side槍田日巡璃
やっぱり屋上だった。鍵付き扉は蹴破った。
落ち着け……落ち着け。まずは天捻ちゃんを回収しないと。
「なんだテメェ!!鍵掛けてただろうが!!」
「うるさい。鍵なんて意味ないから。」
走る。水球に天捻ちゃんが包まれてる。早く助けてあげないと。
「やらせねぇよ!!」
「どいて。」
一人私の前に出てくるが、そんなの関係ない。飛び上がって水球に突っ込む。
天捻ちゃんを回収。その勢いのまま水球を飛び出す。
「がぼっ……ごほっごほっ……」
「天捻ちゃん!無事!?」
「げほっ……げほっ…………う…………うん……ごほっ……」
生きてる……。良かった。1度胸を撫で下ろす。
「オイオイオイオイ……困るんだよなぁ?」
声のした方に顔を向ける。3人が私の前に立ち塞がる。
「……どいて。」
「ソレ……回収されたら困るんだよね。私たちが虐めたみたいになるじゃん。」
水の個性と……風の個性と……1人わかんないけど天捻ちゃんの傷的に多分増強型。私のするべきことは……ひとつ。
「そういやこいつ……アレだ!体育祭で反則負けしたやつじゃねぇか!!」
「えぇ!?あのやばいパワーでゴリ押してたやつ!?」
「えぇ……それってやばくね?私達でどうしようもできないんじゃないの?」
私も……顔が広くなったね。
「うん。だから退いてくれないかなぁ?」
「それとこれとは別だよ別。」
退いてはくれないみたい。……これ先生に見られたら大変だもんね。
だったら勝てるかもしれない私を無理やり止めて黙らせるのがまだ未来があるもんね。
…………今周りで何が起きてるかも知らずに。
「そっか。じゃあ私……いや私達天捻ちゃんを保健室に連れていかなきゃだから……強行突破するね?」
階段の方から無数の足音が聞こえる。
「……は?」
「委員長!助太刀するぞ!!」
「B組だけにいい顔させねぇよ!!」
「中曲瀬さん!大丈夫!?」
ぞろぞろと現れたのはB組とA組の皆と金城ちゃんと舌古ちゃん。突撃する前にちゃんと連絡入れたからね。
…………日河原くんが。
「は?は?は?」
「なんで……こいつ1人じゃ……」
3人は現状が理解できないみたいだ。
「先手必勝!!」「いくで!!」
日河原くんと安毛ちゃんが砂と毛で3人を拘束。2人の拘束の速度と正確性……凄いね。
「縛れ!怪我させんなよ!」
「先生来るまで待機だぞ!」
皆が紐で雁字搦めに縛る。
「離せよッ!!離せ……くそがっ!!」
「痛い痛い痛い!!」
「なんなんだよアンタ達!!変なところ触んじゃねぇよ!!」
抵抗も虚しく捕まってしまう3人。
「中曲瀬さん!」
3人の拘束が完了したのを見届けて、無神さんが安否を確認しに来る。
「無神さん!暖かいものない!?天捻ちゃんの身体が冷えてて……」
「わかったわ!……福!」
「……槍田。私に任せて。多分私の方が暖かい。」
福ちゃんが天捻ちゃんを抱きしめてくれる。
「僕も光って温めるよ!」
「ありがとう光くん。」
ちょうどいい温かさの光。……だいぶ眩しいけど。
呼吸は落ち着いてるけど……あと少し遅かったら何が起こったか分からない。
「舌古!金城ォ!テメェらの仕業かよ!!」
「しっ……仕業って何よ!中曲瀬さんを虐めてたのはあなた達でしょ!!」
声のする方に耳を傾ける。
「くそがっ!お前らも悔しくねぇのかよ!!ヒーロー科落ちてよ!普通科の甘んじてる私らがよ!!」
「悔しいよ!!悔しいに決まってる!!!」
「……当たり前じゃん。私達もヒーロー科に受かりたかった。」
「じゃあ……なんで中曲瀬の味方するのよ!!アイツは裏切り者なのよ!?」
裏切り者……!?何て事言って……!!
「……頑張ってるのを応援しちゃダメなの……!?何なのさ裏切り者って……自分らは他人の足引っ張ってるだけだろ!!僻みじゃんか!」
「…………古銀ちゃん……!」
「そうよ!頑張ってる中曲瀬さんが素敵だったから……かっこよかったから私達は仲良くなったの!友達になったの!!」
「……邊ちゃん!…………福ちゃん。天捻ちゃんお願い出来る?」
「…………手は出さないこと。」
「大丈夫。」
立ち上がり、2人の元へ向かう。
「2人とも。」
2人がこちらに振り返る。
「槍田……天捻は……」
「多分大丈夫。皆が頑張ってるから。」
いつの間にか安毛ちゃんも加わっているので、身体温めるのは多分大丈夫そうだ。
「…………遅くなって……ごめんね……中曲瀬さん。」
「ううん。2人が勇気を持って私に言ってくれたから……これで済んだんだよ?……もっと酷かったら命に関わってるところだった。本当にありがとう。」
2人を抱きしめる。
「「…………!」」
「本当にヒーローだぜ!お前ら!」
「ナイスだったよ!ありがとう!」
「遅くなんかねぇよ!かっけぇじゃねぇか!」
皆からの激励。2人は足の力が抜けたのか、張っていた気が緩んだのか私の腕の中で泣き始めた。
「うわあああん良かったよおおおお!!中曲瀬さん死んじゃうかと思ったあああ!!」
「ぐずっ……うん……うん…………良かった……良かった!」
「ありがとう。本当にありがとう。」
ヒーローは遅れてやってくるって言葉がある。
それは美徳じゃない。
気付かされるには……重すぎる内容。
「退けよッ!!」
ブチブチブチ……!!
「やべっ!逃げるぞこいつ!!」
「私だけでもッ!!」
増強型の子が走り出す。
「2人ともごめんね……」
「え……?」
2人を離す。
「逃がすわけないでしょ。」
「ぐえっ!?」
一瞬で追いつき、地面に叩き伏せる。
「ごめん委員長!紐ちぎられた!」
小廻くんが走ってくる。
「大丈夫だよぉ……個性知らないからね。しょうがないよね。」
「いてぇ!?くそっ……くそっ……なんで動けねぇ!!」
頭を地面に押し当てながら、腕を後ろに固める。
「……異形型のパワー舐めないでよね?」
ギリ……
「痛ぇし重ぇ!離せ!!このデブ!!」
「「は?」」
この子約2名の逆鱗を引っこ抜いた気がする。
「好きに言ったらいいよ。絶対離さないから。…………皆。こいつは私が固めとくよ。先生あとどれ位で来そう?」
「うーんとね……そろそろ来るよ。美右近い。」
双子ちゃんの個性本当にすごいよね……
「ありがと。…………ってことだから。ご愁傷さま。」
「……そんな…………そんな……」
きっと中学時代も周りの子虐めてた子が、何も変わらないまま雄英に来ちゃったんだと思う。
……もったいないなぁ。せっかく日本最難関高校に受かったのに。
「……自業自得だよね。」
やってきたスナイプ先生、イレイザーヘッド先生、普通科の先生に受け渡して終わり……とはならないのが今回の件。
A組B組双方に事情聴取があったけど、実際に無断で人に個性を使った私と日河原くんと安毛ちゃんは1日謹慎処分。
まぁしょうがないよねで3人とも受け入れた。
天捻ちゃんは全身の打撲傷は酷いものの、活動になにか支障をきたすものでもなく……少し熱は出したが、あったとしてもそれくらい。あまり被害が多くなくてすんだ。
午後の授業は丸つぶれ。
虐めてた3人の処分は後日決めるとの事。普通科も事情聴取を行い、他に虐めてたものが居ないのか捜索した上で今後二度とこういう行いが起きないように徹底するらしい。
それはそれとして……
「日巡璃は太ってないから!日巡璃の割合が地球上から減ったら許さないから!」
「お嬢様は大変麗しゅう肉体をしております!何も気にしなくて良いのです!あのゴミ共の戯言などに感化なされないよう……」
「…………それ言われなかったら気にならなかったんだけどなぁ???」
2人に変な配慮されたんですけど。