side中曲瀬天捻
帰りの車中。パパとママ……ママが運転してる。パパが助手席。お酒飲んじゃったからね。
命に別状はないし、後遺症も無い。一安心。ちなも捻瑠もどちらも私の隣で落ち込んでる。
「……」
「そこまで大きな障害も残らないみたいで良かった……」
「心配したのよ?」
「ごめんなさい……」
ちなが謝る。
「あなたは謝ったらダメ。……ひとつあるとすれば、槍田ちゃんが言ったみたいに保護者なしで遊んでたこと。…………それを容認したのは私たちなんだけどね?」
「ああ。何事もなくて良かった。あの嬢ちゃん達には感謝しないとな。」
「うふふ。違うでしょ?未来の義娘よ?」
「うぐぐぐぐっ………………」
パパはまだひまひまのこと認めてない。
…………表向きは。
ちなと捻瑠を助けてくれた事がすっごく嬉しいみたいで、その上私のデレデレ具合を見て割と初めの方にコロッと認めてる。
ひまひまが怖がってるからあんまり喋れなくてシュンとしてる。最初に威嚇したからだよ?
「……ごめん千音実。……私が……守ってもらっちゃってたから……」
「……いいの。私がしたかったことだし……それよりも捻瑠が無事でよかった。」
……ふーっ……このままにしておけないよね。
「…………ね。パパ。ママ。」
「どうしたの?天捻ちゃん?」
「……どうしよっか。アイツ。」
パパとママの顔から笑みが消える。
「……どうしようもない……のが事実だな。だがこの辺りの高校はもう受けてはくれないだろう。」
「未成年だしねぇ……私たちにできることは……何も無いわ。」
「……」
そう……だよね。私じゃ……何も出来ない。
「ただ……確実に学校で問題にしてみせる。このまま狸寝入りなぞせん。」
「ええ。そうですね。私もお力添えします。」
…………私も……この子達を守ってあげたい。出来ることをしたい。……どうしよう。
「……」
私はちなと捻瑠を抱きしめる。
「……無事で……よかった。」
「「!!」」
「何事もなくて……良かった。すっごく……心配したんだ……よ?」
「「あまねぇ……」」
「あの時……ひまひまが飛び出たからあれですんだけど……私が飛び出てたらわかんなかった……」
ほんとに……仮免許持ってないから……ひまひまには感謝だね。
「……良かった。ふたりとも……!」
「うんっ!ありがとう!あまねぇ!」
「ごめんなさい〜……次から気をつける……」
…………そうだ。
「せんせ?」
『どうしたの?今中曲瀬さん実家よね?』
家に帰ってから、みんなから離れてひとり。
ブラッドロータス先生に電話をかける。私に今頼れる人は……この人しかいない。
時刻は5時。……なんかすごく迷惑だけど……話さずにはいられなかった。
ちなみにワンコールで出てくれた。ブラッドロータス先生も起きてた??
「ん……ちょっと……聞いて欲しい事があって……」
『ん〜……わかった。いいわよ。』
「あの……ね?」
『……個性不正利用による未成年の犯罪ねぇ……』
「……ん。」
『……大変だったわね。妹さんは無事かしら?』
「ん!……そんなに……大きな怪我じゃない……」
『そう。良かったわね。……それで?』
「……」
『私に話して……どうしたいの?』
どうしたい……言ってもいいのだろうか。……ううん。言いたいから電話をかけたんだ。
「え……と…………せんせ。私……妹たちを……守りたい。でも…………相手のことも許せない。……学校で問題にするだけじゃ……溜飲が……下がらない。」
『……』
「どうすればいい……の?……何ができる……?できることなら……なんだっt」
『ダメ。』
「!」
『貴方に犯罪の片棒を担がせるような事は絶対にさせない。』
返ってきたのは……大人としての対応だった。
「でも……せんせ……」
『じゃあ何?私に罪を犯せと言いたいの?』
「そんな…………訳じゃ……」
何も喋れなくなる。そんなつもりはこれっぽっちも無い。
『………………中曲瀬さん。貴方はまだ子供なの。学生なの。……仮免許すら持ってない初心者なの。そんな人に……私ができる助言は少ない。』
子供。学生。初心者。
事実がずっしりと肩に重くのしかかる。
「……私が……もっと早く……早く来てれば……ヒーローだったら……」
みんなを笑顔にできる……ヒーローだったら……!!
『無理ね。』
「…………え?」
『今回の状況……通報しない人達が悪いけど、正直間に合ったかどうかは分からない。日巡璃ちゃんたちと同じタイミングだったかもしれない。ヒーローだって人間よ。出来ないことは出来ないの。ヒーローを神格化し過ぎちゃダメ。』
「…………」
バッサリ。夢にヒビが入る感覚。
じゃあ……どうすれば……良かったの?私が無力で……妹を救えなくて……お姉ちゃんなのに……情けなくて……妹に顔向けできなくて……
『……ね?中曲瀬さん。』
「…………はぃ。」
自分でもびっくりするくらい弱い声が出た。
『悔しい?』
「…………ぇ?」
いきなり……何を……
『悔しい?』
もう一度。……それは……
「……悔しい……です……」
『辛い?』
「……はい。辛いです。」
『相手のことどう思ってる?』
「……憎いです。……すごく……すごく。」
『……でも今の社会では出来ることが限られるわよね?』
「………………」
そう。未成年は法律に守られて……罪の意識が重くのしかかる事を理解しきれない。そういう受け皿もある。社会復帰が出来てしまう。
『……ね。中曲瀬さん。明日……そっちに行ってもいいかしら?』
「……え?」
「……え??」
「あの時はありがとうございます。」
「いえいえ。あの時は学生でしたし……まだまだ力及ばず……」
「それに今になっても施設を色々手助けしていただいてるみたいで……」
「……まぁあれは院長が私の知り合いなので……その一環ですよ。」
「はい。それでも感謝しています。ありがとうございます。」
「いえいえ。こちらこそあの施設から何人も雇っていただき……」
「「「「…………」」」」
なんで……せんせがパパとママとお話してるの……??
パパ曰く……
パパと今のママはどちらも敵被害で両親を亡くした孤児で、どちらも同じ児童養護施設で育ったんだって。
特に何事もなくパパとママのふたりは……大学からどちらも別々の道を歩くことになるんだけど……
パパは亡くなった両親の家業を継ぐために頑張ってお仕事をして、私を産んでくれたママと出会って、付き合って、私を作ったのはいいんだけど……もうすぐ出産っていうタイミングで、ママが敵の魔の手に……それで私だけ何とか取り出して……
まぁそこから話を聞いた今のママがパパを支えて……って……感じ。
……で、その敵を捕まえたのが当時学生だったブラッドロータス先生。
さらに、今児童養護施設の院長をやってる人は、ブラッドロータス先生が手引きした人。……すごい巡り合わせ……
……ブラッドロータス先生は……私の命の恩人だった…………?
「……天捻ちゃんも……同じだったんだ……私と……」
横にいるひまひまが声をかけてくる。
「…………そう……だね……」
実は共通点があった私たち。
「そんなの言ったら……私のパパに手術してくれたのも……ブラッドロータス先生よ?」
「あ……」
カノカノも……そうじゃん。ブラッドロータス先生に助けられてる。
「「「……」」」
3人の目が一斉にあいあいに向く。
「……なんですか。私は多分無いですよ?」
「「「……」」」
知らず知らずの内に何かしらありそう。ブラッドロータス先生はそういう人。
「それで……本日はなぜお越しに……?」
「貴方様の元奥様を殺めた敵……あの大戦で脱獄した後の足取りが追えなかったものですが……ヤツのしっぽが掴めました。」
「「「「!?」」」」
脱獄!?足取り!?なんの事!?
「そ……それは本当ですか!?」
「はい。これまで以上に捜査は進むことでしょう。私もヤツを逃すつもりは甚だありません。私が全力を持って奴を捉えます。…………たとえヤツの命を奪ったとしても。」