side槍田日巡璃
朝。…………この感触は……。
布団を持ち上げる。
「スー……スー……」
天捻ちゃんが今日もいる。……時々私が天捻ちゃんの部屋に行ったりもするけど、大体一緒に寝てる気がする。天捻ちゃん暖かいからいいけど。…………夏はどうなるんだろ。
コンコン
「お嬢様。憎田愛です。」
「入っていいよ。」
天捻ちゃんを起こさないように上半身だけ起こす。
「失礼します。」
愛ちゃんが入ってくる。既に制服に着替えて準備万端だ。……本当にすごいよね?私が起きる前には既に準備が終わってるってことでしょ?
この際なんでタイミングよくノックがなったのかとか気にしない気にしない。
「…………また中曲瀬はお嬢様のベットに…………羨ましい。」
「毎日言ってるね?」
「毎日言います。本音なので。」
とか言いながら制服を出してくれたり、荷物を用意してくれたりしている。
何度も言うけど、この際なんで制服のある場所と荷物のある場所がわかってるかなんて気にしない。
もう寮に来たタイミングでは知ってたんだよね。意味がわかんない。
「……いつもありがとうね?私のだし私がするよ?」
「いえ。したくてやっていることですので。」
愛ちゃんは私のことが本当に好きなんだ。
「ごめんね?気持ちに答えられなくって。」
少しだけ申し訳なくなる。今の曖昧な気持ちを恋なんて言いたくない。
「…………これから何年も共に過ごすのです。少しづつ知っていけば良いと思います。お嬢様の返事を待つと……伝えたはずですが?」
愛ちゃんが微笑みながら答えてくれる。
「……そうだよね。待っててくれる?」
「ええ。何日も。何年も。何十年だって待ってみせます。」
「ふふっ。重いね?」
「それだけ想っているということです。」
何食わぬ顔で言い切る愛ちゃんの横顔は……少しだけドキッとした。
「…………ひまひま。2人だけでイチャイチャ…………だめ。」
布団の中から天捻ちゃんの声が聞こえる。
「起きたの?」
「ん。」
天捻ちゃんの頭を撫でる。
天捻ちゃんの頭相当撫で心地いいんだよね。するする手が入るというか……
「中曲瀬。起きたならとっとと出なさい。お嬢様が何もできないではないですか。」
「ん…………もうちょっと。……ひまひまを感じたい。」
天捻ちゃんが腰に抱きついてくる。少しだけヒヤッとしたけど……触れてないから大丈夫。
多分クラスが一緒じゃない分寂しいんだろうね。天捻ちゃんは私に対して抱きつき癖がある。
「……そっか。今何時?」
「あと30分は余裕があります。」
「じゃあ全然無いね。……10分だけだよ?」
「……ありがと。……大好き。」
「んっ…………そっか。ありがと。」
ちょっと顔熱いかも。
「…………しょうがないですね。中曲瀬の制服と荷物も取ってきます。」
なんだかんだ優しいよね。愛ちゃん。
「ありあと。あいあい。あと天捻って呼んで。」
「嫌です。まだそこまで親しくないので。」
まだ…………ねぇ?
私目線結構仲良しだと思うけどなぁ?愛ちゃんがツンケンしてるけどなんだかんだ認めてるし、天捻ちゃんは言わずもがな、カノーテスちゃんは仲間意識強いし。
…………んー……この3人に本気で迫られたら私もしかして逃げれる術がないのでは??
『ひまちゃん。』
『…………あの3人のこと信じてあげてもいいんじゃないかな?』
少し前に壊理ちゃんに言われたことを思い出す。
あの3人ってこの3人?だとしたら壊理ちゃんはどこで会ったんだろ。わかんない。……わかんないけど……
「信じる…………か。」
「…………どしたの?ひまひま。」
「んーん。なんでもない。」
「…………?」
コンコン
「中曲瀬。そろそろ部屋を掃除したらどうですか。」
「…………ひまひま。一緒にしよ?」
「…………今日学校から帰ったらね?」
「ん!」
天捻ちゃんは家事全般が相当苦手です。
「おはよう。日巡璃。」
「おはよう。カノーテス…………ごめんね?カナ。」
「ふん。……謝らなくてもいいわ。」
カノーテスちゃんに最近……カナって呼ぶようにと言われた。親愛の証なんだって。
初めて呼ばせてるんだって。
私だけだって。
…………特別だって。
顔真っ赤にして言ってくれた。
大切な思い出、また増えちゃった。
「ふふっ。」
「何よ。」
「んーん?……特別って嬉しいなって。」
「…………そ。」
カノーテスちゃんがそっぽを向く。最近カノーテスちゃんの顔色がわかるようになってきた……というか、カノーテスちゃんは照れると耳まで赤くなる。
「お嬢様。本日の委員長業務が……」
「あっ。そうだね。ありがと〜。」
「いえ。当然のことをしたまでです。」
「そっか。……みんな〜!宿題集めるよ〜!」
「「「はーい!」」」
「きのこおいしい!」
お昼。愛ちゃんが作ってくれたお弁当。最近私の好きなものが増えてきた気がする。
「お口に合ったようで何よりです。」
教室でご飯。今日は天捻ちゃんはクラスの子と食べるって。…………早く同じクラスになりたいね。
「……さすがに料理上手いわね。」
「両親に叩き込まれたので。」
カノーテスちゃんはいつもだけどメイドさんにお弁当作ってもらってるらしい。…………お嬢様だ。すごい。
ほかのみんなは殆ど食堂。そりゃそうだよね。お弁当作ってる人なんて……
「…………んだよ。」
香曽我部くんがいるね。パン1個。……それで足りる?
「……アンタ食堂行かないの?」
「いいだろ別に。」
「…………パン1個?」
「…………。」
黙々とパンを食べてる。…………絶対足りないよね。
「愛ちゃん。」
「…………それはお嬢様のために作ったのですが……しょうがないですね。」
「ありがと。……香曽我部くん。お肉あげる。」
ひょいとパンに乗っける。
「は?……施しは……」
「私もお肉あげる。野菜が良かった?」
カノーテスちゃんも。
「お嬢様が仰られたので私も差し上げます。どうぞ。」
愛ちゃんもお肉を乗せた。……パンがお肉まみれに。
「………………すまねぇ。」
「いいよいいよ。お互い様だよ。」
「…………お前らはそういう奴だよな。」
香曽我部くんは観念したのかお肉を食べ始める。美味しいかな?
「……聞いてもいい?」
「いいぜ。隠すようなことでもねぇしな。俺ん家貧乏なんだよ。片親。かーちゃんだけ。下の兄弟多いしな。」
「え!?そうなの!?」
「頑張って勉強してよぉ……推薦で入れたのはいいんだが……それでもちょぴっと苦しくてな。」
「えぇ!?香曽我部くん推薦組なの!?あのA組の嫌な人と一緒じゃん。」
「日巡璃。覚え方。」
カノーテスちゃんに注意される。しょうがないじゃん。すぐ出てきたのがあの人なんだもん。
でも香曽我部くんがアッハッハと笑い飛ばした。
「そりゃそうなるだろ。………………俺これでもバイトしててよ。少しだけだが家計の足しになりゃいいなって。……まぁそんな訳で食堂って少しだけだが金かかるだろ?あんま行けねぇんだよ。」
「そうなんだ。偉いねぇ。」
「………… 。」「…………。」
ふたりが黙っちゃう。お家がお金持ちだもんね。気まずいのかも。
「あー…………憎田もディミトリウもあんま気にすんな。俺は金持ってるやつを妬むほど生活に余裕がねぇからよ。ぜってぇヒーローになって家計を楽にしてやんだ。」
香曽我部くん……頑張ってるんだねぇ。でももっと頑張らないとヒーローになれない社会だから……大変だよね!
「一緒に頑張ろうね!」
「当たり前だ。下のガキ共の生活良くしてやらねぇとな。」
ガラッ!
「広霧殿ォ!新作のお菓子で他でありますよォ!一緒に食べようであります!」
加糖くんがお菓子を持って現れる。スナック菓子だ。見たことないや。
「甘麻呂!まじか!食おうぜ!一心も呼ぼうぜ。」
「もう居るであります。」
「いえい。広霧がお金ないからひもじい生活してると思っていっぱい買ってきたよ。」
氷叢くんが加糖くんの後ろから顔を出す。
「余計なお世話だ。……うめぇんだろうな?」
「わかんないであります!一緒に毒味しようであります!」
「一緒…………フッ。いいじゃねぇか。ノった!一心も食うんだぞ。」
「わかってる。」
少し気になったのでパッケージを見る。
『わさびケチャップ味』
『しょうがマヨネーズ味』
『たらこバジル味』
………………やめといた方がいいんじゃない???
「「「いただきまーす!………………まっず!!」」」
「……馬鹿ねぇ。」
「…………そういうことしたくなるよ。友達と一緒だもん。」
「そういうもん?」
「カナと一緒ならきっと何だって楽しいよ。……愛ちゃんも一緒だともっと嬉しいな。」
「お嬢様…………一生ついて行きます!」
愛ちゃんの嬉しそうな顔。へへへ。
「…………そ。…………だったら一緒に居てあげるわ。」
カノーテスちゃんはそっぽを向く。耳真っ赤。
「…………意気地無し。」
「うるさいわね憎田!!」
「あ?わさびケチャップちょっと美味ェかも。」
「舌がおかしいよ。」
「広霧殿…………少しだけでもまともなもの食べて欲しいであります。」
「お前らもなんだかんだ食ってるじゃねぇかよ。」
「なんかね?」「慣れてきたって言うでありますか……」
「舌がバグってきたな?」
「…………それはそれで困るでありますな。」
「パンデミックだよ。これは。」
何喋ってるんだろう…………