※この作品はR-18です。

きっと私のアカデミア   作:おいーも

240 / 280
面談③

 

 

 

 

 

 

side青空天気

 

 

 

「……ありがとう……ございました。」

 

 

教室を後にする。

 

 

 

……私……私……

 

 

«……天気……»

 

「ごめん。荒天……私……」

 

 

 

「天気ちゃん!」

 

槍田達が走ってくる。もしかして待っててくれたのかな。どこかで聞いてたのかな。

 

もう…………どっちでもいいや。

 

 

「天気ちゃん。良かったの?」

 

「……ごめん。……私弱かったみたい。」

 

「そんなことッ!」

 

「っ……ごめんっ!!!」

 

 

走り出す。顔も見れないで。

 

「天気ちゃん!!」

 

 

 

お願い。追いかけてこないで。

 

弱い私をみんなに見せたくないから。

 

 

私は………………母親の謝罪を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………。」

 

 

 

河川敷。……別に家から近い場所じゃないんだけど。ここは静かだから好き。

 

 

«……天気。本当に良かったの?»

 

「…………。」

 

 

あの時一瞬……私の本心がわからなくなった。逃げ出したい。助けて欲しい。そんな気持ちが膨らんで……もう頷いてしまった。

 

 

「…………自分の心に素直に……」

 

 

ごめんなさいブラッドロータス先生。せっかく作ってくれた機会を……台無しにしちゃった。

 

 

ごめんなさいスナイプ先生。信じてくれたのに……受け入れてくれたのに……逃げ出しちゃった。

 

 

ごめん。寮のみんな。せっかく味方になってくれたのに……やっぱり私はダメな子だったんだ。

 

 

 

 

 

「…………荒天。……ごめんね。」

 

«今からでも遅くないわ!まだ匿ってもらえば……»

 

 

「ダメだよ。これ以上何も出来ない私がみんなの時間を使う訳にはいかない。」

 

«何も出来ないなんて……そんなことないわ!»

 

 

「ありがとう荒天。私それだけで救われてるよ。」

 

«天気……»

 

 

 

もう……考えることも戦うことも嫌になっちゃった。

 

自分の境遇を変えたかったはずが……結局一方的に蟠りがある状態に。

 

 

何が変わったのさ。何が本音をぶつけ合うさ……意見を聞くさ。

 

何も解決してない。出来てない。

 

 

「私は……」

 

 

ずっと何も出来ないままなんだ。我慢するしかないんだ。

 

この時期……外が冷えるのもあって河川敷は静かだ。空も夜の帳が降りつつある。直ぐに暗くなるよね。

 

 

…………帰らなきゃ。

 

立ち上がろうとする……けど……

 

足がすくんで力が出ない。

 

 

「…………ぐすん……」

 

«……っ……»

 

「帰りたくないよ……やだ……みんなといっしょの場所がいい……」

 

«天気……ごめんなさい。私が無理にでも出てくれば……»

 

「やだよぉ……もう我慢したくない……なんで私ばっかり……」

 

 

みんなに受け入れてもらった。助けてもらったあの温かさを忘れることができない。

 

私は結局何がしたいの?どうしたかったの?

 

不完全燃焼。自分のことすら何も分からない。

 

 

 

「……だれか……助けてよ……」

 

その声は空に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天気ィ!!」

 

はずだった。

 

 

 

 

「……は……天げ……ん……なんで……」

 

「んな事はどうでもいいだろ!!」

 

 

そこにいるのは天眼通。私の幼なじみ。

 

走ってきたのか、この寒さにしては随分薄着で息も上がってる。

 

 

「も……う……ほっておいてよ!……どうせ連れ戻しに来たんでしょ。」

 

「そうだ。」

 

「っ……だったら!!」

 

「だって!!俺たちはまだお前の誕生日を祝ってないっ!!」

 

「っ!!」

 

「家に帰るか寮に行くかはそのあとでいい。俺は、お前の誕生日をしっかり祝いたい。」

 

「…………だったら今言えばいいじゃん。」

 

「ダメだ。」

 

「なんっ……」

 

「ダメなんだ。俺だけじゃ。」

 

「なによ……何が……」

 

 

まっすぐ。天眼が立ってるから見上げる形にはなっているけど。

 

他の誰でもない。私をまっすぐ見つめて。

 

 

「俺の両親は、少なからず君のことを家族だと思ってる。もちろん俺もだ。」

 

「……!」

 

「誕生日は家族みんなで祝うものだろ。楽しめなんて言わん。ただ誕生日くらい……素直に祝わせろ。」

 

「てん……げん……」

 

 

「……邪魔するぞ。」

 

天眼は私の横に座り込む。

 

「なっ!?」

 

「黙って聞いてろ。……何となくだが今日の話は聞いた。委員長から。」

 

「……槍田が……?」

 

槍田が……本当に……みんなは……

 

 

「ああ。砂臣づてだったけどな。お前の母さんが謝ってるなら俺も謝らないといけない。」

 

「…………え?」

 

 

「ずっと守ってやれなくてすまない!もっと俺が強くなれていれば!お前に無茶させる事なんてなかった!お前が傷ついてるのも気がつけなかった!1番近くで見てきたのに!」

 

天眼が頭を下げる。関係ないのに……

 

「…………!」

 

 

「どこかでお前なら大丈夫っていう油断があったんだと思う!驕りがあった!もちろん荒天のことも知ってた!でも言えなかった!夢だと思っていた!!」

 

「そん……な……いいよ!天眼は何も……」

 

 

「俺が謝らないと気が済まないんだ!許して欲しいなんて言わない!ただ謝らせてくれ!!」

 

天眼が土下座を始めた。誰も見てないとはいえ、少し恥ずかしい。

 

 

「まっ……待って待って顔をあげてよ!私が土下座させてるみたいじゃん!!」

 

「そ……そうか!そうだな……すまん!」

 

なにそれ……

 

 

「勢いに身を任せすぎでしょ。」

 

「だが……天気がそうなった一因は俺にもあるし……」

 

「天眼は違うって言ってんじゃん。怒るよ!」

 

「うっ……わ……わかった。」

 

 

……なんか全部バカバカしくなってきた。

 

 

 

 

ぐぅううぅぅぅ……

 

「……」

 

「……」

 

«……天気?»

 

 

お腹空いた。そういえばお昼御飯まともに食べてないや。

 

 

 

「天眼。腹減った。」

 

「は!?え……えと。どうするんだ!?1回寮に行くか!?」

 

「ん。」

 

ワタワタ慌てる天眼に向かって両手を広げる。

 

 

「……え?」

 

「疲れたからおんぶ。家まで送って。」

 

「……はぁ……お前……わかったよ。今回だけだぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

…………ねぇ。なんか私滅茶苦茶言ってるよね?言ってたよね?なんでこいつはおんぶしてんの??

 

なんか少し恥ずかしくなってきた。高校生にもなっておんぶされてるなんて……

 

 

「なあ。」

 

「……何。」

 

「お前の母さんのことなんだけどさ。」

 

切り出されると思った。そんな気はしてた。

 

「…………」

 

どうせ天眼も……

 

「許してやらないでくれないか?」

 

「許してくれって…………え?なんて?」

 

 

「許すなっつってんだよ。」

 

「……は?普通は許せって話じゃないの!?」

 

何言ってんのコイツ!?意味わかんない。

 

 

「何言ってんだよ。被害者は許したらダメだろうが。」

 

「え?え??」

 

本当に何言ってるか全然わかんない。意味不明。許すなってどういうこと???

 

 

「忘れないようにしろってことだよ。絶対な。……天気。あんたの母さんはぜーんぜん俺たちの事わかってねぇよ。だから許しちゃダメなんだ。教えてやらないといけない。俺たちを。」

 

「……!」

 

 

「もちろんあっちからも教えてもらわないと困るものも多いけどな!……人間って不便だよな。言葉で伝えなくちゃわかんないのに空気で察せとか言われんだぜ?無理無理。テレパシーなんて持ってねぇよってな!」

 

「……不便だよね。わかるよ。」

 

 

「お互い様だぜ?天気。許しちゃったんだろ?」

 

「う……だって……逃げたくなっちゃって……」

 

「はぁ……お前いっつもそうだよな。そういう時はもっとガツンと行くんだよ。」

 

呆れられた……!!くそ!天眼め……!!

 

 

「ううう……そ……そういえばなんで天眼は私があそこに居るのわかったの?」

 

「……………………勘だ。」

 

「絶対違う!!」

 

「いいだろうが別に!勘ってことにしとけ!!」

 

「絶対違う!!変な間があった!!」

 

「絶対言わねぇ!!」

 

「言え!言え!!」

 

「イデデデデ!?耳引っ張んな!!!」

 

「うるさーい!言え言え!!」

 

「もうおぶってやらねぇぞ!!」

 

「それはやだ!!」

 

「……子供かよ。」

 

「子供だよ。」

 

 

自分の思ったことも言えないガキだよ。

 

 

 

「…………次はちゃんと言うんだぞ。」

 

「…………わかってる。」

 

天眼の背中はいつになく大きく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。