side憎田愛
「自分の食器片付けてくるよ!お水いる?」
「いただいてもよろしいでしょうか?」
「うん!持ってくるね!」
今日は……今日は夢なんだろうか。
お嬢様がめちゃくちゃグイグイ来られます。すっごく思わせぶりな態度を取られます。…………女の子同士のお出かけってこんな感じなの?
そんなの……全国の女の子みんな勘違いしちゃうって。……恋愛弱者のウチには刺激が強すぎるよ……。
ずーっと手を握って……ウチの事大切にしてくれてるのがよく分かる。気を抜くと顔がニヤけてしまいそうなのを必死に堪えてる。表情筋ピクピクしてるもん。
そもそもお嬢様はいつも魅力的で大変お可愛らしいお方なのですが……今日はそれに磨きがかかってウチ1人じゃ受け止められないです。どうされたんでしょうか。なにかの心境の変化が……?
……本当は……本当はお嬢様がディミトリウ様と中曲瀬様とお付き合いを始めたタイミングで……身を引こうと思ってたんだよね。
お嬢様にはウチじゃなくても魅力的な女性が2人も居るじゃないか。わざわざ恋人にならなくても、常に身の回りの世話をすることはできると……。
ですが抗えなかった。羨ましかった。……止められなかった。気持ちが。理性が。ウチを突き動かした。
メイド服を着ていると……今の受け身で弱いウチを……強いととさまとかかさまが守ってくれている気がして、なんでもできた。
だけど……だけど今日のウチはどうだ。……何とか取り繕ってはいるけど……ボロが出るのはもうすぐ。お嬢様が好きなのはきっとメイド服を着たウチ。……今のウチを見て……どう思うでしょうか。
「……はぁ。」
考えても始まらないね。お嬢様が帰ってくる前に食器を片付けておこう。
「メイド服が恋しい…………」
お嬢様の荷物と私の荷物を抱え、食器を片付けに行く。
そのまま席に戻ろうとした時、目の前の男性2人組に目が行く。
1人……私にぶつかろうとしてる?
「……。」
面倒事は避ける主義。その程度の動きでウチに触れれると思わないで。ウチに無許可で触れていいのはお嬢様だけ。…………あとクラスの皆。
スイスイと横を通り抜ける。
「アレッ!?」
なにか後ろで聞こえたけど無視。そんなこと気にしてる心の余裕はない。お嬢様に全部使いたい。
「ちょっちょっと!」
後ろから声をかけられるが無視。
「まってよ!」
全部無視。……ここまで無視してるのに着いてくるの相当意思が強いですね。面倒臭い。
…………ただ……席まで来られると非常に厄介ですね。
座られた日には席を立つことが出来ないかもしれません。
「……連れの者がいるのであなた達に用はありません。申し訳ありませんがお引き取りください。」
少しだけ振り返って冷たく言い放つ。
「ねぇ可愛いね!僕らと一緒に行かない?」
無視……ですか。……いい度胸してますねこの人。定型文か何かですか?
「いいじゃんいいじゃん!その子もついてきていいからさ!2対2ってやつで!」
お嬢様に声掛けたら絶対に許しません。
「うるさいです。近寄らないでください。」
……どうしましょうか。警備員さんを呼ぶのも吝かではないですね。
「愛ちゃん。」
この声は……お嬢様。ご迷惑をおかけする訳には……
「お嬢っ……!?」
グイッと手を引かれ、ぽよんと柔らかいものが顔を包む。理解が追いつくのが少し遅れた。
抱き寄せられてるのだと理解した。鼻からお嬢様の甘い香りが脳を揺さぶる。頭が……チカチカする。
「……コレ……私のだから。これ以上来るなら警備員さん呼ぶよ?」
「!?!?!?」
今の状況以上の爆弾発言に……遂には脳が動きを拒んだ。
side槍田日巡璃
「へぁ……でっか……」
「え……あの……その……」
「何?何度も言わせないで。この子……私のだから。二度と面を見せないで。」
「「はっ……はい!!」」
男2人はその場をセカセカ離れる。
愛ちゃん可愛いから……変な突っかかり方されたのかな。なんかモヤモヤする。気分があまり良くない。
「……愛ちゃん。」
「……はい。」
愛ちゃんは私の胸から顔を出して、こちらを見上げる。とろんとした目。少し上気した頬。
モヤ……
……こんな顔……周りの人に見せたくない。
「行こ。」
愛ちゃんの手を取る。
「あっ!?お嬢様!?」
そのままズカズカ進み……ショッピングモールを出て、最後に寄ろうと思ったカフェの個室に行く。
愛ちゃんを、私の横に座らせて私は出入口側に座る。
……これで……
「あ……あの……お嬢様……怒られてますか……?」
愛ちゃんを抱きしめる。
「おじょ……んぶっ!?」
「……怒ってない。怒ってないけど…………ごめんね。愛ちゃんが誰かに取られるのが……すごく嫌だったから。」
「お嬢様……私は……何処にも行きませんよ。お嬢様のお傍を離れることはありません。」
「うん……ごめんね。……こんな気持ち……初めてで。」
「…………嬉しい。」
愛ちゃんからも抱きしめられる。
「……嬉しい?」
「はい。……それは独占欲というものです。自分のモノを……恋人を誰かに渡したくないという……当たり前で普通の事なんですよ。」
「自分のモノ……恋人……そっか。だったら嬉しい。」
「……はい。」
どちらともなくハグを解く。
「……お嬢様?……そういえばどうして私の横なんですか?対面でもいい気が……」
「それはね…………これ……つけて?」
「これって……」
ラッピングされた小包。愛ちゃんに似合うと思って買ってきておいた。
「……つけて?」
恐る恐る愛ちゃんが封を切ると……
「……チョーカー………………これって…………」
愛ちゃんの手を握る。指を絡める。
「おじょっ!?」
「……だって。……独り占めしたかったから。」
「えっ……えっ……!」
愛ちゃんのチョーカーを奪い、愛ちゃんの首につける。
「あっ……」
愛ちゃんの顔がどんどん赤くなる。
もっと近くで見たい。もっと……もっと……
「愛ちゃん……こんな気持ち初めて。きっと2人は……私にくっついてくれてるから……2人にはあんまり感じなかっただけかも。」
「…………。」
どんどん近付く。これ以上は……
もう片方の手も握る。当然指は絡める。
絶対逃がさない。
「…………愛ちゃん。好き。……私の女になって?」
「……はい。……はい。お慕いしております……日巡璃お嬢様。」
愛ちゃんの唇を奪う。
少しだけピリピリしたけど……そんなの気にしてられなかった。
「……お……お嬢様……?」
寮。まだ夕方。カフェで少しだけくつろいでから帰ってきた。
私の部屋に愛ちゃんを連れてきて、ベッドに押し倒す。
「愛ちゃん……。わかるよね?」
「お嬢様……!はい。精一杯御奉仕いたします!」
「……私も……愛ちゃんのこと食べたいな。……ダメ?」
「〜〜〜〜ッッッッッ!!!!……はいっ!!是非!!」
「ふふっ……可愛い。」
愛ちゃんの顔を撫でる。……私の愛ちゃん。私の……私の。
「愛ちゃん。大好き。」
「お嬢様……愛しております。……あっ」
コンコン。
ノックが聞こえる。
愛ちゃん……は
「ハァ……ハァ……ハァ……」
無理そうだね。私が出ようか。
簡易的に服を羽織る。
「はい。どうしたの?」
「ひまひま。……私。」
天捻ちゃんだ。
鍵を開ける。
「どうしたの?」
「わ……すっご……。モワッとしてるよ?」
「…………換気しないとね。」
「…………あいあいは……」
「私のベッドで寝てる。いっぱい鳴かせちゃったから……」
「………………ねぇひまひま。……私も混ぜ……て?」
「んぇ!?」
「今日のこと……聞こうと思ったけど……こんなの無理……いいでしょ?」
天捻ちゃんが足をモジモジさせてる。……可愛い。
「…………うん。いいよ?」
天捻ちゃんを部屋に入れる。
鍵はかけとかなきゃ……
「あいあい……だいじょぶ?」
「ハァ……ハァ……なんで……あなたが……」
「んへへ…………私も……ひまひまに……抱かれに来た。」
「……そ……そうですか…………」
「……すっご……ドロドロ……だね。」
「……お嬢様にいっぱい求められて…………幸福感と満足感でいっぱいです……」
「…………いいなぁ……」
ふたりで可愛いお話してる。……ので天捻ちゃんを後ろから抱きしめた。
「きゃっ…………今日は……強気……だね?」
「うん。……愛ちゃんいっぱい可愛かったから……天捻ちゃんもいっぱい可愛いのかなって……」
「……やる気満々だ……ね?」
「…………今日は……私の日です……中曲瀬様だけに……いい思いさせません。」
愛ちゃんも起き上がる。
「ひまひま。……大好き。」
「お嬢様……世界でただ1人……お慕いしております。」
2人を抱きしめる。
「……2人とも……大好きだよ。」