side青空天気
「……人格……荒天?」
聞いたところによると、私の中にもうひとつ人格があって、その子がさっきまで出てきてたから私が今寮にいるらしい。
それでその子が今日私の誕生日って言ったから急遽誕生日パーティが開かれてると……ちなみにその子は荒天。青空荒天って言うらしい。
…………正直半信半疑。
私の中にもうひとつ人格?それが寮まで歩いてきて……?
よくわかんないってのが本音。信じたいけど、信じたくない自分もいる。
「……半信半疑って顔ね。」
「うっ……」
ディミトリウに見破られた。
「まぁそれも織り込み済みやんな!」
「せやなぁ。荒天はんにも協力してもらったし……」
「??」
荒天ってのと……協力??
「あのね。荒天ちゃんが天気ちゃんにメッセージがあるんだって!」
槍田がスマホを見せてくる。これは……離のスマホ?
「え?……私に??」
「うん!だからさ!見てほしいんだ!」
「まぁそれ見たらいやでも信じるだろ。」
「いや……みんなが嘘ついてるって思いたくはないけど……うん。見てみる。」
ここで躊躇っても意味が無いので、とりあえず再生ボタンを。
ピッ……
『……よし!撮れてるよ!』
『お嬢様の声もしっかり入ってしまってるかと。』
『え!?……あ!そうじゃん!ごめんね!?』
『『『アハハハ!』』』
画面が暗いところから微動だにしないが声が聞こえる。槍田ってちょっと抜けてるよね?
『よーし!じゃあ行くよー!どうぞー!』
グイッとカメラの視点が動く。
そこには私……みたいな黒い髪の子がソファに座ってる。
上品で……大人びててって印象。
……あぁ……なんかちょっと察しちゃったかも。この子が座ってるソファ、私がさっきまで寝てたところじゃん。……この子が私の中にいる荒天なのか。
『貴方からしたら初めましてね?青空天気。改めて自己紹介するわ。私は青空荒天。貴方の中に居るもうひとりの人格です。』
喋り方も仕草も全く違う…………けどなんか親近感がある。
『急に誕生日パーティが開かれててびっくりしたでしょ?それは私が頼んだ訳じゃないんだけど、みんなが気を利かせてやってくれたの。本当にいいお友達ね?それに…………私。貴方を助けたくて。今回私がわがまま言って、みんなに協力してもらったの。みんなのこと怒らないであげて?』
「…………。」
『……私ね?貴方の両親が離婚して、すぐに生まれたの。貴方には自覚がなかったかもしれないけど、通くんは知ってるはずよ。……あのいじめの発端を作ったのも私。貴方が酷いことされてるのがどうしても許せなかった。……でもそれでもっともっと貴方がどうしようもない事になっちゃった。……私謝りたかったの。貴方に。本当にごめんなさい。』
は……?何を……
『全部全部私のせいよ。貴方が母親と仲が悪いのも。虐められてたのも。貴方が道化を演じないといけなかったのも。全部私。全部私が悪いの。だから……ね?……周りの人を恨まないであげて?恨むなら私だけにして。どれだけ罵ってくれても私は構わないから。』
思わず動画を止めた。
「…………何……言ってるの!?何言ってるの!!」
目から涙がこぼれた。
「あなたのせいだからって何になるの!!私の今までやってきたことは全部間違いだったってこと!?私が悩んでたのも!苦しんでたのも!全部全部……意味がなかったってこと!?」
「天気ちゃん!落ち着いて!」
「1回水を……」
「無理だよ!!……急に私の中に人格があるって言われて……急に私の今までの悩みが全部無駄になって……私の今まではなんだったの!?」
……私……みんなになんてことを……
でも私の叫びは……皆には予定通りだったみたいで。
「……じゃあ続き見なきゃね?」
「…………は?」
「全部見てからだな。」
「そうね。まだ半分くらいでしょ?」
「え?」
シークバーを見る。……ほんとだ……
「…………怖い……」
これから何を聞かされるの?私は何させられるの?
本当にわかんない。前が見えないよ……
「多分青空さんの怒りってそこじゃないと思うの。」
「……え?」
無神……。怒り……?
「そうだね。荒天に怒ってもしょうがないのはわかってる。」
「今お前は自分の感情がわかってないのだ。自分自身と向き合うためにも続きを見ろ。」
「…………自分自身と……向き合う……」
「これを見終わっても荒天に怒りが向いてるならしょうがねぇわな。」
「そうですね。それはしょうがないです。」
「しょうがないしょうがない。」
「…………なんかバカにしてない?」
「「「全然?」」」
なんかあったま来た。そこまで言うなら全部見てやる。
一時停止を解除。続きを見る。
『……でもね?天気。これだけは覚えておいて欲しいの。私……貴方のことが好きよ。誰よりも大事。何よりも大切。貴方が素直に笑えていれば、貴方が心の底から幸せなら……それが私の幸せだから。』
「……!」
『貴方は誰かの劣化じゃない。私にとっての一番星。太陽よ。天気……もっと自分を大事にして?もっと自分に素直になって。小学3年生から貴方を見てるんだもん。無理してるのわかるわよ?』
人差し指を立てて少しおちゃめに笑う荒天。
誰かの劣化じゃない……初めて言われた……
『母親じゃない。私が貴方を一番理解してる。文字通り一心同体だものね?ふふふっ。ね?天気。私わがままは言わないわ。……幸せになって?天気。私の天気。せっかく素敵なお友達も居るんだから……沢山頼ってもいいのよ?私だって……天気の為なら力になりたいわ?……ね?あなたの世界は幼なじみと母親だけじゃないの。』
「!」
みんなを見渡す。
みんな笑顔で頷いてくれる。これが……私……の……世界。
『私貴方の笑顔大好きなの。どこまでも澄み渡るような青空みたいで。優しくて。綺麗で。心が晴れるような。……だから笑っていて?心の底から。好きよ。天気。ずっとずーっと……貴方を見守ってるわ。』
……動画が終わった。
「…………ねぇ。」
「何?」
「……荒天って……どんな子だった?」
「口開いたらお前のことばっかりだったぞ。」
「うふふふ。余程天気はんのこと好きなんやね?」
「ん。……私たちに……負けず劣らず……愛が強い。」
「青空の母親みたいだったね。厳密に言うと違うんだけどな。」
「…………。」
私の……母親みたい……?
そっか……私の理解者は……こんな近くに……
「そっか……そっかぁ……」
自然と頬が緩む。
凄く嬉しい。私って……愛されてたんだ。
ポワ……
「?」
なんか胸が……暖かくなって……?…………あれ??
「え?え??」
「どうしたの?」
「……誰か……感じる。」
「「「え!?」」」
「胸の奥!誰か感じる!私を見てる!!」
「それって……!」
「おい!話せねぇのか!?」
「……貴方は……誰?」
«うふふ……やっとね?天気。»
「……!!」
«改めて初めまして。荒天よ。»
「貴方が……荒天!」
「いけたの!?」
「槍田の言う通りだったじゃん!」
「ねぇ!出ることは出来るの!?」
«多分出れるわよ?天気が自覚してくれたから。»
「みんな!荒天自由に出てこれるって!」
「「「!!」」」
みんなが顔を見合せる。
「「「やったーーーー!!!!!」」」
«うふふ。そんなに嬉しい?»
喜んでるみんなを横目に、私は自分で自分の身体を抱きしめた。
「ありがとう……私の中の私。荒天。……ずっと辛かったよね?」
«……貴方の苦労に比べたら。私なんて……»
「ううん。……ずっと苦しかったのよね?ごめんね……気付いてあげられなくて。」
«天気……»
「ずっと……このまま私の理解者で居てくれる?」
«……!!…………ええ!ええ!!貴方が望むなら永遠に!»
「嬉しい……ありがとう。荒天。……あなたがいれば……私全然大丈夫かも!」
«天気……!»
私の……私だけの理解者。私の全てを受け止めてくれる人。
ずっとずっと欲しかったもの。
初めて。こんな気持ちになれたの。
心のしがらみが消えて。嫌なことも消えて。
私って大切にされてたんだって思えた。
ありがとう。A組のみんな。
ありがとう。B組のみんな。
「……ありがとう。荒天。」
大好き。
«»←このカッコが主人格じゃない方のセリフです。分かりにくいかもしれませんが、ご了承いただけると幸いです。