side槍田日巡璃
「……ふむ。」
寮にスナイプ先生を共有スペースに招いて、カナが撮った動画を見てもらった。多分私たちが説明するよりも信憑性があるから。
今いる子は私とカナと憂世ちゃん。愛ちゃんには一旦荒天ちゃんの様子を見に行ってもらった。
沈黙。難しい問題だと思う……うん。
「先生……どうにかなりまへんか?」
「…………」
顎に手を置き考えている素振りを見せていたスナイプ先生が、少し顔をあげる。
「…………1度青空と話すことはできるか?」
「天……荒天ちゃんと?」
どうだろ……まだ愛ちゃんが帰ってきてないからどういう状態か分かりにくい。
「日巡璃。部屋が汚いとかじゃないわよね?それで帰ってくるのが遅れてるなんて……」
「大丈夫だよぉ!!」
失礼な!ちゃんと掃除してるよ!!
「お嬢様。」
「あ!愛ちゃん。どうだった!?」
「えっと……それが……」
「「「??」」」
「……泣き疲れて寝てしまった……か。」
「はい。お話するのは難しいかと……」
そっかぁ……でも寝れたってことはちょっとでも安心できたんだよね。それに関しては良かったな。
「それに少し耳に入れておきたい事実が……」
「?」
「天気様の誕生日、今日らしいのです。」
「「「え!?」」」
え!?今日!?てっきり母親が誕生日忘れてたって言ってたから昨日とか一昨日とかの話かと……
「今朝の1時くらいに電話がかかってきて……と。」
「1時ィ!?それはそれでどうなの!?」
もう私だったら寝てるよ!ぐっすり!
「……はぁ。相当な母親ね。」
「そやなぁ……あんまり信じられへんわ。」
……。
「……その青空天気に……荒天に会わせてもらうことは出来るか。」
「スナイプ先生?」
「すまない。1度この目で見てみないとなんとも言えない。」
「そう……ですよね。」
「いいよ。私の部屋に案内すればいいんでしょ?」
ちょっと恥ずかしいけどそんなの言ってられない。荒天ちゃんのためだもん。やれることはやらないと。
「すまない。槍田。」
とりあえずってことで私の部屋に案内した。
コンコン
「天捻ちゃん。引子ちゃん。私。先生連れてきた。」
するとガチャリと扉が開き、ふたりが顔を覗かせる。
「先生。」
「離。青空はどうだ。」
「…………まだ荒天のままです。……荒天ってのは!」
「大丈夫だ。みんなから聞いた。……そうか。やはり本当なのだな。」
「…………。」
「とりあえず部屋に入っていいですよ!先生!」
「すまない槍田。失礼する。」
先生が部屋に入る。続けて私たちも。
私のベッドに荒天ちゃんが寝てる。
「…………これが……青空か?」
「……はい。」
真っ黒な髪。天気ちゃんは白い髪だから……イメチェンに見えるよね。
「………………。」
スナイプ先生はジッと荒天ちゃんを見つめている。
「……わかった。とりあえず今日は一旦学校の方から親御さんに連絡を取る。」
「!」
「いいんですか!?」
「流石にこの状態を見た上で、さっきの動画を信じるななんて……そんなことは俺にはできない。今日は寮の誰かの部屋に泊めてやってくれないか。」
「はいはい!じゃあ私!」
引子ちゃんが率先して手を挙げる。
「じゃあ離。頼む。」
私も手を挙げたかったけど……引子ちゃんが早かった。くそ!
「ただし……どうなるかは分からない。相手の出方次第だ。何かあれば親御さんの意思が尊重されると思って欲しい。」
「「「……。」」」
そう……だよね。私たちはあくまで一時的なものでしかない。
でも……
「それでもいいです!ね!みんな!」
「この一瞬でも大事だろ!」
「みんなで支えるんや!」
「1人になんてさせません。」
スナイプ先生は私たちの顔をグルリと見渡して……大きく頷いた。
「よし。じゃあ青空のことは任せた。明日の朝1度顔を出しに来る。その時はまたよろしく頼む。」
「「「はい!」」」
「何かあれば連絡してくれ。すぐに駆けつける。」
先生はそう言い残し、寮を出ていった。
「……なんか話が進みそうで良かったな!」
「せやなぁ……ドキドキしたわぁ……」
「そうね。……っていうか私は寮暮らしじゃないから完全に巻き込まれた形だけど。」
「ごめんね?カナ……」
「日巡璃がやるって言ってるのに何もしない訳にはいかないわ。気にしないで?」
「素直に心配だったって言えばいいのに。」
「うるさいわね。」
私は知ってるからいいよ!カナは優しいからね!
「……それで?これからどうしよっか。」
「「「うーん……」」」
件の荒天ちゃんが寝てるし……一旦待ち?どうしよう?
「ん!」
みんなが唸ってる中、天捻ちゃんが手を挙げる。
「……誕生日……お祝いしたい……てんてんが可哀想。」
「「「!」」」
「中曲瀬ナイス!それだ!」
「私たちでも出来るよね!やろやろ!」
「なんならA組の皆さんもさそいまひょ?皆でお祝いするんや!」
「皆で手分けしよ!起きる前に準備終わらせちゃお!」
「「「おー!」」」
ってことで。
皆で手分けして準備を進めることに。
A組のみんなに声をかけたら「手伝わせろ」とのありがたいお言葉をいただいたので、手伝ってもらった。
……私はこういうのお手手が大きくて何も出来ないから買い出しくらいしかしてないんだけどね。無力です。異形個性。
てなわけで私は一旦荒天ちゃんの様子を見守ることに。
ぐっすり眠ってるみたい。良かった。
「………なのはいいんだけどさ?」
「おい!安毛!ここはちげぇっつっただろ!」
「えぇ??茜!わからんわ!」
「ふたりはなんで居るの??」
「ん?」
「え?」
そうです。茜ちゃんと安毛ちゃんが一緒に居ます。なんなら勉強してます。安毛ちゃんの。
「人数多すぎても邪魔になるだけだし、だったら安毛と一緒にこっちいた方がいいかなって。」
「槍田にも勉強教えてもらえるかもしれんしな!」
「後者が本命でしょ。」
「バレた?」
も〜……まぁたしかに人は多かったけどさ?
「ん……」
「!」
あ!荒天ちゃん起きたかな??
「荒天ちゃん!」
「こ……こ……は……?」
「私の部屋!疲れて寝ちゃったんでしょ?」
「……ごめんなさいね?そうみたい。」
荒天ちゃんが上半身を起こす。
「……天気ちゃんはどう?」
「もう少しかかりそう。……明日には起きてきそうよ。」
「…………そっか。もう少しゆっくりしてていいよ?」
「ありがとう。」
「うん!」
少しでも休めたなら良かったよ!
「はぇ〜……ホンマに喋り方も変わるんやね。」
「安毛。もう少しデリカシーをね?」
あ……そういえばA組のみんなはお話するの初めてだった。
「荒天ちゃん。ごめんね?寮にいるA組のみんなにも色々説明しちゃった。そしたらみんな協力してくれるって!」
「そうなの?……嬉しい。みんな、天気の為に……ありがとう。」
「天気ちゃんだけじゃないよ!」
「……え?」
「荒天ちゃんも助けてあげたいからみんな協力してくれるんだよ。」
「わ……私も?」
「そーだよ。当たり前じゃんか。青空天気とアンタとどっちも救ってやらないと意味ねぇじゃん。」
「せやせや!水臭いこと言わんといてな!なんでも相談してきてええで!」
「……!」
大きく見開かれた荒天ちゃんの両目から涙が零れる。
「……あ……ありがとう……ありがとう……」
両手で顔を覆う荒天ちゃん。
「んふふ。」
「ほら。ハンカチいる?」
「ティッシュもあるで!」
ふたりが荒天ちゃんに寄り添う。
「それ私の……まぁいいや。」
ふたりともありがとうね。
コンコン
……お!もしかして!
「お嬢様。準備が整いました。」
「ちょうどいいね!荒天ちゃん!行こ!」
「え?え?何が……?」
「んふふ!サプライズだよ!」
「?」
荒天ちゃん!今日は天気ちゃんと一緒にいっぱい楽しんでもらうんだから!