side槍田日巡璃
日河原くんを救護室に送ってから生徒席に戻る。
「たっだいまー!!」
「おかえりであります!」
「おかえり。」
あれ?加糖くんと氷叢くん!
「香曽我部くんはいいの??」
「今は寝てるであります。」
「安静にさせろって……ブラッドロータス先生が。」
「そっか。そんなに酷いの?」
「打ち所がちょっと悪かったみたいであります。……相手側も悪意は無いと思いたいんでありますが……」
「……疑いたくはないよな。……だってあの委員長だぜ?」
うーん……そうなんだけどねぇ。人を故意に傷付けるなんて事しないと思いたいけど。
「……彼女の試合終わるよ?」
「髑髏ちゃん!彼女じゃないって!!」
カナの試合見てあげなきゃ!…………って
「きゃっ!?!?」
「……。」
圧勝。……そうだよね。飛んでる子には遠距離攻撃出来るならそれで有利になっちゃうから。
しかもカナなら軌道を弄ることも用意だろうし。
『勝者!カノーテス・ディミトリウ!!』
ペットボトルの水をごくごくと飲み干す。
「……ぷはっ!よし!カナの所行ってくるね!」
「忙しいどすなぁ?」
「えへへ!労ってあげたいからね!」
「…………付き合っちゃえよ。」
「それはまた今度!!」
髑髏ちゃんが最近こういういじりをしてくるようになった。仲良くなれたのかな?
「えっ……ペットボトル……え?未開封だった……よね??」
「小廻。委員長だぞ。」
「…………そっか。」
なんだよぉ!
廊下。見慣れた後ろ姿。
「カナ!!」
「っ!シーッ!!」
「??」
カナは何かを覗いてるみたいで……どうしたの?A組控え室?
手招きされる。覗けってこと?
「……。」
なんだろ…………
「なんなのあの不甲斐ない動きは!」
あっ………………
「……。」
無神さんと福ちゃん。無神さんが大きな声で注意してる。
廊下まで響いてるよ……。
「遠距離攻撃には旋回回避が基本でしょ!相手の弾は無尽蔵じゃないんだから!弾切れを待ちなさい!私とあなたしかA組は残ってないのに……このままじゃヒーロー科としてのパワーバランスが……!」
福ちゃんだって頑張ったのに……
「…………ハァ。」
「何!?そのため息!私はあなたの為を思って……」
「そうだよね。委員長は。……自分の物差しでしか人を測れないんだもん。」
「……は?」
「出来る出来ないじゃない。やらなきゃいけないのがヒーロー。でも私達はまだヒーローじゃない。免許も持ってないからヒーローなんて名乗れない。」
「でもそんな心づもりじゃッ!!」
「……もういいよ。」
福ちゃんが立ち上がる。
カナと2人で隠れる。
壁を背に体育座りで耳を傾ける。
「……私が悪かったね。委員長。だからもう二度と関わってこないで。…………私。委員長はどこか良心があるって思ってた。…………私、人を見る目が無いんだね。」
「…………鳥木……それは……。」
……福ちゃん。
「こんなことならB組になりたかったよ。あっちの委員長のが100倍マシ。」
「!!なんで……今そいつの名前がッ…………!どこで知り合って…………」
「……そんなことも分かんないんだ。本当に他人に関心が無いんだね。…………バイバイ。委員長。あなたが早く変わらないと私……あなたのこと嫌いのまま卒業しちゃうかも。」
「…………。」
福ちゃんが部屋を出ていったみたい。
「「…………。」」
お互い無言。……無神さんは今多分何もわかんないんだと思う。自分以外に関心が持てなかった……じゃないね。同じ人間なのに……できることとできないことに差があって、それを理解出来なかった。
咀嚼出来なかったんだ。だから自分が出来ることは他人でもできると……みたいな感じかな?
……私も……そうなる可能性は……あったのかな。虐められて……孤独で……他人を信じられなくて。
……なんか…………ヤダな。
「日巡璃。戻るわよ。」
カナが立ち上がる。
「……まって。もう少し。」
カナの手を握る。
「……しょうがないわね?」
カナが私の足を跨ぐ。
体育座りをやめて足を伸ばす。
するとカナが私を抱きしめてくれる。……私もカナの腰の手を回す。
「……。」
「どうしたの?不安になった?」
「…………うん。……私……無神さんみたいに嫌なことしてたら…………嫌だなって。」
「……大丈夫よ。皆日巡璃を信じてるわ。」
「そうかな。」
「それとも何?私の言葉……信じられない?」
「……ううん。信じる。」
「そ。……もう少しこのままがいい?」
「……うん。あと少しだけ。」
「…………いいわよ。」
「ありがと。」
「おせぇよ2人とも。カトちゃんの試合始まんぜ?」
「ごめんごめん!しっかり見ないとね!」
2人で席につく。
「…………お嬢様。」
後ろは愛ちゃんの席。後ろから声が……
「愛ちゃん?どうした……ッ!!」
「……ディミトリウ様だけズルいですよ?」
耳元!
「…………ひゃ……ひゃい…………」
「私にも……お情け……お願い致しますね?」
息が……声が……
「…………。」
「憎田。」
「……ふん。わかってますよ。」
不意打ちダメ!絶対!
心臓バクバクしちゃうから!
試合場に目を移す。
加糖くんが構える。相手は……無神さん。
「よし!!全力で応援だ!!」
「「「おう!!」」」
side???
「……。」
「……。」
無言。……というか無神さんは下向いてるであります。何か……何かあったでありますかなぁ?
『Lady……fight!!』
「……悪いけど。」
「……え?」
「悪いけどむしゃくしゃしてるから一撃で終わらせるわ。」
「っ!!!」
早……拳……
ドゴッ……
腹に大きな衝撃。視界が揺れる。衝撃が脳を揺さぶる。
「ご…………がっ………………」
……でも膝を着かない。
「…………?」
「あっ…………ぶな…………かったであります……」
ジャージの下……お菓子を仕込んでおいて正解だった。
「……油断してたであります……ハーッ……ハーッ……次は無いでありますよ!!」
「…………チッ。」
腰に装着している筒状のポテチを何枚か抜く。
「反撃開始であります!!」
「…………無謀。」
side槍田日巡璃
「上手い!」
「頑張れー加糖!!」
「行けるぞ!加糖!!」
一撃KOも有り得た。初手は加糖くんの作戦勝ちだね!
でも……
「攻撃は当たってないわね。」
「……そうだね。」
全部躱されてる。加糖くんも頑張ってるけど……あっちの方が1枚上手だ。
「ん〜??」
「どうしたの?」
「…………なんか違和感感じちゃって。」
「……そう?」
なんだろ……無神さんの動き。…………なんかモヤモヤする。
「……しっかり躱せてますね。武術の心得でもあるのでしょうか。」
後ろから愛ちゃんの声。
「……それかなぁ?なんか違う気がするんだけど。」
なんだろ……この感じ。
加糖くんは頑張って攻撃してる……が、全部躱され、距離を積められている。
「……どうするの。加糖くん。」
「そういえば委員長。ディミトリウさん。伝えたいことがあるんだ。」
「どしたの?」
「……何?氷叢くん。」
side???
「ハァッ……ハァッ…………」
「…………。」
カンカン……
「くっ……弾切れ……」
「…………無駄だったでしょ?」
僕のスナック菓子は全部地面に。
「……くそっ。」
「……じゃあ。この茶番を終わらせてあげるわ。」
無神さんが1歩踏み出す。
ジャリ……ビッ
「……え?」
BOMM!!!
「ヨッッシッ!!行ったでありますッ!!」
僕の個性、スナックアームズは触ったお菓子を僕が想像できる武器の性質に変える個性。投擲物として投げていたスナック菓子の中に、爆弾をいくつか紛れさせていた。……殺傷能力は無いであります。……怖いであります。
だから今のうちに突撃。押し出す!
「うおおおおおおっ!!」
ガッ!!
「ぐえっ!?」
急に煙から腕が出てきて首を掴まれる。
「……あなた……どこまで私をコケにしたら……気が済むのッ!!」
中から少しだけ焼けこげた無神さんが出てくる!ダメージになって無さすぎる!
でも…………ダメージがあるだけで……この『仮定』は成り立つ!!
「……広霧殿が言ってたであります……!あなたの……弱点は……呼吸だと!」
「!!」
「あなたの個性はッ……息を止めてるときじゃないと!!発動できないッ!!」
「!!なんでッ!!くそっ!!!」
無神さんの顔が歪む。
「広霧殿と一心殿と作戦会議したんでありますよォ!!僕が勝てなくてもッ!!他のみんななら勝ってくれる!!」
「っ!!」
「おかしかったでありますからね!広霧殿との戦いでも!今まで無傷だった攻撃を躱始めた時!!僕の爆弾でダメージを受けた今この瞬間!!確信したであります!!個性に寄るもののダメージを無くす上に身体強化の個性でありますね!!」
「黙れ黙れ黙れッ!!」
手に力が入る。でも個性が発動してないから痛くないでありますっ!!
「個性によるもの……だから広霧殿の霧は効かないけど、自分のお菓子はダメージになるから躱してた!!爆発は……僕の個性によるものだから効くか不安でありましたが……ダメージになってると言うことはッ!呼吸してたんでありましょう!!」
「チィッ!!」
「僕はもう武器が何も無いから勝てないでありますッ!!でも!!委員長なら!ディミトリウさんなら!!貴方に勝つ手立てをきっと思いつくはずッ!!」
「…………ッ!」
ギリギリギリ……
「がっ……ぐっ…………怒……り……みっともない……で……ありますなぁ!!…………僕は潔く……負けるでありますが…………一泡吹かせられて…………満足でありますッ!」
そのままぶん投げられる。
背中に大きな衝撃を浴びて意識が落ちる。
あとは……頼むで……あります。