side槍田日巡璃
「……そうだ……おねーさんに……」
集合場所へと行く時、誰かに伝えないとと思いスマホを取り出す……
でもこれ以上動けない。
「…………でも……今日は……クリスマスパーティしてるって……」
……邪魔したくない。助けて欲しい。どうすれば……
私ができることは何。何が最適解なの……!?
「……璃?」
やっぱりマリアに言ってやめて貰えるように……
「……巡璃!」
だめ!やっぱり大人に頼って……!!
「日巡璃!!!」
続く腕への圧迫感。
「!!」
「どうしたの!何かあったの!?」
「カ……カナ……」
いつの間にか目の前にカナが居た……というか腕を掴まれていた。気が付かなかった。
「……日巡璃。どうしたの。何があったの。」
「…………」
ギリ……
言えない。カナを巻き込めないよ……
「日巡璃?」
……ううん。今ここで頼れなくて何がカナを大事にするだ!カナだっていっぱいいっぱい私を頼ってくれた!私がここで
カナを信用出来なきゃ……
「カナ!……あのね……」
私だって成長したんだ!!
ドンッ!
「あた!?」
「おっと!?」
急に背中に衝撃が!?ぶつかられた!?
後ろを振り返ると、男の人が倒れてた。赤いロン毛で赤いスーツ。めちゃくちゃ目立つ。
「日巡璃!大丈夫?」
「大丈夫だよ!それよりも……」
シャカシャカシャカ……
何この音……なにかの曲?
よく見ると男の人のズボンのポケットからコードが伸びている……先にはヘッドホン。
音漏れ?まぁつけてないから漏れるのは当然だけど、ここから聞こえるってことは相当爆音だよね。
「いやぁ〜すまない!好きな曲なんだ。聞いていたら夢中になってしまってね!」
男の人が軽やかに立ち上がり、ヘッドホンを首に下げる。
「……!」
あの動き……何処かで……
「ん〜?君…………まぁいいか!」
男の人は私の顔をちらっと見たあと、興味を無くしたように視線を逸らした。
「すまないね!時間を使ってしまったみたいだ。怪我は無いかい?」
「はい。大丈夫です。」
「うんうん。なら良かった。僕もこれから用事があってね!直ぐに行かなくちゃならないんだ。」
「そうなんですね。」
「って言うことで。アデュー♪良い日々を!」
スポッとヘッドホンを耳に嵌めて、また男の人が歩き出した。
男の人の腰に……鞭?なんで??
「……変な人。」
「……あれ……郷愁(きょうしゅう)のサリナじゃない?」
「郷愁のサリナ?」
「あの人がじゃなくて……あの人が聞いてた曲。」
「……そんな曲あるんだ?」
「サビくらいは聞いた事あるはずよ。有名な曲だし。」
「へぇ〜…………」
郷愁のサリナ……
「とりあえず早く帰りましょ。集合時間過ぎてるわ。」
「う……うん!!」
あの動き……何処かで見た覚えが……??どこだったかなぁ……??
「……マリア……」
「!!」
後ろを振り返る。
……誰もいない……?マリアって聞こえた気がしたけど……
「どうしたの?」
「…………なんでもない。」
さっきみたいなことがあったから……敏感になってるのかな。よくわかんないけど。やっぱり話そう。話した方がいい。
「歩きながらでいいんだけどさ……」
「何??」
カナの手を握る。今だけ。少しだけでも……勇気を分けて欲しい。
side???
「ふぅ〜ん……?あれがマリアのお気に入りちゃんか……」
独り言は程々に、人混みを避けて目的地へ。
「ガス。遅いわよ。」
「君が開始を伸ばせって言ったんじゃないか。それに……まだこっちが終わってない。」
ヘッドホンを指でカツカツと叩く。
「……めんどくさいわね。」
「僕の美学だ。邪魔しないで貰えるかな?」
「当然。」
「逃走経路は?」
「把握済み。もう封鎖してる。」
「ベリーグッド♪じゃあ……はじめちゃおうか♪」
「早くしなさい。ヴィから催促が来てるわ。」
「はいよ。」
腰から鞭を取り出す。僕の獲物。
バチィッン!!
ん〜♪いい音色だ♪
「……革命万歳。凡庸社会に芸術的な死を♪」
side槍田日巡璃
「……」
「それ……本当……!?」
カナに話した。マリアと会ったこと。マリアに言われたこと。全部。全部。
「日巡璃!!」
少しだけ……怒られると思った。でもそれは杞憂で。
ぎゅっ……
カナに力強く抱きしめられた。
「……無事でよかった!ごめんなさい……1人にして……」
「うん……大丈夫……大丈夫だよ。」
「良かった……本当に……っ!」
カナがスマホを取り出す。
「愛!天捻は居るわね!?」
『〜〜!!』
「日巡璃がまたマリアと接触したわ!今すぐ来れるかしら!!」
『〜!?〜〜!!』
「ありがとう。場所は……」
「お嬢様!!」
「ひまひま!」
通話を初めて数分。愛ちゃんと天捻ちゃんが来てくれた。
私はというもの、一旦近くのベンチにカナと座ってふたりを待っていた。
「えへへ……ごめんね?」
「ご無事で何よりです!やはり同行した方が……」
「……怪我……ない?」
「大丈夫だよ!」
「はぁ……私たちの腑抜けた考えが嫌になるわね。」
「そうですね。反省です。」
「……ん。」
「そんなことないよ……」
「それは違います。お嬢様……彼女らは何やら不思議な個性で移動ができる。のであれば……日本全国が活動範囲と考えておかしくありません。」
「ん。それを……配慮できなかったのが……だめ。」
「……」
みんなが悲しんでる。……私は何も言えない。だって原因を作ったのは私だから。
「それよりも日巡璃……本当に無事でよかった……」
カナが私の手を両手で包む。温かくて……少しだけ緊張が緩む。
「みんな……ありがと……」
ドゴオオオオオオン……
「「「「!?」」」」
爆発音!?近い!!
「何がっ!?」
「もしかして……マリアが!!」
悲鳴と怒声。そして爆発地点と思われる場所から逃げ出す人々。
人の波。移動すらままならない。
「こんなの!」
「行けない……ね。」
「お嬢!!」
天捻ちゃんの使用人さんたちも現れて、向かうことすら許されず、私たちは現場から避難することに。
結局何も出来ないまま……何かが起きてしまった。
知っていたのに。予めわかっていたのに。誰かに伝えることが出来たら被害が抑えられたかもしれないのに。
私が……強かったら。もっと。もっと強かったら。
何度後悔しても、目の前の炎は消えない。
「もっと……力が……欲しいよ……」