行ってくる!」
そのまま工房を出ようとした時……
「槍田日巡璃。待て。」
「……何?」
佳舞ちゃんに呼び止められる。
「私も行く。」
「え??」
sideカノーテス・ディミトリウ
「……であんたが来たってわけ?」
「ああ。不具合があってはいけないからな。」
「……ふーん?」
私の横にいるこいつ……確か岩刄佳舞だっけ。日巡璃の身体をまさぐったヤツ。日巡璃のコスチュームを新しく作ったヤツ。
今日、日巡璃がサポート科に呼ばれて少し経つと、いつもと違うコスチュームで現れたものだからびっくり。いつの間に新しいコスチュームを……って思ってたら
『えへへ……内緒にしたくて。……どう?』
って私の前でくるんと一回転。可愛すぎて悶絶したわ。抱きしめちゃった。
それで横にいるコイツと目が合った。コスチュームを作ったのはコイツだと……本能で悟った。
話してみると……なんともいけ好かない態度だが、言ってることは真っ当な変なやつって感じ。身長は私が勝ってる。ふふん!
「それで……何見てんの?」
「彼女の動きを阻害してないかだ。私は見ただけで対象の色んな数値的な情報がわかるが……実際に着て動いてみないと分からないことも多い。」
……言ってることはまともなのよねぇ……
「じゃあなんで日巡璃の身体触ったの?」
「それは私が筋肉フェチだからだ。」
「堂々とすんな変態。」
「好きに言うがいい。私は私のフェチズムになんら恥ずべきことは無い。」
まともじゃないかも。
「……君は槍田日巡璃の彼女だろう。心配するな。私は人を好きにならん。」
「……どうだか。」
「人は数字があった上で嘘をつく。見栄を張る。そんな生物をモデルとして気になることはあれ、好きになることは無い。」
…………コイツもコイツで結構苦労してるのね。ご愁傷さま。
だけどウチの槍田日巡璃を舐めない方がいいわよ?
好きになっても知らないんだから。
「……待て!槍田日巡璃!少し手直しをする!」
日巡璃の訓練を中断させて、日巡璃に駆け寄っていく。
「…………ふぅん。」
「……どう思います?」
横にいた愛が私に問いかける。主語はなくてもわかる。
「今は純粋に日巡璃を被写体として楽しんでる節があるわね。あと半年……3ヶ月後にはどうなることやら。」
「同感です。」
「…………恋愛的に誰を好きになろうが日巡璃次第だけど……日巡璃って来るもの拒まないのよね。」
「そうですね。そこがいい所でもあります。」
「うん。でももう少し相手を選んで欲しいのよね。」
「…………そうですね。お嬢様の未来ですから。」
「うん。……ま、何があっても見捨てないけどね。」
「当たり前です。」
私と愛と天捻。3人で日巡璃を守ってみせる。日巡璃はどうか分からないけど……私たちはもう日巡璃なしじゃ生きていけないから。
「……ふむ。もう少し長さを短め……か。」
ガリガリガリとボロボロのメモ帳に何かを書き込みながら岩刄佳舞が帰ってくる。
「日巡璃にセクハラしてないでしょうね?」
「してないとも。今の私は技術者だ。そんな事気にしてられないよ。より良いものをより早くだ。」
「……そう。ならいいわ。」
まともなこと言ってるわね。……本音かしら。
「それに私の触診はセクハラではない。……私の欲求を満たしているだけだ。」
「それセクハラって言うのよバカ。」
こっちのが本音に決まってるわよね。
「くくくっ……槍田日巡璃の身体を見るとインスピレーションが止まらなくてね。申し訳ないとは思っているよ。」
「ホントかしら。」
「……『私は』嘘をつかないよ。」
「……ふん。」