side槍田日巡璃
「おいひぃ……おいひぃ……」
「うんうん。良かったね?」
「うぅ……ウチ……なんで気付かなかったんだろ……」
「彼女が捻瑠ちゃんの愛に気が付かなかっただけだよ。」
「……そうかなぁ……」
愛ちゃんが持ってきてくれたご飯。捻瑠ちゃんはトンカツをひとつ口に含んだ瞬間、ポロポロとまた泣き出してしまった。
こんなにいい子を裏切るなんて許せない。私はお腹の中が煮えくり返りそうだった。でも……
ちら……
「〜……だけど……〜……!!」
「そうだよね。〜〜……やっぱり……」
私より怒ってるふたりを見て冷静でいられた。
方や妹大好きお姉ちゃん。方やおねーちゃん大好き妹。ふたりの顔と来たら……っていうか何してるの??
ふたりでコソコソ話し合ってるみたいだけど……
「……浮気なんて考えられないわ。今後万が一……兆が一にも私の好みドンピシャな人が私のことを好きになったとしても、私は日巡璃のところから離れない。裏切らないって確信できる。これはもう好きじゃないのよ。愛よ。愛。」
「当然です。我々はもはや好きではないです。愛しております。添い遂げる覚悟が出来ておるのです。……酷い言葉を使うようですが、捻瑠様の元彼女様は好き止まりだったに過ぎません。」
「……そっか……そっかぁ……うぅ……」
「……捻瑠ちゃん。きっと捻瑠ちゃんのこと心から愛してくれる人……できるよ!中学生の頃虐められてた私だって恋ができたんだよ!!」
「「……え?」」
あれ?言ってなかったっけ??
「ひまねぇを……いじめてたヤツが居るってこと……!?」
「私許せないんだけど!?誰!!日巡璃おねーちゃん!!」
さっきまでの涙はどこへやら。今度は私を虐めてた人に対して怒り始めた捻瑠ちゃんと千音実ちゃん。
なんか捻瑠ちゃんの方は目にハイライトないんだけど大丈夫??
「え?知らない!だって私以外ほぼ全員だったし……虐めてない人なら覚えてるんだけど……先生も見て見ぬふりだったから……」
「は?そいつらマジで殺すんだけど。どうにかして炙り出せない?……あ〜……なんか私の事どうでも良くなってきた。それよりもひまねぇ虐めてたやつまじで許せない。本気で殺したい。」
「ダメだよ??」
「こんなに怒ったの初めて!!捻瑠の彼女も!寝取ったやつも!日巡璃おねーちゃん虐めたヤツも!全員許せない!!身体の内側に入って脳みそ物理的に揺らして……」
「ダメだからね???」
あ〜……なんかこういう所なんとなく天捻ちゃんって感じするなぁ……
「落ち着きなさいバカふたり。」
カナがふたりの頭を軽くペシっと叩く。
「え?カノねぇはひまねぇが虐められてるの悔しくないの?」
「何言ってんの。悔しいに決まってる。なんなら貴方達と同じ気持ちよ。……天捻も。愛も勿論そう。」
愛ちゃんと天捻ちゃんが力強く頷く。
…………もうちょっと強めのストッパーが欲しいなぁ??
「でも行動に出してない。なんでだと思う?」
「「……え?」」
「私たちは家が裕福で恵まれている。ある程度の権力とお金があるわ。日巡璃を虐められていた人を炙り出すことなんて時間をかければ容易。でもしないの。理由がわかるかしら。」
「……なんで?」
「捕まるから?」
「それもあるわね。日巡璃と会えなくなるなんて以ての外だし。……答えは簡単。日巡璃が望んでないからよ。」
「「!」」
「……んふふ。」
みんな私の事大好きなのは知ってる。だけど言葉にされるだけですっごく嬉しいなぁ♪
「私たちの愛する人が望んでないことをする必要はないの。それに、私たちの限りある時間を、そんな無駄なことのために、日巡璃以外に割くことが無意味。もったいないわ。」
「ん。ひまひまが……今生きてることが幸せ。」
「その通りです。お嬢様との時間が1番大事なのです。」
「〜〜!!みんな!愛してるよ!!」
「私もよ。」「ん!」「お嬢様ッ!」
私って本当に恵まれてる。雄英高校に入って。白体教に助けてもらえて。おねーさんに会えて。……生きててよかった!
「…………そっかぁ……それも……愛なんだね?」
「すごいなぁ……私も……きっと!」
多分この一言一言がすごく大事なんだと思う。伝える。伝わる。認める。信じる。こういう積み重ねが、人を好きから愛へ昇華されるんだと。心の成長に繋がるんだと思った。
「ひまねぇ!背中流すよ〜!」
「いいの?ありがと〜♪」
夕方。なんか機嫌が元に戻った捻瑠ちゃんと、怒りが収まったらしい千音実ちゃんを引き連れてみんなでお風呂へ。
カナの髪の毛(私の特等席)を洗っていると、捻瑠ちゃんが背中を流してくれるって!
よくわかんないけど機嫌が治ってよかったよ!
「……ひまねぇの殻……大きいね?」
つんつん
「わ!……びっくりするから触る時は一言欲しいな?」
「え!あ!ごめんなさい……感覚あるんだ〜……」
「そうだよ!そこも一応体だからね。」
「異形個性〜……すごいなぁ〜……」
ぺたぺたと触られてる感覚。んふふ。なんか小さい子みたいだね?
「……そういえば暇ねぇって仰向けで寝れてるよね?なんで?」
「えーっとね。私用のベッドを作るのなんて無理だから、殻の位置を変えてるんだ!」
「殻の位置?」
「見てて?」
くいくいっと殻の場所を動かしてみせる。とは言ったものの、接着面は腰……というか腰とおしりの間?だから、あんまり無茶はできないけどね。下に引っ張って股で挟む位はできる。
「うわっ……すごい〜!」
「え!私も見せて見せて!!」
「まぁこんな感じで、ある程度なら自由がきくから、仰向けもできるってわけ。……まぁ1番楽なのはうつ伏せなんだけどね〜。」
「日巡璃は寝る時基本うつ伏せか横向きよ。私たちと一緒に寝る時だけ仰向けになってくれてるわ。」
「いずれお嬢様用のベッドも手に入れる予定です。」
「んへへ。楽しみだね??痒いところない?」
「上手よ。日巡璃。」
「「…………」」
なんか妹ちゃんズが目を輝かせてるなぁ……?
ちなみに天捻ちゃんもいるんだけど……久しぶりの実家のお風呂(温泉)だからか、無言。心頭滅却って感じ。楽しんでるようで何よりだよ。
「……うん。うん。ねぇひまねぇ〜……」
「ん〜?」
「私雄英に行きたい〜」
「「え!?!?」」
「「「?」」」
中曲瀬姉妹がびっくりしてる。どうしたんだろ??天捻ちゃんの妹ちゃんだから勉強できても……
「……捻瑠……勉強はどうすんの……??」
「「「……え?」」」
「……頑張る〜……」
……もしかして……
「……えと……捻瑠ちゃん?期末試験何点だったの?」
「全部40点位〜……」
「…………50点満点?」
「100〜……」
「「「……」」」
赤点……ギリギリ……
「……えと……千音実ちゃんは?」
「数学と国語だけ違ったけど他が100よ。」
「「「……」」」
双子でなんでこんなに差が……!?
えと……えぇ……うーん……望みが……だいぶ薄い……
「…………ダメ?」
……うっ……その目は……
「ダメじゃない!よし!私が冬休みの間みっちり教えてあげる!!」
「いいのぉ〜!!やった〜!!」
「日巡璃……はぁ……」
「うっ……だってぇ……」
「お嬢様らしいと言えばらしいですが……」
両手をあげて喜ぶ捻瑠ちゃんと、頭を抱えるその他。
……言っちゃったもんはしょうがない!私も根性見せるよ!!一緒に頑張ろうね!!!