side槍田日巡璃
えーっと……メイド喫茶は……1-Cしかやってないのか!
…………天捻ちゃん。会いたいような……会いたくないような。
「あれ!?槍田さん!?」
「あ!邊ちゃん!古銀ちゃんも!」
C組に顔を出すと、邊ちゃんと古銀ちゃんが居た。……見渡してみると……天捻ちゃんは居ないみたい。
「ふたりとも似合ってるよ〜!可愛いねぇ〜!」
2人とも会計なのかな?フリフリ衣装で可愛い〜。
「ありがとぉ。いえーい!」
「いえーい!」
古銀ちゃんはノリがいいのでよくハイタッチしてくれる。そういえば陸上部なんだって。めっちゃ足早いらしいよ。
「いやいや!そうじゃなくって!今出し物の時間じゃないの!?中曲瀬さん見に行ったけど……」
……良かった。天捻ちゃんは居ないんだ。って気持ちと、天捻ちゃんが居たら少しでも助けてくれたのかなって気持ちが入り交じる。
……天捻ちゃん……
「おやぁん?槍田はサボりかーい?良くないねぇ〜?」
「ううん。そういう訳じゃないんだけど……ちょっと外せない用事ができちゃってね!」
「外せない用事?」
「わぁ〜!メイドさんだ!」
「「?」」
ラクネラちゃんが目をキラキラさせながら私の前に出た。
「え?槍田の子供?」
「そんなわけないでしょ!?」
「……どうしたの?迷子?」
「そういう訳でもないんだけど……」
うーん……なんて言おうかな……難しい。
ありのままを話す訳にはいかない。……さて……どうしたものか……
…………何も思い浮かばない。
どうしよ。
「私たちが無理を言ったの。」
「え?」
思わぬところから助け舟が……
「……この人は?」
「あっ……えと……マリア……さんだよ!私の知り合いなんだ!それで、この子はラクネラちゃん。マリアさんの妹?」
「……ま、そんな所ね。」
「らしいよ!」
「はい!ラクネラだよ!」
「へぇ!マリアさん。ラクネラちゃん。よろしくね?」
「よろしく。」
「はーい!」
「……。」
「じゃあ席案内してあげるよ!こっちこっち!」
そうやって私たち3人は席に案内された。
「……どういうつもり?」
「どういうつもりとは?」
メイドカフェで少し時間を過ごして、今はラクネラちゃんがトイレに行きたいとの事で、トイレの入口にふたりで待っている状態。
「さっき……私が言い淀んでた時、助けてくれたでしょ。」
「そうね。」
「……なんで?」
「……今は利害が一致してるから……かしら。」
「利害が……一致?」
「あなたは私たちを見張りたい。私はあなたを見張りたい。充分利害が一致してなくて?」
「……。」
「……頭が固いわね。敵であろうと利用できるものは利用するものよ?」
「……。」
そう言われると……そうだけど……
「それよりも……私は貴方が人質として自らを差し出して来たことに驚いているわ。すぐにでも周りのヒーローに伝えれば良いものを……」
「それはダメ。みんながせっかく頑張って作った文化祭を壊させる訳にはいかない。…………それにあなたが察知した瞬間最悪死人が出る場合もある。その最悪にならないように私は動いてるだけ。」
皆の思いを踏みにじらせる訳にはいかないから。
「……ふぅん?」
「それだけじゃない。敵の貴方がヒーローに見つかる可能性を考えた上でココに来ているのであれば……多分雄英のヒーローを相手取っても戦える切り札があるか、確実に逃げ切れる手段があるか。…………私の予想は後者。」
「…………へぇ。結構頭は回るのね?」
「バカにしないで。私だって何も考えずに人質になった訳じゃない。」
「…………少しだけ見直してあげるわ。ジュリアと戦ってお互い満身創痍になるレベルならお話にならなかったけど……ほんの少しだけなら楽しめそうね?」
ピリッ……
「……やる気?」
「うふふ。そんなはずないでしょう。今日は普通に楽しみに来ただけよ。ラクネラも居るし。」
「…………そう。」
「疑ってる?」
「当たり前。敵の話を鵜呑みなんかしないよ。」
「あら。残念。」
「……。」
「……。」
無言。相手が何を考えてるのかわからない。目的もわからない。
…………でも今時間を使えてるのは事実。皆が気付くまでの……どうにか助けを呼んでくれる時間を。
「おねーちゃん!ただいま!」
ラクネラちゃんがトイレから出てくる。
「あら。手は洗ったかしら?」
「うん!」
「いい子ね。」
マリアがラクネラちゃんの頭を撫でる。
「んへへ〜♪」
「…………。」
「……怪訝そうな顔。敵がマナーを守っちゃ悪い?」
「…………別に。」
「……ハァ。」
大きなため息。呆れたかのような……見損なったかのような。
「……何。」
「…………あなたは敵のイメージを固めすぎだわ。敵だってご飯を食べるしお風呂に入るしマナーを守るしルールも守るわ。それが本当かどうかは置いておいて……ね?」
「何が言いたいの。」
「まぁ聞きなさいな。正義と悪なーんて簡単な話じゃないの。たまたまヒーローが正義で敵が悪なだけ。逆転することだってある。」
「……そんなこと……」
「じゃあ例え話ね?ヒーローが犯罪を犯してた事を敵が暴いた時はどちらが悪かしら。」
「……。」
答えられない。どちらも悪でどちらも正義。どちらがなんて例えではなかった。
「答えられない。当たり前よね。……あなたはまだヒーローを神格化しすぎてるわ。未熟者。人間は神じゃないようにヒーローも神じゃない。無闇矢鱈に力を奮ったらそれは敵だわ。悪と正義の境目が出来てないようなら……私達を理解することは出来ない。…………そんな様じゃ私達を捕らえることは出来ないわよ?」
「……私は……」
「別にあなたの意見が聞きたい訳じゃないの。……私を本当に捕らえたいのであれば、それ相応の実力をつけなさい。特に理解力と知識。圧倒的に足りてないわ。」
「……。」
「……おねーちゃん?」
「ふふ。話し込んじゃったわね。……ラクネラ。次はどこ行きたい?」
「えーとね!次は……」
何も言えなかった。
ヒーローの神格化。敵への理解。それに伴う知識。
ヒーローの表の部分しか見てない私達。……ただ踏み入れていいものかどうかはわからなくて。
その一歩は……今の私は踏み出せなくて。
「ねえ。次はどこに行けばいいの?」
「!……ごめん!話聞いてなかった。」
「もう。道案内するんでしょ?」
「う……うん。」
「ねー。早くいこーよー!」
あってはならない疑問が浮かぶ。
この人達は……本当に敵なの?
今の私に……答えることは難しかった。