side清寺愛留真子
「も……もしあのお方が分身じゃなかったら……」
恐る恐る。だとしても好奇心は抑えられず声をかける。
あれから何体か今昔鏡様の分身を一人で吹き飛ばし……前に進み続ける槍田日巡璃。それとチームメンバー。
私の崇拝してるお方……今昔鏡様のライバル。
彼女から返ってきたセリフは私の想像をはるかに超えてました。
なにか見分ける癖がある。
見た目が少し違う。
匂い?雰囲気?私たちに見えてない何かがわかるのでしょうか。
少なからず私達以上に今昔鏡様を知っている彼女であれば、私たちの知らない何かを知ってると思ったのです。
「当たり前だよ。本体なら絶対に当たらないから。」
「……え?」
素っ頓狂な返事をしてしまいました。絶対に当たらない?……何を……
「え?知らないの?ミトちゃんの個性。」
「知らないはずがないでしょう!パラレルワールドから分身をこちらの世界に送り込んだり、未来を少し見ることができる個性ですわよね?私は今昔鏡様を崇拝……心酔しているのです!」
私の熱弁に……少しだけため息をつかれた。
「正確に言うと、分身を送り込むのに人数制限があるのと、平行世界の未来と過去を見ているから、起こりえる未来は100%じゃないこと。そしてこの能力はどれか1つづつしか発動できない。」
「……。」
知らなかった……とは言えなかった。崇拝している。心酔していると発言したのにも関わらず、相手の方が詳しい。
……顔から火が出そうです。
「今まで倒してきた分身。全部私を見て顔色1つ変えずに突っ立ってたまま。ミトちゃんならありえない。全ての分身を消してでも私の次の一撃の被害を最小限にするために未来視を絶対に使う。だから一撃じゃ絶対に倒れない。」
「そんな……でも未来視は100%じゃないと!」
「そうだよ。だとしてもだよ。」
言いきられた。目を見て。バッサリ。
「…………ミトちゃんは用心深いの。この分身点在も、時間稼ぎだけじゃなくてきっと私達の場所を把握するため。その上であっちのチームはカナと作戦を立てながら進めてる。頭の回る小廻くんも居る。高速移動が可能な流鏑馬くんと、重戦車、時間をめいっぱい稼げる加糖くん。その中でミトちゃんは出来ることを精一杯してる。」
「それが時間稼ぎですか……?」
あの今昔鏡様が!?時間稼ぎなんてそんな小さい事……
「分身点在も、場所把握も全部ミトちゃんが用心深いから。自分に対する脅威を最上限警戒してる結果。……そもそもあの子が今確実に知っている情報は、あなたたち聖愛学院の戦力と私だけ。なら少しでも知ってる私を警戒するのは当たり前の事でしょ?」
「っ…………」
「私を。警戒してるミトちゃんが。未来視使わずに。何もせず突っ立ってるだけのはずがない。…………あまりミトちゃんをナメないで。」
……ぐうの音も出なかった。
今昔鏡様は天才だ。私達とは違うと……心のどこかで信じていた。……見て見ぬふりをしてただけなのかもしれない。
「……心酔するのはいいけど、ミトちゃんのこともっと等身大で見てあげて欲しいな。」
ナメてるつもりはなかった。だからといって、等身大で見ているかと言われると頭を傾げる。
できて当たり前。完璧なのが普通。そのうえで私達の想像もつかないことを一人でやってのける。幻想を抱いてしまっていたのかもしれません。
「!……はい。」
なるほど……今昔鏡様が……私達に見せたかったライバルとは……
「認めざるを得ませんね。」
今昔鏡様が今自分に出来ることをしているのであれば。私だって。
「……前方人影!今昔鏡様です!」
「……ありがと!全員突……ストップ!!」
「「「!?」」」
何事!?
急に全員の足が止まる。木の裏に隠れました。
「……あれ多分ホンモノだ。……少しだけ作戦会議しよ。」
…………本当に私達が知らないことを知ってる訳じゃないですよね??
「オーッホッホッホ!槍田日巡璃!待ってましたわ!」
「いやぁ……いいよ。ソレ。ミトちゃん……本物でしょ?」
ピリッ……
何かが肌を刺した。物理的ではない。それでいて鋭利な何かが。
1歩。
「……へぇ。目は衰えてないようですわね。」
「そりゃどうも。足止めなら私だけにしてくれない?」
1歩。
「無理ですわ。私のチームには走るのが苦手な方が居られるので。」
「カナと小廻くんの足に合わせるの大変だったでしょ。こっちもこっちで急いでるんだよね。流鏑馬くんに強行突破されたらどうしようもないよ。」
1歩。
「だったら退かせて見なさいな。」
「勿論。私を止めれると思ってるの?」
1歩。……合図!
「ハイパーッ!!サンシャイン!!」
ビカッッ!!
「……。」
「……。」
手筈通りに光満が目潰し、その後槍田日巡璃を置いて突破。作戦通りに事が進んだ。
未来を見ていた上での行動であれば……あれで今昔鏡様と槍田日巡璃の真っ向勝負になる。
「……無事でしょうか……」
「心配してるの?」「どっちの〜?」
「……どちらもです。」
「委員長は強いヨ。」
「今昔鏡様もです。」
ここだけは絶対に譲れない。
「じゃあ尚更この時間を無駄にできないね!!」
「……もちろんです。」
このまま進めば接敵の機会が増える。そこからが本番みたいですね。
side槍田日巡璃
「……逃げましたか。」
「見えてたくせに。」
「ふふふっ。どうでしょう。」
「……多分だけどさ。ミトちゃんだけじゃないでしょ。」
その顔……というかセンスで口を隠した。
「…………。」
「同じチームに小廻くん居たもんね。誰か小さくして隠してるんじゃない?」
警戒はしておく。最前と最悪はいつも隣り合わせだから。
「……無駄ですわね。もう小細工は無しですわ。」
ガサッ……
「……流石私の日巡璃だわ。」
「カナ!……んふふ。2対1だね!」
草陰からカナが出てくる。やっぱりね。いると思ったよ。
「小廻くんは置いていけないよね。小さくした後最悪投げれば意識外のところから1位掻っ攫える可能性もあるから、置いていくならカナだと思ったよ。」
本当にいるとは思わなかったけど。
「本当に……その目。そして戦闘IQ。」
「……?」
「厄介ですのねッ!!」
ガサガサッ
上ッ!?
無数のミトちゃんが木から降ってくる。
目の前のふたりは踵を返して森の奥へ。絶対逃がさない!!
「子供だましだね!!」
全員一撃で沈めていく。時間も体力もかけてられない。すぐに追いかける。
背中が見えた!!
「……全部読んだ上での仕掛けだったのですが……足止めにもなりませんか。」
「ふふん。」
あの程度じゃね。
「今昔鏡。やっぱ協力した方がいいわよ。」
「そうですわね。彼女と近距離で打ち合うほうが分が悪いです。」
よーし……ここから全力だ。私が2人を倒す。
横の木に腕を突き刺す。
「ふんっ!!!」
メリ……メリィ……
そのまま木を引っこ抜き……肩に担ぐ。
「じゃあ……行くね?」
「……本ッ当に……規格外ですわねッ!」
「来るわよッ!!」
全力全開!追い払うよ!!