※この作品はR-18です。

きっと私のアカデミア   作:おいーも

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今度は私が

 

 

 

 

 

 

 

side槍田日巡璃

 

 

 

「エスネイラー。なにか掴めそうか。」

 

「いえ……それがちょっと難航してて……」

 

 

 

パトロール中。速度はいつもよりゆっくりめ。私に合わせてくれてるみたい。

 

 

「そうか……」

 

「……」

 

「「……」」

 

なにかアドバイスをくれる訳じゃないと。

 

 

 

ショートってなんかすっごく不思議な人だよね?コミュニケーション取れてるのこれ???

 

……私……なにか掴めるのかな。不安になってきた。

 

 

「キャーッ!!」

 

「「!!」」

 

ひったくり……!!

 

 

「っ!」

 

ガギン!!

 

一瞬……

 

「……ふぅ。」

 

 

 

「「「ワーーーーーッ!!!!」」」

 

ショートの周りに人が集まる。

 

 

 

すごい。判断が早い。相手の逃げ道ごと凍らせて動きを封じた。周りの人に被害を出さずに。

 

個性の繊細な動き。判断の速さ。思考。ショートはこれが全部最高水準なんだ。

 

 

ここまでできないと……トップヒーローにはなれない。

 

何かしないと。何か起こさないと。そんな気持ちが私の足を引く。……ダメ。きっと何かあるはずだから。ゆっくり……しっかり……焦らないで……

 

……あれ。

 

 

「……!」

 

あのトラック……よそ見してッ!!

 

 

横断歩道。ピンクのパーカーを被った女の子がショートが作った氷を見ながら歩いてる。トラックを運転してる人も同様。

 

このまま……トラックが突っ込んだら……!!

 

 

「っ!!!」

 

「エスネイラー!?」

 

 

 

どうするかも全く考えてないけど体が動いた。

 

 

どうするどうするどうするどうする!!結構スピード出てる!私のパワーで止めれるか!?

 

女の子は……まだ気付いてない!!失敗なんて考えるな!!躊躇も迷いも!今ここで全部投げ捨てろ!!

 

 

 

女の子を抱き寄せ、突っ込んでくるトラックに向かって全力で拳を振り抜く!

 

 

不十分な体勢。力を上手に加えきれない。でもそんなの……

 

「知るかああああああっ!!!」

 

ドゴン!!

 

すごい衝撃!……でも!!耐えられないほどじゃない!!

 

拳を上に振り上げろ!タイヤを浮かせ!!駆動輪を浮かせば止まるはず!!!止まらなくたって身体で車体を持ち上げろ!!

 

「止まれえええええッッ!!!」

 

 

 

ズガガガッガガガガ……

 

轟音とともにアスファルトを擦り上げるように足が抉り、なんとかトラックが止まった。

 

トラックの運転手さんも、腕の中の女の子もびっくりした表情で固まってる。

 

…………足痛い。多分折れては無いけど……怪我になってると思う。

 

 

「無事か!エスネイラー!!」

 

「はい!どっちも生きてます!多分!」

 

「「「うおおおおおおおおっっっ!!!!」」」

 

うわっ!?え?何何!?

 

 

「すげー!!トラックひとりで止めたぞ!?」

 

「すっげぇパワー!!異形個性ってすげぇなぁ!!」

 

「誰あれ!?知らないんだけど!!」

 

「インターンの子かな??ショートのところに来てるんだ!!」

 

…………

 

 

 

「エスネイラー。」

 

あまりの大歓声にびっくりしてる私に、ショートが声をかけた。

 

「あ……ショート……」

 

「よくやった。」

 

「!」

 

よくやった。

 

 

初めて……ショートの所にインターンで来て。初めて褒められた気がする。全部全部……ショートに先を越されてたから……

 

 

 

さっきの一瞬だけ。ショートを越せた自分が嬉しい。

 

「……はいっ!!」

 

 

……とと。それよりも……

 

 

 

とりあえず止まってるトラックを下ろして、女の子をお姫様抱っこで一旦ベンチへ。

 

 

「大丈夫だった?」

 

「あ……えと……」

 

パーカーのフードが脱げてる女の子は、いわゆるギャルみたいな子で、バチバチのメイクと透き通るような白い肌。頭は髪というよりは無数の触覚を結んであって、手元には参考書が。受験生かな?

 

 

「あ……あの!アンタ……足が……!」

 

「ん?」

 

自分の右足を見る。血だらけ。そりゃそうか……アスファルト抉ったもんね。

 

まぁでも歩けないほどじゃないし……止血してたら大丈夫かな?

 

 

「ああこれ?多分大丈夫だよ。」

 

「いや!……消毒しねーと……」

 

「んふふ。優しいんだね?」

 

「あっ……あの……その……」

 

頭をポンポンと撫でる。……おぉ……なんとも言えない感触。ぷにぷにしてる。

 

 

「…………あの!」

 

「どうしたの?」

 

「アンタ……異形個性だろ?教えてくれ!」

 

「いいよ!」

 

「……苦しくないのか。」

 

「……!」

 

縋るような。それでいて諦めているかのような目。

 

……この子……もしかして……

 

 

 

「あのさ。私あと1時間でインターン終わるんだけど、どこかで待ち合わせしない?」

 

「……え?」

 

「しっかり話したいなって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここまでの経緯。

 

あの後私が大怪我したってショートが流水おねーさんに連絡。

流水おねーさんが被身子おねーさんを引き連れて大慌てで到着。

ショートにブチ切れながら私の手当を完璧に済ます流水おねーさん&流水おねーさんを窘めながら無くなった血を補給してくれる被身子おねーさん&しょんぼりしてるショート。

怪我はそこまで深くなく、ある程度安静にしてたら治るとの事。

おねーさん達と別れてイマココ。

 

 

 

「怪我とかなかった?」

 

「……ウス。」

 

指定されたのは近くの公園。ブランコに腰掛けて話し始める。

 

 

「……えっと……苦しくないか。だっけ?」

 

「…………ウス。」

 

「……まずなんでそう思ったか聞いてもいいかな?」

 

「…………自分……両親は異形個性じゃないんだ……ッス。」

 

「……敬語苦しかったらやめていいよ?」

 

「あざます。……それで……別に両親から育児放棄されたとかそんなのじゃなくて……周りの目が……辛くて。」

 

「……!」

 

「アタシ……クラゲの個性なんすけど……綺麗とか……可愛いとか…………それって異形個性だから目立ってるだけで……色んな人からやっかみを受けて…………変な人もよってくるから……辛くて……」

 

今にも消え入りそうな声。すっごく苦しかったんだね。

 

 

「……そうなんだ。」

 

「それで……親にも反発して……学校も嫌になっちゃって。……でも勉強はしたいからしてて……」

 

「うん。……うん。」

 

「……親からは変なやつとはつるむなって言われてんだけど……アイツらは……同じ悩みを抱えてる仲間だから……大事にしたくて……」

 

「……そっか。」

 

異形個性ちゃんたちがグループで固まってるんだ。……でも勉強してるのはえらいよ。さっきの参考書も難しいやつだったよ?

 

 

「でもこんな自分続ける訳にはいかないのもわかってて……異形個性なんかに生まれなければって……苦しくなって……」

 

「…………」

 

私も……何度も思った。小さい頃。なんで私はこんな身体に産まれちゃったんだろうって。

 

 

「でも!今日……アンタが……かっこよくて!!」

 

「……!」

 

「アタシ……何が……したいのか……わかんなくて!恥ずかしくって!……教えて……欲しくて……」

 

 

あの頃の私と重なった気がした。

 

おねーさんに会う前の私。悲しくて。苦しくて。居なくなりたくて。……でも生きていたくて。

 

おねーさんに会って……

 

 

「じゃあさ。まずパパとママに謝ろうよ!」

 

「……え?」

 

助けてもらったんだ。だから。

 

 

「私も一緒に行くからさ!」

 

今度は、私が。

 

 

 

「いや……あの……そこまで……」

 

「あのね?……スタートラインって大事だよ。」

 

「……!」

 

 

「スタートラインってね?自分がここから始めるんだって気持ちのことだと思うんだ。あなたはそれがまだふわふわしてるんだ。」

 

「……」

 

「そのふわふわをどうにかしないと、一生迷っちゃう。探しちゃう。苦しんじゃうよ。だからまずは憂いを無くしていこ?今日はパパとママに謝る。明日は先生に謝る。……ね?」

 

「…………ウス。」

 

なんとか頷いてくれた女の子。一緒に女の子の家へ。

 

 

 

ちょっと嫌な予感したけど、普通の一軒家だった。……良かった。

 

標識に真戸原の文字。……まとはらって読むのかな?

 

 

女の子がガチャっとドアを開けると、ふたりの大人が突撃してきた。

 

 

「紅姫ちゃん!!」「紅!!」

 

「わぷっ!?!?」

 

ふたりが女の子に抱きついた。……多分ご両親?

 

 

「事故にあったって聞いたぞ!?怪我は無いか!?」

 

「大丈夫!?どこも痛くない!?」

 

「うがーーーっ!!うぜぇうぜぇ!!どけ!!!」

 

紅姫(べにひめ)ちゃんと呼ばれた子がブンブン腕を降ってご両親を跳ね除けた。

 

 

 

「……ふーっ……ふーっ……あの!!」

 

紅姫ちゃんがご両親に向き直る。

 

 

「……今まで変に反発しててごめんなさい。」

 

紅姫ちゃんがしっかり頭を下げた。

 

「「!」」

 

 

「……異形個性が苦しかった。変な目で見られるのが嫌だった。だからアイツらともつるんでた。同じ悩みを抱えてたから。」

 

「「……」」

 

「……何も言わずに……自分の殻に閉じこもって……学校にも行かないで……フラフラしててごめんなさい。」

 

ご両親はふたりとも顔を伏せた。

 

 

 

「「……そんなの……」」

 

「え?」

 

「「どうでもいいに決まってるでしょ!!!」」

 

「!?」

 

 

 

「私は紅姫ちゃんが無事ならいいの!今日事故にあったって隣の西東さんから聞いたよ!?怪我は!?」

 

「な……無いです!!」

 

 

 

「紅が元気だったら俺たちはそれだけで嬉しいんだ!幸せなんだ!学校に行かないからなんだ!勉強はちゃんとしてるんだろう!……それよりもお友達のこと悪く言ってごめんね?」

 

「え……えと……」

 

 

こっちに振り向いてくる紅姫ちゃん。顔には困惑が広がってる。思ってもない反応だったんだね?

 

「……良かったね?」

 

「〜〜!!!」

 

すっごく嬉しそうに笑う紅姫ちゃん。いい笑顔だね?

 

 

「……紅姫ちゃん?こちらの方は……?」

 

「えと……私を……助けてくれた人。命の恩人。」

 

「「なにぃ!!!!???」」

 

急にふたりに腕を掴まれた。

 

 

「そんな人を放置してたなんて!!!ぜひご飯食べて行ってください!!」

 

「紅姫ちゃんを助けてくださってありがとうございます!!なんでもします!!なんでも言ってください!!!」

 

「え!?あの!!その!?!?」

 

 

「その制服!!もしかして雄英高校ですか!!やはりあそこの学生さんはひと味もふた味も違うね!!」

 

「えと!!ちょ!?」

 

力強!?引っ張られるんだけど!?!?

 

 

「ぜひご飯食べて行ってください!腕によりをかけて作ったんです!沢山あるのでいっぱい食べていいですよ!」

 

「帰りは送るのでどれくらい遅くなっても大丈夫ですよ!!さぁさぁさぁ!!」

 

 

「強引すぎるッ!?!?」

 

「…………ハァ〜……」

 

紅姫ちゃん!?ため息吐いてないで助けて!?!?!?

 

 

 

 

 

 

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