sideサー・ナイトアイ(佐々木未来)
カツン……カツン……
「ここだ。」
「……ふーん?聞いてた通りだけど……廃屋だね?」
「道案内あざます。」
今回……と言おうか、ここ半年以上ブラッドロータスに依頼を受け探し続けていたモノの片鱗を見た。
依頼内容は新異能解放軍(仮)……奴らの根城を探す。
そういうことで、一旦の調査報告としてブラッドロータスに来てもらうことに。連絡を入れたタイミングで公安委員長……元ヒーローホークスも居たので呼んでおいた。
「……ここは憶測だが……新異能解放軍(仮)が使っていた可能性が高い。家の中にいくつか見覚えのあるマークが刻まれていた。」
「ふーん……?ほぼビンゴってこと?」
「ああ。そう思ってもらって構わない。君たちふたりには1度見てもらった方が良いと思ってな。」
「私だけでいいと思うんだけどねぇ?」
「ははは!傷原サンの依頼とは聞き捨てならないっすから!」
「だーかーら!今被身子ちゃんも傷原なんだから下の名前で呼べっつってんでしょ!どっちかわかんないじゃない。」
「はいはい。流水サン。」
「ふん!」
「それにしても……なんで先に俺らなんすか?警察に一報かけてくれればもっと詳しいこと調べれそうっすけど……」
喧嘩はしているが……ものを見る目は確かだ。それに……
「ココは……きっと先に警察が見るべき場所じゃない。」
「「……」」
ふたりの目付きが少しだけ変わる。……ふ。頼りになる。
「それでは入るぞ。」
「鍵は?」
「かかっていなかった。」
「ん。」
手袋をはめて、ドアを押す。ドアノブは機能していない。
ギィィと地面を引き摺るような音と共にドアが開く。
砂埃と煙。少し見えづらいが……何者かが生活していた跡は感じる玄関。
靴が4つ。写真立てはヒビが入り、靴箱は崩壊、鍵をかけるフックがいくつか。目の前には廊下と上へ上がる階段が見える。
「……靴……3人分。」
「そうっすね。3人家族っすか?」
そうだ。ふたりが一瞬で見破ってしまったが、靴は2足は同じもの、残りの2足はバラバラ。故に3人。
「家族関係は分からない。何せ情報がない。」
「写真は……色が褪せててわかんないね。」
手袋をいつの間にかはめていたブラッドロータスが写真立て手に取る。
「それは後で鑑識っすね。にしても……やけに砂が多いっすね。そこまで経年劣化は感じないっすけど……」
「……まぁいいか。奥行こ。」
「うす。」
奥の部屋……この家屋を見つけたのはバブルガールなのだが……奥の部屋に入った瞬間言葉を失っていた。私も見たが……これは確実に『何か』があった。と断定ができるものだった。
ブラッドロータスが引き戸を開ける。
「「……」」
ふたりの目付きが変わる。
埃を被った20畳ほどのフローリング、大きな机、空の本棚。そして絨毯。奥にはキッチンが見える。
そして一段と目を引くのがフローリングの真ん中に建てられた木像。人の形を模しているが……経年劣化が激しく、どこの誰か判別が付きにくい。
やはりあの木像が……
「鷹見くん。」
「……っす。これは……」
「うん。血の匂いがする。」
「……なんだと?」
血の匂い……!?殺人か!?
「……多分……ここ。」
ブラッドロータスが躊躇なく絨毯を引き上げる。
するとそこには……
「……こっ……これは……!?」
「……」
真っ黒に染まった絨毯の裏。そしてその下には何かが染み込んだフローリング。
「……多分……大きさ的にひとりふたりじゃないね。もっとだ。」
「多分見えてる限りだと最低6人くらいっすか?」
「うん。もっとあると思っていいかも。」
「っすね。……嫌な感じっす。」
……そんなことまで見るだけでわかるのか。恐ろしいものだ。
「……もっと何かあるかも。多分これだけじゃない。」
「フローリング引き剥がしていいんじゃないっすか?」
「それ器物破損だよ?責任持てんの?」
「ははは。俺を誰だと思ってるんすか?公安委員長っすよ?」
「……権力っていいわね。じゃあ失礼して……」
ブラッドロータスが手を血に染める。
「よいしょ。」
そしてフローリングを貫き、難なく引き上げる。
大きな音を建ててフローリングがめくれ上がる。……が、何も無い。
「……ハズレか?」
「……ん〜?なんか変な感じ……手応えが甘いというか……」
手応えが……甘い?
「……」
「どうした。」
「サー。ここの間取りってどんな感じ?」
「一応この部屋の奥に水周りがあったらしいが……倒壊して入れない。それと2階には部屋がふたつだ。他の部屋は階段の下に設置されてる物置くらいだな。」
「……血が擦ってあるっす。」
「「!」」
公安委員長が言うようによく見ると絨毯の裏……フローリングに何かを引きずった跡がある。血が擦れている。
「……こっちには何があるの?」
ブラッドロータスが擦ってある方向を指さす。
「物置と階段だ。」
「「……物置。」」
ふたりが反応。そして有無を言わさず物置へ。
そしてドアを開ける。
「……小さいわね。」
「そうっすねぇ。……大人だと屈んで入らないといけないっす。」
「……大人だと……屈む……ねぇ?」
「……子供なら余裕っすよ。」
「……ね。」
中は埃まみれでよく見えないが……そこまで大きなスペースがある訳では無い。
「そこは1度目を通したが……何も見当たらなかったと報告があった。」
「「……」」
急に公安委員長がしゃがんで、床を叩く。
コンコンコン……
「流水サン。ココっす。」
「うん。」
ブラッドロータスが拳を地面に撃ち抜く。
ズドン!!
「!?……何をッ!?」
轟音と共に砂埃が……
「サー。見て。」
「!!……これは……!」
階段。下に続く階段。
「だいぶ小さいけど……なるほど。ガッテンが言ったわ。そこの物置のドアといい……ここの階段といい……本当に子供なら余裕で入れるわね。」
「……はぁ……嫌な予感がするっすねぇ……」
とふたりが階段を降りていってしまった。もちろん追いかける。
何とか階段を降り、ふたりが立ちすくむ後ろから部屋の中を確認する。
「「……」」
「……なんだこれは……」
部屋は……黒かった。いや……ただ黒いだけじゃない。赤黒い。何か液体がこびりついたような……酷い匂いが充満していた。
そして大きく一閃。壁に真横に切り裂かれたようなヒビが。
「…………この家。所有者は?」
「アカの翼というらしい。」
「アカの翼ねぇ……どうせ電話番号は繋がらないんでしょ?」
「ああ。」
「嘘の可能性が高いっすね。」
「……絨毯。擦った跡。物置の階段。子供が優に通れるくらいの階段。そしてこの部屋……何か存在してはならない事件に繋がってそうね。」
「……コレは個性っすか?だとしたらとんでもなさそうっすけど。」
「…………ふー……こんなヒビ……それこそそれ相応に大きな武器じゃないとつけれないわよ。」
「ただの人間って感じじゃなさそうっすね。」
「……この家は……もっと調べて見る価値が大いにありそうね。」
「っす。リビングの本棚が無いのも気になるっす。」
「チグハグね。靴は残ってるのに本がない。普通ありえないわ。」
「そうだな。台所には一式台所用品が残っていた。それほどまでに本棚が大切らしい。」
「……ここは公安に任せて欲しいっす。絶対にしっぽを掴んで見せるっす。」
「……頼んだ。」
「……はぁ……何も無ければいいけどねぇ……」
嫌な予感というものは当たるものだよ。ブラッドロータス。
どうせ彼女ならわかっているか。