sideカノーテス・ディミトリウ
「ハァ……ハァ……」
私の個性……ルールは1度触れた物に30秒だけ命令をし続けれる個性。その特性を利用して日巡璃を拘束。そのまま瓦礫で固めた。
持ち上げようと思ったけど命令の時間が足りない。近付くのは怖い。あの日巡璃なら……多分無事。
どうしたものか。このまま固めるのにも時間制限が……
ガラ……
「!」
「ぷはーっ!危なかった!!」
日巡璃……出てきた。ホコリまみれだけど……怪我っぽい怪我がない。さすがに少し心に来る。
このままだと攻め手が欠ける私は……ジリ貧になりそう。
「…………無傷……ね。ホント……凄いわ。」
「そう?えへへ!殻に籠ったんだよね!だから無傷!」
日巡璃が背中の殻をフリフリと見せてくれる。
なるほど……上手い……だとしたら益々ジリ貧になりそうね。日巡璃のパワーと……出来ることの多さ。
異形型の利便性をこれでもかと押し付けてくる。
「…………強いね。」
「そう?嬉しいなぁ!カナも強いよ!」
「ありがと。」
本来であれば嫌味に聞こえるそれも……きっと日巡璃は本心なんだと思う。それだけ素直で真っ直ぐな子。
だから私は好きになったの。
だから私は……
「私!まだ負けてないから!!」
勝ってみたいと思ったの!
「いいよ!こっからだもんね!!」
私が地面に触れると同時に日巡璃がこちらに駆け出す。
早い。
「それでもッ!!」
地面を隆起させ、日巡璃にぶつける。
「日巡璃ィ!!!」
ズガン!
「はあああっ!!!」
すぐに入るヒビ。呆気なく砕け散った。
「カナァ!!」
攻め手を緩めるな。私が遠距離攻撃を持ってるだけ有利だ!日巡璃に接近された時点で負ける!!
瓦礫をぶつけながら距離を取り続ける。
「えへへ!近付けないね!!」
謙遜しちゃって。私の弾数がもう少ないの理解してるだろうに。
日巡璃が本気出せばすぐ近付けるだろうに。本気を出せない理由があるのも知ってる。日巡璃の骨が負けちゃうから。
でもそれは裏を返せば日巡璃の本気を引き出せない私の実力不足。
いつか……全力ぶつけてくれるほど……強くなれるかしら。
「…私………諦めないわ。日巡璃。」
「なんの事?」
「こっちの話ッ!」
何度もぶつける瓦礫も……質量も大きさも心もとない。ダメージにすらならないものになってきた。
その隙を見捨てるほど……日巡璃は馬鹿じゃない。
一瞬で距離を詰められる。既に日巡璃の射程。
……だからこそ。だからこそ最後のトラップが刺さる。
「空気よ!!弾性をッ!!」
「およ!?!?」
こちらに手を伸ばした日巡璃を包むように弾性を持った空気の壁を作る。これで弾けば!外に出せる!!
「行けええええええっ!!」
「…………そうよね。日巡璃は……カタツムリだから……」
足……くっつけてるわよね。
『勝者!槍田日巡璃!!!』
「いえーーーい!!」
「「「ワーーーーーッ!!」」」
最後の最後。弾こうとしたが、日巡璃が足を地面に貼り付けてた結果それが無効。焦って距離を取ろうとしたが捕まり、そのままフィールド外に出された。
「カナ!!ありがとう!楽しかった!!」
満面の笑み。……はぁ。この子は……
「そうね。私も楽しかったわ。」
「うん!またしよ!!」
「……そうね。次は負けないわ。」
「えへへ!楽しみ楽しみ!」
次は絶対負けないんだから。覚悟してなさい?
side槍田日巡璃
お互い怪我らしい怪我は無く、試合が終わった。
選手通路。
目の前に無神さん。
「…………ふん。私の相手は貴方ね。……せいぜい足掻く事ね。」
……まるで天捻ちゃんは通過点とでも言いたいくらいの言い草。少しだけムッとなる。
「まだ決めつけるのは早いんじゃないかな?」
「……何?私が普通科に負けるとでも?」
傲慢。止まらないね?
「……まぁいいよ。とっとと行ってきたら?」
「ふん。そうさせてもらうわ。」
無神さんがフィールドに向かう。
「……傲慢だね。」
「興味無いわ。」
カナったら……もう。
「…………1回救護室行こ?」
「いいわよ。……擦り傷くらいはありそうだし。」
そのまま救護室に向かおうとすると……
「2人とも!……すごかった……よ!」
天捻ちゃんに声をかけられた。
「天捻ちゃん!行けそう?」
「……わかんない!……でも……易々とは負けない。」
「その意気よ。なんなら優勝するくらいの気持ちで行きなさい。」
「ん!!行ってくる……ね!」
気合十分だね!いけるよ!!
「頑張って!応援してるよ!!」
「あんなやな奴ボコボコにしてきなさい。」
天捻ちゃんがフィールドに向かっていった。
「勝てるよ!天捻ちゃん!!」
大きく手を振っておいた。
「……よし!救護室いこ!」
「そうね。……彼女ならきっと大丈夫よ。」
救護室にて。
「……2人とも骨折とか無さそうだし……大丈夫そうね。」
おねーさんに診てもらった。大丈夫そうだって。
「少しだけ消毒はするけど……血も出てないし問題ないわ。……と日巡璃ちゃん。決勝戦は私もストッパーとして見に行くから。」
おねーさんに2人とも消毒されながら言われた。そんなに私の本気ダメかなぁ??
「うえぇえっ!?……わかりましたよぉ。」
「嫌がらないの。貴方はまだ力の加減が出来てないの。……死人が出たらいけないわ。……貴方もね。ディミトリウちゃん。」
「えっ……私も……ですか?」
「そうよ。個性は人を殺めれる力。責任と覚悟が居るの。貴方達はそういう意味でまだまだ未熟よ。肝に銘じておいて。」
「はい。ありがとうございます。」
「…………はーい。」
「不貞腐れないの。……私と組手する時は本気出していいから。…………ね?」
「……うん。」
本気を出してないのは本当は嫌だ。相手を侮ってるみたいで。お互い全力をぶつけるのが礼儀だと思ってるから。
愛ちゃんも日河原くんもカナも。出せる全部を出したかった。でも……それは強すぎるって言われたから。
するとカナが手を握ってきた。
「日巡璃。……大丈夫よ。私達が未熟なのがダメなの。……お互い成長。…………ね?」
「……うん。ありがとう。カナ。」
少しカナの言葉で救われる。
「…………ふふっ。貴方達付き合ってるの?」
「おねーさん!?!?何をッ……」
おねーさんにシーッとジェスチャーをされる。……そうだ、ここ救護室だ。うるさくしすぎるのは良くないね。
「……付き合いたいと考えてますが……まだ日巡璃の心の整理がついてないようで。それまで待たせてもらってます。」
「…………そっか。日巡璃ちゃん。こんな可愛い子待たせるなんて……やるわね?」
「そんな……そんなつもりじゃ……!」
「いくらでも待つわよ?……だって私の事……選んでくれるんでしょ?」
カナに腕を抱かれる。
「もっ!もう2人とも!!……しっ知らない!!」
「あっ……日巡璃……」
「廊下は走っちゃダメよ〜。」
カナを優しく振りほどいて救護室を出る。
もう!何さ何さ!カナも……おねーさんも。私を……からかって……ないよね。カナは本気。
…………私……カナにいっぱい甘えてる。カナは受け入れてくれてる。曖昧な回答しかしてないのに……カナは受け入れてくれてる。
もちろんカナだけじゃないよ?愛ちゃんも、天捻ちゃんだって私に対して本気で想ってくれてる。
3人を待たすのは悪いと思いつつ…………私の不理解さに嫌気が刺す。恋……難しいよ。
何も考えない足は、選手入口に向かっていた。
ちょうどいいので天捻ちゃんの試合を見ることに。
勝てるかどうかは分かんないけど……善戦してくれてると……
「…………え?」
私の目の前に現れた光景を、脳は理解を拒んだ。
全身傷だらけで、息を荒らげて怒ってる無神さんと、
「あまね……ちゃん……?」
天捻ちゃんが頭から血を流して倒れていた。