side槍田日巡璃
「信じらんない!!」
廊下から声が響く。
昼休み。
皆昼食を終え、クラスで各々やりたいことをやっていた時廊下……A組側から大声が聞こえた。
「…………行ってみる。」
「やめといた方がいいわよ。どうせいつものだし。」
「だとしてもだよ。何かあったら先生よばないとだし。」
「お人好しね。……私も行くわ。」
「ありがとう。カナ。」
「お嬢様。私もお供します。」
「愛ちゃん……ありがと。」
とりあえず教室から顔を出してみる。
多分……A組の女子同士の喧嘩……かな?
「何よ!私みたいに私みたいにって!アンタみたいに出来れば偉いの!?」
「そんなつもりじゃ……」
「じゃあどんなつもりよ!!私以外も……このクラスの友達も見下して!それ以外にも聞いたわよ!B組の人にも、普通科の人にも迷惑かけてんでしょ!」
「!」
「ちょっとくらい個性が強いからって!頭がいいからって!なんでも出来るからって!いいわね!天才さんは!!」
「…………。」
「何か言ったらどうなの!?あんたがこのクラスの輪を乱してんのよ!ほかのクラスからA組は問題児の巣窟って言われてんのよ!?意味わかんない!」
「そんな…………。」
言われてる人は……案の定無神さん。もう名物だよね。A組の子と無神さんの喧嘩。
多分叫んでる人は……知らない人だけど、時々すれ違うから顔だけ知ってる。黒ギャルっぽいんだよね。
流水おねーさんに聞いたんだよね。A組とB組のクラス間の交流って結構あるはずなんだけど、今期の1年生に関してはA組が相当難しい子がいるって。
……B組は加糖くんのこともあって積極的にA組と関わりに行こうとしないから、交流がほぼない状態らしい。
……たしかにほかの子がA組の子と喋ってるの見たことないかも。私と日河原くんが委員長仕事で時々顔を合わせるくらい。
「爪吹(つばぶき)それくらいにしとけ。」
「錨!あんたもこの女のしり拭いしてるんでしょ!?なんか言いたいことの1個や2個あるでしょ!」
「……だとしてもここでいうべきではない。廊下だろ。」
「じゃあどこで言うのよ!こいつ人の心わかんないから言わないとわかんないよ!」
あちゃー……すごいヒートアップしてるね。錨くんだっけ?あの子も大変だね。アレの仲裁役しないといけないの地獄じゃない?
私達だけだったのに他の子もちらほら顔を出してる。
「……甘麻呂バカにしたんだ。ざまぁみろ。」
「香曽我部。言いたい事わかるけどあんま良くないよそれ。」
「はっはっは!そりゃなんの注意にもなってねぇぜ!」
「でも少しだけ可愛そうではありますよなぁ。」
「……甘麻呂はだいぶ甘いよな。天気みたいだ。」
「天眼!?それ今私ディスった!?」
「……君はもう少しだけ教養をつけた方がいい。」
「……でもそろそろ危なそうじゃなーい?」
小廻くんの一声で少しだけ緊張が走る。
「先生呼んでくる。」
「美右も行くよ〜」「左久も〜」
引子ちゃんと双子ちゃんが先生を呼びに行った。
「……。」
「どうしたの?日巡璃。」
なんというか……
「私だってあんたみたいなすごい個性と脳みそと家があったらもう少しだけうまくやれたかもしればいけどね!無いの!わかるかなぁ?天才さんには下々の民はわかんないか!!」
「そうだそうだ〜。やっちまえ〜。」
「私達の苦労がわかんないのならヒーロー向いてないよ。」
「そういえばよ。今日も今朝別のクラスのやつに食ってかかったって聞いたぜ。意味わかんねぇよな。」
喧嘩はヒートアップ。ほかのA組の子も参戦してすごいことになってる。
「…………。」
無神さんが手を握りしめて下を向いてる。
「…………可哀想な人だなって。」
「……そう。」
コミュニケーションがわかんないのかな。ずっと孤立してたのかな?私とは違うベクトルで……中学時代大変だったんじゃないかなぁ。
「……っ!!」
加糖くんが走り出す。
「あっ!?おい!甘麻呂!!」
「!」
私も少し遅れて駆け出す。
「あっ!日巡璃!!」「お嬢様!!」
「なんとか言ったらどうなのよ!!さっきから何も言わずに!!地面ばっか見んな!!」
女の子が爪を向け、無神さんに発射。
その間に加糖くんが入って、持ってたスナック菓子で受け止める。
ガキン!!
私は爪を飛ばした子を後ろ手に組ませる。
「これ以上は良くないよ。」
「……は!?何なのアンタ達!!」
「君は……!」
動こうとしてるけど無理だよ。鍛え方が違うよ。
「良くないでありますよ!良くないであります!!自分の不平不満を相手にぶつけるのはまだしも……暴力に走るのだけは良くないであります!!」
「あなた…………なんで……」
「自分もこの人に嫌なこと言われたであります!でもそれが加害していい理由にはならないであります!!」
「!」
「ぐっ……でも!!あんたはB組でしょ!?毎日こいつと過ごしてる訳じゃないのに!」
「だからこそ助けれるであります!!僕はヒーローになりに来たであります!余計なお世話かもしれないであります!関わってこないで欲しいかもしれないであります!でも!!それとこれは別であります!!!」
加糖くん……もうヒーローじゃん。
「そうだよね〜。言いたい事全部言ってくれたよ。」
「なんで……B組が!!」
「その辺でやめときな〜。爪吹さんだっけ?」
「そろそろ取り返しがつかなくなるよねん。」
あっ!皆!
「……B組。」
「先生呼んできたよ!」
「なになに?」「何が起こってるの??」
引子ちゃん!双子ちゃん!ありがと!!
「…………無神。爪吹。ハァ……それ以外もだ。そこにいるA組は職員室に来い。」
イレイザーヘッド先生!スナイプ先生も!
「……皆怪我は無いか?」
「俺たちは無事ッス!もしかしたら加糖が怪我してるかもしれないッスが……。」
「僕は怪我してないであります!」
「ならいい。……イレイザー。こちらでも事情を聞くことにする。」
「お願いします。……お前らはこっちだ。はやくこい。」
言い合ってたA組達は連れていかれる。
「…………助けてなんて言ってないから。」
「……。」
無神さんが最後に一言。
「なかなか上手くいかないものでありますな。」
「……そうだね。いじめってこういう所からスタートするのにね。」
「…………歯がゆいであります。」
そうだね。……どうなるんだろうね。あの子たち。
「加糖!バリかっこよかったやん!」
「加糖くん!君は彼女のヒーローだな!光り輝いて見えたよ!!」
「えへへ!そう言われると嬉しいでありますなぁ!!」
「1回クラス入れ。色々聞かねばならん。」
「「「はーい!」」」
「……なるほど。A組の言い合いに割って入っただけ……と。」
全員で説明する…………と言ってもなんでああなったかはわかんないから状況説明だけになっちゃったけど。
「そうだよせんせ。俺らはなーんも悪ィことしてねぇよ。」
「うん。……皆無罪。」
「そうか。……ありがとう。」
「「「?」」」
「今回は怪我無く終われたが、怪我があった場合事態は深刻化する。皆のおかげだ。本当にありがとう。」
スナイプ先生が頭を下げる。
「先生?今回のMVPは加糖くんやさかい……お礼を言うなら加糖くんやで?」
「そうだよ!私達なーんもしてないよ!加糖が間に入ってくれないと怪我してたかもだし!」
「……そうか。加糖。改めてありがとう。君のおかげだ。」
スナイプ先生が改めて加糖くんに頭を下げる。
「えっえっ!と……当然のことをしたまでであります!……というかそれなら委員長だって……」
「え〜?私は加糖くんより遅かったから……加糖くんが間に入ってないと間に合ってないからなぁ?」
私はあの子……爪吹さんを動けなくしただけだしね?
「素直に受け取っとけってよ。甘麻呂。」
「そ…………そうでありますか。…………少しだけむず痒いでありますな!!」
…………A組。これからどうなっちゃうんだろうね。