side今昔鏡見歳乃
「……」
「あの……どうして私はこんな場所に?」
「あー…………」
亦亘さんの一言。一目惚れ。それを聞いた私たち……といいますかヒマちゃんとその彼女、それに清寺さんは一旦中庭に。
そして私と亦亘さんをベンチに座らせて何かを話したいみたいです。
「今昔鏡様……本当の本当にお分かりにならないので……??」
「?」
なんのことでしょう?一目惚れの件ですか?それとも亦亘さんの訓練の事でしょうか?
「……えーっと……これ多分わかってない顔です。」
「…………そう……ですか。」
天を仰ぐ清寺さん。……む。なんとなくですが呆れられた気がします。少しだけ不服ですわね。
「日巡璃。1度作戦会議しましょう。」
「そうだね。ちょっとまってて貰える?」
「?…………え……ええ。」
「「……」」
ぽつんとふたり。
亦亘さんは顔を伏せていて様子が分からない。耳は赤い。
……ん〜……なんの話をされているのでしょうか。本当に分からないのかと仰っていたのが引っかかりますわね。
「ね……ねぇみーちゃん。」
「はい。どうされましたか?」
亦亘さんが声をかけてくれた。これで何かしらの解決の糸口が見えれば良いのですが……
「えと……本当に……分からないの?」
「何がですか?」
「…………私が言ったこと。」
「一目惚れの話ですか?」
「えっ……えと……うっ……うん。」
なるほど。一目惚れの話ですか。ふふふ。それであればわかっておりますわ。
「一目惚れとは……文献で読んだことがありますので、もちろん知っておりますわ。」
「…………」
ふと亦亘さんを見ると、苦虫を噛み潰したような顔。何か違ったかしら。
「……?」
「……私……みーちゃんのことが好きなの。」
「そうですか。ありがとうございます。私も……」
「そういう意味じゃない……違うよ。みーちゃん。」
違う?そういう意味じゃない?……はて?
「一目惚れしちゃったの!私が!みーちゃんに!」
「……貴方が……私に……一目惚れ……??」
………………ふぅん?
「……本当ですか?」
「ホントだよ!」
なるほどなるほど……私のことを恋愛的に好いてるという事ですか。ふーむ……
………………もう少し……ですわね。
「……どうしてですか?」
「どうして……?」
「世間一般では女性同士の恋愛は少ないです。それに……お互いが愛し合っていたとしても、子供が見込めない上世間の目は厳しい。私みたいに世継ぎを求められる家系ではそれが顕著です。」
「う……」
「そのような私に恋をしたとして……私に世継ぎが出来ないとなれば、近い未来何人の従者を路頭に迷わすことになってしまう。そのうえで……私とお付き合いしたいのですか。そうであれば、それに準じた理由が欲しいのです。」
「…………」
亦亘さんが下唇を噛み締める。
「「……」」
長い沈黙。
…………この子もですか。なかなか居ませんわね。
「……さて。お話されることがないようでしたらこの辺で……」
席を立ち上がろうとすると、腕を掴まれた。
「ううん。ある。」
「…………ふむ。」
「私はみーちゃんが好きだから。」
「…………なるほど?」
……続きを聞いてみましょうか。
もう一度座り直す。
「私っ……前の学校ではヒーロー科だったけど緊張しいで……ダメダメでッ……でも!ママの仕事の都合でこっちに引っ越してきたらっ……みーちゃんに会って……!堂々としてて、かっこよくて!笑顔は可愛くて!勇気を貰ったの!」
「……そうですか。」
それで好きになって……ですか。在り来りな言葉ですね。つまらな……
「でもそれじゃダメだって思って!」
「!」
「私だってみーちゃんみたいにみんなから頼られたいって思って!みーちゃんが頼る相手になりたいって思って!!」
「……ふぅん?」
「だから頑張って明るく、元気に振舞ってたんだよ!みーちゃんともっと仲良くなりたかったから!仲良くなったらいっぱい頼って貰えるって思ったから!」
「…………己の打算だと?」
「恋なんてお互いの打算じゃん!」
言われてみればたしかにそうですわね?お互いのエゴです。
「私はみーちゃんと一緒に居たい!これはなんにも変えられないエゴだよ!ずーっとずーっと一緒に居たい!世継ぎは養子とかあるじゃん!いくらでもやれることはあるよ!!世間の目は私たちが証明すればいい!そんなんで私は好きを裏切れない!!」
体が震えて。まるで産まれたばかりの子鹿のよう。私の目を見ながら、全力で私に気持ちをぶつけてくる。
……本当にヒマちゃんみたいね。
「ふむ。そうであれば……私のエゴは無視してもいいと?」
「そうじゃないよ!!……だから!私はみーちゃんのワガママを聞きたい!だって……みーちゃん何も言わないじゃん!困ってること、辛いこと!」
「…………実際何にも困っておりませんし……辛いこと……」
「嘘!絶対ある!」
「……」
「……そうやって黙るところ、図星なんでしょ!それに……視線が動いた。槍田日巡璃の方に!」
「!」
おや。私としたことが。
「友達と会えなくて辛いんでしょ!寂しいんでしょ!」
「……」
「……私じゃダメ?私じゃあの子の代わりにならない?」
「…………」
「みーちゃんは……本当は恋が知らない訳じゃないんでしょ?」
「………………」
「ね。みーちゃん……本音で話して欲しいよ……私。なんだってするから。」
亦亘さんが私の手に自分の手を重ねる。目元には涙が。
…………このくらいですわね。
「はぁ。……少しだけ訂正いたします。」
「……え?」
私はハンカチを取り出し、涙を拭いてあげる。
「私はヒマちゃんに恋をしておりません。」
「え?え?」
「彼女は私の超えるべきライバル。それに一切の淀みはありません。私にとって……彼女は私のヒーローなのです。」
「……!」
「そして……ごめんなさい。私は貴女を試しておりました。」
「た……めす……?」
「私は私の横に立つものは、強者であって欲しい……と思っておりました。私の知らぬ強さを持つもの。……それが今まではヒマちゃんだったのです。」
「……」
「私はそれでもヒマちゃんに恋焦がれることはありませんでした。そういうものだと思っておりましたので、それ以上は何もありませんが。……私に恋をしていた者達はみな、隠れて、呼び出して。弱いのです。」
「弱い……?」
「はい。人の前で、堂々と、どんな障害も乗り越えるような足腰を。……1度私が朴念仁を演じたくらいで折れる程度じゃ……どうしても惹かれません。それに比べて……貴女は負けませんでしたね。」
「…………それじゃ……」
亦亘さんの唇に人差し指を。
「勘違いしないでくださいまし。貴方は私の横に立てる権利を得ただけです。……ここから私の心を奪って見せるのは貴方次第ですわ?」
「……!!……うん!私頑張るよ!!」
「ふふ。その意気ですわ。……楽しみにしておりますわ。初華。」
「!!」
ぱぁっと目を開き、顔が明るくなる初華。
「うん!うん!!絶対みーちゃんをメロメロにさせてみせるよ!」
感極まった初華に抱きつかれました。
「……ちょっとやそっとじゃ私の心は動きませんことよ?」
「望むところだよ!!」
ふふ。
本当に……こういう所はヒマちゃんみたい。
……私はこういう人に惹かれてしまうのですね。我ながら厄介なものです。