side槍田日巡璃
「ッフーッ……よし!楽しむぞぉ!!」
試合開始目前。いつもはカナがいてくれたけど……
今回は……
「ひまひま。がんば!」
「お嬢様!私信じておりますので!」
2人が居るね!
カナは控え室。集中したいんだって!
「うん!応援しててね!」
「ん!」「当然です!」
よし!なんか勝てる気がするッ!
フィールドに足を運ぶ。
ちょっとだけ緊張感。多分……この試合最初が重要だ。
「来たな!槍田委員長!」
「日河原くん!正々堂々!いい勝負をしよう!」
日河原砂臣くん。
身体を砂にできる個性。弱点らしい弱点がわかんないし、私がパワーで勝ってても搦め手でどうとでもされそう。試合中に……弱点を見つけるしかない……かな?
最初が肝心。前試合の錨くんは一瞬で押し出されて終了だったから。油断はしない。
「よーしっ。」
靴と靴下を脱いだ。これで地面に引っつけるから、足を取られることは……ほぼないね!
「…………なるほど。さすが委員長だな!!」
身体の特性を理解されてる。厄介だね!
「またまたぁ。どうとでもできるんでしょ?」
「……どうだろうか。」
『Lady……fight!!』
まず初手……は……
構える。……けど……
え……?
何もしてこない。
なんで?足がくっついてるから?それ以前に……攻めてこないのはなんで?最低限押し相撲にはなるかなと思ったんだけど……
「……。」
…………警戒。困惑のし過ぎは判断を遅らせる。わかんないことはわかんない。
試合中に見つけれたらラッキー!何があったかは後で聞こう。
「…………。」
日河原くんの表情が掴めない。……何を考えてるの?
「…………。」
ジリジリ……距離を詰めてみる。
私は足を動かさなくても移動ができる。こういう距離の詰め方は大得意。
「…………。」
日河原くん……攻めてこないどころか後ろに下がった……?身体を砂にすらしてない。
罠?……いや。砂で罠を作った場合、日河原くんは自分の身体を1部砂にしないといけない。…………まだ砂になってる感じはしない。
発動条件?そんなもの彼の授業風景からは感じない。
もしかして……私がなにか彼の重要な弱点を持ってる?
砂……?砂の弱点ってなんだ。
砂……弱点…………私が持ってる…………。
「………………!」
まさか……いや。これは仮説だ。おねーさんが何度も言ってる。仮説を信じすぎるのは良くない!
……でも。
「日河原くん。もしかして……。」
私は粘液を出す。
「コレ……苦しかったりする?」
「!!」
その顔……この試合が始まって初めて顔が歪んだ。
粘液……というか水分。砂は水分を吸うと……
「…………ご明察だ。委員長。俺の個性は……砂状態の時水分を多く吸うと操作性が著しく低下する。…………異形型の……それも粘液を持ってるタイプは相性最悪だ。拘束できなくなってしまう。」
そうなんだね。
「…………そこまで言っていいんだ?」
「言っても言わなくても……逃げるという選択肢はないからな。」
日河原くんは不敵に笑ってみせる。立派なヒーローだね!!
「…………じゃあ!私も弱点を言うよ!!」
「!!」
「不公平だしね!私ね!乾燥と寒さに弱いの!粘液も出し続けたら脱水になっちゃう!」
これで5分だね!!
「…………なるほど!それではやりようがあるなッ!!」
日河原くんが覚悟を決めたのか、身体を砂にする。
「えへへ!かっちょいいね!!」
「勝たせてもらうぞ!!槍田委員長!!」
私を中心にドーム状に砂で覆う。
「これは……。」
「サンドーム……。全方位攻撃と全方位からの捕縛を得意とした形態。……本来ならな。」
「……へぇ?本来なら……?」
「今回は……持久戦に使わせてもらう!」
なるほど……私の粘液が出せなくなるタイミングを測って押し出そうと言うことか。
無理やり出ようとしても……多分彼の事だ。対策済みだろう。
試しに横に1歩動いてみる。
すると私が1歩歩いた分だけ砂のドームが動く。
「無駄だ。槍田委員長の動きは全力で追わせてもらう。」
「へぇ!なるほど……持久戦だね!!」
…………まずいね。どうしたものか…………。
多分力押しが1番効果的だけど……対策してるのかな。力押ししたところで状況が良くなるとも言えない。……このドームをどうにかしないといけない。
うーん…………粘液かける?躱されて意味無くなりそう。どうしよっかなぁ……
おや?
待てよ……?
全身を砂にする個性なのに、なんで声が聞こえるの?なんで私の移動した場所がわかるの?
そういう個性と言われたらそれまでだけど……
目も口も砂にしてるのに……視界も声帯もあるのかな?
「……もしかして……。」
顔がどこかにあるんじゃない??頭だけ……砂に出来ないんじゃないの??
時間をかけられたら負ける。その場で足を止め、目を総動員して日河原くんの顔を探す。
あったとしてそんなわかりやすい場所に隠してるわけがない。
砂は頂点を中心に円を書くように絶えず流動してる。それも厄介。探すのに相当カモフラージュになってるよね。
粘液を出すことはちゃんと辞めない。やめた瞬間日河原くんの思うつぼ。
……日河原くんの顔がどこかにあるも……仮説だけど、多分正しい。そんな気がする。時間が無い、全力で探す。
ただ……探してることを悟られてはいけない。聡い日河原くんのことだ。きっとすぐたどり着く。弱点を把握されたことに。
……考えろ。今までの言葉で……動きでヒントを掴め。
私が1歩動いたら……1歩分動いたドーム。
……追わせてもらう。
粘液が苦手。
頂点を……中心に…………流動。
「…………!」
……上から見たら……私が動くの見るの楽だよね。
あぁそっか。彼……上から見てるんだ。
こんなに壁探しても見つからないわけだ。じゃ…………突撃してみますか。
ダメだったらその時考えよ!
足に力を込める。
地面にヒビが入る。
「行くよ。日河原くん!あなたに勝つ!!」
そのまま真上に跳躍。
「何ッ!?」
飛び上がる!見えた!!日河原くんの顔ッ!!
左手で顔を捉えた。
「ぐっそっ!?!?」
日河原くんは身体を人に戻し、何とかアイアンクローを解こうとするけど私に力負けしてる。
少しだけジャンプしすぎちゃった……でも!まだ試合は終わってないよね!!
「日河原くん!!全力で受け身取ってね!!!」
「一体……!!何をッ!!!」
ジャンプは頂点を過ぎ、自由落下。
「いっくよーーーーっ!!!」
「うおおおおおおおおっ!!!!!」
「スパイラル・フォール!!」
日河原くんをエリア外の地面に力いっぱい投げつける。
「ぐおおおおおあああああっ!?!?」
日河原くんは轟音と共に勢い殺しきれずに壁に激突。
当然エリア外に弾き出された。
『……な……なんと!!なんというパワーだッ!!しょっ……勝者!!槍田日巡璃!!』
着地!
「いえーーーーい!!」
「「「ワーーーーーーーッ!!!!」」」
ガラ…………
「さ……流石だな。委員長!」
ボロボロの日河原くんが瓦礫を退けて声をかけてくる。
「日河原くん!大丈夫だった??」
「はっはっは!全く無事じゃない!体の節々が痛いよ!……だが……だいぶ清々しい気分だ!」
笑顔!えへへ!
「!っ良かった!!またやろーね!」
「ああ。次は負けない!!」
お互いに握手。
「「「ワーーーーーーーッ!!」」」
大歓声。戦略と戦略がぶつかったいい勝負!
やっぱり戦うって楽しい!!心同士のコミュニケーションだよ!!
私は出入口に顔を向ける。
カナが居る。
「……ふふっ。」
私。準決勝まで来たよ?
「待ってるね。カナ。」