side槍田日巡璃
「えっと……?コレがこうで……これがそうで……??」
「日巡璃。持ち方はこう。それで……」
「うん……うん……ん??」
「お嬢様。ナプキンは……」
「ふむふむ……」
「ひまひま。席を離れる時は……」
「……」
「食器はこう使うんだ。音を立てないように丁寧に……」
「……難しい……」
これ付け焼き刃無理です!!絶対無理!!!
今みんなにパーティの練習に付き合ってもらってるんだけど……っていうかみんなやっぱりいい所のお嬢様達だから上手いね??私なんてボロボロだよ……とほほ。
でも頑張らないと!
「……」
「いつになく真剣ね?日巡璃ちゃん。」
「おねーさん……だってぇ……」
ちょうど近くにおねーさんも居たので見てもらってる。おねーさんこういうマナーなんとなく出来そうだし。……実際できてるし。ほんとなんで??
「……私ができなくて……カナに恥をかかせる訳にはいかないし……」
「んんっ…………え……えと、そんなにかしこまった場所じゃないし……皆逐一見てるわけないでしょ?」
「嫌だもん!カナのパートナーになるんだからこういうのは遅かれ早かれマスターしなくちゃ!!それが今日だっただけ!」
「…………はぁ……あっつ……」
カナが顔を手で仰ぐ。
「……熱烈……だね。」
「カナだけじゃないよ!みんなもこういう場所行くタイミングあるでしょ?……だったら……私もみんなと同じくらい自然に出来るようになってないと!胸を張ってみんなと一緒に居れないよ!」
「お嬢様っ!ご立派です!」
「……ふふ……ありがと。ね?」
よーしもう1回!こういうのは反復練習だよ!!
「……それにしても……ブラッドロータス先生はこういうのよく知ってるな?」
「ふふ。岩刄さんとこうして話すのは初めてね?こういうのもぜーんぶ大人の嗜みよ♪」
「大人の嗜みか……なんかかっこいいな!」
「……おねーさんなんでも出来てずるい!」
「日巡璃ちゃんも頑張りなさい?」
「はーい。」
おねーさんみたいなかっこいい大人になるためにはまだまだ時間がかかりそう。知らないこと、できないことが多すぎるよ……
「そうそう。日巡璃。」
「なぁに?」
「リボンどう?」
「んーとね!今日には出来そうだよ!」
「ふふ。そう。」
「明日渡せばいい??」
「ん〜…………そうね。お願い。」
「?……わかった!」
何の長考だったんだろ??
まぁいいや……とりあえずは……
「んしょ……んしょ……」
「お嬢様!お上手です♪」
「えへへ!よしよし……」
今日はこれをマスターしないとね!頑張るぞー!えいえいおー!!
ダダダダ……
「……」
「それ……花?」
横から天捻ちゃんの声がする。
「ん。そうだよ。」
縫い終えたので糸の色を変える。全部同じ色だと味気ないよね。
「……上手いもんだな。」
「お嬢様の刺繍は一級品です。」
「言い過ぎだよ〜。」
自室。いつも通りみんなが居る。マナーの勉強は大変だったけど……これをしないのは話が別。カナのお願いだからね!
「日巡璃。このナプキンくれないか?」
「別にいいよ〜。練習で作っただけだし。」
「練習……?これがか……??」
佳舞ちゃんは私の刺繍に興味津々みたいで……佳舞ちゃん程の技術者が私の刺繍を褒めてくれるのは純粋に嬉しい。
「時々お嬢様は無心でミシンと向かっておられますから……その時のものでしょう。」
「動いてるミシン見てると安心するんだよね〜。」
もう何年ミシンに向かってきたか……小学校の頃からずーっとだからね。
「……熟練だな。」
「そんな大層なもんじゃないよ。趣味だから。本業の人に失礼だよ。」
「……そうか。」
パチン……パチン……
「んー……こんなもんかな?」
紺色のリボンに、白とピンクの糸で花の刺繍を施した。
「……んふふ。やっぱり花はいいね。」
「上手!」
「ありがと!」
刺繍の花は……実は愛とか愛情とか意味があるんだけど……知らなくてもいいこと。知ってる人に牽制になればいいから。
「……そういえばカナってこういう社交界にお友達って居るのかな?」
「本人曰く中学時代は友達は居ないとの事だったので……居ないのでは??」
「そういえばそんなこと言ってた気がする……カナニコニコしてれば可愛いんだけどなぁ??もったいない。」
「それ本人の前で言ってやれよ。」
「可愛いならずっと言ってる。」
「さいですか。」
「佳舞ちゃんも可愛いよ?」
「…………ふん。」
よーし……これで3つできたから、箱に詰めて……リボンして……
「……ひまひま……梱包も上手いね?」
「ん〜?これ見様見真似だから正しいかわかんないよ?」
「誰の……?」
「おねーさん。」
「あぁ……」
「あの人ほんとなんでも出来るんだな!?」
ちょっと前保健室でおねーさんがなにか大きなもの包んでいたのを真似してるだけ。すっごい綺麗な手際だったから覚えてるんだよね。
……8月だったっけ?8月…………あぁ。被身子おねーさんの誕生日か。納得。
「そういえばみんなも来るんだよね?」
「はい。」
「そういう話に……なってる……ね。」
「ドレスはどうするんだろ。」
「事前にカノーテス様のご両親様が迎えに来るとだけ……」
「ちなみにみんなドレスは持ってるの?」
「はい。」
「持ってるぞ。着たことないけど。」
「着物……なら。」
「…………」
すごいなぁ……本当に私の知らない世界だ。普通に生きてたら関わることが無かったのに……こんなことになるなんて。人生わかんないね。
ピロン
「「「「?」」」」
私のスマホかな?
見ると……紅姫ちゃん。
『姐さん!今日も姐さんを布教してたら姉さんのファンが増えました!!これも姐さんのおかげです!』
「……ふふ。」
実は紅姫ちゃんに猛烈アタックされて、連絡先を交換した。愛芽茘ちゃんとも。紅姫ちゃんが何かあったら連絡くれるようになってる。
まぁプライベートでもちょこちょこ連絡来るんだけど……
「ん……ファンの子?」
「うん!」
「……あいあい。」
「あの子達なら大丈夫でしょう。お嬢様への下心は見えませんでした。」
「……ん。よし。」
「なんの話してるの???」
下心??
「それよりも……だ。今日も決めるぞ。」
「ん。望むところ……」
「今日は負けません。」
「…………今日もやるの??」
「「「当然。」」」
「……そっか。大変だね?」
「いくぞ!!」
みんなが拳を引く。
「「「じゃーんけーん!!ぽん!!」」」
佳舞ちゃんがパー。愛ちゃんがチョキ。天捻ちゃんがパー。
「よっっっし!!!!」
「うがあああっ!!!」
「むっっ!!!」
盛大にガッツポーズを見せる愛ちゃん。
「……元気だねぇ。」
このジャンケンは……今日私の隣で寝る人ジャンケン。ほぼ毎日してる。よく飽きないねぇ。
今日は愛ちゃんか。
「愛ちゃん大丈夫??」
「何がです?」
「冷静になって一瞬で気絶とか……」
「…………」
「ポンコツメイド。」
「うるさいですよ。」
素の愛ちゃんよわよわだからなぁ……
「……そういえば愛ちゃんって素が出るとウチって言うよね。」
「!?!?」
「ん。……そうだね。」
「!!!!」
「何びっくりしてる。結構出てるぞ。」
「……」
あー……この顔本気で気付いてなかった顔だ。
「愛ちゃんのウチ……可愛くて好きなんだよね。」
「お……お嬢様……!せめて……せめて2人きりの時だけ……」
「えぇ〜?毎日聞きたいけどなぁ??」
「は……恥ずかしすぎて死んでしまいます……」
だったらしょうがないか。残念。
この日から愛ちゃんが時々ウチって言ってくれるようになって可愛いと同時に嬉しい。
もっともっと仲良くなれたよね!