※この作品はR-18です。

きっと私のアカデミア   作:おいーも

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瑣砕

 

 

 

 

 

 

 

side槍田日巡璃

 

 

 

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

 

「えっ……日巡璃!?どうしたの!?」

 

 

 

なんで……なにこれ……なんでおっきく……

 

汗で額が滲む。息が浅くなる。身体が震える。

 

何も考えられない。考えたくない。思い出したくない。嫌だ……出てこないで……

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい!知ってるか!こいつちんこ生えてるんだぜ!!』

 

『やめてよ!!お願い!!やめて!!!!』

 

『お前らにも見せてやるよ!女なのに変だよな!!』

 

 

無理やりスカートを脱がされた。

 

幼いながらにわかった侮蔑の視線。軽蔑。拒絶。

 

『変なの。』

 

『きもーい。ありえない。』

 

『えぇ〜。そんなのあるのに女子更衣室に入ったの?』

 

『変態。二度と同じ更衣室使わないで。』

 

 

私の体が普通じゃないと突きつけられた過去。幼い私はそれを抱え込めるほど強くなかった。

 

それ以降心を閉ざした。見ないフリをした。理解を拒んだ。

 

 

おねーさん達に会っても。

 

壊理ちゃん達に会っても。……相談しても。

 

理解してもらうだけでも嬉しかった。

 

 

それでも私は目を背けた。背け続けた。結果……なんでこうなってるのかも。人間の身体のことも。それ以上に……恋愛も。

 

 

何も分からなくなった。理解しようとすると、脳が全てを拒んだ。

 

 

 

 

今思えば全ての始まりはそこだったのかもしれない。私の転落期も。いじめも。おねーさんと会えたのも。壊理ちゃんと会えたのも。雄英に入ろうと思えたのも。

 

でもこの過去は私の体に重く。歩みを止めてしまうほどに重く絡みつく鎖。私は諦めてしまった。1歩を踏み出すのを。

 

 

壊理ちゃん達だけでいいじゃないか。

 

理解してくれてる。

 

 

おねーさん達だけでいいじゃないか。

 

これ以上望むのは強欲だ。

 

 

 

 

 

もう……話すもの……疲れちゃったから。

 

 

 

 

 

 

 

初めて自分から友達が作れた。壊理ちゃん達とは違う……私がなりたいと思って出来た友達。

 

大切な……大切な私の思い出。それでいて大好きな友達。

 

 

1ヶ月しか関わってないけど、それでも楽しかった。毎日が輝いて見えた。友達と毎日授業を受けて、毎日お話して、ご飯を食べて。

 

学校ってこんなにも楽しかったんだって思えた。それだけで良かったのに。

 

それだけが……崩れ去っていく音が聞こえる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

カノーテスちゃんの顔が見れない。

 

どうすればいい。なんて言えばいい。謝ればいい?何って言えばいい。

 

 

現実に引き戻される。

 

既にソレは収まって、傍から見れば何も無い。

 

 

見間違いだって言えばいい?……友達に嘘はつきたくない。それに……絶対に見られた。

 

 

 

何も考えられない。お腹が痛い。頭が痛い。全てを投げ出したい。

 

 

雄英に居られなくなったかもしれない。私が……女子更衣室に入った変態だって言われる。もう……逃げるしか……

 

助けて……おねーさん……壊理ちゃん……私……私…………

 

 

 

 

「日巡璃!!」

 

「!」

 

重い鎖が誰かに引っ張られた気がした。

 

嫌だっ……連れていかないで!

 

 

 

「お願い!日巡璃!!私の声を聞いて!!」

 

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

私はまだ……ここに…………雄英に!

 

引っ張るのは……誰……!?

 

 

 

 

「……お願い。日巡璃。大丈夫だから。」

 

カノー……テス……ちゃん…………

 

 

 

鎖が……全部……無くなって……

 

 

私は無我夢中で……カノーテスちゃんの手を取った気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日巡璃。……落ち着いて。」

 

視界がカノーテスちゃんで埋まる。

 

 

「ハッ…………ハッ…………」

 

 

 

「…………ごめんなさい。日巡璃。聞かれたくなかったのね。」

 

「………………。」

 

 

カノーテスちゃんが抱きしめてくれてるのがわかる。

 

 

 

「私がデリカシーが無かったわ。日巡璃の事全部知りたいって思ったから……焦っちゃった。」

 

「……カノ……テス……ちゃ…………私……」

 

「大丈夫よ。大丈夫。私は貴方を拒絶しないわ。」

 

 

頭を撫でられる。鼓動が聞こえる。少しづつ……呼吸が落ち着く。

 

辺りを見渡す。

 

少し……自分の机と椅子……カノーテスちゃんの椅子が倒れて転がっている。

 

 

「……私…………何を…………」

 

「少しだけ暴れたの。……でも安心して?私は貴方の全部が知りたい。だから貴方を離してあげない。」

 

「カノ…………テスちゃん。……それ!」

 

 

気付く。カノーテスちゃんの頬。血の気が引く。よく見ると口から血が……

 

「ごめ……ごめん……なさい!私……私!!」

 

カノーテスちゃんの私を抱きしめる力が強くなる。身動きが取れなくなる。

 

 

「大丈夫よ。少し口の中を切っただけ。……言ったでしょ?離してあげないって。」

 

「…………そんなの………………都合が良すぎるよ。」

 

「あら?都合が良すぎる女はお嫌い?」

 

「…………ありがと。」

 

 

私もカノーテスちゃんを抱きしめる。

 

「嫌だったらごめんね?……何があったか……話してくれる?」

 

「………………。」

 

 

 

『…………あの3人のこと信じてあげてもいいんじゃないかな?』

 

壊理ちゃん……

 

『間違えなんて選択してからじゃないと分からない。人生なんていくらでも失敗できるんだから。それを支えてくれるパートナーだってきっと居てくれる。……ね?』

 

おねーさん。

 

 

「…………実は。」

 

私カノーテスちゃんのこと。信じてみたい。

 

それが例え失敗だったとしても。私きっと後悔しないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう。」

 

 

カノーテスちゃんに抱きしめられながら私は過去を話した。

 

両性具有なこと。それで虐められたこと。目を背けてきたこと。おねーさんに……壊理ちゃんに会えたこと。

 

今日の大きくなったのは……なんでか分からない事。

 

 

「…………ごめん。隠し事してて。」

 

「…………。」

 

 

ため息が聞こえる。背筋に緊張が走る。冷や汗が止まらない。

 

私…………カノーテスちゃんに……見捨てられ……

 

「ばーか。何言ってんの。人間一つや二つ隠したいことあるに決まってるじゃない。」

 

「!」

 

「言ったでしょ?貴方のことを拒絶しないって。貴方のことを全部知りたいって。……ね?」

 

「……カノー……テス……ちゃん……」

 

「……私の事は?」

 

「……カナ!……カナ……カナ……。」

 

ぎゅううう……

 

 

「日巡璃……ふふっ。ちょっと強いわよ……もう。私の胸貸してあげるわ。」

 

「うんっ……うん。……ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも私だけ貴方の秘密知ってるの不公平よね。」

 

落ち着いたのでふたりで机と椅子を戻して座り直す。どちらともなく椅子をくっつけて、お互いが寄り添う。

 

 

「……いいよ。私の事……受け入れてくれたし。」

 

私の左手にはカノーテス……カナの右手。安心する。

 

「ねえ日巡璃。……今日私の家……こない?」

 

「……え?」

 

「私の秘密……教えてあげるから。……お仕事で両親居ないし。」

 

「…………いいの?」

 

「うん。私好きな人に…………ううん。貴方に隠し事したくないから。」

 

まっすぐ見つめられる。頷くしかない。

 

「…………うん。わかった。外泊届書いてくるね。」

 

「玄関で待ってるから。」

 

「…………うん。行ってくるね。」

 

天捻ちゃんたちには……あとから言えばいいや。

 

 

 

 

 

スナイプ先生に外泊届を渡すと承諾してくれたので、そのまま玄関に向かう。

 

 

「日巡璃。こっちよ。」

 

「カナ…………え?」

 

 

大きな車。リムジンってやつじゃないの?

 

「乗って。私の家のだから。」

 

「へ……?」

 

 

するとメイドさんが車から降りてくる。

 

「お初お目にかかります。私ディミトリウ家のメイド……荒谷清美(あらや きよみ)……と申します。お嬢様の御学友様との事で……何卒お嬢様をよろしくお願いいたします。」

 

「荒谷。余計なこと言わないの。」

 

余計なこと?どういう意味だろ。

 

「?……よろしくお願いします。」

 

 

「それではお車にどうぞ。」

 

荒谷さんが車のドアを開く。

 

カナがサッと乗ってしまったので後に続く。

 

 

 

「うわ……広い……。」

 

それとカナの匂い。少しだけ安心する。

 

カナはもう座っており、私は入口近くに座ることにした。

 

 

「そうかしら?こんなものじゃない?」

 

「カナはお嬢様だから普通の車がわかんないんだよ。」

 

カナが私の横に移動してくる。

 

 

「……何れ乗せてくれるの?」

 

カナが私の右手を握る。

 

「…………そうだね。きっとね?」

 

カナの手を握り返す。

 

 

「嬉しい。」

 

「……私カナの家楽しみだよ?」

 

「…………そんなに大きくないわ。普通の家よ。」

 

 

 

 

って言ってたんだけど。これ本当に普通の家かなぁ?

 

「「「お嬢様。御学友様。お帰りなさいませ。」」」

 

「ただいま。」

 

 

普通の家はメイドさんこんなに居ないはずだけどなぁ???

 

「荒谷。お風呂を沸かしてちょうだい。」

 

「既に済ませております。」

 

「そう。ありがとう。じゃあ貴方は日巡璃が着れるくらいの部屋着を見繕っておいて。貴方は……」

 

カナがメイドさんに指示を出していく。

 

「「「かしこまりました。」」」

 

 

1人のメイドさんがカナに寄っていく。

 

「お嬢様。こちらの方が……お嬢様の……」

 

「もう!早く行きなさい!」

 

 

「きゃっ!皆さん。お嬢様がお怒りになられましたわ!」

 

「怖いですこと!早くお側を離れなくては!」

 

「お嬢様。あまり羽目を外してはなりませんよ?」

 

 

「余計なお世話よ!!」

 

 

……仲良しなのかな?

 

「仲良いんだね?」

 

「もう。私が友達なんて連れてくるの初めてだから調子に乗ってるのよ。」

 

 

心が少しだけ暖かくなった。

 

「……初めて…………なんだ。」

 

「…………なによ。」

 

少しだけ照れるカナ。

 

「嬉しいなって。」

 

「…………ふん。」

 

耳まで真っ赤だよ?

 

 

 

 

カナの部屋の前まで案内される。

 

「…………ここから先が私の隠したいこと。でも……いずれバレるから。」

 

「…………そっか。見せて?」

 

「うん。」

 

ガチャ。部屋の扉が空く。

 

 

部屋に入ると……

 

何が……あ……るん……だ…………

 

 

「え?」

 

 

可愛らしい部屋。天蓋ベッドだ。初めて見た。いやそんなことよりも……壁一面に広がるのは……

 

「私の……写真?」

 

 

撮られたことある写真から、いつ撮ったんだと言わんばかりの写真まで、全部丁寧に写真立てに入れて飾られてる。

 

「…………あなたとビデオ通話初めてから…………増えちゃって。これが私の隠したかったこと。」

 

「…………そうなんだ。」

 

「気持ち悪いでしょ?」

 

「そんな…………それくらい好きなんでしょ?」

 

「…………うん。……こんなの初めてだから。」

 

「……そう…………なんだ。」

 

「…………。」

 

 

カナが私の事信じてくれた。……だったら私も

 

「少しだけ……恥ずかしいね?」

 

「え?」

 

「嬉しいよ。カナが私の事それだけ想ってくれてるんだもん。…………私もカナの事知れて嬉しい。」

 

「日巡璃……。」

 

カナに抱きしめられる。

 

 

「本当に好きだから。」

 

「ふふっ。信じるしかないよね?」

 

「…………うん。ありがと。」

 

 

よく見ると私の写真…………

 

「ねえカナ。」

 

「何?」

 

「私の写真。なんだか薄着が多いね?」

 

「…………そうよ。悪い?」

 

「好きなんだ。私の身体。」

 

「…………。」

 

黙っちゃった。でも耳まで真っ赤なのはわかる。

 

 

 

 

コンコン

 

ノックが聞こえる。

 

「お嬢様。お風呂の用意ができました。」

 

 

「ありがとう。……日巡璃。一緒に入るわよ。」

 

「うん。………………うん?」

 

一緒??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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