side槍田日巡璃
「スラッグハンマーーーッ!!!!」
ドゴォッ
「わぁ!すっごいパワー!!強くなったねぇ!!」
「まだまだっ!!」
私はおねーさんの時間を稼がないといけない。
みんなが檻を探すために。
『私達でできる限り檻を探す。ただ時間を決める。終了10分前まで。それ以上はもう時間を使えない。』
『ってことは……私がおねーさんと20分くらい戦えばいいってこと?』
『……本当にきついことだけど……そういうことになる。』
『……でも何とかなるような気がする。』
『ホントッスか!?』
『だって……まぁ作戦もあるし……多分……』
「おねーさん個性使えないんでしょ?」
「…………ふーん。見る目も養われてるわね。上々上々。」
おねーさんが素手……ではないとはいえ、急造の武器を使ってるってことは、多分個性を縛ってるんだと思う。それだけのハンデがあっても5人捕まえてる手腕は本当に見事。
「個性なしで……ここまで戦われたら……相当心にくるものがあるけどね!?」
「んふふふ!経験と身体よ身体。まだまだ発展途上なんだし頑張りなさい?」
おねーさんは縄鏢を振り回しながら、色んなところに巻き付けたりして立体機動を行ってる。なかなかに攻めづらい。
時間を使ってくれるなら嬉しい。
おねーさんに触られないように立ち回る。
「……フーッ……」
距離をある程度保つ。
「…………ねぇ。」
「……何。」
「ヒーローは……困難な時こそ笑顔を見せるものよ?日巡璃ちゃん。……あなたの師匠は……笑顔を欠いたことがあったかしら?」
おねーさんがわざとらしく笑ってみせる。
「!!」
「……今回の試験はそーいう精神的なところも見てるのよ?……んふふ。全貌は言わないけどね?」
バヒュッ!!
「!?」
しまった!腕を片方取られる。
「隙。……話に気を取られすぎ。……まだまだね?」
「くっ!?」
力負けはしないけど……手枷足枷の分おねーさんの体重が重くなってるから……安易に引っ張れない。
「で……でもおねーさんの武器は封印したよ!」
「いい笑顔。……これで終わるとお思い?」
おねーさんの袖からもう1個縄鏢が出てくる。
そんなところに隠して……!!
「さーて。日巡璃ちゃん捕まえたらみんなどんな行動するのかしらね?」
「くっ…………」
紐をちぎろうとする……が
「ダメダメ。この紐一応特殊繊維で作ってるから力任せに千切にくいわよ。」
「抜け目がない!!」
全然急造のクオリティじゃない!!
「当たり前じゃない。増強型の子とか縛れないし。」
おねーさんが飛び上がる。
「うわっ!?」
私を中心に、紐を使ってくるくる円上に回転。
もう1個の縄鏢も飛ばして身体に絡めて、クルクルクルクルと私を縛り上げる。
「はい。簀巻きのかんせーい。」
いとも容易くつかまってしまった。
「うわーーーん!!」
「さーて。このまま檻に……」
「お嬢様ッ!!!」
「「!!」」
誰かが私とおねーさんの間に割って入る。
「お嬢様を連れ去らせはしません。」
「……愛ちゃん!!」
「憎田ちゃん……ナイスタイミングじゃない。」
「…………。」
「うーん……武器もなくなっちゃったし……素手で殴り合う?」
「…………いえ。今……ここで時間を使うわけにはいきませんし……私一人ではないので。」
後ろから足音。
「委員長!助けに来たぞ!!」
「委員長。大丈夫?」
氷叢くん、無頭くん、光くんが近くに来る。
「……委員長。青空さんから話は聞いた。時間稼ぎすればいいんだよね。」
小声で氷叢くんから話される。
「……そう。ほかのみんなはどう?」
「骸骰さんたちの4人は……檻を知ってるみたいだからそっちに任せた。…………今紐解いちゃうね。」
「……ありがとう。」
光くんと一緒に紐を解いてくれる。無頭くんは周りを警戒してるみたいだ。
「……んー……どうしよっか。流石に武器無しだと5人相手は厳しいよねぇ〜。」
おねーさんがくるくる回る。
「…………ええ。お嬢様が復帰出来次第勝たせてもらいます。」
「……んふふ。それ……いいね。火ぃ着いちゃった。」
おねーさんがスカートをたくしあげる。
「なっ!?!?」
「「「!?!?」」」
「何やってるのおねーさん!?!?」
「大丈夫大丈夫。何かあってもドロワーズ履いてるから。……ここ。」
そういうことじゃないんだけど!?
ガジャン……
なにか金属質なものが落ちた音がした。
「見て見て!……三節棍!使う予定はなかったけど……やらせてもらうね?」
おねーさんがヒュンヒュン振り回し、肩に担ぐ。
「……まだ持ってるじゃん。武器。」
紐を解き終わったので愛ちゃんに並ぶ。
「当たり前じゃん。嘘と笑顔は相手を騙すために必要なんだよ?」
この人ったら……
「お嬢様。……あのお方は三節棍を……?」
「使えるかどうか知らないけど、使えない武器を持ち出してこないと思う。」
「……ですよね。」
「んふふ……作戦会議は終わった?」
「終わってない!!」
「そっか。じゃあ行くね?」
「何がじゃあなの!?」
ズドオオオオオン……
「「!!」」
時計を見る。……ちょうど10分前!
「皆……!!やったんだ!!」
作戦が成功した!!
「…………ん。そっか。わかった。……はい。私はここでお暇するね。あーあ。……せっかく三節棍作ったのになぁ……。」
おねーさんが武器をしまい始める。
「どこに行く気!」
「ん〜?私は檻が突破されたからあとは皆の採点役に回るだけ。ウロウロはするけど挑んでこない限り戦わないよ。……あ、あとあとこれもあげる。」
おねーさんは玉を3つ落とす。
「私を出し抜いて檻を壊した景品。お疲れ様。」
おねーさんは建物の上に飛び上がってそのまま姿を消した。
「…………あれが人間の身のこなしか?」
「おねーさんは一般人じゃないから。」
ともかく、私のチームと離ちゃんのチーム分の玉は集まった。
「……愛ちゃんのチームは玉あるの?」
「もう全員分集まっております。」
「そっか…………助けに来てくれてありがと。」
「いえ。私がやりたいとわがままを言ったので。」
ほかの3人に振り向く。
「みんなありがとう!」
「いやいや。来て良かったよ。槍田さんも捕まったってなれば大変だったからね!」
「誰がブラッドロータス先生相手するんだって話だしね。」
「とりあえず玉をはめたら?」
「そうだね。」
「…………みんなは檻の周りの黒い人倒して回ってるみたいだから……玉は回収されそうだね。あと委員長でクリアっぽいよ。」
「よし!じゃあ行くよ!!」
ガチ……
『パンパカパーン!!全員クリア〜!残り時間は7:25!みんな気をつけてゲートまで帰ってきてね!』
根津校長の声が響く。
「試験クリアー!!」
「「「いえーーい!!」」」
「皆様。ゲートに向かいましょう。」
「……そういやよ、どんな作戦立ててたんだ?檻の周りには黒い人がいっぱいいて助けようがなかったって話聞いたが……」
帰る途中、光くんから話を聞かれる。
「そうなの?それは知らなかったから……超長距離から檻の方向の向かってフルチャージの一撃くんの個性ぶつけて檻をぶっ壊して、その隙に小廻くんの個性で小さくした能面くんを、引子ちゃんの個性と弾野原くんの個性を同時に発動して弾き飛ばして檻の人達回収しようって流れだったんだけど……」
急造した作戦とはいえ……上手くいって良かった良かった。
「……能面大丈夫か?」
「…………大丈夫だとおもうよ。能面くんが率先してやるって言ってたし……個性使ってどうにかしたんじゃないかな?仲間を信じるのも大事だしね。」
「……委員長は心が強いね。」
「お嬢様ですから。」
「なんで憎田が誇らしげなんだよ。」
「みんなお疲れ様。とりあえず実技試験は合格だな。」
ゲートで待ってたスナイプ先生に褒められる。
「「「ヤッター!!」」」
「とりあえずだ。とりあえず。ここから採点しだいで40点……赤点を切る可能性もある。今お前たちは40点は取れたかもしれないって事だ。」
「「「…………。」」」
一緒にスナイプ先生から釘を刺される。
「……今回の試験目的は至って簡単。君たちのヒーローとしての素質と出来ることを再度洗いざらい引き出した。」
「……素質?」
「出来ること?」
「実は全員分の監視ドローンがあって、逐一行動を監視させてもらった。裏でほかの先生が採点作業中だ。この結果は今後の授業内容に役立てるつもりだ。」
「「「え…………。」」」
「まぁそれだけでは分かりにくいから、今回はエクトプラズム先生とブラッドロータス先生に実戦的な協力を仰いだ……という訳だ。この2人の評価も採点に入れる。」
すると天眼君が手を挙げる。
「どうした。」
「途中で何人も見た黒い人は誰ですか?あんな先生は居ないと思いますが……」
そうだ!あの黒い人……玉を落とすって言うから協力者じゃないって訳じゃないと思うけど……
「そうだったな。あれはブラッドロータス先生の知り合いだ。分身ができる個性とのことで……今回は参加してもらった。カフェの店員をしているらしい。彼の話も採点に組み込ませてもらう。」
分身の個性?……すごい個性だ……そんな人がヒーローをせずにカフェの店員さんなんだ……。
「はい。ありがとうございます。」
「……にしてもすげぇ数いたよな。」
「あれが全員分身なんでしょ?……敵にいなくて良かったぁ……」
「倒しても倒してもキリがなかったわ。」
そんなに居たんだ……みんなの顔から疲労を感じる。
「ここからは個人的な意見だ。」
「「?」」
「皆が受かってくれて先生は嬉しい。これから採点で一喜一憂することもあるだろうが……まずは己を労って欲しい。」
「「「先生ェ!!!」」」
「早く着替えて下校の準備だ。今日は疲れただろう。早く体を休ませるんだ。」
「「「わかりました!!!!」」」
みんな無事に終わって良かった!
疲れた〜!!