side槍田日巡璃
試験が終わってもまだ授業は続く。夏休みまでもう少しあるからね。
夏。……そう夏。
私が苦手な季節のひとつ。
「ふぇ〜……暑……」
「日巡璃!?身体が溶けてるわよ!?」
暑すぎて本当に辛い。なんなら服がいらない。
「暑いよぉ〜……本当に暑い……」
「はぁ〜……天下無敵の委員長はんでも暑いのには敵いまへんか。」
昼休憩。カナと愛ちゃんと浮世ちゃんと髑髏ちゃんとお話。お昼ご飯は食べ終えたんだよね〜。この時間が楽しみでもある。
天捻ちゃんは邊ちゃんと古銀ちゃんとご飯だって。仲良しはいいことです。
…………女の子しかいないよね?
「……脱いでもいい?」
「「「絶対ダメ。」」」
「ぶーぶー!暑いんだもーん!」
「日巡璃の柔肌を私達以外に見せる訳ないでしょうが!」
「そうですお嬢様!せめて脱ぐ時は個室でしっぽりこっそり……」
「愛!!」
「……冗談ですよ。カノーテス様。」
最近私の彼女達は少し仲良くなったみたいで……認めあったみたいで?お互い名前で呼ぶようになった。……なにかの話し合いがあったのかなぁ?仲良しならいいことです。(n回目)
「うふふふ。私は別に困らへんけど……彼女はんを心配させちゃいけまへんで?」
「……はぁーい。」
「槍田……痴女。」
「うるへぇ。」
髑髏ちゃん……どっちが素なんだろう。
「そういえば日巡璃。アンタ寒いのも苦手って言ってなかった?」
「そうだよ。だから夏と冬が苦手。夏は暑いから部屋から出たくないし、冬は寒いから部屋から出たくない。」
「……難儀なものね。」
「あぁ……だからお嬢様のお部屋の机はこたつと一体化してるものだったのですね。」
「そうだよ〜……よく知ってるね?」
「へぇ委員長はんのお部屋こたつあるんか……うふふ。皆でお邪魔してもええかもな?」
「……寮の女子のB組全員位は入れるよ〜。……たぶん。」
結構おっきいものを買ってもらった。私の身体が大きいからね。
「…………梅雨は良かったなぁ……」
「すっごく元気だったわよね。……大雨降ってるのに傘ささずに外出ていったのは目を疑ったわ。」
「梅雨が1番好き。……毎日雨降らないかなぁ……」
「世界が壊れてしまいます。」
「冗談だよぉ〜……」
今年の夏は例年以上だとか。本当にやだ。
「……海とか行けないものね。」
「そうだよ。死にはしないけど……全身が寝れないくらい痛くなるから行きたくない。」
「…………本当に難儀ですね。」
「そうだけど……慣れちゃったなぁ。海行かなくても楽しいしね〜。」
「槍田はんの水着が見れんのは……少々もったいない気がしましなぁ?」
「そう〜?ヒロコスで毎度毎度肌見せてる気がするけど……」
「うふふふ〜。それはそれ。これはこれどす。」
「圖書。」
「冗談やん冗談。そんな怖い顔せぇへんといて?」
ガラッ……
「おいす〜。」
「おすおす〜。」「おすりんこ〜。」
引子ちゃんと別処ちゃんの3人が入ってくる。
「うわぁ……槍田溶けてる!」
「ドロドロ〜……」「大丈夫?」
「うへへ〜……普通に辛いよ〜。」
暑さは天敵。毎度毎度だけど耐えるしかない。
一応愛ちゃんに下敷きで仰いでもらってるけど……全然足りない。
「申し訳ありません。私の力不足で……」
「大丈夫だよぉ〜……夏が暑いのがいけない。」
「…………。」
「いつもならディミトリウは槍田にくっついてるのにね。」
「流石に暑い暑い言ってる彼女にくっつきにいくほど鬼じゃないわ。」
……へぇ?
「……いいよ?」
「……は?」
「カナ……くっつきに来ていいよぉ?うぇるかーむ。」
「…………えっと……」
カナに両手を広げると、カナの顔が真っ赤になる。
「あはははははっ!!ディミトリウ照れてやんの!」
「ウブ。」「可愛いねぇ〜。」
「うる……うるさいわね!いざ面と向かって許可されるとそれはそれで恥ずかしいの!!」
そういうもんなのかな?
暑くて思考がぽやぽやする……
「うへぇ……水水……ごくごく……」
この時期はペットボトルが秒でなくなる。本当に死活問題だよ……。
「「「…………。」」」
「槍田。エロい。」
「何がぁ!?」
「はい。今日のヒーロー基礎学は、飯田く……ヒーローインゲニウムに来てもらいました!」
「インゲニウムだ!よろしく頼む!」
「「「かっけええ!!!」」」
「男子うるさ……」
「引子ちゃんもあっち側だよ。」
白い流線型のボディ。全身着込んだターボヒーローインゲニウム。B組男子の少年心を早速掴んだ(若干1名女子)。
私でも知ってる有名なヒーロー。何年か前にニュースになったよね。ヒーロー殺し?なんだっけ?を捕まえたって。
引子ちゃんこの授業が好きすぎて1日ソワソワしてるんだよね。……可愛いよねぇ。
「……昼休み中『今日のヒーロー誰が来るのかな!?誰だと思う!?ねぇねぇ!』とか言われる。……時もある。」
髑髏ちゃん……それは一旦可哀想だね。
「じゃあ今日僕が1授業分教鞭を取らせていただくとして……だ。緑谷君。僕は何人目だ?」
「……このクラスは2人目かな。」
だいたいデク先生が連れてくるヒーローは学生時代知り合ったヒーローだったりする。……ほとんど100位以内に入ってるんだよね。
「うん。わかった。じゃあ傷原さんの後だな。……彼女の後となると少々緊張するが、精一杯授業を行うのでしっかり聞いて欲しい!」
「「「はい!!」」」
真面目な人だね……これは人気出るね。
「まずは自己紹介もかねて色々質疑応答に移ろう。……僕の名前はインゲニウム。インゲニウム事務所を兄と経営しているプロヒーローだ。質問があればできる限りなんでも答えよう!」
「はい!」
引子ちゃんが手を挙げる。
「じゃあその元気な君!」
「ヒーローインゲニウムって元々別のヒーローがしてませんでしたか?襲名したんですか?」
……そうなの!?
「うむ!いきなりぶっ込んできたな!……そうだね。それもかねて色々説明しよう。」
「お願いします!」
引子ちゃんやる気だね……すごい熱量だ。
「僕がインゲニウムを継ぐ要因となったのは、当時ヒーローインゲニウムとして活動していた兄の怪我だ。怪我をさせたのは……知ってる者もいると思うがヒーロー殺しステイン。僕が学生時代の時、兄が奴に襲われて意識不明の重体。懸命な治療と手術で何とか一命を取り留めたものの、休職をせねばならぬ事態になった。」
「そんな……」
「聞いたことあるぜ。ヒーロー殺し……」
「その時治療をしてくれたのがブラッドロータス先生なのだが……この話はまた後でだな。」
おねーさん!?
「「「えぇぇぇぇ!?!?」」」
「あの先生なんでも出来るじゃねぇかよ!!」
「はっはっは!そうだとも!僕も頭が上がらないよ!……話を戻そう。その時に兄から襲名をしたんだ。僕がインゲニウムの名前を継ぐと。その時はまだ覚悟はできてなかったんだがね。……兄は立派なヒーローだった。僕の憧れだった。…………まぁその後少し失敗をしてしまうんだ。」
「失敗ですか?」
「恥ずかしい話……仇討ちに行ってしまったんだ。当時学生で……なんの力も持たない僕が……だ。」
仇討ち……大好きなお兄さんが襲われたんだもん……言いたいことは分かるよ。
「見事に返り討ちになってね!デク先生とヒーローショートがいなかったら多分死んでいたよ!……今でこそ言えるが……当時の僕にそんな余裕はなくてね。……成長出来たのだと感じれたら嬉しい。」
「……ふふ。」
デク先生に視線を送るインゲニウム。2人でしか分かりえない何かがあったのかな?
「その後ステインともう一度接敵する機会があってね。その時の僕の心は決まった。覚悟ができた。インゲニウムとして活動をする覚悟が。そのあとは我武者羅さ。兄の大きな背中に追いつけるように毎日を全力で乗り切った。僕がヒーローのなった暁には……兄がヒーローイダテンに名前を変えて、僕が正式にインゲニウムになった……という訳だな。」
「……ありがとうございます!」
「……それでヒーロー殺し捕まえちまうんだもんな。すげぇよ……」
「プロヒーローってやっぱ俺達とは次元が違うんだな。」
「まだまだできることがあるでありますなぁ……」
みんな口々に感想を言う。違うこと……なんだろう。強さ?優しさ?……よく分かんないや。
「……そうだな。皆にも覚えて欲しい言葉がある。僕がここまで来れたのは……僕に揺るぎない正義があったからだ。僕の正義はヒーローインゲニウムとしての……兄の在り方。もし迷子が居た時、1番最初に手を差し伸べるのが自分でありたい。どこへでも。どこにでも1番に駆けつける最速のヒーローでありたい。……皆!信じるものを持つんだ。揺るぎない。決して揺らぐことの出来ない一心。……それが周りを引きつける力になる。この学園生活で皆は自分の正義を探して欲しい。雄英高校はきっときっかけをくれるはず。」
「正義……」
「……信じるものか……」
「……かっけぇ……」
「犯罪件数の減少によりヒーローの価値が下がりつつある昨今。君たちに今求められているのはヒーローとしての在り方だ。何を変えたいか。何をしたいか。どういう活動をしたいか。君たちならきっと見つけれるハズだよ。……ってことで時間もそろそろいい頃合いだ。授業に入ろう。」
ヒーローとしての在り方。
正義。
…………私は……どんなヒーローになりたいんだろう。