※この作品はR-18です。

きっと私のアカデミア   作:おいーも

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心の持ち方

 

 

 

 

 

 

 

side槍田日巡璃

 

 

 

「「「「……」」」」

 

重い空気が流れる。

 

 

 

私たち……インターン中の生徒が集まっているのはとある病室。ベッドに1人。立ち尽くしているものが3人。……あとひとり。

 

あの事件の後、後処理のため私たちは一旦帰らされ……でも会いに行かない訳にも行かず、面会の最後。ギリギリの時間に入ることができた。

 

 

「……そんな顔しないでください。私が望んだことです。」

 

「……でも……」

 

当の本人は既に目を覚まし、ベッドの上から上体を起こしている。

 

クリスちゃん。左腕が……欠損してしまった子。

 

みんなからの情報のよれば、不意打ちだったとはいえプロヒーローを1人倒し、学生ヒーローをまるで遊ぶかのように蹂躙。ヒーロー攻撃を目的とした敵犯罪に巻き込まれた形。

 

はじめてのインターンで。

 

 

「…………ごめん。私がもっと早く来ていれば……」

 

「ちがう……ウチがもっと早く連絡できてれば……」

 

「……やめろよ。そんなこと言ったら……何もできてねぇ俺がいちばん悪ぃよ。」

 

「「……」」

 

 

「……大丈夫ですよ。この程度でヒーロー活動を辞めれるほどヤワじゃありません。」

 

当の本人が気にしていないことが……いちばん辛い。

 

 

 

「……」

 

 

それに……

 

 

 

 

「ねえ。」

 

「……っ。」

 

「なにか……無いの。」

 

「…………」

 

 

亦亘さん。今回の件で……さほど怪我がなかった子。無傷と言って差し支えない。

 

さっきからずーっと何も喋らない。何も言わない。誰が聞いても、今日の面会も……フラッと着いてきただけ。

 

 

「……べ…………別に……」

 

フッと目線を下に外す。まるで……諦めているかのような。拗ねているような。

 

それが……許せなかった。

 

 

「!」

 

私が1歩詰め寄ると同時に、無頭くんと憂世ちゃんが私を止めに入った。

 

「何!?別にって何!!アンタどうせ……何も出来なかったんでしょ!!現場に居ながらッ!!」

 

「……ふ……ぐ……」

 

「委員長!!」

 

「待って!槍田はん!ここ病室や!あんま大きい声出したらあかんて!」

 

「そんなことなら……私が一緒にいれば良かった!!私だったら……こんな怪我させない!!」

 

「…………ぐ……うぅ……」

 

亦亘さんが歯を食いしばりながら涙を流す。

 

 

「泣きたいのはクリスちゃんだよ!!アンタじゃない!!」

 

「……かった。」

 

「はぁ!?」

 

「…………うごげながったんだよぉおお!!」

 

動けなかった……!?ヒーローが……現場で……!?

 

 

「……何してるのッ!!!アンタはァッ!!!!」

 

そんなこと……許されるわけがないッ!!

 

 

「ダメだ委員長!!手ェ出すんじゃねぇぞ!!」

 

「あかんで槍田はん!冷静になっておくんなまし!」

 

「……」

 

 

「何してるかわかってる!?最悪人が死ぬところだったんだよ!?」

 

「委員長!!落ち着け!!待て!!」

 

 

「ねぇ!!なんとか言ったらどう!?ねぇったら!!!」

 

「槍田はん!槍田はんの言うてることは正しいんよ!やけん待って!!落ち着いて!!」

 

 

「絶対に許さないからッ!絶対に!!あんたが……あんたがあああっ!!!」

 

「………………」

 

 

「あんたが動けていたらッ!……クリスちゃんの腕はッ……!!!」

 

「…………ふぐ…………うぅ……」

 

 

「無くなんなかったかも……しんないのに……!!!」

 

「………………うあ……うわああああああっ!!!」

 

 

 

亦亘さんが走って病室を出ていった。

 

それと同時に……私は膝から崩れ落ちた。

 

己のやるせなさと、怒りを他人にぶつけてしまった事への自己嫌悪。もう胸の中が……めちゃくちゃだった。

 

 

「委員長……」

 

「槍田はん……」

 

「……っ。」

 

私は……何がしたいの。

 

 

もう戻れない。これはあの子だけの失敗じゃないのはわかってる。わかってるけど口に出た。感情でどうにもならないことも理解してる。それでも止めれなかった。起きてしまったこと。結果そうなってしまったこと。

 

 

私の中で、クリスちゃんの腕の欠損というものは……思った以上に消化が難しいものだった。

 

私がいれば……私が戦っていれば……もっと早く……もっと強ければ……

 

 

 

 

 

ガラッ……

 

「うるさいですよ。病室では静かに。」

 

「「「!」」」

 

「……才子……おねーさん。」

 

 

才子おねーさんがドアから顔を覗かせる。

 

「…………ふぅ。」

 

才子おねーさんは病室に入り、持っていた紙袋を椅子の上に。

 

「日巡璃ちゃん。どうしたんですか。」

 

「…………わかんない。私……クリスちゃんの腕が……無くなっちゃったのが……やるせなくて……動けなかったって言った……亦亘さんが許せなくて……でも……怒っちゃって。ぶつけちゃって……それも嫌で……」

 

「……はぁ。まだまだ子供ですね?」

 

ぽんと頭に手を置かれる。

 

「……え?」

 

「あなたが気にすることじゃないです。今回は私たちプロのミスです。判断を誤りました。」

 

「そんな……そんなわけ!」

 

「言ったじゃないですか。これは私たちの仕事だと。……だからあなた達のミスを謝るのも私たちの仕事ですよ。もしかしてまた自分が〜とか思ってました?本当に自責の塊ですね。」

 

「……!」

 

 

「私は今からリザーディの病室に行ってきます。それに……今は多分ブラッドロータス様が鎌足さんのご両親に謝罪をしに行ってます。」

 

「おねーさんが!?」

 

 

「はい。私の事務所の最高責任者なので。……それが大人です。娘さんの身体に怪我を負わせてしまった。過程がどうであれ結果は嘘をつきません。謝るのも、許すのも許さないのも大人です。」

 

「…………」

 

「みなさんも覚えておいてください。私達に責任を押し付ければいいんです。あなた達はまだ子供。自己責任は美徳ですが……もう少し肩の力抜いてもいいんじゃないですかね。そのための私たちです。あなた達のミスは全部私たちのミス。無理に責任を感じる必要はないんですよ。」

 

「…………うん。」

 

「鎌足さんには後日しっかりとした場で謝罪をさせてください。我々の不徳の致すところです。」

 

「いえ……これは私が選んだ事ですので。お二方には大変良くしていただきました。」

 

「……ありがたいお言葉です。」

 

 

才子おねーさんが紙袋を持ってドアへ。

 

「それではそろそろ面会時間も終わりますので手短に……ね?」

 

「「「……はい。」」」

 

「……ふふ。」

 

おねーさんが病室を後にする。

 

 

 

 

 

「……日巡璃さん。」

 

「……?」

 

「私のために怒っていただき……ありがとうございます。少しだけ……少しだけですが気が晴れました。」

 

「!……いや……あれは……私が……」

 

「いえ。ふふ……私は……望んだことと言っておきながら……少しだけ後悔していたのかもしれません。」

 

「…………そっか。」

 

「ふふ。……亦亘さんには内緒ですよ?」

 

「……うん!」

 

 

その後面会時間ギリギリまで色々話した。

 

まだこの事実を飲み込むことは時間がかかるかもしれない。責任を押し付けるなんて難しい。

 

 

でも大人がそうしているんだ。大人には大人なりのケジメの付け方がある。それに対して……私がどうこういうのは間違ってる。

 

私はもっと……心を強くしないと……意思じゃない。心の持ち方を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side亦亘初華

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

やっちゃった。逃げちゃった。私……何がしたかったんだろう。

 

言い返せなくて。言い返したくなくて。

 

何も出来なかったのは事実だから。

 

リザーディが私を庇って襲われて。私はそのまま腰が抜けて。結果クリスさんの腕が無くなった。

 

 

私は……ヒーロー失格だ。

 

 

 

 

「…………もう……やめようかな……」

 

ごめん……みーちゃん……私……

 

 

 

 

 

 

 

「……初華。」

 

「…………え。」

 

 

「何をしているのですか。」

 

「…………な……んで……」

 

 

 

そこに居たのは……みーちゃん。

 

私の彼女で……今1番会いたくない人。

 

 

 

 

 

 

 

 

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