side無神神奈月
「……こんなもんだろ。」
「お疲れ様です!師匠!」
「お疲れ様です。」
「……フン。」
今日は冬休みだけど……福と相談した結果、お互い実家には帰らないってことになって……まぁ暇すぎるのもアレだから、師匠に頼んでインターンを受けれてもらえることに。福も一緒。嬉しい♪
今はダイナマイト事務所の応接室に居る。ソファに腰掛けて、今日の仕事の書類制作を一通り教えてもらった所。
やっぱり師匠はずっとひとりで仕事をしてきたというのもあって、全部の仕事の水準がすごく高い。パトロール、書類制作、仕事の管理。どれをとっても一流。ビルボードチャート1桁は伊達じゃない。
そんな環境に身を置かせて貰えるのも嬉しいし、福も一緒に受け入れてくれたことも嬉しい。
prrr……
「……1回休憩だ。ちょっと席外す。」
「はい!」
「はい。」
ピッ……
「んだよ。ハラセン……」
あ、電話の相手ブラッドロータス先生か……
師匠が遠ざかって行ったので話の内容は聞こえなくなった。
「…………カンナちゃんは凄いね。」
「どうしたの急に。」
「あんなに怖い人とコミュニケーション取れてるんだよ?誇った方がいいよ。」
「……そうかな。師匠は師匠なりに悩んでると思うけれど。」
「それはカンナちゃんが大・爆・殺・神・ダイナマイトと長いから分かるんだよ。」
「……まぁ……確かに。」
職場体験の頃からと考えてももう半年以上。最初のインターンでも師匠のところに行ったから……そうね。師匠のところしか知らないわね。
「でも……第一印象は悪かったけど、やな人じゃないのはわかったから。」
「…………まぁ……うん。いっぱい教えて貰えてるし。」
異形型個性の身体の使い方や、身体の鍛え方とかも頭に入ってるみたいで、論理的かつ的確に教えているのが見て取れた。
やっぱ異形型には異形型の訓練方法があるのね……福のためにも覚えておきたいわ。
「……はぁ……立派なヒーローになるにはあれくらいしないとダメかな?」
「そんなことは……」
「んな事ねぇよ。」
後ろを振り向くと師匠。電話が終わったみたい。
「師匠……ブラッドロータス先生との電話は終わったんですか?」
「…………聞いてんじゃねぇ。ダボが。」
「すみませんでした!」
「……チッ。」
軽い舌打ち。師匠の癖。主にバツが悪くなった時に出る。
「…………鳥木っつったか。」
「はい。」
「てめぇ……ンでヒーローやろうと思った。」
「……え?」
「理由聞いてんだよ。てめぇのオリジンだ。」
「オリジン…………」
そういえば……私も福のオリジンを聞いたことがない。興味がある。なんだかんだストイックな福だから……憧れとか、自分の能力を〜みたいな感じだろうか?
「………………いちばん……」
「「いちばん?」」
「愛されるから。」
「「……え?」」
福の口から出たセリフは拍子抜けそのものだった。
「……愛される???」
思わず聞き返す。
「うん。……私って異形個性だけど、可愛いでしょ?」
「は?」「うん。世界一。」
「あ?」「え?」
「…………でも……私を心から愛してくれる人って……居なかったんだ。」
「どういうこと??ご両親は?」
「いない。私が小さい頃に敵被害にあって死んじゃった。」
「……!」
思った以上に辛い過去。敵被害……確かに15年も前なら珍しくない。
「だから母方の祖父母の家にいたんだけど……どっちも高齢で、結局小学生の頃にどっちも死んじゃった。」
「「……」」
天涯孤独……ってことね……福……
「えと……友達は?」
「うーん……居たけど……話さなくなっちゃった。」
「……理由を聞いても?」
「いいよ。私が好き好きしても、返してくれないから。」
「「……」」
エゴ。自己中心的。普段(私がいないところでは)クールな福の口から出るありえないセリフに少の憤りと不安感。
これは後で問いただすとして、福の次のセリフを待つ。
「…………そのあとは親戚の家に行った。母親の弟。でも忙しかったみたいで……お金は出してくれたけどほとんど顔を合わせなかった。だから……両親にも、友達にも、おじさんにも誰にも愛して貰えた記憶が無い。」
「…………」
「おじいちゃん達は?」
「……強いていえば……1番愛してくれてた……かな?」
梟は執着が結構強いって聞くけど……相手の愛が、自分が求めている基準値じゃなかったんだ……
「だから。私は愛されたいって思った。ヒーローになればみんなに愛してもらえるって。」
「そこで思考がアイドルとかにならなかったんだ?」
「うん。アイドル向いてないし。可愛いけどこんな無愛想な子いらないでしょ。」
ここで自分の容姿には自信いっぱいなのが若干矛盾してるけど……
「そうかな?私の前ではニコニコしてくれてると思うけど。」
「それは……カンナちゃんが私の事いっぱい愛してくれるから……ね?」
少しだけ照れながらはにかむ福。
「……ッスーッッ……」
私の彼女……世界一可愛い。
「……それがてめぇのルーツかよ。」
「はい。愛されたいからヒーロー目指してます。」
「じゃあお前はコスチュームをもっと洗練しろ。身体の動きはいい。……が、機能性を重視しすぎて可愛げがねぇ。」
「「可愛げ……」」
師匠の口から……とんでもない単語が……
「ンだよその顔ァッ!!」
BOMM!!
「……師匠。イラついたからって爆発させるの良くないですよ。」
「チッ……」
「……コスチュームかぁ……あんまり考えたこと無かった。」
「そうなの?」
「私可愛いから。容姿だけでいけると思った。」
「「……」」
色んな意味ですごいなぁ……福。
少し頭をポリポリ掻きながら、師匠が口を開く。
「コスチュームはヒーロー像そのものだ。技術も、知識も、ヒーローネームも、コスチュームも。全部ひっくるめてシンボルになる。……てめぇが怠ればそれも一般人に伝わる。ヒーローの印象ってのはそういうモンから感じんだ。手ェ抜くんじゃねぇ。」
「……!……そう……ですよね……すみません。」
「謝んじゃねぇ。そーゆー間違い正すのが俺らの仕事だ。」
言語化上手いなぁ……師匠。……ふふん。やっぱり師匠はかっこいい!
「福!一緒にコスチューム考えよ?」
「カンナちゃんと!?やるやる!!とびきり可愛いのにしよ!」
「なんならお揃いにしてもいいかもね?」
「!!!!……っおそ……ろい……!!!」
全身プルプル震える福。……嬉しいのかな?だったら……私も嬉しい♡
「……全然元気そうじゃねぇか。」
「そりゃ……まぁ。」
「はい。」
自主練はしてます。
「……将来有望だな。」
「「?」」
「鳥木。てめぇも暇だったら俺の事務所にインターンに来い。」
「……いいんですか?」
「愛されてぇならトップ目指せ。理想を捨てんな。」
「わかりました。お世話になります!」
「フン。」
……なんだかんだ師匠も福の事気にかけてくれたのかな?なんだか嬉しい。
「…………そういえば。」
「ンだよ。」
「ブラッドロータス先生とはなんの話してたんですか?」
「…………仕事の話だ。お前らには関係ねぇ。」
「……ダイナマイトとブラッドロータス先生って仲良しですよね。」
「あぁ!?!?」
「師匠。威嚇するの良くないですよ。私たちには効きませんし……」
「チッ……聞きてぇのか?」
「「聞きたい!」」
「てめぇは少し知ってんだろ!」
なんだかんだ向かいのソファに腰掛けてくれる師匠。……面倒見いいよね。
「ですが全貌は聞いたことないです!」
「…………仕事の手は止めんな。今日はそんな忙しくねぇから付き合ってやる。」
師匠の口からとんでもない発言がいくつも飛び交うけど、それはまた別の話で。