side槍田日巡璃
『私は!天気のことを大事にしないやつを許せないの!!それが例えこの体を産んだ母親だとしても!私にとっての母親は天気なの!私は天気から生まれたの!!私はあの母親を母親として認めない!!絶対に認めたくない!!』
『私は天気が幸せならなんだっていいの!天気が無理せず、素直で自由に生きてほしいの!!…………でも私じゃ天気を救えない……』
『悔しい……悔しいの!!私じゃどうしようもできない……お願い……みんな……天気を助けてあげてください。』
『全部全部私のせいよ。貴方が母親と仲が悪いのも。虐められてたのも。貴方が道化を演じないといけなかったのも。全部私。全部私が悪いの。だから……ね?……周りの人を恨まないであげて?恨むなら私だけにして。どれだけ罵ってくれても私は構わないから。』
『無理だよ!!……急に私の中に人格があるって言われて……急に私の今までの悩みが全部無駄になって……私の今まではなんだったの!?』
『うるさいうるさい!!……何言ってももう遅いの!私のことは放っておいて!!!』
パチ……
「……。」
暗い……まだ。……時間は……4:01……あと2時間は寝れるけど……
「……フー……」
あの後……何とか持ち直してパーティは終わった。その後……天気ちゃんを帰らすのもなんだし、今多分引子ちゃんの部屋で寝てるハズ。
なんか目が覚めちゃった。
上半身を起こす。
布団の中にはまだ寝てる天捻ちゃん。
「…………ごめんね。」
起こさないように布団から出て、いつものジャージに着替える。
なんか走りたくなっちゃったから。
「……行ってきます。」
返事は来ないのがわかってるけど一応ね?
バタン……
「…………。」
……いつもより早い。そして12月が近いのも相まって相当寒い。
私寒いの苦手なんだよね。雪が降らないだけマシ。
出来る限り暖かい格好で走り出す。
少し……ひとりで考えたかった。
出来ることをしなさい……か。難しいな。
私が今できることってなんだろう。天気ちゃんを助けてあげたい。救ってあげたい。
そのために出来ることってなんだろう。何をすればいいんだろう。
…………家庭問題……踏み込んで良いものなのかすら分からない。
今までは……なんか丸く収まってたから……
そっか……言語化って大事だね。なんでそうなったかが分からないと、他の事にも使えない。
なんで成功したか。なんで丸く収まっていたか。
「……フッ……フッ……」
未熟さが嫌になる。まだまだ子供なんだと実感させられる。
足踏みしてる自分が……なんだかすごく嫌だ。
「……」
出来ること……今までしてきた事……
カナは私がさらけ出した。
天捻ちゃんは私が救い出した。
愛ちゃんは私が愛を伝えた。
神奈月ちゃんは私が認めた。
ミトちゃんは私が受け入れた。
佳舞ちゃんは私が捕まえた。
「……っ……」
ランニングを終えて、1度クールダウン。
共通点なんてない。私が……全部……やりたいって思ったこと……
「……。」
やりたいって思ったことが共通点……?
でも……全部それが直接的に解決したことになった訳じゃない。
全部相手があってできたことで……
全部私だけの力じゃなくて……
みんなが居たから……こそ……
太陽が昇る。陽の光が辺りを包み込む。
「……そっか。無理しなくていいんだ。」
やれることをやるって事は……私達が無理矢理助けようとしなくていいんだ。いつも通り。普段通りに接してあげればいいんだ。
みんなの事だって……普通の私だった。無理に背伸びなんてしなかった。やりたいって思ったことが……結果的にいい風に傾いただけ。
「…………やりたいこと……か。」
できないことをしようとするとか、できることをするんじゃなくて、やりたいことをしよう。
私の心に従おう。私のやりたいこと……
それはきっと……
「ひまひま!」
声の主に視線を向けると、天捻ちゃんがジャージ姿で走って来ていた。
「天捻ちゃん!ごめんね?起こしちゃった?」
「ん。……起きたのは……そうだけど。ひまひまの顔が……ちょっと思い詰めてたから。……ひとりにさせてあげてた。」
「!…………そっか。ありがと。」
「でも……ひとりじゃ寒くて寝れないから……結局来ちゃった。」
……嬉しいな。……うん。
「えへへ。一緒走ろっか?」
「ん!……一緒のペースがいい。」
「うん!ゆっくり走ろ?」
今も……天捻ちゃんのやりたいことで……私は嬉しくなれた。
それでいいじゃん。
私のやってることはきっと間違いじゃない。間違ってた時は誰かが助けてくれる。……私は先生を信じてるから。
私のやりたい事が天気ちゃん達を救ってるって信じよう。
いつも通りでいいんだ。何かあった時に頼れる人はいっぱいいるよ!
だから私はこのままで。
「……ひまひま。」
「ん〜?」
「いい顔になった。」
「そう??」
「ん。……惚れ直した。」
「!……ふふふ。もっと惚れさせてあげるね?」
「……ひまひまは……魔性。」
「青空。気分はどうだ?」
「……普通……です。」
「そうか。良かった。」
午前7:30、スネイプ先生が寮に顔を出しに来た。天気ちゃん達と話すためだ。
一応、私達も手が空いた子は同席してる。当事者ではあるからね。……とは言っても私と愛ちゃんと天捻ちゃんだけだけど。
「まずは安心して欲しい。君を責めるつもりはない。それに……君を無理に母親に引き渡すことはしない。」
「……!」
「俺たちは君の意見を尊重したい。」
「先生……」
「青空天気も青空荒天も俺の生徒だ。この1年だけかもしれんが、君たちを進級させるのが俺の仕事だ。その間の火の粉は振り払ってやるのが先生だ。」
「…………」
スナイプ先生は天気ちゃんの目をまっすぐ見据える。それは天気ちゃんだけじゃなくて、中に居る荒天ちゃんにも聞こえるように……だと思う。
「先生。」
天気ちゃんの髪が黒くなる。
「改めまして……初めまして。青空荒天です。」
「……なるほど。映像で見た通りだな。」
「この度は先生に無理難題を……」
「大丈夫だ。それを解決するのが大人だ。先生だ。……いくらでも任せて欲しい。」
「……はい!」
……スナイプ先生……!頼もしい!
「…………へぇ……ほんとに解離性同一性障害っぽいわね。ちょと特殊だけど。」
「やっぱりですか……」
ちなみに何故かおねーさんも居ます。なんか解離性同一性障害かどうか判断して欲しいから……だとか。
「私はそっち専門じゃないから診断は難しいけれど……私の知り合いに精神科医が居るわ。その人に診断してもらって改善する事も多分可能だけど……青空さん。どうする?」
荒天ちゃんの髪が白くなる。
「……私は……荒天と一緒にいたいです。」
「……そ。じゃあそっちの方面で話を進めていきましょうか。」
「了解です。」
……やけにすんなり……そっちの方面でも話が進めれるんだ……大人の人ってすごい!
「まぁどっちにしろ……荒療治気味にはなるとは思うんだけど……青空さん。」
「はい。」
「もう一度お母さんと話してみない?」
「…………。」
「俺もそちらの方がいいとは思う。昨日話してみた限りだが……あまりおかしい言動は感じられなかった。」
「…………。」
……母親ともう一度話をする。私はすごく辛いと思う。嫌だって言ってもいい。母親にどんな理由があれ、天気ちゃんが蔑ろになってたのは事実だもん。
でもそれはそれとして、愛が無かったというのは違う。愛情のかけ方が違っただけ。……母親も……母親初心者だもんね。間違えることだってある。
「……槍田……」
天気ちゃんがこちらに顔を向ける。
分からないよね。助けて欲しいよね。
「……ダメだよ。天気ちゃん。…………自分を信じて。」
でも私は貴方を突き放すよ。……天気ちゃんは決断できるって信じてるから。
「…………」
天気ちゃんは……きっと……
「…………先生……」
今のままじゃダメだって気付いてる。
「……先生も一緒にいてくれますか。」