side槍田日巡璃
「うーん……うむむむ。」
「……何よ。日巡璃。」
今日はカナの家にお泊まり。お風呂に入って……悩みタイム。
「いやね?今日のインゲニウム先生の話が頭から離れなくて〜……」
「……正義って話?」
「うん。」
「……あれはインゲニウムの思想でしょ。アンタはアンタであればいいのよ。」
カナが背中を合わせてくる。
「……私のヒーローになりたいって思ったルーツはおねーさんだけど……どんなヒーローになりたいかって言われると……」
「……わかんないんだ?」
「うん。」
「……そっか。」
顔を洗う。
「…………自分のなりたいヒーローってなんだろうって……かっこいいおねーさんみたいなヒーローになりたい……はなにか違う気がするし……誰かへの憧れだけで……私は動いてないと思うけど……言語化が難しい。」
「…………ゆっくりでいいのよ?時間はいっぱいあるし……インゲニウムも言ってたでしょ?」
「……雄英高校はきっときっかけをくれるはず。……きっかけかぁ……なんだろう。」
「楽しみね?」
「……そうだね。」
せっかくのカナとの時間。こんなのに使いたくはないんだけど……頭から離れてくれない。
「ごめんね?カナ。……私……カナとの時間大事にしたいのに。」
「いいのよ。日巡璃。……それとも何?私ってそんなに融通が効かない女に見える?」
「全く。」
「だったらいいじゃない。……貴方の悩みを共有してくれるの……すっごく嬉しい。私だけに見せてくれる貴方……なんだか特別になった気分だし。」
「……んへへ。カナは特別だよ。」
「…………そ。」
私は体勢を変える。くるんと向きを変えて……カナをバックハグする形。後ろからカナの指に指を絡める。
「……本当に特別だよ?」
「わかってるわよ。……煽ってるの?」
「……カナさんこういうの好きでしょ?」
最近私がさん付けすると少しむくれるカナが可愛くてちょこちょこ呼んでる。
「……絶対鳴かすから。」
「お手柔らかにね?」
「考えとくわ。」
……もう。カナったら。
お風呂上がり。
ブオオオ……
カナの髪の毛を乾かしてる最中。
「そういえばさ……」
「何?」
「カナのオリジンってなに?」
「オリジン……ねぇ。単純よ。私のしたいことだったから。雁字搦めに自分でなっておいて……自由を求めた結果目に付いたのがヒーローだったってだけ。」
「そうなんだ。……ヒーローかぁ……。」
「…………まだ悩んでるの?」
「誰かさんに虐められて全く考えれなかったからね。」
「……ふふ。乗り気だったくせに。」
ご明察ですけど!!
「……いいのよ。日巡璃。オリジンが大層なものじゃなくてもヒーローをしている人だっている。憧れ。夢。希望。なんでもあるわ。」
「……うん。そうだよね。」
私のオリジンは……流水おねーさんに助けられたあの時……?流水おねーさんに会いたいから我武者羅に頑張った。おねーさんの言うことも従った。
でもこれはきっと私のオリジンじゃない。ヒーローに憧れたんじゃない。おねーさんに憧れたんだ。
だからヒーローとしては空っぽ。
ヒーローの私には……一体何ができるんだろうか。
何が……私を支えるんだろうか。
何も思いつかないし何も分からない。
「……はい。乾いたよ?」
「いつもありがとう。日巡璃。今日も綺麗ね。」
カナがこちらに振り向きながら自分の髪を指で梳く。
「何度もしてるからね。」
「このまま一緒に住んでもいいのよ?」
「……だーめ。」
カナの口に人差し指を当てる。
「卒業してから……でしょ?……一緒に同棲できる部屋探そうね?」
「…………はぁ〜……結婚しましょ?日巡璃。」
「だぁめ。それも卒業してから。」
「ねぇ〜結婚しましょうよ。……きっと後悔させないわよ?相性バッチリだし……」
「……それは……ちゃんとした場所で……私から言いたいな?」
カナのほっぺをむにむにと触る。
「……!!…………しょっ……しょうがないわね。待ってあげるわ。」
「……ありがと。嬉しい。」
「…………最近日巡璃が強い気がする。」
「??」
「よし……テストの結果を返すぞ。」
終業式1日前。スナイプ先生が1時間だけ授業を取り、結果テストの返却時間になった。
「「「…………。」」」
もうみんなドキドキだよね。緊張だよ〜……
「……出席番号順だ。青空天気から取りに来い。」
天気ちゃん。一撃くんが受け取った。
天気ちゃんはまだ見てないみたいで……なんかすごく色んなもの宙に書いてる。
一撃くんは安堵したみたいな顔。よかったねぇ。
さぁて……次は私だね。
「槍田日巡璃。」
「はい!」
紙を受け取る。全部の点数と補習か否か書いてある……らしい。
席に戻って……一息。
「ふーっ……よし!」
紙を開く。
赤点は……無し!クラス順位3位!中間と変わらなかったね!
実技も赤点じゃない!
「やった!」
思わずガッツポーズ。
「……槍田……おめでとう。私もOKだった。」
後ろの髑髏ちゃんが話しかけてくる。
「よかったね!一緒だよ一緒!」
「……そうだね。」
次々と答案を返され…………
「!!」
「〜〜。」
「……。」
なんかみんな安堵してる……赤点は無さそうだね!
「南無阿弥陀仏……南無阿弥陀仏……」
「……。」
天気ちゃん以外は。天気ちゃんまだ見てないみたい。
「…………青空は置いておいて……今回の試験は前回も言っておいたが……君たちの出来ることの再確認だ。どれだけ授業内容を己のものに出来たかを知りたかった。今後の方針にも強く響く。」
スナイプ先生がもう一度説明してくれる。
「林間合宿でもしっかり個性を伸ばす訓練をするので……各々足りなかったもの、出来てなかったものを再確認するように。良い点数でなかったものも、良かったものも再度分析をしておくこと。」
「「「はい!」」」
「……天気ちゃん。」
「……うぐっ……うぐぐぐぐ……」
すごーくゆっくり開く天気ちゃん。そんなに心配??
「天気。君のことをみんな待ってるんだが……」
「待って?本当にお願い!心臓バクバクして収まんないの!」
もぉ……この子ったら。
天気ちゃんが未だ不明だから皆が喜びにくいんだけどなぁ?
「…………くううっ……ふーーーっ……無理だぁ!!」
天気ちゃんが紙を置く。
「今ッ!!」
それを見計らって天眼くんが紙を開く。
「うぎゃっ!?天眼!!!」
天気ちゃんが自分の顔を隠す。
「…………なんだ。赤点ないじゃないか。」
「………………え?」
「うむうむ。俺たちが教えた甲斐があったな!」
「え?え?ホント?」
「なんだよ受かってんのか。……心配して損した。」
「みんなで受かってん良かったであります!」
「天気ちゃんおめ〜。」「おめんめ!」
「っっっっ!!!やったぁ!ありがとうみんなぁ!!!!」
おめでとう天気ちゃん!!
これでみんなで林間合宿行けるね!!