side槍田日巡璃
「委員長〜?そんでアイツとはどうなんだよ?」
「微妙〜……」
「あはは……そうだよなぁ。」
今日はインターン。事務所で待機中です。
今日のチームは……私と無頭くんと才子おねーさん。他の人は全員パトロール。
亦亘さんは……日に日に私のことを強い目で見てて、しかもそれで空回りをしているみたい。……今日の被害者は憂世ちゃんです。なんかごめんね?
「才……インテリジェンス?」
「はい?」
紅茶を飲みながら、茶菓子を取り出している才子おねーさんに声をかける。お皿が7枚……みんなの分かな?そろそろ帰ってきそうだもんね。
「亦亘さんどんな感じですか?」
「どんな感じとは?」
「ん〜……なんかね?私との事で迷惑かけて無いかなって。」
「……なるほど。その事ですか。」
1度手を止めてこちらに向き直る才子おねーさん。
「迷惑をかけてないと胸を張れるかと言われればそれはNOです。」
「……そうだよねぇ。」
「ハッキリ言いますね?」
「……あなた達もですよ?」
「「え?」」
「当たり前です。本来であれば私とリザーディは別の仕事をしていたハズです。その時間を今あなた達の成長のために割いているのです。そういうことであれば、あなた達も迷惑をかけていないとは言えませんよね?」
「……そっか。そうだね。」
ちゃんとしていると思っていた私達だって、プロヒーローからしたら足手まといになるんだ。プロヒーローの仕事がちょっとできるのも、プロヒーローからしたら当たり前。
インターンが完璧に出来ていることと、迷惑をかけていない事は両立しうる。
「はい。……まぁ、私もリザーディもそれは折り込み済みです。別にその程度なんとも思いません。お仕事ですし……何より次の世代の育成ですから。」
次の世代の育成…………かっこいい!!
「……かっけぇ……」
「く〜……いいなぁ!私も早くそういうこと言えるようになりたい!」
「……ふふ。日巡璃ちゃんは到底先でしょうね?」
「酷い!!」
「アハハハハ!」
「そんな笑うことないじゃん!」
もう!失礼しちゃうな!?
prrrr……
「!」
インテリジェンスのスマホが鳴る……と同時に才子おねーさんの顔から笑顔が消える。
「「?」」
「もしもしこちらインテリジェンス。」
『……!』
「……!!……直ぐに行きますッ!!」
ピッ……
急に才子おねーさんが玄関に向かって動き出した。
「おねーさん!?どうしたの!?」
「敵です。リザーディ一行が交戦中。リザーディが庇って大怪我をしたとの事。あなた達はここに居なさい。」
「「!?」」
インテリジェンスが出ていった。
待機ってこと!?……そんなの……そんなの!!
「…………無頭くん!!」
「戸締りは任せろ!!電話はつけっぱなしでな!!」
「ありがとうッ!!」
私も飛び出した。才子おねーさんを置いていけない!
外に出ると才子おねーさんはもう居ない。……だったら!!
壁を伝い上へ。周りを見渡す。騒動の中心を探す。きっとそこに才子おねーさんは向かってるはず!
……見つけた。きっとあそこ!煙が立ってる!
急げ!私にできることがきっとある!!
『委員長!避難誘導中の圖書と通話繋げた!場所教える!』
『槍田はん!煙筒焚いてるで!』
「ありがとう!!任せて!」
side亦亘初華
「はっ……はっ……はっ……」
「リ……リザー……ッ!!」
わ……私を……庇って……!?
ガギィイン!!
「ひっ……!?」
「くぅっ!?」
「…………」
巨大な鎧武者。リザーディを斬りつけて、顔と腹部に深手を負わせた。これも全部……私が……
「亦亘さんっ!!腰を抜かしているならッ!せめて這ってでも逃げなさいッ!」
「ク……クリス……さ……!」
鎧武者の一振。
クリスさんが居合で弾く。
「くうっ!!」
が、クリスさんの居合は、構える時間が長ければ長いほど、それと相手との距離で攻撃力が変わる。今は……短すぎて近すぎる。
それに……鎧武者は執拗に私を狙っている。動けない私を。
「はーっ……はーっ……はーっ……」
クリスさんももう限界が近い。
私……私も……でも……まだインターバルが……!
私の個性。イノセントアーマー……連続使用時間3分。インターバル3分。さっき使い切って……もう……!
それに腰が抜けて……た……立てない……!
怖い。
今まで感じたことの無い死の恐怖。ヒーローはこんなのと戦っているのか。私の夢がいかに薄っぺらく、おざなりなものだったかと痛感する。
今。……遅すぎる。
「亦亘さん!!」
「む……無理……!!」
「……っ!!」
ガギイイイイッ!!
「っぅあああっ!?」
クリスさんが吹き飛ばされる。
「クリスさ……!?」
目の前。振りあげられる刀。
……あ……死……
「っっ!!!!」
浮遊感。それと……衝撃。誰かに突き飛ばされた。
「……あぐっ!?」
地面に転がされ、顔をあげる。
……ベチャ……
べちゃ?
「…………何……が……!?」
目の前には信じられない光景が広がっていた。血溜まり。その上にはクリスさん。
両の足で立っているが……左腕からは血が……
そして……その左腕は肘から先が無かった。
だって……私の目の前に転がっているから。
「………………!!!!!」
「た……立ちなさい……亦亘初華ッ!!」
「な………………なん……なんで……」
「リザーディを……怪我させて……私のッ……腕を奪って……!」
鎧武者が刀を振り上げる。
「あなたはッ!!未熟とはいえヒーローなのでしょうッ!!!」
「……!」
鎧武者が刀を振り下ろす。
「せめて私の屍を超えていきなさいッ!!!」
「だめぇぇええっっっ!!!!!!」
手を伸ばす。絶対届かない。絶対間に合わない。足は……ずっと動かない。私は……みんなに迷惑かけて……足手まといで……!!
なんで……ここに……
「何……してんのッ!!」
ガォオオン!!
轟音。
鎧武者が大きく体勢を崩す。
「もういっぱぁっつ!!スラッグゥ……ハンマァアアッ!!!」
ガオオオオンッ!!
鎧武者が大きく吹き飛び、地面に転がる。
「…………ふん。」
槍田……日巡璃……
「日巡璃……さん……」
クリスさんが膝から崩れ落ちるのを、槍田日巡璃が受け止めた。
「クリスちゃん。もう大丈夫だよ。私が来た。」
槍田日巡璃は、自らのポーチから布を取り出し、自分の粘液をつけてからクリスさんの左腕を縛る。止血をするため……だと思う。一連の動作が淀みない。
私に一瞥した後、リザーディに目を向ける。
リザーディのところには既にインテリジェンスが。
「…………リザーディ。」
インテリジェンスがリザーディを1度抱きしめる。そしてなにか喋ったようだが聞き取れない。
そしてリザーディを優しく寝かせ、立ち上がる。
「日巡璃ちゃん。そこの3人を連れて逃げれますか。」
「……おねーさん?」
「まだ息があります。今病院に連れていけば命が繋がります。」
「……」
インテリジェンスが腰から大きな拳銃のようなものを取り出す。
「……わかった。」
何かを察したような槍田日巡璃が、クリスさんを背負う。
そうしてクリスさん、リザーディ、そして私の順に持ち上げ、走り出した。
クリスさんは背中、リザーディは左腕、私は担がれてる。
「……怪我……してないね。」
「……」
責められている感じがした。
「ごめ……」
「私に謝ることじゃない。」
インテリジェンスの背中がどんどん小さくなる。
私は……何が……
「あなたは何もしなかった。」
「……」
私は……
私は。
無言。何を言えばいいのか分からない。
私は……なんでここにいるの?