side槍田日巡璃
「……くらいです。」
「ふむ。そうかい。……ありがとう槍田さん。」
あの後すぐに駆けつけたB組のみんな……ではなくて流水おねーさんに回収され、校長室へ。
事情聴取みたいなものかな。スナイプ先生、オールマイト教頭、根津校長、流水おねーさんの前で何があったかぜーんぶ喋った。
みんな怖い顔してるから……なんて言うかすごく緊張した……
流水おねーさんはなんかずーっと無言でパソコン叩いてるし……うぅ……逃げ出したい……
「……聞いてみた感じ、敵側に害意は無さそうだね。」
「はい。ですが本当に無かったかと言うと不明です。」
「うん。そうだね。……流水ちゃん。どうだい?」
流水おねーさんは視線をパソコンから逸らさずに答える。
「んーとですね……今雄英の監視カメラ片っ端から漁ってるんですが、日巡璃ちゃんと合流する前と合流する後で行動が全く変わりません。それどころか日巡璃ちゃんが合流したあとの方が楽しんでる節があります。…………見ただけではただ楽しんでるだけ……かと。」
「……ふむ。」
……流水おねーさん今の時間で監視カメラ全部見てたの??
「……ただ雄英高校に敵が潜入していたというのは由々しき事態だ。」
オールマイト教頭が重い口を開く。
「敵の顔がわからなかったとはいえ、もしかすれば雄英高校で死人が出ていたかもしれない。今回は槍田少女の英断と勇気ある行動でほぼ無害で済んだが……次回以降も上手くいくかと言われると考えさせられるものがある。」
「……そうだね。来年はもう少しパトロールの教員を増員してもいいかもしれないね。」
「個人的には自分の身を犠牲にする行為はやめていただきたいモノですけどね?ねぇ?日巡璃ちゃん?」
「ハイ!」
ピシッと姿勢が正される。
背筋凍った!!さっきとは別の意味で!顔からスーッと熱が無くなっていく感じ!
おねーさん怒ってるよね!?絶対怒ってるよね!!当たり前だよ!前にも似たようなこと言われた気がする……まずい!!敬語のおねーさんは本当にやばい!!
「……どうせ日巡璃ちゃんの事だから全部顔に出て、声聞いた瞬間相手にバレちゃったんでしょ。だからこうするしか無かったんでしょ。……どうしようもなかったのはわかるけどね。ディミトリウさんが気が付かなかったらどうするつもりだったの?」
「カナは気付きます。絶対。」
「……はぁ。そういうと思ったわ。」
「ハハハ!流水ちゃん!言い負かされちゃったね!」
「校長。あんまり笑い事じゃないですよ……最近は心臓がいくつあっても足りません……」
「いつぞやの緑谷少年みたいだな!」
「…………最近になって当時の緑谷くんの母親の気持ちがわかる気がします。」
「その話は置いておいて……これからどうしますか。」
「……まずは文化祭を安全に終えようじゃないか。話はそのあとだね。」
「「「了解。」」」
「……。」
そう言えば……友達とか何とか……言ってないけどいいのかな?……言うほどでも……ない気がするけど。
「槍田さん。まだ何かあるかい?」
「あぇ!?」
なんでバレたの!?
「まだ何かある顔してたからね!」
「……日巡璃ちゃん……」
私にポーカーフェイスは無理です!!!
「……あの……えっと……友達になろうって言われちゃって……」
「「「え?」」」
「も!!もちろん!断りましたよ!?気持ち悪かったですし!!」
「日巡璃ちゃん?なんで貴方は色んな女性の心を鷲掴みしちゃうのかしら?」
「わかんないよ!!!」
「うーん……それは……現状あまり問題ではなさそうだね。」
「槍田少女にはなにかのフェロモンがあるのか?」
「……もしかしたら。」
「無いです!!無いですよ!!!」
だから言いたくなかったのに!!
もう……
「ほんと嫌い。」
side???
「おかえり。マリア、ラクネラ。楽しかったかい?」
「ええ。」
「うん!ありがとう!ヴィヴィ様!」
「うんうん。いいって事だよ!」
さっきまで雄英高校だったのに……今は目の前に広がる陰気臭い洋室。……本当にこいつの異能って異常よね。
「それで?なにか収穫はあったかい?」
「……あのね。雄英高校に潜入しに行った訳じゃないから知らないわよ。」
「む……そうかい。残念だ……不満を持ってる子がいれば……と考えたが……」
「アンタはそういうのに余念が無いわね。」
「当たり前じゃないか!仲間は多ければ多いほどいい!」
「あっそ。」
私がソファに座り込むと横にラクネラがちょこんと座り、私の膝を枕に寝転ぶ。
「えへへ〜♪」
「楽しかった?」
「うん!マリアおねーちゃんも、日巡璃おねーちゃん優しかった!!」
「ひまわり?」
「ああ、ジュリアをボコボコにした子よ。雄英生だったの。」
「へぇ〜!!変な巡り合わせだね?」
「そうね。あまりこういう言葉を信じたくはないけど、運命ってやつかもしれないわね。」
「似合わないねぇ!?」
「うるさいわね。……あら?」
「……スー……スー……」
私の膝の上でラクネラが寝息を立てていた。
「うふふ。めいっぱい楽しんでたものね?」
「そうだね。楽しめたなら何よりだよ!」
「大きい声出さないの。起きちゃうでしょ。」
ラクネラを撫でる……可愛いわねぇ本当に。
「……んふふ。」
「機嫌が良さそうだねぇ?じゃあ私は作業に戻るよ。」
「はいはい。早く結果出してきなさい。」
「はいよ〜。」
ヴィが部屋を後にする。
「……ふぅ。」
目を閉じて想起。
彼女の恐怖に染まった顔。たまらなく愛おしい表情。思い出しただけでも身が震える。
「んふふふふ……」
口から幸せがこぼれ落ちる。あの子のもっと歪んだ顔が見たい。もっと苦しむ顔が見たい。きっと彼女ならどんな苦痛を与えても折れず曲がらず立ち向かってくるはず。
あぁ……素敵。
これから何をしよう。まずお友達になろう。
そこから……
曲げて。砕いて。叩いて。犯して。染めて。切って。弾いて。抉って。固めて。埋めて。沈めて。刻んで。千切って……
想像しただけで。止まらない。止められない。
本当に……本当に……
「本当に大好き。」