※この作品はR-18です。

きっと私のアカデミア   作:おいーも

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挑戦

 

 

 

 

 

 

side中曲瀬天捻

 

 

 

「せんせ……さっきの……何?」

 

「ん〜?」

 

 

お話の後……ブラッドロータス先生を1人中庭に呼び出して、さっきの発言の意を聞いてみた。

 

ここには誰もいない。……後ろでみんなが聞いてるけど。あれだけ1人にしてって言ったのに……もう。ひまひまはおしおきだね。

 

 

 

「…………殺してでもって話?」

 

妖艶な笑み。殺しが選択肢に入ってる瞳。先程の冷たい圧力じゃない。何者も包み込んでしまうような緩やかな殺意。

 

「…………!」

 

私でもわかる程のその圧は……無意識もうちに私に私の体に1歩……後退させていたらしい。

 

 

「んふっ……怖かった?」

 

「……とても。」

 

 

肝が冷えるというのはこの事か……ホラー映画、怖い話。いくら見てもよくわからなかったけど……これならよくわかる。

 

ブラッドロータス先生は……一体いくつの修羅場を潜り抜けてきたのか。今の私じゃ計り知れない。

 

 

「……あのね?殺してでもってことは……そのまんまだよ?」

 

「……ヒーローは……」

 

「殺しをしちゃいけないよね。」

 

「…………ん。」

 

先回りして言われてしまったのなら頷くしかない。

 

 

「うん。ごもっとも。…………でもね?中曲瀬さん。」

 

くるんとターン。ブラッドロータス先生がこちらに背中を向ける。

 

 

「どうしようもない人っているの。」

 

「……」

 

「知ってるはずだよ。あなたも。説得ができない相手。」

 

ブラッドロータス先生はゆっくりと前に進み……やがて影に足を踏み入れた。

 

「…………ん。」

 

心当たりなんて山ほどあった。私をいじめてたヤツ。ひまひまをいじめてたヤツ。私の妹に手を出したヤツ。

 

この1年でも既に5人。

 

 

「家庭環境。友人関係。本人の性格。全てを見返しても取り返しのつかない事をした人間。それでも法律は守ってくれるよね!…………果たしてそんな人間……法律で守る意味はあるかな?」

 

ブラッドロータス先生がこちらをゆっくり振り向く。

 

 

影で顔があまりはっきり見えないけど……目だけ。何故か目だけしっかり確認できた。先程までの穏やかなソレとはまた違うナニカ。

 

 

「……せんせ……?」

 

「…………守る価値もない。だから殺す。」

 

「……!!」

 

「私はそれだけの術を。仕事をしてきた。」

 

「……なにを……せんせ……」

 

「中曲瀬さん。私はあなたが思うヒーローじゃない。私は今まで……何人も殺めてきた。」

 

「…………」

 

あやめる……殺める?……先生が……?人を……?

 

 

 

「……日巡璃ちゃん?聞いてるんでしょ?出てきなさいな。」

 

急にホワッと顔を緩ませ、私の後ろ側に声をかける。

 

気付いてたんだ……先生も……

 

 

「「「……」」」

 

3人がおずおずと顔を出す。

 

 

 

「……聞いてたでしょ?」

 

「……おねーさん……?ヒーローじゃ……なかったの……?」

 

 

ひまひまの顔が困惑に歪む。そうだよ……だってひまひまは……ブラッドロータス先生みたいなヒーローになりたくて……

 

「ヒーローだよ。厳密に言ったら……ね?」

 

その言い方だと……

 

「違うと言ってるようなものですが……」

 

「憎田さん。そうだね。……正確に言うと……私は公安直属の始末屋だよ。」

 

 

「始末屋……!?」

 

「殺し屋ってこと!?」

 

「うん。敵専門のね?」

 

敵専門の殺し屋。都市伝説か何かだと思っていた。やっぱりいるんだ……公安の懐刀……

 

 

「まーあ。この話はおいおいするとして……私はそれでもヒーローとしての活動を怠ったことはないよ。見てたらわかると思うけど。」

 

「それは……」

 

「そうだけど…………」

 

「……学生に聞かせる話じゃないよね。……でもね?」

 

 

ブラッドロータス先生が数歩前に出る。影から出て……光に照らされる。

 

「居るのよ。ヒーローにも。汚れ仕事を専門に扱うやつが。……それで社会は平穏に保たれてる。」

 

「「「「……」」」」

 

 

「存在意義じゃない。それに縋ってるわけでも酔いしれてるわけでもない。私は言わば社会の抗体。なくちゃならない存在。…………社会を正常に回すために。」

 

「…………誇り……ってやつ……」

 

「……まぁそうね?私はこの仕事に後悔はないし、間違ったとも思ってないわ。私のやるべきことをやってるだけだから。」

 

 

「…………」

 

 

 

 

かっこいい……社会のために……あえて自分から裏の社会へ……

 

 

 

 

 

「……せんせ!」

 

私も……!

 

 

 

「中曲瀬さん。」

 

「!」

 

 

「私が今日来たのは他でもない。あなたに用事があったの。」

 

「…………私?」

 

 

先生がゆっくりと手を差し出す。

 

「ええ。……あなた……私の後継者にならない?」

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side槍田日巡璃

 

 

 

「ええ。……あなた……私の後継者にならない?」

 

「…………え?」

 

天捻ちゃんが……おねーさんの後継者……!?

 

 

「あなたは……人を心の底から憎める人。他者のために自らを犠牲にできる人。そして…………自らの理想を捨てない人。」

 

「…………」

 

「あなたは裏社会でヒーロー活動をできる。私が断言するわ。」

 

 

 

「ちょ……ちょっと待ってよおねーさん!何を言ってるの!?」

 

「……そうよ!他の人ならまだしも……先生がそんな勧誘をするなんて……」

 

「教育者としてそれはどうなのですか!我々は少なからず天捻様を大切に思っております。危ない道を自ら渡らせるなど……」

 

私に続き、カナと愛ちゃんも。みんな天捻ちゃんが大事だ。そんな勧誘……!!!

 

 

「みんな……」

 

天捻ちゃんが私たちを手で制する。

 

「天捻……ちゃん……」

 

「……ん。大丈夫……だから。」

 

何が大丈夫か分からないけど、天捻ちゃんはおねーさんに向き直る。

 

 

 

 

「せんせ……私は……そうしたら……妹みたいな苦しむ人を……助けれる?」

 

「ええ。」

 

1歩。

 

 

 

「みんなを……笑顔にできる?」

 

「ええ。」

 

1歩。

 

 

 

「私は…………仮免許すら持ってないよ……それでもやれる?」

 

「貴方なら。」

 

「…………」

 

天捻ちゃんは1歩づつ歩き、おねーさんの前に着く。

 

 

「天捻ちゃん……」

 

天捻ちゃんが私たちに振り向く。

 

 

「ね。みんな……私……妹が大切。」

 

「……うん。」

 

 

「それと同じくらい……ううん。それ以上に……みんなも大切。」

 

「当たり前じゃない。私も天捻のこと大切よ!」

 

 

「……ありがと…………だから……私。挑戦したい。」

 

「「「!」」」

 

 

「せんせみたいに……殺しをするかもしれない。……言っちゃいけない仕事に……手を染めるかもしれない。…………でも……私は……同じ苦しみを抱える人を……増やしたくない。」

 

天捻ちゃん…………そっか。

 

「私……やる。せんせみたいに……なる。」

 

天捻ちゃんはおねーさんに向き直り……手を取る。

 

「……ようこそ。こちら側へ。」

 

 

 

それが覚悟なんだ……天捻ちゃんの……

 

「…………わかった。」

 

「はぁ!?日巡璃!?」「お嬢様!?」

 

 

「その代わり……無理しちゃダメだからね!」

 

「……ん!」

 

「……。」

 

とは言ったものの……やっぱり少し寂しくなって天捻ちゃんを引き寄せ、抱きしめる。

 

 

「……ひまひま?」

 

「ホントはね……ホントはやって欲しくないんだ。もしかしたら怖い目に合うかもしれない。天捻ちゃんが戻ってこないかもしれない。…………そんなの耐えられないよ。」

 

「…………」

 

「でも!私は天捻ちゃんの覚悟を尊重したい。」

 

「……ひま……ひま……!」

 

 

「おねーさん!」

 

「はぁい。」

 

「天捻ちゃんを……よろしくお願いします。」

 

「……別れるみたいな感じだしてるけど全然そんなことないよ???」

 

「ううん。これは天捻ちゃんのパートナーとしての意思表明だから。…………何かあったらおねーさんでも許さない。」

 

「!」

 

「…………♪……へぇ……言うようになったわね?」

 

おねーさんが少しだけ口角をあげた。

 

 

「天捻ちゃん。」

 

「……?」

 

「私が表から支えて……天捻ちゃんが裏から支える。……きっと素敵な社会になるよ!」

 

「……!!」

 

「一緒にがんば……」

 

ベシン!

 

「あた!?」

 

 

「日巡璃!勝手に話進めてんじゃないの!!」

 

カナに頭を打たれた。

 

 

「ごっ……ごめん!」

 

「……もう。……天捻。後悔はないわね?」

 

「……ん。」

 

「じゃあ頑張ってみなさい。私たちだって負けないから。」

 

「カノカノ……」

 

 

 

「天捻様。大変ご立派な選択です。」

 

「…………さっき……大切にって……」

 

「……ふん。お嬢様がお背中を押しているのに、従者兼恋人である私が賛同しない訳にはいきません。」

 

「…………素直じゃない。」

 

「うるさいですね。何かあれば何時でも仰ってください。お嬢様の余り物でいいならお出ししますよ。」

 

「…………ありがと♪」

 

 

 

「なーんだ……みんなしっかり大人ね?」

 

そんなこんなでなんか満足したようなおねーさんは帰って行った。

 

天捻ちゃんの挑戦……

 

 

応援もそうだけど……負けてられないな!これからもっともっと強くなろうね!天捻ちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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