side槍田日巡璃
「カナ!廊下は走っちゃダメ!!」
車の中でもソワソワしてたカナ。車が止まると同時にドアを開けて走り出して行った。もちろん追いかけたけど……私も病院内を走る訳にもいかず、早歩きでカナを追う。
カナはスイスイと階段を登って、すぐに病室に入っていった。……体力ついたんだなぁ……感心感心。……いやいや。絶対今じゃない。
ガラッ……
私ももちろん後に続く。
「おぉ!日巡璃ちゃんかい!……なんだなんだカナ。ガールフレンドを置いてきてるじゃないか。」
カナはカナパパに抱きついてるみたいで……もう。子供はどっちなの?
「カナパパ!本当に目が覚めたんですね!」
「ああ!……とは言ったもののまだ本調子とはいかないね。いやはや……身体が思い通りに動かないよ!」
カナを引き剥がして体をブンブン振ってみせるカナパパ。
「あ……あまり無理は……」
「っうっ!……いたた……」
カナパパが脇腹……多分肋骨を抑える。
「パパ!?」
「ほら…………」
「あたたた……ふふふ……大丈夫だよカナ。ちょっと痛んだだけさ!」
カナがカナパパに駆け寄る。
「パパ……お願いだから安静にしてて?」
「……わかったよ。他でもない娘の頼みだ。少し仕事を休む連休を貰ったと思ってゆっくりしよう。」
「うん……。」
「骨折って辛いですよね〜。全身だと本当に動けなくなるんで。」
少ししょぼんとしているカナを抱き上げ、椅子に座りながら膝に乗せる。
「日巡璃ちゃんもした事あるのかい?」
「昔に。色んなところにヒビが入ったことがあります。」
「……うわぁ……」
「痛いんですよね〜。死ぬかと思いましたもん!あはは!」
ケラケラ笑う。こんなのもう笑い話だ。
「……日巡璃ちゃんは強いね?」
「そうですか?……まぁ……痛みには強いです!」
「うーん……そうじゃないんだけど……まぁいいか!」
??
「……むぅ。」
スリ……
「お?」
「……何よ。」
「んーん?なんでも?」
「そ。」
カナ……私がカナパパとばっかり話してるから寂しくなっちゃった?あー可愛い♪
ガラッ
「あなた!」
「ママ!ハハハハ!僕はこの通り元気だよ!」
「あぁ……良かった……本当に良かった……」
少し雑談していたら、カナママが到着。カナパパの姿を見て泣き崩れてしまった。
まぁ当然だよね。私の立場でもそうなる。生きててよかったね。
何とかベッドにたどり着き、カナパパに縋り付くカナママ。
「あなたぁ……本当に良かった……」
ほら……泣きすぎてカナママの顔がぐちゃぐちゃに……
「僕が君達を置いて行くわけが無いじゃないか。……心配かけたね。」
「うっ……うっ……あなたあああああああああ!!」
「「……。」」
カナママってこんな大泣きすることあるんだ…………なんか反応的にカナも見たことない泣き方してるんだなって。
「もう……ははっ。懐かしいね。君がここまで泣いているのは。……僕がプロポーズした時以来じゃないかい?」
おぉ……プロポーズ……
自然とその言葉で、カナを抱きしめる力が少し強くなる。
「ほら。子供たちも見てる。……もう少し我慢できないかい?」
「無理!無理よぉおお!だっで!だっでじんじゃうがど!!」
「あはは……困ったねこれは。」
…………ここは私が一肌脱ぎましょう!
「ね。カナ。カナの家泊まっていい?」
「!……いいの?」
「うん。……2人きりにしてあげたいしね?」
「……うん!……嬉しいわ。日巡璃。」
あっカナの目がとろーんて……2人きりモードに入っちゃう!…………私以外と居るのにそんなのダメだから。
「ってことで、私達先に帰るので……お二人でごゆっくり?」
「……すまないね。ありがとう。」
「いえいえ。それではそれでは〜♪」
とカナをお姫様抱っこして病室を出る。
「……もう……大胆なのね?」
するりとカナが私の横に着地。
「……だって。……カナのその顔……誰にも見せたくないから。」
「!!……日巡璃……!」
そこから車に乗るまでカナはずーっと私の腕にくっついて離れなかった。
車に乗ったあと?そりゃもっとベッタリくっついてますよ。当たり前。私の首に手を回して私の瞳を見つめてくる。少しだけ恥ずかしいけど視線は外さない。この時間……嫌いじゃないし。
車から降りたあともベタベタ。カナの愛情表現がすっごく直接的になって……私もなんだかんだ心を鷲掴みされちゃってる。
二人でゆっくりお風呂に入って、あとは寝るだけ。寮の3人に連絡だけしておいて、カナが待つベッドの上に。
「……日巡璃……ねぇ……今日は何しよっか?」
カナが私を手招きするので、近付く。鼻が着きそうな距離。視界がカナで埋まる。幸せな空間。
「もー……明日学校だよ?手加減して欲しいな?」
「うふふ。……我慢できるの?」
「カナが我慢できないんでしょ?」
「当たり前じゃない……愛おしいあなたがすぐそばに居るのに……手を出さないのは据え膳よ?」
「ふふっ……絶対女子が言うセリフじゃないよね?」
「嫌い?」
「大好き。」
「……日巡璃はなんで私の言って欲しいことがわかるのかしら。」
「なんでだろうね?勉強したからってのもあるけど……多分それ以上に私がカナの事大好きなんだなって。」
「……日巡璃……」
カナにぎゅうっと抱きしめられる。
もちろん私も手をカナの背中に回す。
「好き……好きよ……日巡璃。……ずぅーっと好き。」
「好きで足りる?私は足りない。大好きだよ。カナ。」
「はぁ……幸せ。今日はいいことがいっぱいあったわ。」
「そうだね。パパが目覚ましてよかったね?」
「うん。それもだけど……日巡璃と一緒に生活できるだけで私は幸せよ?」
「ふふっ……そうなんだ?」
「安い女と思った?」
「ううん。一緒だねって。」
「……日巡璃。ねぇ……?」
シュルシュル……
「……我慢できない?」
「うん。……いっぱい愛して……?」
「実は私も……一緒だね?」
「うふふ……」
「はは……」
いつもよりは短かった。でも前よりも密というか、お互いの心が通じ合えた。愛をぶつけ合えた。
あぁ……私って……もう……こんなにもカナから離れられない。
そこからカナパパは少しづつ体調が回復していって、警察からも事情聴取があったらしいけど……事故の瞬間なんてそんなにわかる訳もなく、すぐに終わってしまったと聞いた。
私たちはそれとは別で文化祭の準備も佳境に入り、慌ただしく学園生活を送る日々。
時間は有限。無駄に過ごす訳にはいかない。
カナパパも心配だけど、やることがいっぱいあるから。
今日も誕生日プレゼントが火を吹くぜ!
「うおおおお!」
ドドドドド……
「委員長!そっちどう?」
「袴はもうできるよ!!全員分!」
「やるね!次のミシンお願いしてもいい?」
「うん!誰か1回試しに履いてもらってきて!」
「俺が行く。能面でいいか?」
「うん!誰でもいいよ!」
「お嬢様。仮縫い終わりました。」
「ありがと〜!」
忙しい忙しい……でもなんだかんだ充実感があるんだよね。
せっかくここまで頑張ってるんだ!絶対いいものにするぞ!おー!!