side亦亘初華
「む……り……」
「ん?」
「じゃないですッ!」
「よろしい♪」
クリスさん怖い!!
あの後、クリスさんは他に体に何かしらの後遺症があるわけでもなく、スパッと退院し次のインターンに間に合わせることができた。強かすぎてびっくりしちゃった。
それで……今日。最後のインターンの日。私は首根っこ引っ張られて槍田日巡璃の前に連れていかれようとしているわけだけど……
「ふぐっ……」
「河豚?」
「そういうことにしておいて……!!」
「?」
本音を言うと超絶嫌だ。みーちゃんの初恋の人なのもそうだけど……それ以上に……アイツに謝ったらなんか負けた気がするからすごくヤダ!
……はぁ。ガキなのはわかってますよえーえー。みーちゃんの1番になりたいから対抗心と嫉妬心で反抗してるんだってのも。
でもそれを乗り越えるって言っちゃったし……約束しちゃったし。約束破ったら……クリスさんなんか怖いし。
大嫌いな奴だけど、金輪際好きになるわけないんだけど、私はアイツに頭を下げてくる。
私がやりたいからじゃないんだからね!クリスさんとみーちゃんの為だからッ!!
side槍田日巡璃
「……なんか億劫。」
「あはははは!委員長でもそんな感じになるんだな!?」
「笑い事じゃないよぉ……」
「よしよししてあげまひょか?」
「みんなが嫉妬するから遠慮しとく〜……」
「残念やわ……」
今朝、クリスちゃんからメッセージが飛んできた。
『亦亘様が謝罪したいとの事なので眼前に連れていきますね♪』
いやぁ……びっくりしたよね。眼前?
それに伴って私のテンションはショボショボに……
「…………はぁ。」
「槍田はん?ウチだけが後で怒られるけんなでなでさせてくれへん?」
「変態さんだぁ……」
憂世ちゃんはなんかウキウキしてるし……無頭くんはテンション高いし。
その手ワキワキするのやめない?すっごくよくないと思う!
「ひぃん……謝らないといけないのはわかるんだけど…………それ以上に苦手意識が先行してる……」
「はぁ〜ん♪弱ってる槍田はんめっちゃ可愛い!手が……手が伸びてまう……」
「無頭くーん。セクハラされそうだから助けてー。」
「助けたら俺がセクハラになるだろうがよ!」
無理か。
憂世ちゃんしっかり変な子なんだよなぁ……普段はそんな感じ見せないんだけど……
「槍田はん!先っちょだけ!先っちょだけでええから!」
「……」
とりあえず……
「ねー。カナ〜?今憂世ちゃんにセクハラされてるから後で怒っといて。」
『は!?どういうこと!?なんのこt……』
ピッ
「……スー……」
「憂世ちゃん。ごめんね?」
「…………私明日まで命あるんやろか。」
「ねぇんじゃねぇか?」
「…………今のうちに遺言書いておきまひょか。」
……一旦これでよし。とりあえず……
「……そろそろだよねぇ……」
時間的にも。多分来る頃合い。うぅ……やだなぁ……でも!やるって決めたらやる!とことんね!
「よしよし!腹括った!やるぞ!」
「まぁなんかあったら助けてやるよ。」
「何も無い方がいいんだけどねぇ……」
ガチャ……
「お疲れ様です♪」
あ。来た。
「日巡璃さん。ごきげんよう♪」
「おはよ!クリスちゃん!それと……」
「うっ……」
亦亘さん……顔がすごいことになってる。
嫌だけど!ホントはすごくヤだけど!私も嫌なことしたから!!
1歩前に出る。
「ごめん!亦亘さん!私すごく嫌なこと言ったっ!」
大きく頭を下げる。
謝罪なんて自己満足でしかない。卑怯だよね。でもそれで許すか許さないかは相手次第だから!許して欲しいなんて言わない!
「「!」」
「クリスちゃんの腕がなくなって!私だって守れたかわかんないのに!あたかも自分なら出来たみたいなこと言って!言い返せないあなたを責めちゃった!私が言うべきじゃなかったのに!本当にごめんなさい!!」
「…………ふぐっ……」
「……?」
河豚?
「わ…………私……わた……ふぐっ……」
?
頭下げてるから何してるかわかんない。
「亦亘様?」
「ハイッ!」
なんか背筋ゾクッとしたよ??圧を感じた。
「わ……私も……ごめんなさい!このインターン中……だけじゃないけど……あんた……あなたに酷い態度だった……言い訳なんてない……ごめんなさい。」
「……」
亦亘さんは……亦亘さんなりに苦しんでたんだろうとは思う。今回の謝罪もクリスちゃん主導だろうし。
理由も何となくわかるけど……何も話を聞こうとせず、分かろうとしなかったのも私だよね。これは……私が何もしなかったのが悪いと言っても過言じゃないよねぇ……
パンッ!
「はい♪おふたりともお見事でした♪」
クリスちゃんからの一声で、どちらともなく顔をあげる。
「日巡璃さんの方が謝罪が早かったのは大きく減点ですが……♪」
「ひっ……」
「……亦亘さんも謝罪なされたのでまぁ及第点でしょう。」
「……あ……ありがとう……ございます?」
やっぱりクリスちゃん圧が使えるようになってるよね?どうしたの??
「……クリスちゃん?結局義手とかはつけないの?」
とりあえず気になってたことを口に出してみる。
「義手も良いですが……最悪動かなくなった場合の為……頼りきるわけにはいきません。まずは隻腕でこの個性と刀を十全に扱えるようになってから……ですわ♪」
「……強いんだねぇ?」
「変なだけだよ。」
「変?」
「何も言ってないッ!」
言ったじゃんね?
「そういえばよ。鎌足の個性って構えがいるんだろ?」
「はい。刀を鞘に収めた状態で身体の動きを止めないといけません。」
「だったらよ。一撃が似たような個性持ってるから割と個性の話が合うんじゃねぇか?」
「一撃様?」
一撃くんの個性も身体を固めてチャージする個性だもんね!もしかしたら相性いいかも?
「一撃くんどうやって訓練してるかよくわかってないんだけど……もしかしたら応用できるかもね!」
「なるほど……」
「俺から一撃に言ってみるよ。委員長経由で連絡先なりなんなり教えてやってくれ。」
「わかった!」
「よろしいのですか?」
「よろしいも何も……お互いヒーローだろ。じゃあ支え合うのが当然だわな?」
「……はい!よろしくお願いいたします!」
おぉ……これができる男の配慮ってやつかぁ……(?)
その後インテリジェンスが来て、パトロールなり書類仕事なり終わらせ、昼休みに。
「リザーディまだ退院できないってね。」
「まぁあの怪我ならも少しかかるだろ。」
「そうやね。」
「…………そろそろバレンタインですわね♪」
ボソ。
「「……」」
クリスちゃん??爆弾投下した??
「日巡璃さんは彼女さんにお渡しするのは確定ですわね?」
「うん。もうお店も決めてるよ。」
リサーチ済みですとも!
「……亦亘様は……」
「………………」
問題はこっちだよね。すごい顔してる。
「えぇ……まだ決まってないの……?」
「だ……うるさい!!付き合ってまだ1週間とちょっととかだよ!?みーちゃんの好みなんてわかんない……」
「日巡璃さんならわかるのでは?」
「!!!」
急に目がキラキラしはじめた亦亘さん。
「ん〜……いいよ。多分わかるかも。」
「え!!いいの!!」
「いいけど……」
「けど……?」
「それでミトちゃん嬉しいのかなって。」
ニヤと笑ってみせる。
「くっ……」
「ミトちゃんは誰かから聞いた自分の好みよりも……自分自身で選んで買ったモノの方が嬉しいかもなぁって思っただけ。」
「…………」
「槍田はん……いじわるやね?」
「ふふん。」
ちょっとだけ仕返しだよん♪
「やっぱ嫌いだ……お前。」
「へへーん♪私もミトちゃんにバレンタインあげちゃおうかな〜♪」
「絶対だめッ!!」
亦亘さんとはこんな感じでいい気がする。
あんまり友達だからとベタベタするもんじゃないしね。
とりあえず今晩は私の彼女たちをどうするか……だね。憂世ちゃんを生贄に捧げるのは確定。
頃合いを見て助けてあげないと。