side槍田日巡璃
「うん。……うん。……ふふ。それで?……んふふふ。」
「……天気ちゃん嬉しそうだね!」
「はい。本人の中で消化できたご様子です。」
「……一安心ね。」
「カノーテス。そっちのクッキー取ってくれ。」
「はいはい。どうぞ。」
佳舞ちゃんの隣に座ってクッキーを差し出すカナ。
……ママだなぁ。
「ん。……そういえば…………てんてんの……誕生日……お祝いしてない。」
「「「「!!」」」」
そうじゃん!!!
「みんなー!集合!!」
「「「?」」」
バースデーソングを歌ってないなんて!誕生日パーティとは言えないよ!!
「「「ハッピーバースデートゥーユー♪」」」
「ありがとーー!!」
……歌いませんよ私は。ええ。皆に全力で静止させられました。
「おいおい天気。ズリィぞ!私らも荒天と話させろよ!」
「せやせや!あんま話せんかったしな!」
「海鈴。絡み方が悪すぎるって。」
A組の子達も荒天ちゃんとしっかりお話したいみたい。いい子だもんねぇ荒天ちゃん。
「って言ってるけどどう?……うん……うん。……いいよって!今から変わるね?」
「サンキュー!……っていうか身体に負荷はねぇのか?」
「あんまり!ちょっと疲れたなってくらい。」
「天気はん。ケーキいる?」
憂世ちゃんがチョコケーキを持ってくる。天気ちゃんチョコケーキ好きなんだっけ?荒天ちゃんから聞いたのかな?
「いるいる!もっと食べれるよ私!」
「うふふ。でも荒天はんと入れ替わってしまわれるんやろ?」
「……そうじゃん!…………え?……ケーキ食べてからでいいの!?ありがとう!!ちょっと待っててくれる?」
「いいよ〜。」「ええで〜。」
「いただきマース!」
「……。」
「……どうかした?ひまひま。」
「いやぁ〜?」
……どうしようかなぁ。
「日巡璃。悩みがあるなら言いなさい。ひとりで抱え込まないで。」
「そうです。私達はお嬢様と共にありたいので。」
いけないいけない。ひとりで抱え込むのは私の悪い癖だね。
「……うん。じゃあさ?……天気ちゃんが天気ちゃんママと仲直り……って出来ないかな?」
「「「え?」」」
「くくくっ。……日巡璃やっぱ面白いな!それで?なんでだ?なんでそう思ったんだ?」
びっくりする3人を裏腹に、大層嬉しそうな佳舞ちゃん。
佳舞ちゃんは置いておくとして、3人の反応は当然だよねぇ……
「えっとね……私流水おねーさんから聞いてたんだけど、片親って家族の時間作るのすっごく難しいんだって。流水おねーさんがそうだから。……だから……天気ちゃんママにもなにか事情があったのかなって……憶測だからなーんにもわかんないけどね!?」
「「「……」」」
「ふむ。なるほど……じゃあ誕生日をすっぽかしたのは何かあるってことか?」
「それが分かんないんだよねぇ……だって結果的にどうだったであれ、天気ちゃんを雄英に入れてくれてるわけでしょ?……愛は無いわけないと思うんだよね……」
「ただ娘の解離性同一性障害に気がつけなかったのも事実だ。」
「かいりせい……?」
なにそれ??
「多重人格者の事を正確にはそう言うの。」
「へー!勉強になった!」
「母親になにか理由があったとはいえ、娘にとっては良い母親じゃなかった訳だよな。」
「それは聞いてる限りはそうなんだけど……」
「「「「?」」」」
「なんか認識の食い違いがありそうなんだよねぇ……」
なーんか引っかかる。私が幸せな家庭で過ごしてきたのもそうだし、カナの家も愛に溢れてた。少なからず私が見てきた家庭には愛があった。
だからこそ……っていうか理想だけど。天気ちゃんのママは何かあると思いたい。
「……でも……それは母親サイド……から聞いてみないと……わからない……よ?」
「むぅ……」
「…………ま。今先生が連絡してくれたみたいだし、何とかなるんじゃない?」
「ブラッドロータス先生も仰ってたのでしょう?出来ることをやって欲しいと。」
「…………そうだね!今は天気ちゃんの誕生日を楽しもう!」
パリーーン!
「「「!!」」」
何かが割れる音。音の先には……ソファから立ち上がった天気ちゃん。足元にケーキとお皿が落ちてる。
「……なんだよ今更!!!もう遅いよ!!」
よく見ると耳にスマホを当てている。……誰かと電話……?
「……もしかして……天気ちゃんのママ?」
「……そうみたいですね。」
「タイミング悪……」
「うるさいうるさい!!……何言ってももう遅いの!私のことは放っておいて!!!」
『〜ッ!〜……』
ピッ……
スマホをソファに放り投げて、そのまま力なく座り込む天気ちゃん。その様子を見て近くにいた海鈴ちゃんと安毛ちゃんと茜ちゃんが慰めてる。
落ちたケーキとお皿は憂世ちゃんが片付けてる。早い。
「……。」
皆で顔を合わせ、頷いた。
「ねぇ。天気ちゃん。」
「……槍田。」
私達は迷わず天気ちゃんの元へ。
「……何かあったの?……聞いてもいい?」
「…………荒天から聞いて。……私話したくない。」
「……うん。それでもいいよ。」
「……ごめん。」
するとフッと髪の色が黒くなって、荒天ちゃんが出てくる。
「……ごめんなさい。ケーキこんなにしちゃって……せっかく用意してくれたのに。」
「大丈夫やよ?まだまだいっぱいあるさかい……気にせんといて?な?」
憂世ちゃんはもう片付け終えてる。早いね?慣れてるのかな?
「ごめんなさい。……それで……何があったか……よね?」
「うん。」
「…………今日……天気の母親がサプライズで誕生日パーティをやるつもりだったらしいの。」
「「「えっ!?!?」」」
さ……サプライズ!?今日!?
「…………ハーッ……日巡璃の予感が当たってるじゃない。」
「……当たって欲しくなかったなぁ……」
天気ちゃんママも……ちゃんと覚えてるじゃん。忘れてるわけ無かったじゃん……
「……しかも……天気の母親……やっと部署異動ができたみたいで、家族の時間が取れるようになったって……」
「…………」
頭を抱える。
何もかも遅い。タイミングが最悪すぎる。
「…………え?……だからサプライズも兼ねてってこと……?」
「…………」
荒天ちゃんが頷く。
「…………どうしようね?」
「わかんない。」
「「「……」」」
ただの高校生には…………これ以上は無理すぎるよね。
side天眼通
「……え?今日のサプライズパーティは中止!?」
「ええ……青空さんから直接連絡があって……」
母親から告げられた衝撃の一言。
何が……今日は天気の誕生日で……皆でお祝いしようって……
「っ!!!」
俺は家を飛び出す。
「通!?」
そのまま隣の家。天気の家へ。
「夕張さん!?入りますよ!!」
青空夕張(あおぞらゆうばり)さん。天気の母親。予定通りならこの時間には家にいるはずだった。
鍵はかかってない。
ドアを開けると、玄関で座り込んでる夕張さんが。
床にはケーキと……ひまわりの花束と……誕生日プレゼントらしきもの。
「…………夕張さん……」
「…………ごめんね……通くん……私……全部間違ってたみたい。」
「……」
その弱々しい言葉に……俺は何も返すことが出来なかった。
誰を責めることも……出来なかった。