side槍田日巡璃
「……。」
「……。」
病室。二人並んで座る。
カナのママが椅子を持ってきてくれて。仕事の電話があるからと病室を後にした。
学校に連絡をしたけど、おねーさんがやってくれてたみたいで。それに愛ちゃんの証言もあって無事二人で休めることに。
沈黙。
長いね。でも……カナは色々考えることがあると思うから。私からは何も喋らない。私なりの配慮。
「……ねぇ日巡璃。」
「…………ん〜?」
カナが口を開いてくれる。
「……パパ。……目が覚めないかもって。」
「……………………そっか。」
「……あのね。……2回目なの。」
「何が?」
「こうやって……大切な人がいつ起きるか分からないの。」
カナは……家族の人がこういう風になったことがあるんだ……大変だね。
「…………そうなんだ。」
「……他人事ね。1回目は貴方よ?」
「私?……あ、そっか。」
私のインターンの時か。……大切な人……そっか。
「もう。…………慣れないわね。こういうの。」
カナの取り繕ったような硬い笑み。……少し……辛いね。
「無理して笑わなくてもいいよ。……本当に優しいね。」
「…………うん。」
こういう時。私は……
「……カナ。」
カナの手を握る。少しでも安心して欲しくて。
「……日巡璃。…………ありがとう。すごく……心強い。」
「良かった。……ねね。なんだ少しドキドキするね?」
「……何がよ。」
「だってだって!カナはともかく私は学校休んでるんだよ?初めてだよ!すごーくドキドキしてる!」
「……もう。子供ね?」
「ふふふ。カナの心の支えになれるなら……子供のままでいいかも。」
カナの顔を覗き込む。
「…………日巡璃ったら。」
「へへ。」
「……ふふ。……ふぁふ……」
カナが欠伸を咬み殺す。ゆっくり寝れてないんだと思う。
「……カナ。」
私の膝をポンポンと叩く。
「…………いいの?」
「こういう時くらいカッコつけさせてよ。もしカナパパの目が覚めたなら起こしてあげる。」
「……うん。……わかった。少し借りるわね。」
ころんとカナが横になる。私の膝はみんな大好きだからね。モチモチムニムニで寝心地がいいらしい。
……太ってるわけじゃないと思うよ?うん。ちゃんと運動してるからね。
カナの頭を撫でる。……髪の毛サラサラだなぁ……いいなぁ。
「……スー……スー……」
……寝ちゃった。カナにしては早かったねぇ?…………相当無理してたんだろうな。…………私の前くらい無理しなくていいのに。カナってばちょっとだけカッコつけなところあるもんなぁ……
ガラ……
「ごめんなさい。少し電話が長引いて……あら?」
「カナママ。カナ寝ちゃって……」
「…………ふふ。そう。……この子なりに心配してたのね。なんだか申し訳ないことしたわ。」
「んふふ。いいじゃないですか。仲良し家族ですよ。」
「当たり前じゃない。私とパパはずーっとラブラブよ?」
「……見てると何となく分かります。」
カナママが対面に座る。……顔に疲れがみえる。休んで欲しいね。少しでも。
「よかった。…………カナとはどう?」
「はい。仲良しですよ?」
「……それは見ればわかるわ?カナがこんな安心した顔で寝てるんだもの。本当に好きなのね?」
「……だといいです。……私はカナのこと大好きなので。」
「…………カナのこと大事にしてあげてね?」
「はい!任せてください。」
「…………。」
「…………。」
沈黙。……とても気丈に振舞ってるけど、多分カナママの方が辛いよね。当たり前だよ。
カナパパの顔を覗き込む目が……なんだか寂しそう。
「……きっと目は覚めますよ。」
「……え?」
「きっと目を覚ましてくれますよ。」
「…………そう……かしら。」
「はい。……だって……あんなにカナママとカナの事大好きなのに。2人のこと放っておくなんて考えられません。……今一生懸命頑張ってるはずです。2人に早く会うために。」
「…………うん。……そう。そうよね。ずーっと悲しんでる訳にはいかないわ!パパが目を覚ましても大丈夫なように会社をフォローしないとね!」
「その意気です!」
「それにしても……カナは本当にいい子を射止めたわね。……さっきの発言……パパの次にかっこよかったわよ?」
「えへへ!そうですか?……カナの隣に立っても違和感ない……カナにふさわしい人になりたいので!」
「あら…………本当に大胆なプロポーズね?」
「それくらい本気です。…………でもプロポーズはもっと本気でやります。カナの一生を預かるわけなので。」
「……カナちゃん起きてたら良かったのにね?」
「起きてたら言えないですよ〜。恥ずかしいです。」
「あらあら。」
私はこの時、カナの耳が赤くなってることに気が付かなかった。
「……なんだかんだ病院の食堂も美味しいですね!」
「うふふ。そうね?こういう時助かるわね。」
「結構いけるわね?」
お昼。カナを起こして3人で病院食堂に。私はカレー。カナママとカナはオムライス。
種類は少ないけど全然美味しい。カレーはじゃがいも。人参。玉ねぎ。お肉はひき肉。こういうのでいいんだよねぇ〜。美味しい〜。
「ご馳走様でした。」
「「ご馳走様でした。」…………本当に私もご馳走してもらって良かったんですか?」
お昼ご飯はカナママにご馳走してもらった。…………本当に良かったのかなぁ?
「いいのよ日巡璃ちゃん!もう私の娘みたいなものだし!ね?カナ?」
「えっ……えぇ。そうよ。」
なんかカナの様子が……あっ!
「ん?……カナ熱ある?顔赤いよ?」
「なっ!!なんでもないわよ!大丈夫!」
「ほんと?……ちょっと待って?」
カナのおでこに手を当てる。
「……っ!」
「……うーん?大丈夫そうだなぁ……?」
「だっ……だから言ったじゃない!」
「んふふふ……青春ね?」
「もう!ママ!」
「?」
私の知らない駆け引きがあるみたいです。……深いね。
ガラ……
「ひまひま!カノカノ!」
「大丈夫ですか!?」
「こら。病院で大声を出したら……」
夕方……カナママが少し外に出てる間、私の彼女たちが面会に。……佳舞ちゃんってなんだかんだ1番こういうマナーがなってるというか……自分で自分のことクズって言ってるけどいい所のお嬢様なんだなと再認識。
今思ったらそういう所ちょこちょこあったよね。………………あったよね?
「……。」
「やほ。…………まだ目は覚めてないみたい。」
「…………。」
「……そうですか。」
「…………ふーっ。何があったのかは聞いた。あんまり気に病むことは無い。脳へのダメージは大きくはなかったんだろう?」
知らない情報だ……
「…………?そうなの?」
「ええ。……誰から……」
「ブラッドロータス先生だ。私たちをここまで送ってくれた。」
おねーさんか……納得って言うか3人送ってきてくれたんだ。…………ほんと頭が上がらないなぁ。
「……はぁ。こいつら抑えるのたいへんだったんだぞ。急がなくても病室は逃げん。」
「「……。」」
「まぁまぁ。それくらいカナのパパとカナが心配だったんだよ。」
「…………それはわかるが……」
「佳舞ちゃんも肩肘張らないの〜!」
「う……うむう……」
「……ふふ。……みんなありがとうね?」
「当たり前。……私だってこっちに来たかった。」
天捻ちゃんがカナの手を両手で握る。
「そっか。……ありがと。天捻。」
「はい。当然です。……それと今日のノートです。お二人分取っておきました。」
「ありがとう愛ちゃん!」
「ありがと。愛。」
「…………私はこれといって何もないな。……思った以上に元気そうでなによりだ。」
「日巡璃が居てくれたから。……何とかなったかな。」
「えへへ……そうみたいです!」
「ふふ。……日巡璃様様だな。」
「ね。」
なんだかんだみんな笑顔で。
なんというか……少しだけ。ほんの少しだけ心が暖かくなった。
みんなの優しさに。気遣いに。
私は……幸せ者だなって。再確認出来た日だった。