side槍田日巡璃
「配信者……?」
「そうなんですね。どおりで良く部屋に引きこもってらっしゃったと……」
「……」
その日の夜、佳舞ちゃんがみんなに配信者だと伝えた……まぁみんなと言っても私の彼女たちだけど。
『……配信者ってなに?』
「カノカノ……!?」
「本気ですか……!?」
「うんうん。わかるよぉカナ。私も知らなかったもん。」
「「!?」」
すごい顔で振り向かれた。そんなかな??
「お嬢様……!?動画配信サイトなどは……ご覧にならないので……!?」
「ん〜……おねーさん。流水おねーさんのラジオくらいしか聞かないなぁ?っていうかそもそもそういうのをあまり開かない。」
「……そう……ですか。」
「……配信者……ってのは……動画配信サイト……とかで動画を……作ってる人達だよ。」
『そうなの?凄いのね。』
「まぁ……私はバーチャルだからあまり顔出しとか手出しとかもしないぞ。だから結構気楽だ。」
『ばー……ちゃる?』
「「「……」」」
うんうん。最近は絵がリアルタイム動くんだよ!すごいよね!!
カナに一通りバーチャルライバーについて説明を終えたあと……
私?もちろん何も喋ってないよ!なんにもわかんないからね!
『で?それを伝えてきてどうしたの?』
「実は……配信中に日巡璃の声が入ってしまったんだ。」
「「『はぁ!?』」」
「身バレとかは……ないと思うぞ。私は基本ゲーム画面と立ち絵しか移さんし、声もボイスチェンジャーで変えてる。だから日巡璃の生声が入ったわけではない。」
「……ならいいですか……?」
「身バレ。ダメ。絶対。」
身バレ……というか私がバレたら芋ずる式で佳舞ちゃんもバレそうだもんね。本当に良くない。
「すまない。軽率だった。」
『……そもそもアンタはどれくらいの登録者がいるのよ。身バレも何もそれ次第じゃない?』
「…………50万。」
「「え?」」
「………………50万。」
50万人も佳舞ちゃんのこと好きな人がいるんだねぇ……動画配信サイトってすごいなぁ?
「ごじゅっ……超有名配信者じゃないですか!?」
そうなの??
「いや。これでも減った方だぞ。雄英に入るにあたって配信頻度が激減したからな。」
「……いつから……やってるの……!?」
「3年前。気分でエントリーしたら入れた。」
「「…………」」
「……超有名配信者だって。」
『普段の言動からすれば信じらんないわね。』
「ね。ただの可愛い子なのに。」
『……それはちょっと認識が違うんじゃないかしら?』
「?」
『……恋は盲目ね。私に言えたことじゃないけど。』
天捻ちゃんがちょっと呆れた顔で説明してくれる。
「……登録者50万……ってのは……すごいこと。多分……平均は1000行かない……くらい。……それより……下も……いっぱいいる。…………その中で折れて辞めちゃう人だって……いる。」
「へぇー!平均の500倍ってこと?」
「そうですね。厳密に言えばもっと下だと思います。そちらの理解があまり深くないので……」
めっちゃすごいじゃん……企業だから伸びやすいってのもあるのかなぁ?
『佳舞は私たちが思ってる以上にすごい人って認識でいい?』
「やめてくれ。私がすごいんじゃない。なんか勝手に伸びただけだ。やりたいことをしてただけ。」
「そのやりたいことして伸びてるのが凄いんですよ。」
なるほどなるほど……
「それと話したいことがも2つあるんだ。」
「はい。なんでしょう。」
「もう……余程のことが……ないと……驚かない。」
「日巡璃の声が……ネットニュースになった……」
「「…………え?」」
「私の……日巡璃の声が入った配信がバズって……ネットニュースになった……」
ネット……ニュース……
「「『ええええええ!?!?!?』」」
……あの……変なニュース……嫌なコメントでいっぱいの……
「…………」
……すごく嫌かも。
佳舞ちゃんがスマホの画面を見せてくる。
『超有名配信者神崎カエデに知らない女の影が!?』
「「……」」
「…………ここまで……大事になるとは……思ってなくて……」
「身バレは……」
「絶対にしてないと断言する。」
『……でもこれ日巡璃の声が特定されかねないわよね。』
「…………」
特定……私だけならまだしも……皆が……
「……本当にすまない。日巡璃……私のせいで……」
「佳舞ちゃん……は……悪くないよ。私が不用心に入ったのが良くなくて……」
「予め言っておけばよかったんだ!……恥ずかしくて……言い出すのが遅くなって……」
「「『……』」」
とりあえずネットニュースのコメント欄を見てみる。
『カエデちゃんの彼女説。』
『女同士だとすれば捗るものがある。』
『高校生で百合に目覚めるか……将来有望だな。』
『むしろ変な男がついてなくて良かったまである。』
『俺らのカエデちゃんにやっと春が来たか。』
『母親じゃねぇの?』
『にわか乙。カエデちゃんは今高校で寮生活だぞ。』
『カエデちゃんのイラストタグがすげぇことになってる。』
『みんな想像で描きすぎ。めっちゃ助かる。』
「……あれ?」
なんかあんまり不快感がない……??
『コメントはなんか普通のオタク同士の会話って感じね。』
「そうですね。民度がいい……と言うやつでしょうか?」
「……私の企業は曲者が多すぎて……吹き溜まりとかゴミ捨て場とか言われてるから……ガチ恋勢とか特定班とかは……余程炎上とかしないと起きない。そういう面でも信用できる。」
「「へー……」」
企業のこと吹き溜まりとかゴミ捨て場とか言うのはちょっと……??
「……なんか……ちょっとホッとした。」
『今回は声だけだしね。あまりそういう目で見れないってのもあるでしょう。ネットニュースの記事でも佳舞のことばっかり言及してあるし。』
……だったら……いいかな?嫌な感じもちょっと無くなった。私も悪かったしね。
「それと……もう2つ……って言ってたよね?」
「そうだ。…………こっちの方が正直話したくない。」
「「「『?』」」」
佳舞ちゃんが意を決したかのように息を吐く。
「日巡璃……1回だけでいいから私の配信に声を出さないか?」
「「『はぁ!?』」」
「………………へぁ??」