side印照才子
耳を疑った。
『リザーディが私たちを庇って怪我をッ!』
目を疑った。
顔に一太刀。幸い目は外れている。腹部に一突き。出血は多いが……致命傷は避けている。
倒れているリザーディを見て、私は……
「リザーディ……」
私は倒れているリザーディに歩み寄る。
「……さ……才子……さん……」
まだ息がある。
「リザーディ。もう大丈夫です。」
私は膝を付き、リザーディを抱きしめた。
「才……子……さん…………わた……し……才子さんの…………こと……す…………き……で……」
「…………」
私は……
目を閉じ、意識を失ったリザーディを寝かせる。
「……私も好きですよ。切奈。」
……お灸を据えないといけません。あの馬鹿者に。
私の愛しい人に手を出した……愚か者に。
腰のバッグを開け、ゲーンガンを取り出す。私専用の特殊拳銃。
装弾数3発。超大型リボルバー。重量4kgオーバー。弾を込めるとその重さは5kgに迫る。
「日巡璃ちゃん。そこの3人を連れて逃げれますか。」
「……おねーさん?」
「まだ息があります。今病院に連れていけば命が繋がります。」
「……わかった。」
ありがとう。日巡璃ちゃん。
日巡璃ちゃんが3人を担ぎ後ろへ。
紅茶を1口。目を閉じる。
そして自分の上着のジッパーを全部下ろす。
内側には……無数の薬莢と弾頭。
「ちょうどいいです。あなたは三発で充分です。」
薬莢を別々のポケットから三発取り出し、別々の弾頭をセット。そのままゲーンガンに弾を込める。
この動作……約2秒。総重量4kgを優に超える拳銃を片手で扱い、弾を込める。私はこのために体を鍛え続けてきた。徒手格闘やパトロールの速度は副産物です。
「来なさい。あなた程度では私の相手にならないことを身をもって教えて差し上げます。」
「……」
私の声に反応してか、刀を振り下ろす鎧武者。
それを大きく横に躱して、まず1発。
ドゴン!
私の放った弾丸は刀を握った手を捉え、弾頭が着弾。急に破裂し、トリモチのようなものが手のひら全体を覆い、地面に接着。もう自由に動けない。
鎧武者は力任せに動かそうとしているが……
「生半可な力じゃ無理ですよ。」
ゲーンガンのハンマーを下げる。
ガ……ジャン……
次の弾丸がセットされた。
日巡璃ちゃんの攻撃を受け、体が所々大きく凹んでいるのに動き続ける様子……それとその体躯からしてコイツには命が無い。動き続けるナニカ……と仮定。
ただし殺す訳には行かないので……体良く気絶してもらうことにしよう。
本音ですか?……ふふ。言わない方が良いこともあるのですよ。
動けなくなった目標の……狙うは体。鎧の隙間。躊躇なく引き金を引く。
「……」
ダァン!
命中と同時に目標に電撃が流れる。
「!?!?!?!?」
大きく暴れ、地面に倒れた。
「……鎧は金属製。電気はよく通すでしょう。」
ゲーンガン……私専用特殊拳銃。ありとあらゆる拳銃の弾丸を発射でき、その弾丸をその場で組み合わせ、対応力を上げた逸品。
弾丸も薬莢と弾頭でいくつも種類があり、組み合わせは50種類を超える。それを瞬時に判別、最適なものを用意し発射出来る私専用の拳銃。
ブラッドロータス事務所に制式採用された時、ブラッドロータス様に渡された採用祝いでもあります。……懐かしいですね。
「……それで。そこで見ているあなたは誰ですか。」
「くふふふ〜♪おねーさんわかってたんだ?」
鎧武者とは違う方向に拳銃を向ける。
建物の影から出てきたのは黒いフードとマントに身を包んだ女性。……声が女性なのでそう判断しました。
「ヒーローインテリジェンス……くふふふ。初めてお目にかかるけど……すごい強いねぇ!コイツ制圧できるなんて!」
「…………」
「あ……そうだったね!自己紹介がまだだったや。くふふふ……私はゼノ。よろしくね?」
ゼノ……ふむ。
「…………」
「おぉ怖い怖い!それ怖いから向けないでよ?」
「推定敵。野放しにできる理由がありますか。」
「くふふふ〜♪そりゃそうだ。」
「……コレはあなたの個性ですか。」
鎧武者の事。時間稼ぎもそうだが……ここで捕らえれるなら捉えておきたい。……それに……
「ヒーローを襲った計画的な犯行とお見受けします。理由は後で聞くとして……あなたを拘束させてもらいます。」
「くふふふふ〜♪いいねぇいいねぇ!おねーさん怒ってるぅ?」
「……」
「うーん……でももうソレ使い道無さそうだしぃ……おねーさんと私が遊ぶのもいいかも♪」
ゼノと呼ばれた敵がマントを広げた瞬間、下に黒い液体が落ちた。
「……」
1度距離を取る。こういうのは……近付くのは悪手だ。
「くふふふふ♪いいねいいね……でも……」
黒い液体が広がり、人の形を成す。
「どれが私か覚えてるぅ?」
「!」
無数のゼノが出来上がった。
「本体の私を始末しないと〜♪さっき逃げたカタツムリの子……追いかけてみようかなぁ♪」
ゼノが四方八方に動き出す。私を無視して。私など余裕で対処が出来ると言わんばかりに。
「くふふふふふ!おねーさん手詰まりかなぁ!?」
「人に拳銃向けたことあるぅ!?ヒーローだもんねぇ!!」
「くふふ♪こっちだよ〜♪私が本物かわかんないけどね?」
「……はぁ。」
「?」
「舐められたものですね。」
ダァン!
「ごっ!?」
敵とはいえ人に拳銃を向ける覚悟?そんなものとっくに終わってます。
周りの分身が音もなく崩れる。
目の前には……腹を抱えてうずくまってるゼノ本体。
「あ……ぐぅ……な…………なんで……わかったの……かなぁ……!?」
「当たり前です。あなたから一度も目を離してません。」
「……!……くふふ……そりゃそっかァ…………私の方が……悪手だった……かぁ……」
「それに……私言いましたよね。」
胸ポケットから薬莢と弾頭をくっつけ、ゲーンガンに込める。
「あなたは三発で充分だと。」
「!…………くふふふふ……私のことも……含めてたんだァ……?」
「動かないでください。4発目は脳天です。」
「お腹にぃ……穴開けといて……くふふ……容赦なぁい♪」
「痛くないように貫通弾を選びました。死にはしませんよ。」
「あは……♪……私ぃ……おねーさんのこと気に入っちゃったかもぉ♪」
「そうですか。戯言は刑務所で聞きますよ。」
1歩。1歩と近寄る。
「くふふふふ……♪あは……あははははははは♪」
「…………何が面白いんです。」
「ごめんねぇおねーさん♪……時間切れかも♪」
「……は?」
ゼノと鎧武者が桃色の煙に包まれる。
「私ぃ……そろそろ帰らないと怒られちゃう♪」
「待ちなさいッ!!」
「また会おうねぇ♪おねーさん♪」
ポン!
「……」
ふたりが姿を消した。……生憎火災や二次被害が起きていないので良いですが…………
ゲーンガンから弾丸を抜く。
「……」
タタタ……
「……もしもし。ブラッドロータス様。例の件と似たような敵を逃しました。」
私は今できる事をしなくては。