腱鞘炎になって少し休んでおりました。
申し訳ありません。
side槍田日巡璃
「最近どうだ。」
「……最近??まぁ……えーっと……悪くないです?」
「そうか。」
「……」
「……」
今日もインターン中。なんとなくショートがコミュニケーションを取ろうとして来てるのはわかるんだけど、独特すぎるよね。ちょっとまだ掴めないかも。
それでも経験値は相当なもので、まだ言語化は出来てないけど前よりも対処が早くなった気がする。
迅速な判断と、それを誤らないって事はすごく難しいけど両立が可能。それは今までのプロヒーローの仕事を見ててわかった。でもそれをモノにするには経験値が足りなかった。
その経験が今やっと追いついてきた気がする。私だってまだまだ強くなれる。
でも……
「……ふぅ。」
「…………」
私が駆けつけようとした時にはショートが既に対処してる。個性の差もあると思うけど、それよりも判断速度がもっと足りてないんだと思う。
こんなのじゃまだまだ足りない。もっと頑張らないと。ゆっくりでもいい。昨日の私より今日の私。
そうだよね。おねーさん。
「Mr.Jが捕まったわ。」
「……え?」
次の日、保健室で流水おねーさんに告げられた一言。
Mr.J……!ってあの……
「壊理ちゃんを襲った……」
「ええ。四穢異傑のひとりだと思われてた人ね。……そして……貴方に重傷を負わせた人。」
「っ…………」
今でも思い出す。胸に刃物が通る感覚。冷たくて、苦しくて。
「……日巡璃ちゃん。大丈夫?」
「っ!」
無意識のうちに胸に手を当てていたらしい。あの経験は……少なからず私の恐怖になっていたみたい。
「ううん!大丈夫!」
「……」
おねーさんに心配かけられない。もう治ってるから。……治ったから。
「それで……なんで捕まったの?」
「…………ファットとチームアップがあったと言ったでしょ?その時に居たの。インテリジェンスが追い詰めてたわ。」
「……」
触れたら五感を奪う個性に対して……私は何も出来なかったのに、事前情報が何も無いはずの才子おねーさんは追い詰めれてた。
これが多分差。私とプロヒーローの大きな壁。正確で、迅速で。
「日巡璃ちゃん。」
「!」
「あまり思い詰めるものじゃないわ。」
「…………」
やっぱりおねーさんにはバレちゃう。昔からそう。なにか悩んでたらすぐに言い当てられて……大人の人って凄いなって思ってた。
「あなたはまだ学生よ?もっともっと学ぶタイミングはあるわ?」
「…………」
まだ学生。あと何年言われるだろう。言ってもらえるだろう。私は学生という免罪符をなんでも許される無敵のカードとして使いたくない。
すごいなぁじゃ終わらせられない。だって私は仮免許を持ってるから。半人前だけどヒーローの仲間入りをしてるから。
「……日巡璃ちゃん。ショートの所はどう?」
「……えと……普通です。」
まだ言語化出来てないモノを、身につけたなんて言えるほどおこがましくない。
「じゃあダメね。」
「!」
「もっとショートに責任押し付けたらいいのよ。あなたは責任感が強すぎるわ。自分が子供っていう立場を精一杯使いなさい。なんでも試しなさい。なんでもやりなさい。失敗の責任を取るために大人がいるの。」
「責任を……押し付ける!?無理無理!そんなの怖くて……!」
「まだ打ち解けてないのね?」
「!」
「はぁ〜……あの子の会話は独特だけど……うーん。あの子が悪いところはあるからね。」
「…………」
「まぁ……無理に心を開けとは言わないわ。あの子ももっと褒めればいいのよ。ね?」
「いや……そんな褒められること……してなくって……」
「……え?……ちょっとインターン中何してるか聞かせてくれる?」
「え?……はい。」
だいたいショートが解決してしまうので基本的に後ろについて行ってることを教えた。その間特に会話らしい会話もしてないことも、アドバイスらしいアドバイスも貰えてないことも言った。
隠してもバレちゃうし……
「…………あの子……!!」
おねーさんが頭を抱えた。
「そんなんじゃッ!……うぐぐぐ…………もう少しなにかしてるかと思ったら……!」
追加で悶え始めた。
「……ごめんね。日巡璃ちゃん。」
「え!?なんで!?」
「私もう少しショートがなにか教えてるものだと思ってたわ…………」
「いえ!でも色々教えて貰えてますし……!」
「何を?」
「…………えと……ショートの区画には小中学校があるから、子供が事件に巻き込まれる可能性が高い……とか……」
「………………」
おねーさんが大きくため息を吐いた。
「ちっがーーーう!!技術的なものよ!!そんなの別の区画の行けば全く情報が変わってくるんだから、あんまり意味がないのよ!!」
「おねーさん!?」
「うぐぐぐぐ……エンデヴァーめ……もう少し後進育成の力を……いやもうあの加齢臭オヤジじゃ無理か……」
「今すごいこと言わなかった??」
「私の事はいいの!そういう関係だから!」
「元No.1ヒーローに対して加齢臭オヤジって言える関係ってなに!?」
「……日巡璃ちゃん。この件は私に任せて欲しい。」
「…………??」
その日の午後は保健室が閉まってた。他の先生曰くおねーさんが外出してるらしい。どこいったんだろ??
「お嬢様。インターンの調子はどうですか?」
「……びみょ〜……」
『日巡璃がそんなネガティブなの珍しいわね。』
夜。数少ないみんなで話せる時間。
インターンの期間は天捻ちゃんが離れなくなる以外はあまり変わらない。
「うん。なにか上手く掴めなくて……みんなはどう?」
『こっちは順調よ。色々教えて貰えてるわ。』
「はい。こちらもです。」
「うへぇ……いいなぁ……」
なんか私だけその場で足踏みしてる気分。ちょっと辛い。
「何焦ってるんだ。日巡璃は元々強かったのだからひとつやふたつ学べない事があっても不思議ではないだろう。」
「そうなんだけどさぁ……?」
最近天捻ちゃんは佳舞ちゃんにも引っ付くようになったらしく、佳舞ちゃんから嫌そうに報告が来た。文脈は嬉しそうだったけどね?
『日巡璃の言いたいこともわかるわ。立ち止まってるのが嫌なんでしょ?』
「……うん。」
「あまり根を詰め過ぎないようにしてくださいませ?今だけでもゆっくりしていただければ……」
愛ちゃんがお茶を出してくれる。
「……ありがと♪」
みんなの配慮が胸に染みる。
「……ねぇふたりとも〜?パトロールの移動中どうしてる?」
「私はそもそもショートのように速度を出さないので……」
「速度もそうなんだけど、異変に気付く速度が違うんだよねぇ……」
『そりゃずーっと同じ区画でパトロールしてるなら、異変に気付いて当たり前でしょ。……いやまぁ当たり前とは言いにくいかもしれないけれどね。』
間違い探しを毎日してる感じなのかなぁ……
「移動速度か異変に気付く速度……なんて言うんだろ?どっちでもいいからショートに追いつきたくて……」
『ショートは氷の上を滑るように進んでるからぐんぐん速度が出せるの。増強型じゃないならちょっと苦労するかもね?』
「うん……」
それは動画で散々みた。私にはむずかしいのかなぁ……
「判断速度も一朝一夕で身につくものではありませんしね。」
「……うん。」
うー……高速移動ができる何かがあれば……いやでもそれだと異変を見落としてしまう可能性があって……
「…………ひまひまも滑れば?」
「「『え?』」」