side槍田日巡璃
「ちょ!?ママが誕生日忘れた!?」
「ええ!そうよ!滑稽よね!」
ケタケタ笑う荒天ちゃん。
「滑稽ってあんた……」
「だって笑うしかないじゃない!自分が産んだ愛する我が子の誕生日すら無下にする母親!……それって本当に天気の事大事なのかしら?」
「「「……」」」
何も言い返せなかった。
みんなは分からないけど、私は少なからず両親には返せないほどの愛情を注いでもらったから。誕生日なんてパーティもパーティ。おねーさんも呼べたら呼んでみんな笑ってた。
…………だから私は何も言えない。家族に不満なんてないから。
「……大事じゃなかったら学校に通わせてないでしょ。」
「……カナ……」
「まぁそれも一理あるわね。」
「だったら……」
「でも誕生日は忘れてる。……それって母親として正解?保護者としてはお金稼いでれば正解だけど……天気が求めてるものはお金じゃないのよね。」
「……。」
「ごめんね?みんなに恨み辛みぶつけても何も起きないのはわかってるの。……でもこのままだと天気が苦しそうで……」
「……そっか。優しいんだね。」
すると引子ちゃんがズイっと前に出る。
「……だったら好きなだけ吐け。今のうちに!アンタが少しでも吐けば楽になるのか!?」
「そ……そや!ウチらは友達や!これくらい受け止めれんで胸張って天気はんを救えるかい!!」
「ん!ん!私も……クラスは違うけど……友達!……まだ助けてくれた恩を返せてない!」
憂世ちゃんと天捻ちゃんも続く。
「ね。荒天ちゃん。教えて欲しい。天気ちゃんのこと。荒天ちゃんのこと。私たちにできることは全部やりたい。」
「もちろん私もよ。同じクラスの仲間じゃない。」
愛ちゃんは当たり前のように私の斜め後ろに。
遠回りでもいいから。みんなで天気ちゃんの助けになりたいんだ。
「…………うふふ。何よ天気……あなた幸せ者じゃない♪」
荒天ちゃんが胸を両手で抑えて……まるで誰かに話しかけるように。優しく、慈しむように声をかける。
「いいわ。この際だから話してあげる。どうせ天気は何も話さないからね。それに私の事は認知してないし。何話しても大丈夫でしょ。」
「……随分楽観的ね。」
「天気のことは誰よりもわかってるつもりよ。……天気の母親よりも。」
「……?」
なんか言い方に少し違和感が……?
とりあえず訓練は中止。ほかのクラスのみんなにお願いして寮の共有スペースをB組(+天捻ちゃん)だけで借りることに。
「……どこから話しましょうね。」
「たしかに!」
「じゃあとりあえず小さい頃の青空からでいいんじゃない?」
「そうねぇ……と言っても私が目覚めたのは小学校3年生だし……あんまり幼い頃は知らないわよ?」
「いいよいいよ!もしかしたら助ける手筈があるかも!」
「ちょっとタンマ。」
カナが手を挙げる。
「「「?」」」
「荒天。この会話録音していい?映像付きで。」
「いいわよ。先生に見せてちょうだい。」
カナは機転が利くなぁ……ううん。私もカナみたいにかっこよくならなきゃ。よしよし。
「ありがと!カナ!」
「いいのよ。」
ピッ……
「じゃあ話すわね?私がが目が覚めた時は、天気が小学3年生の秋。天気の父親と母親が離婚したところから始まるわ。」
「離婚……」
「いきなりヘビーだな?」
「それくらいないと荒天様が目覚めなかった……というのもあるかもしれません。」
「なるほどなぁ……」
「なんで離婚したかは覚えてないけれど……まぁ天気にとって相当なストレスだったんでしょうね。母親の方について行ったのだけれど、あまり豊かな生活とは言えなかったわ。」
「急に片親になったわけだものね。そう易々と同じ生活は出来ないでしょう。」
淡々。淡々と話していく荒天ちゃん。まるで自分のことじゃないように。……いやまぁ実際そうなんだけどさ?
「それでも天気は何とか頑張って周りに明るく振舞ったわ。それが私をどんどん形作っているとは知らずに。」
荒天ちゃんがお茶を1口。
「……あまり褒められたものじゃないのだけどね。私が完全に目が覚めた……身体の自由を奪えるようになったのもその頃。正確にいえば5年生くらいね。その時に通くんにもバレたわ。」
「……どうやって?」
「まぁなんというか……クラスでちょっと軽いイジメみたいな事があってね?それでカッとなった天気が……って感じ。そこに居合わせた通くんにも見られちゃってね?」
イジメ。嫌な言葉。本当に嫌な言葉。
「……個性使ったの?」
「そうね。それで天気の母親は色んなところに謝罪をしに行って……そこからかしら?母親として天気の心が少しづつ離れていったのも。」
「そっかぁ……どうしようもないけど……母親は味方してくれなかったの?」
「そうよ。相手の言い分だけ聞いて終わり。……ホント保護者よね。そういう意味でも。母親じゃない。」
「「「……。」」」
「そういうのもあってかしら。天気の母親がどんどん仕事に打ち込んでいくようになったのは。家に帰ったら天気はずっとひとりぼっちになったのは。」
「……天眼はんは?おうち隣なんやろ?」
「そうね。通くんのご両親は頑張って天気を助けてあげようとしていたみたいだけど……当の本人……天気がそれを遠慮しちゃってね?あまりそういうサポートを受けなかったの。」
「……そりゃ遠慮するかぁ……幼なじみとはいえ別の家庭だもんなぁ……」
「子供なのに遠慮するなと言いたいところですが……」
「……できるくらい達観しちゃったのね。幼いながらに。」
「しかもクラスでは通くん以外から腫れ物扱い。それどころか通くんと比べる者まで出る始末。先生も一緒になってね?……まぁ酷かったわ。」
「……。」
私みたいだ。……ううん。私より酷いかも。……私はおねーさんが居たから。私は白体教のサポートが受けれたから。思う存分縋れたから。
「家庭崩壊してたんでしょうね。既に。……そこからかしら。天気が無理に笑うようになったのは。」
「…………え?」
「自虐することで笑いを取って、自分が馬鹿だと間抜けだと演じることで周りと溶け込めるようになったの。」
「……!」
そうだよ……だって天気ちゃん雄英に入れるくらい頭いいのに……しかも一緒に勉強してる時は黙々と出来てたし……天気ちゃんはテストの点数が低いのも……敢えて……?
「……私は無理する天気を見たくないの。」
「荒天ちゃん……」
噛み締めるように。苦しむように口に出した言葉。……きっと本心だ。
「私は!天気のことを大事にしないやつを許せないの!!それが例えこの体を産んだ母親だとしても!私にとっての母親は天気なの!私は天気から生まれたの!!私はあの母親を母親として認めない!!絶対に認めたくない!!」
荒天ちゃんの目から大粒の涙がポロポロと机に落ちる。
「……!」
違和感に気付いた。そっか。『天気の』母親って言ってるからだ。自分の母親だったらわざわざ天気のなんてつけないもんね。そこまで拒絶してるんだ……そこまで……悩んでたんだ。荒天ちゃんは。天気ちゃんも。
「私は天気が幸せならなんだっていいの!天気が無理せず、素直で自由に生きてほしいの!!…………でも私じゃ天気を救えない……」
「「「……」」」
「悔しい……悔しいの!!私じゃどうしようもできない……お願い……みんな……天気を助けてあげてください。」
荒天ちゃんが頭を下げる。
……そんなの……そんなのもう心は決まってるよ!
「……カナ。撮れてる?」
「バッチリ。」
「愛ちゃん。先生に連絡して。多分スネイプ先生今日は職員室にいるはずだから。」
「了解しました。」
「天捻ちゃん。荒天ちゃんを一旦私の部屋に連れてってもらえる?鍵は貸してあげる。」
「ん。任せて。」
「私も行くよ。あんま1人にさせたくないしな。」
「引子ちゃん……ありがと!」
「委員長はん。ウチらはどないしましょ?」
「相談したの私たちだし……私たちがスナイプ先生たちと話した方がいいよね。」
「なるほどなぁ。」
みんなが動き始める。
「……みんな……」
「荒天ちゃん。安心して。」
荒天ちゃんの両手を優しく握る。
「私たちが天気ちゃんを助ける。荒天ちゃんも助ける。絶対1人にしないから。」
「……!」
私が助けたいと思ったから。これもきっとヒーロー活動だ。
おねーさんだってこうする。
ううん。私がしたいから。