side槍田日巡璃
「……。」
ペラ……ペラ……
カナと天捻ちゃんにもらった小説。
この小説……確か題名は『ユウゲショウ』。異形差別で心を閉ざした女の子が、助けてくれた男の子に恋する話。
ありきたり……なのかな?助けてくれたら王子様に見えちゃうよね〜。わたしもおねーさんがそうだったもん。
当日恋愛的に好きになったかどうかは今はわかんないけど、多分親愛に近いものを感じてたと思う。親みたいな。お姉ちゃんみたいな。
その話は一旦置いておいて、高校生同士の淡い恋模様を描いてるのかなって思ったんだけど……ちょっと毛色が違うみたい。
女の子は男の子を最初は拒絶するんだけど、何度も助けられていくうちにどんどん気になっていって、執着し始めちゃう。でもそれは全部男の子の手のひらの上で……みたいな話。出会ってから一目惚れした男の子が、自分しか見えないようにどんどん裏で……ひえ〜……
うわぁ……なんかドロドロしてるけど……面白い!どんどん読めちゃうよ!1巻とか書いてあったけど何巻まであるんだろ。
異形差別の主人公ってすごーく共感できるし!それでいて恋に発展する模様もすごーーーーくねちっこく書かれてる。執着心を恋と錯覚しちゃうって所とかうわーって感じ!
男の子も男の子で自分だけ見てくれるように裏で手を回してって……しかも回し方がしっかり普通じゃ見えないように分からないように……あえて虐めさせえてもっと執着させて……告白させるように仕向ける。
こういう恋の形もあるのかなぁ??
「……ふーん?」
…………でも……両方ドロっとしてるなとは思うけど……ん?私の彼女もこんな感じじゃない?毛色は違うけど。
そういえば…………私も似たような感じの事してたよね……例えば……
「…………」
じゃあ……みんなのが恋なら……
「……そっか。」
…………なんだ。簡単なことだったんじゃん。
ガチャ
「おーい。エスネイラー!パトロールするよー!」
あ、いけない!休憩時間そろそろ終わっちゃう!
「!……はい!!今行きます!!」
「?……何読んでるの?」
「あっこれ、ユウゲショウっていう小説で……」
「あ!知ってるそれ。ドラマ化もしたよね!」
「え!!!」
「……。」
「……で。想像以上にハマって今ドラマ見てるの?」
「はい。……勉強熱心というか……趣味に昇華したというか。」
「……ひまひま。ここから……もっと面白くなる。」
「え!そうなの!?……ワクワク。」
今日は休日。珍しくカナの家に全員集まった。
佳舞ちゃんはなにか弄るものがあるって寮に残ってるっぽい。帰った時お風呂入ってなかったらお風呂の刑です。
『まって……まってよ!私……あなたが…………ううん。なんでもない。……なんでもないの。』
『……。』
「うわあああっ!……くうう……すごい!すごい!!本当にミミちゃんみたい!」
「ん!ん!ここ!……いいよね!」
私たちはカナのベッドの上で跳ねる。ドラマってすごいや!
ちなみにミミちゃんいうのは主人公です。虫の個性で生まれてきちゃった子。
最初はドラマと聞いてあんまり期待はしてなかったんだけど……バブルガールさんが結構面白いって言うから見てみた。
女優さんってすごいなぁ!物語の主人公が本当に出てきてるみたい!ミミちゃんがいるよ!目の前に!
「ん……ユウゲショウ1は……相当出来がいい……」
「1?2もあるの?」
「ふふふ……2は小説先に呼んだ方がいい……よ。」
「そっか!全部読んでからにしよ!」
全5巻らしいので、サクサク読めるね!楽しみ楽しみ!
「うわぁ〜……早く小説届かないかなぁ?」
「……買ったの?」
「あとちょっとで誕生日だからね!パパとママに頼んで誕生日の前借りしちゃった!」
私の誕生日は10/17!後1週間くらい!
「ん!……誕生日楽しみにしてて?」
「えへへ!楽しみにしてるよ!」
「それはいいけど……日巡璃。少しは恋がわかったの?」
そうだよね……恋かぁ……
「うーん…………正直、まだ……コレってのはよくわかんない!」
ドラマの再生を止めて、みんなに向き直る。
色んな恋ってあると思しね。
「「……ハァ。」」
「けど……」
私なりの答えは出た気がする。
「多分恋って錯覚だよね。」
「「「?」」」
「依存心だったり、執着心だったり、庇護欲だったり、性欲だったり。自己都合の汚い感情を恋なんて綺麗な言葉にしてるだけ。錯覚だよね。」
「……えと……まぁ……そう……なのかしら?」
「お嬢様らしいと言いますか……独特ですね?」
「ひまひま……ひねくれてる??」
あれ!?ちょっと引かれてる!!
「待って待って。まだ続きがあるよ。」
「「「?」」」
「自己都合を恋に言い換えて、あたかも美しいもののように神格化してるのは……すごーく不思議だけど、すごーく腑に落ちた。私恋って綺麗なものだと思ってたけど……違ったんだね!執着心や嫉妬心とか、フクザツな物がぜーんぶぜーーーんぶ混ぜて固めて、それが恋になるんだってわかった。」
皆に伝わるように両手をいっぱい広げた。私なりの解釈を。
「……日巡璃……」
「フクザツなものを全部……」
「……たしかに……不思議。」
1呼吸。ちょっとだけ緊張する。
「だからね。私きっと皆に恋してる。」
「「「!」」」
「ううん。恋だよ。絶対。だってこんなにも執着してるもん。みんなが他の人と一緒になるなんて嫌だもん。みんなを守ってあげたいもん。私だけを見てって思っちゃうもん!」
好きと恋は違うと思ってた。もっともっと上の存在だと思ってた。
やっと気付いた。全部全部……初めから恋だったんだ。
愛ちゃんを手放したくなかったのも。
天捻ちゃんを守りたかったのも。
カナに欲情したのも。
「私……こんなにもみんなの事しか考えてない!ねぇ!コレって……恋だよね!愛だよね!」
「日巡璃!!」「お嬢様!」「ひまひま!」
みんなが私の胸に飛び込んでくる。もちろんしっかり受け止めて抱きしめる。
みんなの温もりを。匂いを。全身で受け止める。感じる。
「ねぇみんな。改めて言わせて。私……みんなの事好き。大好き。」
「ひまひま……うふふ……嬉しい……」
「お嬢様……私もです!」
「日巡璃……んっ。」
カナに唇を奪われる。
「ふふ……いただき♪」
「あっずるいです!」
「ん。ひまひま!私も!」
「んふふ。いいよ?」
私の恋は、多分皆に与えるものじゃない。みんなの恋を受け止める恋。愛。私はずっと恋してた。恋……出来てた。
みんなのおかげで気が付けた。
私を……私に恋してくれてありがとう。心の底から大好き。
「…………日巡璃。そういえば今日なんでみんな私の家にいると思う?」
「え?これ見るためじゃ……」
「私ね?2人にはもう話してるの。」
「??……何を……!」
2人とも服を脱ぎ始める。
「もう少し……夜からでもいいかなって思ってたけど……」
「……はい。お嬢様にあのような事を言われてしまっては……」
「据え膳食わぬは女の恥……ね。」
「あ……えと……あの……」
服を脱ぎ終えたみんなを前に喉が鳴る。
「んふふ。私は最後でいいわ。先に2人を可愛がってあげて?」
「……準備万端……ね。ひまひま……」
「お嬢様……優しくしてくださいませ……?」
「うふふふふ……ね。日巡璃?」
「は……はわ…………はわわ……」
迫る皆に私は……
ちなみにカナの両親は不在でした。
一応補足です。小説『ユウゲショウ』は架空の小説です。
ちなみに花言葉は『臆病』『内気』『美徳』です。