side槍田日巡璃
「ショート!今日もよろしくお願いします!」
「ああ。よろしく頼む。」
今日も今日とてインターン。1月はめいっぱい入れて貰ってる。
速度の出し方、制御はある程度体に馴染ませた。……言語化できてるかは怪しいけど。あとは視野。視界。見つけ方……というのかな?
いち早く異変を察知する目と頭の動き。これは多分経験と流れが大事……だと思う。ゆっくり確実にモノにしていこう。
それ以外にも学べることはどれだけ小さくても糧にするんだ!……よし!よし!今日もできる!やれる!
それはそれとして今日は土曜日。これが終わったらカナの家にお邪魔する事になってる。……んふふ。楽しみ楽しみ!
よし!今日もしっかり万全にパトロールを終わらせよう!話はそれからだよね!
「それじゃあ今日は……」
ヴー!!ヴー!!ヴー!!
「「!!」」
ショートのスマホが鳴る。緊急アラーム!
『○○銀行で立てこもり事件発生!現在犯行人数不明!個性による反発が激しく、人質有り!至急応援を!』
立てこもり事件!?銀行に!?
「エスネイラー!」
「はい!!」
持ってきたコスチューム用のバッグのボタンを押す。
身体にコスチュームが勝手に装着される。これすごい便利!!一昔前はこんなの無かったんだって。
「俺の速度で行けば5分だ!」
「はい!!着いていきます!!」
「行くぞ!」
「はいっ!!!」
いきなり大事件!急いでいかなきゃ!!
着いてみると……そこには人だかり。主に警察の人。あとは野次馬らしき人達。早く逃げて欲しいなぁ?
「すまない。」
ショートが人混みをかき分けて、警察の人に挨拶。状況を説明してもらった。
拳銃を持っているリーダー格の男1人。あとは部下らしき人が目測5名。
近場にいたヒーローが応戦したが、返り討ちにあったとの事。応答が無いって。それに……リーダー格の男が人質を抱えてるらしい。ここからじゃよく見えない。
……うーん……時間がかかりそう。
「……さて。どうするか。」
状況確認。シャッターが複数枚降りてて中が見えない。……うーん……どうしたものか。ショートの個性じゃどうしようも無さそう。
「シャッターが降りてて……中が確認できないですね?ところどころ空いてますが……人影は見えないです。」
「……一見手詰まりだな。」
「そう……ですね。」
あのシャッターの中のどこかにいるってこと。そして多分何かしら要求をしてくると思う。……既に要求されてるんだろうか?
「「……」」
「……?」
すると人混みにふたり。見覚えがある人が視界に映る。
あれ?あのふたり……どこかで見たような……?
「…………あの人……」
ガガガッ……ピー……
『アー……アー……マイクテスマイクテス。』
「「!」」
低い男の声が響く。メガホン?音質が悪い。
『聞こえるか。警察共。ヒーロー共。俺たちはこの銀行を占拠した。人質もいる。助けれるもんなら助けて見やがれ。』
煽るような口調と頼んでもない状況報告。多分相当有利な状況に、いい気になってるんだと思う。
するとシャッターが降りてないガラス越しに、誰かが倒れこむのが見えた。
……あの人……!血が……!足怪我してる!!
『見えてるか〜。こいつはさっき俺たちに喧嘩売ってきたクソ野郎だ。もう虫の息だぜ?早く病院に連れていかねぇと命が危ねぇぞ?……ま。そうなっちまったら別のやつすればいいだけだけどな。俺たちを逃がす手筈を用意しねぇとこのまま膠着状態だぜ?』
アイツ……!!一般市民に手を……!!
『それにぃ〜……オイッ!!』
『うわっ!?』
全身覆面で拳銃を持った男が首を絞められている女の子と一緒にガラス越しに姿を見せる。
男の体躯は目測180cm。拳銃を携帯しているので、個性も身体能力もそこまで強くはなさそう。
問題は人質の人。こめかみに銃口を向けられている。
『もし下手なことしてみろ。こいつがどうなっても知らねぇぞ。』
え……な……なんで!
「紅姫ちゃん!?」「紅!!」「紅姫ちゃん!!」
「!?」
声のした方を振り向くとさっきの見覚えのある人。思い出した!紅姫ちゃんのご両親!一緒に銀行に来てたんだ……!
よく見ると紅姫ちゃんの頬が赤く腫れている。もしかして殴った……!?
お腹の底でフツフツと何かが湧き上がるのを感じる。
「日巡璃さん!!」
後ろから別の声が。
「え!?愛芽茘(あめり)ちゃん!?どうして……!!」
今度はアメフラシの愛芽茘ちゃん。紅姫ちゃんのお友達。
「紅のご両親に誘われて食事をと……んで……銀行に寄ったらこんなのに巻き込まれて……紅が私を逃がすために逃げ遅れちゃって……」
「そうなんだ…………」
紅姫ちゃん……みんなを守ったんだ……
「お願いします日巡璃さん!!紅を助けてくださいッ!!」
愛芽茘ちゃんが大きく頭を下げる。
「…………ショート。」
「……なんだ。」
「なりふり構ってられません。私が突撃します。」
もう決めた。待ってられない。このままだとどんどん状況が悪くなる。
「……なんだと?お前の身が危険だ。」
「なので……私ができる限りの速度で中に突撃し、時間を稼ぎます。その間に……」
「……ダメだと言ったら。」
「無理です。私にやらせてください。」
「他のヒーローの二の舞になる。安全な作戦を立ててからでも……」
「無茶も無理も……私にとっては通過点にしか過ぎません。」
「……!」
「出来るまでやる。やれば出来る。……やってみないと成功しません。」
「…………本気か。」
「はい。」
少しの沈黙。正直めちゃくちゃ言ってる気持ちはあった。でも助けたい。救いたいって気持ちが先行した。
私はこの気持ちに背を向けたくない。
「………………わかった。どれくらいの距離があればいい。」
「……!」
「氷で発射台を作る。より速度が乗るだろう。相手の意表をつけるかもしれん。」
「ショート……!」
「……お前に託す。やれるか。」
「っはい!!!」
初めてショートに託された!この仕事……失敗は許されない。