side亦亘初華
「はっ……はっ……」
な……なんでこんな所に……みーちゃんが……
「ど……どうして……」
「……聖愛学院の生徒が怪我をしたと副生徒会長から連絡があったもので、時間もギリギリになるのですがお見舞いだけでもと立ち寄ったまでです。」
「……」
律儀……いや。みーちゃんならこういうことする。やさしいもんね。
「……初華。私は質問に答えられていませんよ。」
「へ?」
質問……?
「もう……もう一度聞きますね。何をしているのですか?」
「…………あ……」
無我夢中で走ってきので一旦辺りを見渡す。……今ここは病院の駐車場。そこに設置してあるベンチ。
「…………えと……その……」
「鎌足さんは何処です?同じ場所なのでしょう?」
「……ひっ……うぐ……」
「…………」
みーちゃんが……私の反応で……察さないはずがない。私……みーちゃんに捨てられちゃう!どうしようどうしよう!嘘なんてついたことないし!かと言っても本当のこと話す訳にもいかない!
みーちゃんに捨てられたくない!!
するとみーちゃんは何も言わずに私の横に腰をかけた。
「……ひぇ!?」
「……泣きそうな目。苦しそうな表情。真っ白な顔。そこまでされたら……何も言われなくても伝わります。」
「………………」
「このネットニュース……初華たちの事だったのですか。」
みーちゃんがスマホを見せてくる。そこには……
【ヒーロー1名インターン中の生徒1名大怪我!ヒーローを狙った犯行か!】
「!!」
読んでみると……それはもう私たちのこと以外考えられない内容だった。既に公安の記者会見も開かれ、謝罪と説明を終えたあとだと言う。
「…………」
もう……バレてる。私が怪我をしていないこと。そうなれば……必然的にクリスさんが……ということ。
「……行きますわよ。」
みーちゃんが立ち上がる。
「へ……何処に……」
「謝りにでしょう。その様子だと……言葉もロクに交わしていないのでしょう。」
「……!」
「鎌足さんの安否も確認したいですし……あなたはそのままで良いのですか?」
「…………」
クリスさんと……このままずっと話さないまま……
『槍田様!本当に申し訳ありません!!槍田様の事情は既に今昔鏡様から話されているのですが……亦亘さん!!』
私のために謝ってくれたクリスさん。
『あなたはッ!!未熟とはいえヒーローなのでしょうッ!!!』
私を叱咤激励してくれたクリスさん。
『せめて私の屍を超えていきなさいッ!!!』
私を……守ってくれたクリスさん。
そんなクリスさんと……話せなくなる……?
それだけじゃない。このまま逃げて逃げて……私はみーちゃんの横に胸を張って立てるの?
クリスさんに謝らずに……結局私は弱いまま。あの時動けなかった私と……今の私。何が違うの。
そんなの……そんなの……
「……行く。」
絶対やだ。
「……ふふ。それでは行きましょうか。時間ももう少しです。」
みーちゃんが扇子で口元を隠す。
……謝るんだ。許して貰えなくても。何度でも。何日だって。何年だって。
「……私のせいで!腕が無くなっちゃった……本当にごめんなさいっ!」
「……」
面会時間ギリギリ。私は何とか間に合ってクリスさんに頭を下げた。
みーちゃんはクリスさんの体調確認だけして退室。先に帰ってもらった。謝るのに……みーちゃんの助けはいらない。
「私ッ!もっと頑張る!もっと動けるようになる!もっと勇気を持つ!もっと強くなる!クリスさんが怪我したからとかじゃなくて……弱い私が嫌だから!」
「…………」
沈黙。私はずっと頭を下げたまま。クリスさんの返答を待つ。
「許しません。」
「っ……」
どれくらい時間が経っただろうか。
返ってきた言葉は冷たいものだった。当たり前だ。自分の都合ばっかり並べた謝罪。許されるものじゃない。
やっぱりクリスさんとはもう……
「言ったでしょう。私が望んだものだと。」
「……へ?」
「私が差し出したのは命です。結果左腕だけ無くなりました。……これはむしろ私にとって恥です。」
「……??」
恥?
「私の家系……と言っても父方ですが、代々伝わる武家なのです。故に1度言ったことを違えている……という状態ですから。私にとっては恥以外の何者でもありません。」
「…………えと……?」
「ですので、あなたが謝る必要はありません。故に……」
クリスちゃんの目がキッと開かれる。
「二度と己のせいだと思わないように。不快です。この腕は私がまだ未熟だった故。私の至らなさの全てです。」
「……!」
圧。有無を言わせない凄み。これが……クリスさんの……強さ。
「それに……私は今ワクワクしているのです♪」
「……ワクワク??」
「腕を無くしたこと。それによって生まれる新しい型。次の稽古が楽しみですわ♪」
「……あ……そう……なんだ……」
ごめんなさい。……やっぱクリスさんって変な人かも。
「ですので……そこで聞いてらっしゃる今昔鏡様にもお伝えします。私を障害者と扱わないでくださいませ。私は1人の女であり武士。腕が1本ないのがなんですか。これくらいのハンデ……乗り越えてこそ……ですわ♪」
「え?」
え?みーちゃん居るの??
「……」
ドアが開き、みーちゃんが入ってくる。
「……もう。気付いてらっしゃいましたか。」
「ええ♪過保護な今昔鏡様が帰られるわけがないと思いまして♪」
「……強いのね。貴方。」
「うふふ♪今昔鏡様程では♪」
「…………」
「…………」
なんかふたりの間に火花が……
「ふふ。帰りますわよ初華。」
「え!?はっ……はい!」
「お気をつけて。」
「ええ。クリスチーナさんもゆっくり休んでくださいな。」
「……!……ふふふ。はい♪」
「…………ふふ。」
なんかいいな。
病室を出ようとする……
「亦亘さん。」
「……はい!」
振り返る。
「先程の宣言は……約束ということでよろしいですか?」
「……」
弱い私が嫌だから。強くなりたい。
「……うん。私嘘つけないから。」
「ふふ。……それであれば……言ったことですし……違えませんね?」
「……うん!!任せて!」
「ふふ♪それが聞けて満足です。」
部屋を出る前にクリスさんに手を振っておいた。
明日から私は変わるんだ。
ニュー亦亘初華!頑張ります!!
「それではまずは日巡璃さんに謝りに行きましょうか♪」
「ぴぇ……」
助けてください。もう折れそうです…………