side槍田日巡璃
「むーーん!今日も勝てなかったーっ!!」
大の字。
お仕事終わってもちゃんと組手。
今日も10:0。流水おねーさん達以外の勝てるビジョンが見えない相手は初めて。経験値が足りてないんだろうな……。
お仕事は手違いがあって1人こっちに来た以外はあんまりイレギュラーもなくサクサク終わってしまった。
プロヒーローの仕事って早いんだねぇ。なんなら流水おねーさんはあの後薬物の仕分け手伝ってたし。
…………なんでわかるの?
それはそうと。
今は組手が終わって片付け。大・爆・殺・神・ダイナマイトはお仕事の続きがあるとかで先に帰っちゃった。なので私達生徒で片付け。
来た時よりも美しく!モットーだよね!
「槍田はんは頑張っとったよ?」
「ごめんな。槍田。圖書うるさかったろ?」
今日はB組からは3人。憂世ちゃんと引子ちゃん。
「そんなことあらへん!正当な応援どす!」
「…………個性的だったね!」
「槍田はん!?」
うるさかったなんて言えないよね。にっこにこで滅茶苦茶楽しそうに応援してたもん。
お肌テカテカしてる。楽しかったんだろうなぁ。
「槍田だけならまだしも……無神まであんな調子だったもんな。」
無神さん応援してる時熱が凄かったね。まるでアイドルのライブに来たみたいな感じだった。
「天才って言われてる子が裏で努力してるなんて……王道中の王道!嫌いなわけないどす!なんでこんなことしてはるに言ってくれんかったん?」
「…………。」
そうなるからだよとは言えない。
「そうなるからだよ変態。」
「酷い!」
「私何も言ってないよ!!」
引子ちゃんは憂世ちゃんに遠慮がないなぁ……従姉妹ってこんなもんなのかな?
……私には従姉妹会ったことないから知らなかったや。
「それにしたって惜しかったでありますな!」
「……全然。まだまだよ。……もっと強くならなきゃ。」
もう1人のB組は加糖くん。今無神さんに話しかけてる。……2人で。
「そんなことないで!委員長凄かったやん!感動したわぁ!昼もかっこよかったけど……さっきもめっちゃかっこよかったで!」
「…………言い過ぎよ。恥ずかしいわ。」
なんと安毛ちゃんが今日は来てくれてます。
あんなに苦手だったはず……なんだけど?
「それにしても桂田はんが来られるなんて……無神はんの事嫌いじゃありまへんでした?」
「うーん……苦手だったよ?だって怒ってて怖かったやんか?」
「…………。」
「でもな!今日の委員長バリかっこよかったねん!そしたら仲良くなりたくなってな!……えへへ!見直したって言い方変かもしれんけど……委員長の事もっと知りたなってん!」
「………………また……嫌なこと言うかもしれないわよ。」
「……無神さん…………。」
そういう事…………思っちゃうよね。人のこと信じられないんだもんね。……多分B組にも縋ってるだけ。寄りかかってるだけ。自分の都合……なんだよねぇ?
もう少し心開いてもいいと思うんだけど……難しいか。
「もー!うるさいうるさい!委員長クヨクヨせんの!」
ベシッ
安毛ちゃんが無神さんの頭を叩く。
「いたい!?」
「なんか変なこと言ったらウチが怒る!間違ってたら怒る!これでええやろ?胸張ったらええねん!ドーンと構えとき!」
「…………うん。わかった。」
「あっはっは!あの無神さんでも桂田さんには勝てないでありますな!」
「なっ……そんな言い方無いでしょう!」
「いーや!あるね!これで恩を作って勉強教えてもらうねん!これでWinWinの関係っちゅうやっちゃな!」
「……桂田さん。私の立場で言うことじゃないけどあんまりそういうの言わない方がいいわよ?」
「そやったか?あっはっは!ごめんごめん!」
「それに…………勉強ならいくらでも教えるわ。」
「ほんま!?やったー!言質とったで?」
安毛ちゃんは誰とでも仲良くなれるんだねぇ。……このまま行けば……無神さんもA組と馴染めるかな?
「「…………。」」
「……?」
視線を感じる気が…………?
触覚だけ動かす。……あ……あれって
「茜ちゃんと海鈴ちゃん?」
「「!!」」
「え!?茜!海鈴!!」
「やべっ!」
「こっち来んな!!」
安毛ちゃんが入口に走っていく。
影に消えて見えなくなったが、少しすると安毛ちゃんが2人の手を引っ張って連れてくる。
「2人とも委員長と仲良くなりたいって!」
「言ってない!!安毛が心配だっただけ!!」
「あはは…………私は……茜の付き添い。」
「……私は……別に。」
無神さん……
「コラ!」
安毛ちゃんが無神さんの頭をチョップ!
「いたっ!?」
「違うやろ!?なんて言うの?」
「…………〜ッ…………ごめん……なさい。今まで酷いことしたわ。……本当にごめんなさい。」
無神さんが頭を下げる。
「…………私もごめんな?委員長の事勝手に苦手に思って勝手に諦めてた。安毛に聞いたけど今日かっこよかったんだって?仲良くできると嬉しい。」
「……!!……ええ!私も……!」
海鈴ちゃんと無神さんが握手。
「…………。」
「茜!」
「うーーーーっ!私まだアンタのこと好きじゃないからッ!安毛が許しても私は許さないッ!」
茜ちゃんが顔真っ赤にして怒る。そんな言い方無くない???
「……それでいいわよ。私は許されないことをしたから。」
「ううううううっ!!」
茜ちゃんは何を唸ってるの?
「……あんな委員長。言いにくいんやけど……茜の好きじゃないは嫌いじゃないって事やねん。言葉通り受け取らんでな?」
「察しなさいよ!バカ!」
「そっ……そうだったの!?ご……ごめんなさい。あまりコミュニケーションってものに慣れてなくて……。」
「…………あれ察せは無理じゃないかな?」
「私もそう思う。」
「私も。」
「僕もであります。」
さすがにバットコミュニケーションが過ぎるよ……茜ちゃん。
side???
…………。
委員長がドンドン色んな人と仲良くなっていく。
私はまだ委員長のことが許せない体になってる。……自分の気持ちが何一つわからないまま。
私は何がしたいの。
私は何を見たいの。
何が聞きたいの。
…………問いかけてもわからない。答えが出ない。
運動場に行っては見るものの、聞こえるのは笑い声。
みんな楽しそうに委員長と話してる。
私は……何をしているの?
踵を返して寮に帰る。
委員長に今日の事感謝するんじゃなかったの。
委員長に体育祭の時言ったこと謝るんじゃなかったの。
委員長はどんどん成長してる。
……私はどんどん後退してる。
怨めしいとかじゃない。私だけ取り残されてる疎外感。
委員長のことを信じていいのか。気持ちがはっきりしない焦燥感。
四方八方に雁字搦めにされて……
何も分からず私は部屋のベッドで意識を捨てた。
「……ほんと嫌い。」